出版社のデータ分析【ダイヤモンド社さんの記事解説5】

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昨日は「腸律サロン セラピーエ」で腸律をしてきた出版プロデューサー西浦です。

毎日更新57日目

さて、このダイヤモンド社さんの記事解説もいよいよ終盤にさしかかってまいりました。

記事の4ページ目「10、編集者と円滑なコミュニケーションを生むために」で

パブライン、日販トリプルウィンは編集者が直接見られることはもちろん、インテージデータなども全編集メンバーと共有しています。

とあります。

単純に

  • パブライン、日販トリプルウィン、インテージデータとは?

という質問をもらったので今回は出版社のデータ分析についてを解説します。


本の実売データはかつてスリップで管理していた

ちょっと手元の本を確認してもらいたいのですが、本の中にしおりのような、縦長で2つ折りの紙が入ってませんでしょうか?

オンライン書店で本を買うとたいてい入ってると思うのですが、本のタイトル、出版社名、価格などが書かれた紙です。「ちょっと邪魔だな」と思いつつ、しおり代わりに利用したりしますよね。

 

この縦長の紙は「スリップ」と呼ばれるもので、出版社がPCも無いような時代から、本の実売データを管理するために差し込んでいたものです。(客注スリップは今回ややこしいので除外)

本屋さんのレジで、精算時にこのスリップを本から抜き出し、出版社ごと仕分けして送ります。

このスリップは注文書の代わりにもなっていて、注文数を書いて番線と呼ばれる判子を押せば、出版社へ注文もできます。売れた本の補充とか、展開拡大に利用できます。

出版社側ではこのスリップを整理して「どの本が、何冊売れているのか」の実売を計測していました。

書店さん側にはけっこう手間のかかる作業なので、出版社によってはこのスリップに報償金を出すこともあります。スリップ1枚につき2円とか。1年分まとめて、期末にお支払いするんですね。

そういうインセンティブもあります。

パブラインとトリプルウィン

時代の移り変わりにより、書店もPOSレジを導入するところが増え、売上データをバーコード読み取りで管理できるようになってきました。

そこで全店にPOSレジを入れて、かつそのデータを集積・整備・活用できるようになった書店さんが、その実売データ閲覧権を出版社に販売するようになります。今流行りのサブスクリプション(月間定額見放題サービスのような)ですね。

 

その代表的なものがパブラインと日版トリプルウィンです。

パブラインは全国の紀伊國屋書店でのPOSデータで、なんと自社だけでなく、他社の本の売れ行きも全部まるっとお見通しです。類書や、今売れている本のデータを好きなだけ見ることができるんですね。

どの店に何冊あるかという在庫情報や、発売から今日までで何冊売れた方を月次、週次、日次で見ることもできます。客層データも見れますね。

紀伊國屋書店は超大手書店なので、販売数も多く、また大型店が多いことからも一般的な書店よりも足が速い(早く売れる)傾向にあるので、データ参考度はとても高いです。

 

もう一つ重要なのは日販トリプルウィンです。

これは取次である日販が提供しているデータシステムで、日販帳合の主要書店の大部分が入っています。

書店さんのPOSデータとしては最大規模で(2,000店以上が対象)、この数値が最も信頼性が高いとして、営業は判断基準にしていることが多いです。トリプルウィンにデータを提供している書店は中小書店が多いので(有隣堂みたいな大型店もありますけど)、パブラインより全国平均に近いという理由もあります。

サブスクリプションなのでIDが足りない

ちなみにこれらのPOSデータは、だいたいID一つにつき、月いくらという契約で提供されます。

僕がいた販売部では、促進部とも共有でしたのでパブラインやトリプルウィンは複数アカウントありましたが、みんなが使うのでアカウント数が全然足りません。

基本は早い者勝ちなのですが、後からログインした人は「〇〇分前から使用されています、ログインし直しますか?」と聞かれて「はい」と入力すると、前に使用していた人を強制ログアウトさせてログインできます。

そうなると先に使ってた側は「やりやがったな!」とばかりに強制ログアウト合戦がはじまります。(誰が誰をログアウトしたかはわからない)週明けの会議前なんかはかなり殺伐としていましたよ(笑)

※ログアウトしないでブラウザを閉じた場合はログイン状態が維持される仕様なので、ただの「ログアウト忘れ」の可能性もある。その場合は被害者はいないので強制ログアウト合戦は勃発しない。

