ダイヤモンド社営業ノウハウを井上直役員の講演録から整理してみました【初心者向け】

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著者の使う専門用語にはすぐ気が付けるのに、やっぱり自分のことになるとセミナーなどでついつい使ってしまっている出版プロデュ―サーの西浦です。

丁寧なセミナーをしていこう。あ、アンケートにそういう項目付けようかな。

毎日更新52日目。

先日、facebookでビジネス書系出版社 「ダイヤモンド社」の営業に関する記事を読みました。

この記事はダイヤモンド社の井上直さん(取締役営業局長 兼 大阪支社長 兼 部長)が、AJEC(一般社団法人 日本編集制作協会)の編集講座で講演されたものです。

拝読して「ふむふむ、なるほど」とか「いや、そこは必ずしも…」と知的好奇心をくすぐる良い記事だったので、著者グループや、スタッフ間でシェアしたところ「難しい」「ちょっと分からん」という声がけっこうありました。

出版社の営業に関する記事って、編集に関するものより馴染みがないかもしれません。

僕は違和感なく読めたのですが、元出版社のマーケティング部出身の人間ですしね(笑)

「他にも分からない人や、勘違いしている人がいそう」と思ったので、周りの方々が実際に疑問に思ったという箇所を中心に解説していこうと思います。



そもそも出版社の営業はどういった役割と職種があるの?

記事のPart1「営業と編集が連携していくために必要なこと」の中に

「うちにはよい営業マンがいないから売れないのだ」といった空気も流れていましたし、私自身も「営業業務は配本という作業なんだから、本の内容を知ってどうするの?」といった事を言われたこともあります。

という箇所があります。

そこでこういう質問をもらいました。

  • 「取次営業、書店営業など聞いたことがあるんだけど、出版社の営業は何種類くらいあってそれぞれどういった役割なの?」
  • 「『営業業務は配本という作業 』というのは取次営業・書店営業共に?」

たしかに、出版社の営業の仕組みなんて著者もほとんど知らないですし、編集者も案外知らないものです。

なので「出版社の営業の仕事」について解説します。

最低限必要な営業の仕事は「部決」

出版の営業を最低限マストなものだけ残すとしたら「部決」になります。

これは取次さんに、より適正な配本を行ってもらうために、取次の仕入れ担当者と 「部」 数を 「決」 定することです。

※配本とは、取次さんが本屋さんに送すること

これさえできれば、とりあえず書店様に本を流通させることができます。オンライン書店も同様です。

 

なぜこの「部決」が最低限マストな仕事かというと、出版社とそれ以外の会社との一番大きな違いだからです。

出版社以外の会社が本を作っても、本を流通させられなくては「出版社」とは呼べません。たとえそれが編集プロダクションのようなプロの作り手であったとしてもです。

全国の書店に本を届けるには、取次の流通ラインに乗せるしかないのですが、そのためには取次と取引をして担当者と「このパターンで2000冊配本するね」という部決をしなくてはならないのです。

だからとりあえず「部決」しない出版社はありません。

 

出版社営業の7~8割は書店営業

部決担当が最低一人は必要で、これは、なんなら社長がやってもいいし、編集長だっていいので、営業部のない会社もあり得ます。

ただ、部決だけして配本されても、実際には「書店さんでいい位置に置いてもらえない」とか「売れてる店に配本が少なく、売れない店に配本が多く、販売ロスがある」といったことが発生します。

これらは本の返品率を上昇させ、会社のキャッシュフローを圧迫します。

そもそも返品以前に「希望数仕入れてもらえない」ということもありますしね。(ここ10年以上返品率を下げるために仕入規制が続いている)

 

そこで「書店営業」という役割が重要になり、いわゆる「出版社の営業」というのは7~8割この役割を担う人のことを差します。

営業はエリアで担当を分けたり、法人ごとで分けたりします。

ちなみに西浦は新入社員の時、「千葉と四国」の全書店さん+「ブックファーストと書泉」の法人担当で、「紀伊國屋書店本店のサブ担当」でした。

書店への営業方法も法人本部重視と、個店重視と、いろんなスタイルがあります。

実際は各店ごとの販売力の強い書店は単店ごとの対応になるし、本部が強い(単店が弱い)と本部中心に提案となることが多いです。

書店営業のメリットと編集者に馬鹿にされた理由

営業は自分の担当の書店さんに対して、より適正な冊数を、ベストな場所で並べていただけるよう交渉します。

営業の成果次第で、お店での展開は大きく変わってきます。

受注と展開だけでなく、他社の本で売れてるものの情報収取なども行いますし、書店員さんが新人さんや異動してきたばかりで担当ジャンルの経験値が足りない場合はこちらから教えてあげることもあります。お互いにその店での売り上げを最大限に出来るようコンサルするのが仕事です。コンサル型営業とかソリューション営業ですね。

