こんにちは、出版プロデューサーの白木賀南子です。
今回はKADOKAWA副編集長の伊藤直樹さんのインタビューです。
毎年10万部を生み出し続けるSBクリエイティブの敏腕編集者、杉浦さんのご紹介で取材をご快諾!
伊藤さんは、シリーズ累計20万部の『クビでも年収1億円』(小玉歩・著)や、あの与沢翼さんの処女作なども手掛け、最近では12万部突破した『神メンタル 「心が強い人」の人生は思い通り』や発売2か月で6.6万部の『神トーーク 「伝え方しだい」で人生は思い通り』などの大ヒット作を世に送りだし続けるヒットメーカーです。
Twitterなど「SNS戦略に長けたマーケター」の一面もあり、今回はプロモーションの話もたっぷりお聞きしました。
お相手は増刷率90%の出版プロデューサー西浦と白木でお届けします。
どうぞお楽しみください。
目次
与沢翼、小玉歩、両氏のヒットで勘違いした時代
─伊藤さん、本日は貴重なお時間ありがとうございます、よろしくお願いします。
伊藤:よろしくお願いいたします。
─まずは伊藤さんのことを伺いたいのですが、どういった経緯で編集者になられたのですか?
伊藤:もともとは村上龍さんが大好きで、文芸をやりたかったんです。でも就職氷河期だったのでなかなか内定がもらえず。とにかく出版業界に入れればということで小さな問題集を作る出版社に入社しました。
でもやっぱり文芸がやりたくて中途採用で角川学芸出版に転職しました。実際には文芸はできなくてビジネス書をやり始めたのがちょうど26-27歳くらいの時です。
たまたまご縁があって当時のネット起業家と言われる、与沢翼さんの処女作『スーパー フリーエージェント スタイル』や
小玉歩さんの『クビでも年収1億円』を担当させてもらいました。
物議を醸した本でしたが、図解版などのシリーズも含めると20万部行きましたね。
─学生の頃から編集者を志望されていたのですか?
伊藤:そうですね、雑誌の編集やったらモテそうだなと思って。メンズノンノの編集者とかモテそうじゃないですか?(笑)
西浦:めっちゃ不純な動機じゃないですか(笑)文芸をやりたくて転職したのにビジネス書を担当することになったわけですが…何か変化はありましたか?
伊藤:与沢翼さんや小玉歩さんといった、何億も稼いでいる「超一流のマーケターかつ起業家」と本づくりができたので「勝つまでやる!売れるまでやる!」みたいな基本的な思考はそこで学びましたね。
西浦:その姿勢、めちゃめちゃ大事ですね。ビジネス書の後は何を担当されたのですか?
伊藤:ずっとビジネス書もやりながら、プロレス好きだったので「新日本プロレスV字回復の秘密」とか、大槻ケンヂさんと山口敏太郎さんの共著「人生で大切なことはオカルトとプロレスから学んだ」とか。
ただ、『クビでも年収1億円』のあとは3~5万部くらいのヒットは作れても10万部を超える本はつくれなかったんです。
そんで気付いたんです。結局のところ、自分の力で売れたのではなく、与沢さんや小玉さんの「著者の力」に乗っかってただけ、自分は何者でもなかった、ただのコバンザメだったなと痛感しました。
西浦:著者の名前で売れてるだけのか、編集者の力なのか…ってやつですね。でもそれを認めるのはとても勇気がいることだと思います。
伊藤:勘違いしやすい業界ですよね、当時は本当に天狗でした(笑)。
売れる条件は揃っているのにことごとく売れない。どれだけいい本を作ったとしても見向きもされないということを経験しました。
─売れなくなった時期に何かご自身で意識して変えたことはありますか?
伊藤:自分自身の発信力をつけるためにfacebookを頑張りました。あと、自分の好きな本を作っていたら売れないと気づいて、まじめに研究し始めた。
天狗時代は「自分のセンスでいける!」って思っていたけど、ちゃんと書店に行って売れている本をチェックするようになったんです。
西浦:売れないという現実に対して、マーケティングをやらなきゃと思ったのですね。
伊藤:何が正解かはわからないけど何かを変えなきゃと思って必死でしたね。
あと、大事なことがあって。
僕は落ちぶれていた時、色々手広くやってしまったんですよね。売れそうだと思ったら、何でも飛びついてやっていた。
でも、自分にできないことは切っていかないとダメだと気づきました。著者にも申し訳ないから、(苦手なジャンルは)ちゃんと「断る」ということをしようと。
それを明確に意識するようになりました。
ベストセラーを狙うには「言いたくなる」タイトルを付ける
西浦:『神メンタル』や『ストロング本能』といった、最近担当された本のタイトルは「伊藤さんらしい」っていう域にきていてすごいと思います。これらはマーケティングの発想で編み出しているんですか?
