売れてない本を書店さんが注文することはあるの?【ダイヤモンド社さんの記事解説4】

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昨日はある方に「いかに奈良の神社が素晴らしいか」教えてもらった、出版プロデューサー西浦です。

僕は奈良県生まれの奈良県育ちですが、地元民っていまいち奈良の価値を理解しておらず、関東の、特に神社仏閣に興味のある方々からすると、ある種のエリートのように扱われることもあり、嬉しいような恥ずかしいような、でもその神社全然知りませんすいませんって毎回言ってます(笑)

毎日更新56日目。

さて、今日も「ダイヤモンド社」の営業に関する記事の解説をしてまいります。まだまだ疑問はつきない・・・!


目次

受注は売上ではない

さて、「ダイヤモンド社」の営業に関する記事の3ページ目「8、書店員に信頼されるために①」のところで

★書店からの受注イコール売上げではない、

このひとことに集約されます。実売はどうなのか、その実売を予測した上での提案をしていかなければならない。そうしたことでこの20年間、話し合いを続けています。

とあります。この箇所について

  • 売れていないのに書店さんが発注することってあるんですか?

という疑問が僕の周囲から出てきました。

こういった書店さんと営業の「受注」に関するやりとりも「委託」業界ならではなので、解説します。

売れなかったら返品可能

前回の記事

で、委託制度について書きましたね。返品問題です。

分かりやすく簡単にまとめると、本は、出版社が取次さんと書店さんに販売を委託している商品です。

書店さんや取次さんが「買い付けて」リスクを100%被って売るのではなく、委託には「売れなかったら返品可能」という特徴があります。(売れた分だけ請求が発生する)

「受注」というのは書店さんからの注文のことですが、これも返品可能なので、極端なことを言えば、100冊受注して100冊送ったら、1冊も売れなかったので全部返品され、互いに流通コストが発生しただけということもあり得ます。

※厳密には委託は新刊時と特殊な条件時のみで、本来「受注」は注文扱いで返品不可です。でも現場では返品可能な条件で受注しています。

編集の「発行点数主義」と営業の「受注主義」

編集が「発行点数主義」で目標管理していたように、営業もわかりやすい「受注数」で目標管理することがあります。

 

仮に営業のAさんとBさんが、互いに100冊受注したら受注実績は一緒ですね。

でもその後、Aさんの担当書店は100冊中80冊売ってくれたのに対し、Bさんの担当書店では40冊しか売れなかった場合、会社に入ってくる売上はAさんとBさんでちょうど2倍の差が開きます。

にもかかわらず「受注主義」ではAさんもBさんも同じ実績です。これではAさんとBさんの仕事ぶりを正しく評価できているとは言えません。

Bさんは売れる以上に受注し過ぎ、もしくは受注後のフォローが足りず、売り逃している可能性があるのです。

 

実売はどうなのか、その実売を予測した上での提案をしていかなければならない。

とダイヤモンド社さんでおっしゃっているのは、単純な受注数だけを目標に仕事をするのではなく、実売を想定して返品率を下げ、実売率を高める仕事をしようということです。

 

ただ、営業個人がすべての受注と実売の結果を管理するのは、超大変です。

自分の担当店が何店舗あるかにもよるわけですが、かつて新入社員だった僕でも100店舗以上あったわけです。

そのすべての書店さんで、各セットが何冊入って、何冊売れたのか。

セットだけでなく新刊の売れ行きも同じように追いかけて・・・とやるとデータ見るだけで仕事終わります。書店に行けなくなる。

そのあたり、データ分析の専門担当者をおいているのか、実売データ分析をめちゃくちゃ詳細に、簡単にできるシステムを導入したのか?気になりますね。

売れていない本を書店が発注することはあるのか

さてここまでで

  1. 委託は返品可能。
  2. ダイヤモンド社はもちろん、業界全体的に「実売を予測し、実売基準で仕事する」傾向

があることが分かりましたね。

それでは

  • 売れていないのに書店さんが発注することってあるんですか?

という質問について

「売れてないことがデータで判断できる本を発注することはない」

しかし、

対象の本が新刊で未知数だったり、過去に売れた本などは「どれくらい売れるかは分からないので、返品も可能だし発注することはある」という回答になります。

ただ、昔と違い年々「返品率」については、書店さんも取次さんもどんどん厳しくなっています。

なので20年、30年前みたいに「営業の顔も立ててあげなきゃいけないから3セット注文して、届いても箱すら開けずに2セット返品」というような、ザルみたいな営業はもうどこもやってないでしょう。(たぶん)

 

ダイヤモンド社さんの記事解説シリーズ一覧

ダイヤモンド社営業ノウハウを井上直役員の講演録から整理してみました【初心者向け】

発行点数主義とは得点を競うものではない【ダイヤモンド社さんの記事解説2】

パブリシティの事前共有について、他【ダイヤモンド社さんの記事解説3】

出版社のデータ分析【ダイヤモンド社さんの記事解説5】

取次の役割とは?【ダイヤモンド社さんの記事解説6】

 

参考リンク
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