書籍とは?書物との違いや「本」のさまざまな呼び方を整理しました

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こんにちは、出版プロデューサーの西浦です。

本のことを書籍(しょせき)といったり、書物(しょもつ)と呼んだり、いろんな呼び方がありますよね。

これらの意味に違いはあるのでしょうか?あるいはTPOに応じて使い分けされるのでしょうか?

この記事では「書籍」にまつわるいろんな知識や由来などを整理しました。

読み終わるころには「書籍」の歴史や本質から雑学まで知ることができます!

【書籍=書物】意味に違いはない

いきなり結論から言うと「本、書籍、書物」という言葉の意味に違いはありません。

特に「書籍」は、定期刊行物である「雑誌」との対比として語られることも多く、「雑誌じゃないもの」だと思ってもらって良いでしょう。

ちなみに出版業界内ではどの呼び方が多いかというと、圧倒的に「書籍」という表現が使われます。

「書籍販売部」のように部署名に使われることも多いですし、「人気のブログを書籍化!」のように社外に向けても「書籍」と使います。

ところで、英語で本や書籍のことを表す「Book」という単語がありますね。実は「The Book」だと「聖書」のことを指すのです。

「聖書」は歴史上はじめて活版印刷を成功させたヨハネス・グーテンベルクがはじめて印刷した本であり、また世界一のベストセラーでもあります。

「The Book = Bible」と言われるのも納得感がありますね。

「書籍」「書物」辞書での扱われ方は?

次に「書籍」と「書物」、辞書での扱われ方を確認します。

書籍」…文章・絵画などを筆写または印刷した紙の束をしっかり綴 (と) じ合わせ、表紙をつけて保存しやすいように作ったもの。巻き物に仕立てることもある。多く、雑誌と区別していう。書物。本。図書。しょじゃく。(出典:大辞泉)

書物」…本。書籍。(出典:大辞泉)

このように書物は「本、書籍を指す言葉」として扱われています。

書籍は「しょじゃく」と読むこともあるようですが、出版社でも書店さんでもみんな「しょせき」と読みます。

「しょじゃく」って言うと聞き返されるかもしれません。

「本」にはもともと「書籍」の意味はなかった

本という言葉の成り立ちを知るために、「字源」を調べてみましょう。

字源とはその漢字が出来た経緯・由来のことで、その字の「本質的な意味」を調べるのに適しています。

字源は出典元によって諸説あることも多いですが、「本」についてはどれもほぼ同じです。

「木」という字に、「根元を示す線」を書き足したものが「本」の字です。

木の根元、つまり「もと」という意味を持っています。

ですので

  1. 「手本」や「基本」といった模範とすべきものに使われたり
  2. 「本質」のように根っこ、根本を表す言葉に使われています。

「模範」、「本質」など身が引き締まるような言葉ばかりですね。

 

本に「模範」「根本」という意味があることはわかったのですが、肝心の「書籍」という意味が見つかりませんね。

ではどうして「本」=書籍、書物となったかというと、「書写」がきっかけのようです。

印刷技術が発達する以前、経典など貴重な書籍・書物は、すべて手で「書写」され、複製を作成していました。

その「書写」のときに、「お手本」になるものを「もと(本)」と呼び、その流れで「本」=「書籍、書物」という概念が一般化したようです。

結論として「本」にはもともと「書籍」の意味はなかったが、書写の「お手本」になる書籍や書物を「もと」の意味で「本」と呼ぶようになったのです。

書籍と雑誌・新聞の違い

ここまで「書籍」「書物」といった本の呼び方について整理してきましたが、「雑誌・新聞との違い」についても触れてみます。

  • 広告がない

雑誌は「純広告」や「記事広告(タイアップ記事)」、新聞には「記事下広告」と「雑報広告」のスペースがあります。

書籍にはこれらの広告スペースがありません。

実は書籍は(事実上)広告掲載しないのです。

小説に「映画化!決定」として、映画の宣伝を掲載することはありますが、あれは「映画の宣伝ではなく、書籍の関連情報」という扱いです。

ギリギリですけど(笑)。

実用系の本だと著者の「購入者限定:無料PDFダウンロード」などのチラシが挟み込まれていることもありますが、あれも映画化の帯と同じ「関連情報」という理屈です。

ですので、著者の販売している商品を露骨に宣伝するよりは、ブログの案内にとどめたり、無料ファイルダウンロードで誘導する…くらいまでにしています。

  • 定期刊行物ではない

新聞は(基本)毎日、雑誌は週刊、月刊、季刊など定期的に発行される「定期刊行物」です。

しかし書籍は定期的には刊行されません。

雑誌の連載が数か月ごとに(事実上定期的に)発売される書籍のシリーズもありますが、「定期刊行物」とはしません。

  • 1テーマ、1著者で書く

雑誌・新聞は、編集長やデスクを中心に、複数人の編集者・記者で製作されます。

それぞれ識者が取材されたり、連載を持つ著者もいますが「一人の著者を立てて書く」ということはありません。

テーマも「ダイエット」「ファッション」、「経済面」「生活面」というように、多岐に渡ります。

みんなで、いろんなテーマについて合作するのが通常です。

かたや書籍は明確な著者が存在し、主張の責任も、著作権も著者にあります。テーマも1冊につき1つです。

対談やグループの著者、時には編集者や製作プロダクションが執筆しているものもありますが、建前としては「〇〇研究会」など著者を立てます。

書籍は「印税」が発生するというのも特長でしょう。

雑誌や新聞などの連載に対しては「原稿料」が支払われることが多いですが、これは厳密には印税ではありません。

「書籍化」して初めて、印税が支払われます。

【印税とは】10万部で1400万円?印税の計算方法と契約【出版とお金の話】vol.2

ここまで書籍と雑誌・新聞との違いを説明してきましたが、実は共通項もあるのです。

  • 共通項:販売店で価格を変更できない

(「再販売防止制度」を採用)