 

また、書店営業のおかげで取次さんの仕入れ数も増やせます。配本時に「どこで何冊置くか相談済み」として取次さんと部決ができるからです。

例えば「紀伊國屋書店本店で100冊、有隣堂恵比寿店で80冊…」というようにその受注数を取次さん伝えると「書店さんもこんなに注文出すくらい期待値が高い商品なのか」と、仕入れ数を増やしてくれたりします。(それでも受注数減数されたりするんですけどね。もうその辺は仁義なき戦いです)

 

つまり記事の中で書かれていた、井上直さんが編集から言われた

  • 「営業業務は配本という作業なんだから、本の内容を知ってどうするの?」

というのは、こういった書店での営業業務をすべて無視されているということです。

書店さんに対して本の内容を事前に説明し、どこで何冊売るかという相談をしなくていい、お前らは部決だけしてろや!みたいに舐められていたんだと思います。

  • 「うちにはよい営業マンがいないから売れないのだ」といった空気も流れていましたし、

というのがそう思える理由ですね。

うちは営業が弱いから、書店で良いところに並べてもらえない

⇒だから売れない。

 

という理屈です。

そう思うんだったら、むしろ営業強化するために情報交換した方が良いと思うんだけど…

まあ、記事の中でも当時のダイヤモンド社の営業さんは「営業に興味がない」「やらされ感が強い」状態だったらしいのでしょうがないのかもしれませんね。

取次営業とその他の仕事

ところで、ここまで部決担当と書店営業という2つの役割について書いてきましたが、部決担当は営業部長とか偉い人の仕事になることが多いです。

しかし会社の規模、特に年間出版点数が増えてくると、部決の数が半端じゃなく増えるので、専門の部署作った方が良いよねという流れになります。

取次営業部として部署を作り、書店営業と分けるようになったりします。

 

僕がいた学研は当時、販売部(取次営業)と促進部(書店営業)に分かれていました。販売部でも小中学参・高校学参・児童書・一般書・雑誌とそれぞれ担当が分かれています。

僕はメンバー3人+課長という構成の一般書販売課にいましたが、2つの編集部を担当し、多い年では一人で年間400冊の新刊を部決してました。(再搬入の部決とかはもう説明も長いので割愛)

 

この400冊に対して、「どんな本で」「対象読者は誰で」「何が長所で」だから「どこで」「どれだけ」「いつ」売るかを編集部と打ち合わせして決めて、それをまた促進部と打ち合わせしてすり合わせて、書店さんに売っていただくというのが仕事の流れでした。あとその本でサイン会や講演会などのイベントを行う場合の担当も販売課です。

年間400冊に対してこれ全部やるんだから部署つくらないと手に負えないですね。

 

ちなみに営業とは言うものの、実際はイベント担当であり、書店営業は外注という会社もあるのです。

雑誌が強かったり、コミックなどのキャラクタービジネス色の強い出版社がそうです。

 

出版社ごとに「営業」といってもスタイル、規模感など全然違います。

その分理解するのが難しい、ブラックボックスに感じるかもしれませんね。

 

この営業に関する解説記事、続きはこちらです。

発行点数主義とは得点を競うものではない【ダイヤモンド社さんの記事解説2】

パブリシティの事前共有について、他【ダイヤモンド社さんの記事解説3】

売れてない本を書店さんが注文することはあるの?【ダイヤモンド社さんの記事解説4】

出版社のデータ分析【ダイヤモンド社さんの記事解説5】

取次の役割とは?【ダイヤモンド社さんの記事解説6】

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増刷率90%。平均部数49,000部。

奈良県出身 同志社大学卒業後、学習研究社(現・学研ホールディングス)入社。
書店促進部を経て、一般書販売課へ配属。2つの編集部を担当し、年間最大400冊のマーケティングを担当。
膨大な点数を扱いつつ、新人著者の売り伸ばしや仕掛け販売に注力。
上原愛加のプリンセスレッスン(シリーズ100万部突破)などの売り伸ばしに成功する。その後、出版プロデューサーとして2010年に独立。

『血流がすべて解決する』(23万部)『奇跡の営業』(6.3万部)など主にデビュー作をプロデュースし、ベストセラーへと導く。

業界では数少ない、出版社マーケティング部出身の出版プロデューサー。

業界の活性化を目的として、版元・書店との人脈を活かした合同勉強会や、新卒向けにメディア就活ボランティアも行なう。

「営業だったからこそ、著者・出版社・書店に提供できるモノがある」と増刷ロジックや書店巻き込みマーケティングを駆使したプロデュースを行う。

本は読者のためにある。という考え方から「ブランディングの為に本を出したい」とおっしゃる方には、笑顔でドロップキックをプレゼント(笑)


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