伊藤:自分の担当本が売れなくなって、類書調査を始めると、だいたい二番煎じを始めるんですよ。
「〇〇最強の教科書」「すごい〇〇」とかよくありがちなタイトルもつけました。
パクリは良くないっていうけど、売れているものを真似て作ることでわかることもあるので、最初はパクっていかないと感覚がつかめないんです。
西浦:たしかに「すごい~」ってタイトル、ありがちですね。
伊藤:でもダイヤモンド社の編集者種岡さんとご飯に行った時に衝撃を受けたんです。
「売れた本の真似をすれば、そこそこ売れるかもしれないけど、突破はできない。勝負するタイトルが必要だ」って言われて。
それからタイトルとの向き合い方をもう一度考えるようになりました。
『神メンタル』については、「神」っていう言葉で勝負しようと思ったんですが、種岡さんが当時、大和書房で樺沢先生の『神・時間術』という本を担当されていたので、「神」をタイトルに使っていいかちゃんと許諾をもらいにいきました。
「いいですよ~神は僕のではないんで」と言ってもらいました(笑)
西浦:ちゃんと仁義を通されているのさすがですね。
売れているものに寄せただけのタイトルと、突破して読者に刺さるタイトルの違いって何だと思いますか?
伊藤:「言いたくなる」「口に出したくなる」かどうかですね。
『神メンタル』は、「おとうふメンタル~」っていう、「ぐでたま」のLINEスタンプから着想を得ました。
親戚の子が「おとうふメンタルってかわいいよね~♡」って言って何回も「おとうふメンタル~おとうふメンタル~」って音声付きスタンプを使っているのを見て、「これが若者に流行ってるってことは逆バージョンがあってもいいのでは?」と思ったのがきっかけです。
おとうふじゃない、強いメンタルがあるとしたら、それは「神」なんじゃないかって。
西浦:なるほど~!!めちゃくちゃ面白い。『ストロング本能』はどうですか?
伊藤:「ストロングゼロ」が若者に流行っていたのでそれを何かしらもじりたくて作りました。
西浦:若者に流行っている言葉や物を分析しているんですね。ということはどちらの本も読者は20代が多いですか?
伊藤:そんなことはないです、ご存知の通り20代はあまり本を買わない傾向があるため、やはり30代以降にも刺さったという感じですね。
『神メンタル』は明確に女性にも手に取ってもらえる装丁にしてくださいとは伝えていました。
西浦:ギャップありますね。女性に手に取ってもらうならもう少しソフトなタイトルにしそうなものなのに。
伊藤:サブタイトルに入れている「心が強い人」は使いたかったんです。
東洋経済オンラインで「心の強い人の○○習慣」がバズってたので絶対に需要あると思ってました。
サブタイトルがコンセプトという意識ですね。さすがに『神メンタル』だけだとわからないので。
西浦:どちらもLINEスタンプやお酒など今流行っている「本以外のモノ」から踏襲していってるんですね。
伊藤:タイトル付けの際は「シンボル」を作ることをイメージしています。短い方が象徴になりやすいですよね。
『「あの」東京タワーだ!』みたいに『「あの」神メンタルだ!』って言ってもらえるような。
西浦:一般名詞のタイトルではなく、「固有名詞」化していく感じですね。
伊藤:そうですね、本っぽくないというか「新しい安眠枕、神メンタルです!」みたいな(笑)
編集者のメンタル的に重要なのは、二番煎じをやめるっていう覚悟かなと思います。
Twitterは最強のマーケティングツール
─伊藤さんはご自身でTwitterなど、SNSに力を入れていらっしゃいますがその理由を教えて頂けますか?
伊藤:野口悠紀雄先生とご一緒した『「超」独学法』という本がきっかけですね。
当時、先生のTwitterは寄稿したWEB記事が出ましたというツイートが中心で告知メインのアカウントでした。そこで先生と相談しまして、これまでの代表作から140文字をピックアップして1日5個ずつ投稿してもらいました。すると5000フォロワーくらいだったアカウントが1か月くらいで倍の1万フォロワーになったんです。
西浦:えーー!!!それはすごい!
