発行点数主義とは得点を競うものではない【ダイヤモンド社さんの記事解説2】

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昨日連れていって頂いた焼肉がすごくおいしくて、「あー、ごはん食べたい!」と言おうとしたら「肉食べたい!」と言ってた出版プロデューサー西浦です。大丈夫!?ってみんなに言われた、たぶんお肉が美味しすぎて、脳の回線混線したんだと思います(笑)

毎日更新53日目。

さて、「ダイヤモンド社」の営業に関する記事の解説をしたところ、反応が良くとっても嬉しいです!

ダイヤモンド社営業ノウハウを井上直役員の講演録から整理してみました【初心者向け】

こちら ↑ ですねー。

今日も引き続き、解説をしていきます。


発行点数主義

2ページ目の記事

3、発行点数主義からの脱却(営業)

4、発行点数主義からの脱却(編集)

とあるのですが、これについて

  • 発行点数とは、発行した本の数を点数化して評価しているということ?

という質問をもらいました。

 

正直この質問が可笑しくて、申し訳ないけど吹き出しちゃいました(本当にごめん!)。

と同時に、確かにこれは業界外の人は「点数」というとテストの点数のようなものを意識するよなと思います。念のため「発行点数主義」っていう言葉で検索しても特に解説らしい記事は見当たりませんでしたしね。

業界用語というか、業界の慣習のことだから辞書にも載らないのでしょう。

 

もちろん発行点数主義というのは発行した本の数が多いほど得点を得られて、期末に大逆転ポイント2倍チャンスがやってくるクイズ番組みたいなシステムのことではありません。

答えとしては発行点数主義=「とりあえず数をたくさん出せ!そしたら売り上げは立つ!」っていう出版社の経営スタイルの一つです。あんまりスマートじゃないですね。

だから点数化じゃないんですよ(笑)

 

出版点数とか、発行点数とかって言い方は出版業界独特かもしれませんね。

後は音楽とかゲームもそうなのかな?

発行した本の種類のことを「点数」とカウントして、それぞれが何冊発行されたかというのを「冊数」「部数」で表現するんですね。

だから『血流がすべて解決する』だと、

  • シリーズ発行点数2点
  • シリーズ発行部数30万部

ってことです。(2018年6月9日現在)

 

発行点数主義が生まれた背景

発行点数主義が生まれた背景を書きます。

出版業界は「委託制」で本を取引しているので、売上は当然「委託したうち、本屋さんで売れた分だけ立つ」ことになります。

ただ、委託期間終了まで入金がないとなると、4か月~半年先になります。これはキャッシュフロー上よろしくない。

なので、お金の流れとしては委託で新刊を搬入したら、翌月には取次さんから全額入金があります。正確にはその月の返品額の分を差し引かれるのですが、詳しくは次項目で。

 

これはつまり、新刊を出せば一次的に売上が立つことになり、売上目標を立てる時に、年間〇〇〇〇点出せば達成できるかなと「発行点数」でカウントするようになりました。

その本が何冊売れるかは皮算用ですが、何点作るかは計画として立てやすいですよね。

だから目標として「上期6冊、後期6冊作りなさい」というように、編集者に「発行点数」で目標設定する会社が昔は多かったです。(今もかも?)

発行点数主義から脱却せねばならない理由

さて、先ほど

お金の流れとしては委託で新刊を搬入したら、翌月には取次さんから全額入金があります。正確にはその月の返品額の分を差し引かれるのですが

と書きました。勘のいい方なら分かると思うのですが「返品が多かったら、予想した売上が立たないこともあるんじゃない?」と疑問が浮かびますよね。

 

はい、あなた正解です!大逆転ポイント2倍チャンス!