 

全員分アカウントを用意できたらいいのですが、有料なので、そうもいかないんですよね。

僕はほぼ毎日何かしら見てましたけど、それでも週明けはさらに多くの人がデータ見るし、会議が近い時も良くみます。だけど、例えば営業部ならみんなが書店に出向く時間は空いてるし、編集部は朝は会社に人が少ないのでやっぱり空いてます。この辺は増やしすぎるわけにもいかない、ジレンマですね。

固定費がかさむので「POSのIDは販売部のみ」という会社も昔はそこそこありました。

しかし最近ではダイヤモンド社さんをはじめ、トリプルウィンとパブラインのIDを各編集部ごと割り当てる会社が増えてきました。編集部もデータ見て仕事しようという流れですね。

しかしトリプルウィンとパブライン以外のデータは営業のみという出版社もまだ多そうです。

 

インテージデータとは?

記事の中で触れられている「インテージデータ」ですが、おそらくこちらのシステムを利用して、ダイヤモンド社さん用にカスタマイズされているのだと思います。

僕が以前働いていた出版社でも独自の実売データ管理分析システムがありましたが、たぶんインテージさんではないのでインテージデータの詳細は不明です。

 

しかし恐らくは前出のスリップデータを中心に、POS未公開の書店も含め「自社売上」を確認するためのデータだと思います。

そのシステムを使ってどういったデータが見れるのかは、ダイヤモンド社さんのアレンジ内容によります。

間違いなく「店ごと」「商品ごと」に「いつ」「何冊売れたか」はわかると思いますけど。

 

このインテージデータも社内全員で共有されているということで、編集も作るだけじゃなくて「データ見て話ししようよ」という姿勢が感じられますね。

 

このようにパブラインやトリプルウィンなど、業界全体のデファクトスタンダード化したデータシステムもあるし、インテージデータのように各社オリジナルのアレンジを加えたデータもあります。

それらを駆使して営業はデータ分析を日々行っています。

このデータを公開・共有していないと編集は営業がモニタの前に座って何をカチャカチャやってるのかわからないので、けっこう「ちゃんとマーケティングとかしろよな」と思われがちなのですが、正直言うと編集者の想像以上にやってます。

だからデータを編集部に開示する、各自分析できるようにするのは個人的には歓迎です。

人によっては職人みたいにデータをいじり続ける人もいて、それはそれで「もっと書店現場行きなさいよ」とも思うので、痛しかゆしですが。(職人そのものを否定しているわけではありません。むしろ職人大好きで、憧れます。)

 

ダイヤモンド社さんの記事解説シリーズ一覧

ダイヤモンド社営業ノウハウを井上直役員の講演録から整理してみました【初心者向け】

発行点数主義とは得点を競うものではない【ダイヤモンド社さんの記事解説2】

パブリシティの事前共有について、他【ダイヤモンド社さんの記事解説3】

売れてない本を書店さんが注文することはあるの?【ダイヤモンド社さんの記事解説4】

取次の役割とは?【ダイヤモンド社さんの記事解説6】

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増刷率90%。平均部数49,000部。

奈良県出身 同志社大学卒業後、学習研究社(現・学研ホールディングス)入社。
書店促進部を経て、一般書販売課へ配属。2つの編集部を担当し、年間最大400冊のマーケティングを担当。
膨大な点数を扱いつつ、新人著者の売り伸ばしや仕掛け販売に注力。
上原愛加のプリンセスレッスン(シリーズ100万部突破)などの売り伸ばしに成功する。その後、出版プロデューサーとして2010年に独立。

『血流がすべて解決する』(23万部)『奇跡の営業』(6.3万部)など主にデビュー作をプロデュースし、ベストセラーへと導く。

業界では数少ない、出版社マーケティング部出身の出版プロデューサー。

業界の活性化を目的として、版元・書店との人脈を活かした合同勉強会や、新卒向けにメディア就活ボランティアも行なう。

「営業だったからこそ、著者・出版社・書店に提供できるモノがある」と増刷ロジックや書店巻き込みマーケティングを駆使したプロデュースを行う。

本は読者のためにある。という考え方から「ブランディングの為に本を出したい」とおっしゃる方には、笑顔でドロップキックをプレゼント(笑)


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