『あなたの知識経験を本という形で世の中に発信しませんか?』
という連絡をもらって、よくよく話を聞いてみると自費出版のお誘いだったとか、企業出版だったなんてことはよくあります。
僕も個人的に『こんな話をもらったんですけど、これってどういうことなんですかね?』と相談を受けることがあります。
出版の違いってよく分からないですよね。
自費出版、企業出版、商業出版って何なのでしょう?
本を出版するのに形式の違いがあるのはなぜでしょうか?
毎回説明するのも手間なので、一度まとめてみようと思います。
- 自費出版・企業出版、商業出版ってなんなの?
- 自費出版・企業出版、商業出版はふつうの本の出版とは違うの?
- 何を基準に選べばいいの?
といった疑問にお答えする記事となっております。
目次
「商業出版と自費出版・企業出版の違い」を動画で観る
本記事の要約を10分強の動画にまとめています。
動画では要点を整理したり、「まとめ」をつくって、より直感的に理解できるようになっています。
こちらもぜひご覧ください。
■【本を出しませんか?の誘いに気を付けて!】商業出版と自費出版・企業出版の違い
自費出版とは
著者が自分で費用を負担して、プロの編集者やライターに本の製作を依頼し、出版する方法です。
その費用には紙代、印刷代の他、編集者やライターなどに支払う人件費も含まれます。
自費出版も細分化すればいろんな種類があるようで(協力出版とか)、少しややこしいですが、素人の出版だと思っていただければ良いと思います。
その意味で言えば、結婚式の席次表なんかも自費出版と言えなくもないです。
主賓がだれで、新郎新婦のプロフィールには何を書くべきか、式場の担当者にアドバイスしてもらい、取材してもらって書きます。
それを出席者の人数分、印刷して式場の指定業者さんが納品してくださいますよね?
その文量が多くて、本のような形になっているのが自費出版です。
自費出版の仕組み・目的・費用・出版後
・仕組み
自費出版のお客様は著者です。
自費出版の会社は、お客様である著者に対して編集者やライターのスキルを提供し、「本」という形で納品します。
・目的
お客様は著者なので、著者のために書かれます。(つまり自分のため)
お客様が書き手なので、自伝でも、小説でも、詩集でもなんでもOKです。
その人が自費出版する目的によって変わりますが、趣味であったり、記念であったりと個人的な目的であることが一般的です。
・費用
本の製作に関わる費用はすべて著者が支払うのですが、紙代が費用に含まれてくるため、何冊作成するかで費用が変わってきます。
会社によって違うのですが、1,000部で200万円くらいのことが多いようです。
参考:自費出版ガイド 自費出版の方法と種類と予算
・出版後
出来上がった本がどうなるかというと、納品先がすべて著者の自宅ということもあれば、一部本屋さんに流通させることもあります。
また、レアケースとして本当に本屋さんで売れることがあり、その場合は増刷分から印税が発生したりします。
この本の納品先や印税の支払いなど、諸条件の違いが、自費出版や協力出版といった名称の違いになります。
自費出版の主な書き手
上記のような構造上、個人で、ある程度お金があって、本を出したい人が主な書き手(お客様)になります。
ですので、
- 退職された方が、退職金を使って自分史をまとめるようなケース
- お金のある職業・立場の方が個人的に自分のやってきたことを本にしたいと作るケース
が多いようです。
企業出版とは
企業が自社で費用を負担して、プロの編集者やライターに本の製作を依頼し、出版する方法です。
その費用には紙代、印刷代の他、編集者やライターなどに支払う人件費も含まれます。
要は「自費出版の企業バージョン」だと思っていただいてOKです。
出版にはお金がかかります。
ある程度まとまったお金が出せるのは個人だと一部のお金持ちだけですが、企業を対象にすればもう少し増えます。
実際、自費出版のお客様のうち経営者が一定数いるので、だったら企業寄りにしてみようというものです。