返品が多くなってくると、毎月同じだけ本を作っても売上は落ちていきます。じゃあ返品を減らす努力をしようとなるし、もちろんしてきたんですが、同時に「とりあえずは今までよりもっとたくさん作ればよくない?」と発行点数を増やしたんですね。

返品が同じ、あるいは増えても、それ以上に作れば売上は維持できす。もしくは増えると。

バブルかと。

発想が自転車操業なんです、だから出版社は究極の自転車操業なんて言われます。

 

これが当然不正解だったんですね。残念、大逆転ポイント2倍チャンス失敗…

たくさん作れば作るほど、1冊あたりにかける時間は減り、本の質は下がっていくし、営業が割ける力も分散して結果返品率は上昇しました。

その返品をカバーするためにまた作れ!と。そして神風のようにやってくる「ベストセラー」が出た時に借金を帳消しにするようになります。

まあ、ベストセラーはベストセラーで調子にのって刷り過ぎると、ブームが去った時に大量の返品になり、ベストセラー倒産する会社もあるので、扱い注意なんですけどね。

返品と戦い、丁寧に本を作り、売り伸ばす

とにかく、いかに「返品」が怖いかよくわかりますよね。

出版社の社長を追い詰めたかったら、耳元で「返品、返品・・・」と繰り返すだけでいいという業界ブラックジョークもあります。

つまりこういう自転車操業とベストセラー頼みになってしまうので、「発行点数主義」からは脱却した方が良いよねと、たぶん出版不況になる前から言われています。

 

でもなかなか脱却できないのは「ベストセラーを狙って出せない」からです。

出す本がすべてベストセラ―になるんだったら、それが最高です。編集者も一人年間2~3冊作って、あとはその本をどう売り伸ばすかに集中する方が効率も良いのです。

けどそれができないから、点数をたくさん出すことで、その中からベストセラーを生むのが現実的だったのです。

どんな事業もトライ&エラーを繰り返して、たくさんの失敗の上に成功を築くものだからこれはある程度必要悪です。

ただ、出版の場合はトライ&エラーの数と成功の数のバランスが悪かったのです。

かなりエラーの比率が高い。だから多くの出版社が倒産してきました。

 

こういった背景がある中で、ダイヤモンド社さんは「発行点数主義からの脱却」を掲げて、自己改革を行うようになり、

★目標は「発行点数」ではなく「売上金額」。

★納得いくまで出さない。

★「新刊」という言葉に捉われない

★「数字」の根拠をしっかり持つ

★1万部は3万部に! 3万部は5万部に! 5万部は10万部に! 10万部は20万部に!

などなど、1点1点を丁寧に作って、返品率下げつつ、売上を伸ばしていこうという態勢にシフトされていったのです。

 

ちなみに手前みそですが、僕が独立してから「増刷率」や「平均部数」にこだわって仕事してきたのも、この「発行点数主義からの脱却」を目指したからです。

著者のプロデュースを通じて「高い増刷率」や「平均部数」を維持していけば、出版業界の「発行点数主義からの脱却」に出版プロデュ―サーとして一役買えるよねと考えています。

だから独立当初から1冊の本をつくるのにすごく時間をかけてきましたし、人によっては企画書の完成まで2年、そこから本の制作に移るという著者もいます。

これからもこの姿勢は崩さずに行こうと思います。

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売れてない本を書店さんが注文することはあるの?【ダイヤモンド社さんの記事解説4】

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増刷率90%。平均部数49,000部。

奈良県出身 同志社大学卒業後、学習研究社(現・学研ホールディングス)入社。
書店促進部を経て、一般書販売課へ配属。2つの編集部を担当し、年間最大400冊のマーケティングを担当。
膨大な点数を扱いつつ、新人著者の売り伸ばしや仕掛け販売に注力。
上原愛加のプリンセスレッスン(シリーズ100万部突破)などの売り伸ばしに成功する。その後、出版プロデューサーとして2010年に独立。

『血流がすべて解決する』(23万部)『奇跡の営業』(6.3万部)など主にデビュー作をプロデュースし、ベストセラーへと導く。

業界では数少ない、出版社マーケティング部出身の出版プロデューサー。

業界の活性化を目的として、版元・書店との人脈を活かした合同勉強会や、新卒向けにメディア就活ボランティアも行なう。

「営業だったからこそ、著者・出版社・書店に提供できるモノがある」と増刷ロジックや書店巻き込みマーケティングを駆使したプロデュースを行う。

本は読者のためにある。という考え方から「ブランディングの為に本を出したい」とおっしゃる方には、笑顔でドロップキックをプレゼント(笑)


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