伊藤:野口先生も「Twitterってマーケティングツールなんだ!」と気づいて面白くなったご様子で、ご自身でも色々と活用し始めて、独学法の本文もツイートするようにしたりして本も3万部くらいまで売れましたね。戦略がはまった感覚がありました。
ただ、他の著者に同じことをお願いするにあたって、自分がやっていないと説得力ないなと思って自分でもやり始めました。
西浦:野口先生の本からはどういう基準で、Twitter用の言葉を選んだんですか?
伊藤:箇条書きっぽいのがいいとか、難しいのは刺さらないとか。。。
真理に近い良いことを言っていたとしても、全くいいねがつかなかったりするんですよね。
Twitterそのものがマーケティングツールなので、140文字をひたすらピックしてツイートして、どれにいいねがつくか、どういう内容が好まれるか、投稿した反応から学びました。
西浦:野口先生はnoteもやってらっしゃいますよね?それもアドバイスしたんですか?
伊藤:野口先生は天才なのでご自身で突き進んでいかれましたね。
でも僕なりにnoteがどうしてここまで流行っているかは研究済みです。まずアメブロとかと違って広告が少ない。
そして、一番すごいのが、有料noteの購入でキャリア決済ができる点です。このおかげで、クレジットカードを持っていない層も自分のスマホで購入できるわけです。
だから高校生やクレジットカードを持たない主婦が、親や夫のお金で有料noteを買っている可能性が高いです。
口コミのバイラルを起こす人達は、高校生、大学生、主婦なんじゃないかって僕は思ってます。
だからTwitterの140文字以上に書きたいことがある時は、noteで書くのが良いです。
西浦:伊藤さんすごすぎる!僕は、SEOを研究しすぎてSEO目線でしかnote見てなかったから、全然そういった視点の分析はできてなかったです!
─伊藤さんのTwitterの話もお聞きしたいのですが、発信する際に意識していることはありますか?
伊藤:僕の戦略はこんな感じです。
- バズったツイートをコピペして研究用のストックをつくる
- それらを分析してバズった型やパターンを覚える(そのままコピペして使うのはアウト)
- 型を使って自分の内容にあてはめて書く
- 発信して、いいねがつくか検証
- どれがリツイートされやすいかを分析
内容としては、本や文章術よりも、自己啓発の方が刺さることがわかったので「心がラクになる方法」とかをツイートしています。
西浦:本のタイトルの時と同じで、ヒットしているものを分析して、ヒットの理由を検証してから自分流にしてるんですね。
伊藤:そうですね、やっぱり型を覚えるのは大事です。
あと、これ言うとすごくいやらしいんですけど、リプ(リプライ)をくれた方には必ず「○○さんありがとうございます、嬉しかったです」ってお名前を入れて返すようにしています。
Twitterもfacebookと同じアルゴリズムで、コメントが入るとまた上に表示されるので、自分もリプを返すことでまたタイムライン上に上がってきて、更にいいねがつくというスパイラルに入ってく。ツイッター上とはいえ、リプをくれた方にはきちんとお礼をする意識でいたりします。
西浦:この戦略でどれくらいフォロワー増えたんですか?
伊藤:始めたころは50人くらいで、その後2500人くらいですね。
ブレイクスルーしたのは、リアルの知り合いが増えた時です。
Twitterも攻略したかったので、やまけん(山田研太)さんのオンラインサロンに入ったんです。
そこにいる1万人フォロワーがいる人たちが僕をフォローやいいねをしてくれて引き上げてくれたので、フォロワーが1000人になり、バズる型のトレースをして2500人になりました。
結局、オンラインで成功しようと思ったら、オフラインを制する必要はあると思います。
西浦:やまけんさんご自身も「オンラインサロンは運営するより入ったほうが得」って言われてますよね。今後の目標とかありますか?
伊藤:早く1万人いきたいですね~。自分が担当した本を多くの方々に届けたいので、とりあえずフォロワー数がほしい!切実に(笑)
編集者が求める著者SNSの指標
─著者に求めるSNSの指標があるとお聞きしましたが、ぜひ詳しく教えて頂けますか?