ただ、この企業出版ですが、出版社のビジネスとしてはそこそこ認知されており、出版社が企業出版の事業部を作ったり、グループ会社に企業出版の会社を作ったりしています。
企業出版の仕組み・目的・費用・出版後
・仕組み
企業出版のお客様は企業です。
出版社は、お客様企業に対して編集者やライターのスキルを提供し、「本」という形で納品します。
また、自費出版と違い、複数の会社で費用負担して1冊の本を出版するケースもあります。
各社負担額に応じて掲載順や掲載ページ数が変わったりするアレです。医療系に多い印象。
ちなみに個人と違い、企業であれば連絡先を見つける方法は多々ありますから、営業の電話がかかって来ることも多いです。
例えば求人や集客の広告を出している会社を探せば、宣伝広告費を出す資金と、課題があることは簡単に分かります。
後は会社名や電話番号からwebで検索して、代表者宛に「出版を通してブランディング、集客、採用の課題を解決しましょう」といった営業をかけます。
・目的
お客様が企業なので、その企業のために書かれます。
社史、ステークホルダー向けのPR、求人採用、顧客向けのブランディングなど多様な目的で製作されます。
また一部の士業向け独立セミナーでは「とりあえず本を2、3冊出しましょう」とおすすめされることがあるらしく、名刺代わりとして製作されることもあります。
(自費出版との境目がちょっと曖昧ですが)
・費用
自費出版以上にピンキリなようです。
クロスメディア・マーケティングさんは90万円から(部数は不明)のようですし、聞いた話だとある出版社は1,000万円だそうです。
また、いくら出すというより何冊購入するかという話で進めることも多いです。
本屋さんに流通させるかどうかで、購入冊数は変わってくると思われます。
・出版後
出来上がった本は企業の目的によってその後の扱いが変わります。
自社や関係先に配布されたり、買い取り分を除いて書店さんに流通させることも多いです。
ある出版社では大手グループ企業の本を作成していて、最初は5,000部程度買い取りという話だったようですが、最終的に10倍以上買い上げてくださったとか。
定価の80%で販売していたとしても利益が・・・ありがたい案件だったようです。
企業出版の主な書き手
中小企業から大手企業まで多岐にわたります。
業種も特に決まりはなく、医療関係や不動産など幅広い分野で実績があります。
ただ、広告宣伝費や顧客満足などの面で検討されることが多いでしょうから、そういう資金のある業種・会社(つまりは儲かっているところ)だと言えるでしょう。
企業出版の本を売り伸ばしていくには
企業出版の売り伸ばしは、セミナー集客等と同じで、基本的には「自分たちの集客力・拡散力を活用して売る」ことになります。
弊社のセミナーでお伝えする販促方法の半分強が「著者自身の集客力・拡散力をどうやって伸ばすか」の話になっております。
そのため、企業出版をされている会社の広報の方がセミナーに参加されていることも多いです。
自社の社長の本をどう売り伸ばすか?ヒントを知りたい方はぜひ下記のセミナーにご参加ください。
商業出版とは
出版社が、読者に購入してもらうことを目的に、本を出版することを自費出版との対比で商業出版と呼びます。(出版社側ではふつうに「出版」と呼んでいます)
そこに関わるあらゆる費用は出版社が負担します。
自費出版や企業出版と明確に違うのは、コストが出版社負担であり、リスクを負っているということです。
売れれば利益が出て、売れなければ不良在庫となります。
ですので商業出版(ビジネス目的)と呼ばれ、この場合著者(あなた)は「お客様」ではなく、投資先扱いとなります。
商業出版の仕組み・目的・費用・出版後
・仕組み
商業出版のお客様は「読者」です。
出版社は、投資対象である著者に対して編集者やライターのスキルを提供し、「本」を共同作成します。
そして取次さんの流通網を経て、全国の書店さんで販売されます。
・目的
読者に対して「価値」を提供し、代価としてお金をもらいます。
著者にも印税という形でその一部が支払われます。(売り上げの5%~10%が一般的)
