【後編】本のマーケティングは陣取り合戦、エリアマーケティング、あと「勢い」で決まる。

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本のマーケティングに関する記事の後編です。

前編は ↓こちら↓ から!

本のマーケティングは陣取り合戦、エリアマーケティング、あと「勢い」で決まる。【前編】



目次

エリアマーケティングはより深く階層別に

陣取り合戦を考えていけば、自然と「じゃあどの店の良い陣地を取るのか?」という話になってきます。

つまりエリアマーケティングですね。この本を売るのに最適なお店はどちらなのか?

良い「陣取り」が出来るようになってはじめて、マーケティングに意味が出てくるのです。(強い店にただ本を送るだけではダメ

 

本屋さんは立地商売と言われていて、どこに出店するかで客層が決まり、客層によって売れる本のラインナップが決まります

ある程度法人ごとのカラーはあるのですが、やはりそれ以上に立地の影響力が大きいよねというのが本音です。

 

A店はビジネス書が強い店、B店は文庫新書が強い店。

こういったエリアマーケティングは基本ですが、できる営業はもっと深くその書店の客層を理解しています。

 

例えば、三省堂有楽町店さんと言えば超Sランクの本屋さんで、本当に何でも売れますが特にビジネス系は強いです。

1階の売り場の販売力が強く、1階で一等地を取れるかどうか(陣取り合戦)が重要になります。

 

しかし意外かもしれませんが、ビジネス書が売れ始めるのは2階からなのです。僕も初めて教えてもらったときは驚きました。

あの店の2階は言うなればビジネス書好きが行く売り場で、読者も目が肥えています。面白そうな新刊をいつも探しているのですね。

1階というのは売れてる本、売り伸ばしたい本が並ぶのですが、1階に並ぶようなタイミングでは彼らはすでに購入済みだったりします。

つまり三省堂有楽町店は1階と2階でユーザー特性が変わってきます。

三省堂有楽町店の客層を把握するときに「三省堂有楽町の1階読者」と「三省堂有楽町の2階読者」と別々に把握できていると強いです。

 

また同じ店でも時と共に客層は変化していきます。

分かりやすい例で言うと、武蔵小杉のように新たに開発された街は、どうしても若い夫婦に特化した街づくりになりますから、書店もそういう棚づくりをします。

若い夫婦の元に子供ができて、保育園に入って、小学校、中学校進学・・・と成長していくにつれて児童書の売れ行が伸びて行き、徐々に児童書・学習参考書やコミックへとシフトしていきます。

人の変化に対し、少し先周りして本屋さんは変わっていきますね。

一番重要なのは「勢い」を感じさせること

良い店(エリアマーケティング)の良い売り場(陣取り合戦)を確保出来たら、本はすべて売れるのでしょうか。

そのはずなのですが、そうでもありません。

※中身がつまらない、タイトルが良くないなどのケースはこの場合は除外しています。

本には「勢い」という数値化しづらい指標があり、それによって売り場は大きく影響されるのです。

 

昔、ある本屋さんで仕掛けてもらっている本があり、それがけっこう売れていました。

どれだけ売れているかはPOSデータを見て知っているのですが、それでも現場に行って書店員さんに「どうですか?」と聞かなくてはいけない理由があります。

それは本の「勢い」を書店員さんがどう感じているか確認するためです。

 

その店ではデータ上は今までと変わらぬ売れ行きだったのですが、担当さんの反応は「うーん、どうだろ?」でした。

数字上は変わらなくても、書店員さんが「イマイチ」だと感じているのは、本の「勢い」がなくなってきているからです。

 

この「勢い」とはなんでしょうか。計算式にするならこうなります

  • 勢い=毎日の実売数-期待値

これは本の売れ行きという純粋な結果だけでなく、期待値に比べて売れてるのかどうか?のバランスで評価されるものです。

 

本は常に他のライバル本と陣取り合戦をしています。

「この場所に100冊積むなら1週間で20冊は売れて欲しい」

「A先生の新刊ならこれくらいは売れるだろう」

「B店で週に5冊売れてるから、うちならそれ以上行けるだろう」

こういった期待値が存在し、これを下回るともう少し期待値の低い場所へ変えられてしまいます。(あるいは返品)

 

怖いのは、期待値を超えている「勢い」がプラスの本でも、後から仕掛けた別の本と比較して「勢いがない」ように感じると場所を外されてしまうことがあるのです。

ずっと堅調な売れ行きの本は本来評価されるべきですが、入ってきたばかりの新刊が勢いよく売れていると、その新刊をさらに大きく展開した方が堅調な既刊より「期待」ができますよね。

『100冊積んで毎週20冊前後売れている本A』があって、かたや初回入荷分売り切れたので追加注文した本Bが、再入荷後1週間で『20冊積んで4冊売れ』たりしたら「こっち100冊積んだ方が売れる?」となる具合に。(どちらも1週間の消化率20%ですが、20冊で同じ消化率なら「新刊」で、かつ「100冊積んでより目立たせることができる」Bの方が売れそうです)

100冊積める場所は店でも限られているので、そうなるとずっと置いてくれていた本も、新刊の勢いに圧され陣取り合戦に負けてしまいます。

 

また売れ行きの期待値をクリアし続けている場合でも、店頭では本そのものに変化がないため、読者や書店さんも飽きてきたりします。そうなると期待値を少し超えたぐらいでは足りず、やはり外されがちです。。。

陣取り合戦に負けて、一等地から外れたことでさらに売れ行きが悪くなり、より導線の悪い場所に置かれ最後は返品・・・

これがよくある本の終わり方です。

勢いを取り戻す施策は「夏服」

この失いかけた「勢い」はどうやって取り戻せば良いのでしょうか?

これには正解はありませんが一つ、KADOKAWAの方に教えていただいた話を紹介します。

写真は文庫版なので夏服ではありません、残念。映画も大ヒットしたベストセラー「ビリギャル」こと『学年ビリのギャルが1年で偏差値を40上げて慶應大学に現役合格した話ですが、こちら「夏服バージョン」があったのをご存知でしょうか?

本のオビをほぼカバーと同サイズで作成し、夏に向けて店頭の雰囲気を変えるために導入された施策です。(つまりめちゃくちゃ大きい帯を、夏服バージョンで作成)

これは店頭での「飽きを払しょくするため」という狙いがあったそうです。仮に売れていたとしても、同じ本がずっと同じ場所に置いてあると書店さんも読者も飽きてしまいますよね。

読者にとっては「知ってるけど買う気が全然ない本」は置いてあっても無駄だし、新しい本を並べてもらいたいと思うものです。

でも夏服にすることで「夏服って!」とちょっと気にするキッカケになりますし、気が変わって買うかもしれません。

実際、その帯を製作するコストとそれによって増えた売り上げを考えると赤字施策なんじゃないかと思いますが、映画が公開されるまでの「期待値を維持した」と考えればかなり有効な施策だったということもできます。

ベストセラーを目指すあなたは、本の期待値を超える方法を考えましょう。

映画化なんて期待値を超えるにはものすごく強力な施策ですが、それ以外にも地道に自分のメディア・SNSで宣伝する。本を買いたくなるようなイベントを開催するなど。

発売後に慌てていてはなかなか準備しきれませんから、事前にスタンバイしておきましょう。

発売後2~3か月の予定は組んでおいた方が良いと思います。

 

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