良い店をみつけるとずっと通い続けるタイプの出版プロデューサー西浦です。昨夜は「ニシュランガイド」の打ち合わせで会食だったのですが、もう13年通ってるお店に行きました。
お酒もフードも美味しく、雰囲気よく、サービスもよく、でもマイナー。通い続けるには理由がある。
さて、毎日更新58日目。
このダイヤモンド社さんの記事解説も今回で最後です。
目次
「本の力」と「本以外の力」で売る
6ページ目の「忘れられた既刊の売り伸ばし方」の中で
新刊は、“本の力”で売れますが、忘れられた既刊を、どう売り伸ばすかが大切です。
といった表現があり
- 本の力って具体的に何でしょう?著者の知名度以外で何かありますか?
と質問がありました。確かに、「本の力」っていろんな意味に取れますよね。「本には人生を変える力がある」とかって意味にも使えますし。
今回の記事では「新刊と既刊の対比」として出てきています。つまり新刊は「本の中身やデザイン、タイトルなど本そのものの力で売ることができる」ということです。
既刊はなぜそれができないかと言うと、理論上「本そのものの力」で売れるだけ売ったはずで、売れなくなったから返品されたり、他の新刊に良い場所を取られたからです。
「その本 本来の価値ではこれ以上売れない」となると、付加価値を付けて売るしかありません。
分かりやすいのはTVで取り上げあれた、タレントさんが激推ししてた、映画化されたというような「話題性」という付加価値ですね。
他にも「〇〇と一緒に並べると併買率が上がる」「〇〇フェアに入れると売れる」「~なPOPを置くと売れる」「売り場をAからBに変えると売れる」など、本の中身ではなく見せ方置き方などもあります。
本当に長く売る既刊で、かつライバル商品があるような熾烈な市場での戦いは、既刊の実売に対して報奨金をつけたり、売れてる新刊の優先注文権をつけたりする出版社だってあります。
こういった「本以外の力」を駆使して既刊を売り伸ばそうということです。
「既刊の売り伸ばし」の真意
ただ、すべての既刊をそうやって売るということではなく、例に出てるのも『伝え方が9割』『入社1年目の教科書』のような、新刊の時にばっちりベストセラーになったものだということも忘れてはいけません。
新刊の時に全く売れなかったものが数年後、急に売れ始めることもありますが、やはりレアケース。
長く売れるものは最初からある程度売れています。新刊の時に全然売れなかったものを「本の力では売れなかったけど、本以外の力で売り伸ばしてください」というのはお門違いなのでご注意を。
あくまで3万部を5万部、5万部を10万部、10万部を20万部にする話です。
なぜなら新刊を3万部に育てるより7万部を10万にする方が大変だけど、その効果や利益は後者の方が大きいのです。10万部という大台に乗ったことでさらなる拡販も狙えますし。
あまり触れられない、取次の重要な役割
>取次会社
- 取次会社の役割とは?
取次会社との話しはあまり出てきていないけれど、特に信頼関係やコミュニケーションは必要ないの?
書店や編集とのコミュニケーションの話はたくさん出ましたが、取次さんについての話はたしかに少なかったのでフォロー解説をします。
取次の役割としてまずわかりやすいのは「流通」機能です。いきなり全取次が無くなったらほとんどの出版物が読者の手に届かなくなります。
次に「回収」機能です。すべての書店毎に実売数をカウントして、請求書起こして、振込確認して・・・という手間を各出版社がやるのはかなり大変そうです。しかしビジネスは売っておしまいじゃなく、売上を回収してはじめて終わるのですごく重要な機能を担っています。
そして一番重要ともいえるのが「金融」機能です。
書店さんは委託期間の間、取次に支払いを待ってもらっている状態です。そのおかげで仕入にキャッシュが不要です。逆に出版社は新刊の売上がすぐ回収できます。その間、読者も書店さんも出版社にお金を支払っていません。この支払を待ってくれているのが取次であり、取次の金融機能がなくなったらほとんどの書店と出版社が倒産するとも言われています。
ものすごく資金力のある会社は別でしょうが、そうでない会社は「今時、取次なんて中間流通に価値あるのかよ!」と言うだけでなく、自社のキャッシュフロー回るのかの確認もした方が良いと思います。
資金力が豊富で、年間発行点数が少なく、返品率が低い会社しか生き残れないでしょう。
取次さんには各支店の営業さんやナショナルチェーンの担当をする特販部、高額商品の外商部もあったりするのですが、営業関係は今回は割愛します。
さて6回に渡って解説をしてきましたがいかがでしたか?
業界外の方はもちろん、業界内の人も案外「そうだったのか」ということもあるのではないでしょうか。
多少とも参考になれば幸いです。
過去の同シリーズ解説一覧