伊藤:そうですね、ざっくりで恐縮ですが
- Twitter 5万~10万フォロワー以上
- Youtube チャンネル登録数20万人以上
- ブログ 1日7000ユニークユーザー
という感じでしょうか。
Twitterはエンゲージが高ければ4万くらいでもOKということもあります。
5万フォロワーいても、いいねが5とかしかついてない人もたまにいるので、どんな人がリプやリツイートしているか中身まで見ています。
Youtubeは30万人なら確実に企画を通せます。
ブログが1日7000ユニークユーザー。
経験上、ブログ週一更新の著者が、毎日更新するようになると、読者はだいたい1.5倍になります。
なので、出版のテーマを決めて、それについてブログ記事を投稿し始めたりすると、出版までの半年~1年で1日7000UU(ユニークユーザー)から、1日1万UUくらいまでは増やせます。
西浦:もうメルマガは古いですか?
伊藤:メルマガはアクティブか非アクティブかの人数がわからないし、客単価もわからない。
メルマガ何人登録してますって言って全然売れていない人も結構いました。LINE@も同じで指標にはしていないですね。
西浦:Instagramはどうでしょう?
伊藤:Instagramはコンバージョンがあまり良くないので僕は指標からはずしてます。
でも、「文字ものインスタ」はコンバージョン上がることがわかっています。
『神メンタル』の星渉さんが「文字もの」をさらに進化させて自己啓発の言葉と写真を交互に投稿していて、これがすごいんですよね。
基本的に、フォロワーの属性やクラスタをこちらでコントロールするっていうのが大事だと思います。
旅好きの人をどんなにインスタで集めても本の購入には至らないので、予め自己啓発が好きな人+旅が好きっていう人がフォロワーになるように投稿を作っておく。
そうすれば本は売れます。誰に向けて発信し、どんな読者を増やしたいか、どんな人に応援してもらいたいかを数より質で考える時代になってきていると思います。
西浦:本当に伊藤さんはマーケター目線ですね!ふつう、コンバージョンって言葉は編集者から出てこないですもん。
伊藤:僕はもう当たり前だと思ってやっているんですが、小玉さんと与沢さんのおかげですよね。
とにかくCV、CV!「リスト持ってます」って言われたら「CVいくつですか?客単価いくつですか?」って聞いちゃいます(笑)
これからの編集者の在り方「箕輪さんを否定する編集者に未来はない」
—編集者として幻冬舎箕輪厚介さんについてどう思っていらっしゃるか、これからの編集者の在り方についてお考えをお聞かせいただけますか?
伊藤:箕輪さんを否定する編集者に未来はないですよ。
西浦:箕輪さんが世に出始めた時、業界内ではけっこう反発もありましたよね。
伊藤:でも、僕はそういった意見が出ている時点で箕輪さんの勝ちだなと思ってました。そういった現象は嫉妬でしかないから。
僕は、「オセロ理論」と呼んでるんですが、好きの反対は「興味がない」であって、嫌いだと言いながら「めっちゃウォッチしてんじゃん!」っていう人がたくさんいますよね。
ウォッチされていれば何かがきっかけで一気に白に代わって好きに変わるタイミングが来ます。
アンチの人は既存のファンよりももっとコアなファンに変わるんです。箕輪さんは叩かれてニヤニヤしてたと思いますよ(笑)
西浦:朝の情報番組「スッキリ」に出始めた頃、周りもびっくりするくらいインパクトある格好でしたよね。
僕はそれを見た時、失礼ですが「箕輪さんはイロモノ路線でいくのか?飽きられてしまうのでは?」って思ってたんです。
でも今は、逆にコメンテーターの中でもまともな意見を言う人に分類されている気がします。
伊藤:本質的にはすごく真面目で、誠実な人だけどブランディングとしていろいろやってるなって思います。
西浦:編集者としてはどう思いますか?
伊藤:箕輪さんのインタビューで「編集者自身に5000部売る力があれば、何の企画でも通せる」という一節を読んで、さすがだなと思いました。
ビジネス書は一緒に作って、販促も一緒にする。編集者が、より著者側に立つ機会が多いですよね。
みんな気づいてはいたけど誰もやってなかった。それを堂々とやってのける箕輪さんは編集者としてもすごいと思います。
西浦:箕輪さんの場合、本がコミュニティやイベントへの参加チケットになっている面があって、編集者の役割も「コミュニティ」や「イベント」といった場所を提供できるかどうかにシフトしているのかもしれませんね。
伊藤:こんなこと編集者が言っちゃいけないかもしれないですけど、最近の潮流として、企画で本を買うのではなく「誰が書いて、誰が推薦して、誰がいいねしてるか」で読者の方が本を購入されている傾向が強いなと思っています。
だからこそ、多少なりともそこに合わせていかないと、本はますます売れなくなるなと思ってます。
箕輪さんは編集のクレジットは必ず載せるそうです。そうすることで「箕輪が編集した本だから買う」っていうことに編集者も挑戦できるんじゃないかって何かのインタビューで言っていました。
まさしくそうだなと思います。
西浦:どうしてそういう潮流になってきてるんでしょうね?