書籍・雑誌・新聞の共通項、それは3つとも斜陽産業…という自虐ネタは置いておいて、どれも「再販売防止制度」の対象商品ということです。

再販売防止制度とはざっくり言うと「販売店は決められた値段で販売してくださいね」という制度で「店の判断で割引も、値上げもできない」ルールだと思っていただければOKです。

この制度のない業界だと販売店が価格をコントロールできるので、「メーカー希望小売価格」という表現が使われます。

あくまで「メーカーの希望」だよと。

本音か建て前かは置いておいて、再販売防止制度は日本中どこでも、同じ価格で買えなくてはならい、日本人全員に平等に与えられるべき「文化」としての側面が強い商品を対象とします。

人口の多い都会には競争原理が働き、価格が安くなりますが、人口の少ないエリアだと、商品の流通も少ないので価格が上がってしまいます。

嗜好品はそういったことも仕方ないのかもしれませんが、日本人の権利として守られている「最低限度の文化的な生活」が競争原理で脅かされてはいけません。

だから、文化的な側面を持つ商品は、価格を保護し、日本全国どこに住んでいても、等しい価格で買えるように保証されているのです。

ですので、書籍も、雑誌も、新聞も、あとCDも「文化」の担い手という意味での共通点を持ちます。

ちなみに電子書籍は再販制対象外です。

意外にも歴史の古い「電子書籍」

 

書籍というと紙の書籍のことだと思いがちですが、「電子書籍」もあります。

電子化された書籍のことで、電子書籍リーダー(ビューワーとも呼ばれる)というハードウェアもしくはスマホ等にダウンロードされたアプリで読みます。

現状(2019年3月)、「kindle」と「楽天Kobo」が有力な二大電子書籍リーダーでしょう。

 

日本では2010年に「電子書籍元年」を迎え(諸説あり)、ここ10年くらいで一般にも広く認知された印象があります。

しかし、意外なことに「電子書籍」の歴史はもっと長いのです。

電子辞書やCD-ROMも電子書籍ととらえると、その歴史は1980年代から始まっています。

(一説によると1985年に発売された三修社『最新 科学技術用語辞典』が最初の電子書籍とされる。)

 

2010年のiPad発売や、スマートフォンの普及により、利用者が加速度的に増えたのは事実ですが、それ以前のガラケー時代からも主に「アダルト」コンテンツを中心に一定の売上をキープしていたようです。

筆者は2005年の研修でそんな話を聞きました。

現在、電子書籍の売上は書籍というよりコミックや雑誌が中心ですが、紙の本・雑誌の売上に対して1割を超える規模になってきました。

今後どうなるのか、気になるトピックです。(2017年出版業界の紙の売上、約1兆5900億、電子書籍約2200億。紙に対し電子は約13.8%)

まとめ

「書籍」「書物」など本に関する呼び名はたくさんありますが、特に大きな違いはありません。

本の歴史は長く、印刷技術が発展する以前の「書写」がきっかけとなり、「書籍」を「本」と呼ぶようになったのはとても面白い話ですね。

そして今、書籍は「電子書籍」へと進化を遂げましたが、まだまだ「書籍の進化」は途上かもしれません。

以前ある電子書籍の勉強会で「リアルを模倣する電子」の話を聞きました。

曰く、リアルからいきなり電子には変化せず、一度「リアルを模倣する」のが電子の特徴なのだそうです。

例えば手紙からメールへの進化について

  • 手紙⇒FAX⇒メール

のように「手紙」は、すぐ「メール」という電子に進化しませんでした。

一度、「紙に書いた手紙を電子化したものを、わざわざ、紙で再度印刷する」という「FAX」=リアルを模倣する電子という形をはさんでいるのです。

この理論で考えれば電子書籍も

  • 書籍⇒電子書籍⇒?

という進化の過程にいるのかもしれませんね。

かつては「より紙に近い電子書籍」の開発に力を入れていた「紙を模倣する電子書籍」時代がありましたし。

いずれ「これは書籍なのか、違うのか?」が論争になる、進化した電子書籍が登場してくるでしょう。

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増刷率90%。平均部数49,000部。

奈良県出身 同志社大学卒業後、学習研究社(現・学研ホールディングス)入社。
書店促進部を経て、一般書販売課へ配属。2つの編集部を担当し、年間最大400冊のマーケティングを担当。
膨大な点数を扱いつつ、新人著者の売り伸ばしや仕掛け販売に注力。
上原愛加のプリンセスレッスン(シリーズ100万部突破)などの売り伸ばしに成功する。その後、出版プロデューサーとして2010年に独立。

『血流がすべて解決する』(23万部)『奇跡の営業』(6.3万部)など主にデビュー作をプロデュースし、ベストセラーへと導く。

業界では数少ない、出版社マーケティング部出身の出版プロデューサー。

業界の活性化を目的として、版元・書店との人脈を活かした合同勉強会や、新卒向けにメディア就活ボランティアも行なう。

「営業だったからこそ、著者・出版社・書店に提供できるモノがある」と増刷ロジックや書店巻き込みマーケティングを駆使したプロデュースを行う。

本は読者のためにある。という考え方から「ブランディングの為に本を出したい」とおっしゃる方には、笑顔でドロップキックをプレゼント(笑)


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