読者に提供する価値というのは多種多様で、「面白い」「役に立つ」「感動する」「笑える」「暇をつぶせる」など読者のニーズに答えられるもの、かつ類書と比べて優れているものである必要があります。
仕組みの部分でも書きましたが、つまりはお客様である「読者のために」書かれます。
その結果、読者に支持され5万部、10万部と売れた本は印税以外に二次的な利益を著者にもたらすことがあります。
それが
- 本業のお客さん増加
- メディア露出
- ブランディング
といったものです。
これらはあくまで「二次的な目的」であり、主目的は「読者に価値を提供すること」です。
・費用
費用は出版社負担であり、著者には原則として費用負担はありません。
がしかし、実際は商業出版であっても費用負担を相談されることがあります。
企業出版や自費出版のように何冊か買い取ったり、発売後の広告費を著者が負担することもあります。
(一時期流行ったネオヒルズ族の方達はありがたいことにたくさん広告費を負担してくれたそうです)
負担とまではいかなくとも「印税を全額広告費に回してほしい」というような話はありますし、著者のセミナーで販売するように頼まれるのはもう常識という感じです。
著者というのはその本の共同出資者(コンテンツやブランド力の面)ですので、いろんな協力の仕方をお願いされるのは不自然なことではありません。
ただし、それも額によります。
最初から印税0%とか、3000部買い取りなどは商業出版かどうかを怪しんだ方が良いかも。
3,000部って初刷5,000部のときの損益分岐点だったりするので、投資だと思われていない可能性が高いです!
・出版後
本の出版後は、書店で売れれば追加注文をもらえ、売れなければ返品されます。
返品された本はその後、売れる見込みがなければ絶版になり消えていきます。
逆に、売れれば増刷となり、それが5万部10万部と積み上がっていけば、本業へもフィードバックがあります。
つまり見込み客増加、メディア露出、ブランディングなどですね。
特に書籍は最後まで読んで共感・感動した場合に、著者のブログを読んだり、サービスを検索してくれるというような「次のアクション」につながることが多いので、コンバージョン率が非常に高いと言われています。
このように商業出版はビジネスとしての側面が強いので、著者は「新規事業を始める」覚悟で時間や手間、お金を投資して挑んだ方が結果も良好です。
商業出版の主な書き手
やはり出版社にとっては投資先になるので、著名人が多いです。
TVに出ているような方はもちろん、そのジャンルで非常に有名で、すでにブランドを築いている人たちが対象になります。
しかしそういった方々ばかりではなく、むしろ「その業界では有名だけど一般的には無名」という著者の方が圧倒的に多く、そういった方の本がベストセラーになることも多いです。
商業出版の本を売り伸ばすには
商業出版を売り伸ばすには「自身の販売力強化」と「ベストセラーになるために越えなければならないステップ」があります。
特に後者は、業界の仕組み、ベストセラーの成り立ちを出版マーケティングの面で知らなければいけません。
詳しくは下記の出版セミナーにご参加いただき、「ベストセラーの仕組み」を知ってください。
自費出版・企業出版・商業出版の最大の違いとは
ここまでいろいろと書いてまいりましたが、結論として自費出版・企業出版・商業出版の何が違うかというと、本質的には「誰のために書かれた本か」が違うと言えます。
商業出版は読者のために書かれたものであり、
自費出版と企業出版は書き手のために書かれたものです。
しかし、残念ながら商業出版でも、自分のため、自社のブランディングのために書かれた本があります。
その意味で商業出版であっても商業出版ではない本はたくさんあります。
逆に言うと、自費出版や企業出版であっても読者のために書かれていて、受け入れられて売れたなら、それはもう商業出版と同じだと思います。
そういう例はすごく少ないですけれど実際にありますし、そういった志のある方は自費出版や企業出版ではなく、商業出版を目指されるのが目的に適うのではと思います。
商業出版を目指すなら出版TIMESのセミナーにぜひご参加ください。