伊藤:出版業界の売上は右肩下がりなのに、年間の出版点数は右肩上がりといういびつな構造体系だからだと思います。
売上を少しでも担保するために、点数で勝負するという構図ですよね。大量の本が出回るからから読者の方も何を買っていいのかわからない。だから、誰かが推薦している本、ランキング上位になっている本から手にとられていく。
書店員さんなんて、毎日200冊近くの本が送られてきて「置くとこないよっ!」って思っていますよ。
新刊売上を上げるために出版点数を増やす。読者のことを考えずに出版した本の数で競っていたら、そんなビジネスモデルはどこかで破綻をきたすのではないでしょうか。
もしかしたら近い将来、A出版社は年間〇〇冊でお願いします!みたいになるかもしれませんね。
伊藤さんにとって編集者とは?
—最後にお聞きしますが、伊藤さんにとってズバリ編集者とは?を教えてください。
伊藤:「世の中の役に立つ人を見つけて世に出すこと」ですかね。普通では生きていけない、社会にパラダイムシフトを起こしてくれるような人を見つけること。
西浦:世に出すというのは、本を出版するまでってことではなくて?
伊藤:その人のことを知ってもらうところまでですよね。
今までは知ってもらえずに終わっていた「もの・こと・人」を編集者自身が影響力を持って、自分の力で伝えるところまで責任を持ってやる。
そのためには、やっぱりフォロワーがほしいんです!!(笑)
安西先生・・・!!フォロワーが欲しいです・・・(笑)
西浦:出た!出版業界の三井寿(笑)
伊藤:「編集者とは三井寿である」ダメになってからが勝負!(笑)
西浦:ちなみに、伊藤さんはベストセラーって再現できると思いますか?
伊藤:ベストセラーの再現性を保つなら、著者本人が書くしかないと思っています。
編集者の仕事には限界がある。本人が売るっていう気にならないと本は売れないんです。
西浦:そこは僕も同感です。
伊藤:ベストセラーの条件は優先順位なんですよ。
著者の人生においてビジネスよりも、出版に優先順位が置かれたときにベストセラーが出ます。
自分で書くと、本が子どものように感じられる。
それをないがしろにはしない。だから、ビジネスや人付き合いや金儲けよりも、この本を知ってもらいたい!って人生の優先順位が変わると勝手に本は売れていきます。
西浦:なるほど~!編集者は著者をたきつける火種になるということですね。
伊藤:そうかもしれないですね。
著名人でもマインドセットが整わないと絶対ベストセラーは出ないんです。
本人に売る気がなければ一冊も売れない。
例えば、いま本が売れに売れまくっているローランドさんは「自分は100万部やる人間だ」っていう覚悟と圧倒的な熱量で本の優先度を高くされているから、売れるわけですよね。
何かしらの熱量や覚悟が著者側にないと皆が知っている著名人だとしても結果的にきびしいものになることはあります。
反対に無名新人の方でも覚悟と熱量があればものすごい結果になることだってある。それがこの業界の面白さでもある。
西浦:誰と仕事をしたかよりも、その人の力をどれだけ引き出したかってことですね。
伊藤:そうですね。著者といかに仲間になるか。
だから処女作を担当させてもらうというのは、仲間になる上で非常に重要で有難いことだと思って僕はやらせてもらっています。
著者の才能を引き出し、戦略的にベストセラーを作り出している伊藤さん。
出版業界の未来も見据え、これからの編集者像を体現してくださっているのではないかと感じました。
伊藤さんが編集を担当された『ぼくは会社員という生き方に絶望はしていない。ただ、今の職場にずっと……と考えると胃に穴があきそうになる。』の著者フミコフミオさんとのインタビューもぜひ読んでください!
最後まで読んで頂きありがとうございました。