祖父を思って作り36万部!編集者三宅隆史の「読者が手に取りたくなる本の作り方」

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こんにちは、出版プロデューサーの白木賀南子です。

今回は飛鳥新社の編集者三宅隆史さんのインタビューをお送りします。

ある日「三宅さんっていうすごい編集者さんがいるからぜひ取材したい!」
と興奮気味の西浦さん(笑)

三宅さんは、実家での家事手伝いから編集プロダクションを経て、
社会人9年目にして書籍編集者となった業界では珍しいキャリアの持ち主。

しかし、版元での仕事は初めてだったにも関わらず入社して3年を経たずしてベストセラーを連発!

  • 20万部を突破した『長友佑都のヨガ友』
  • 36万部を突破した『肺炎がいやなら、のどを鍛えなさい』

など短期期間で大ヒット作を生み出す、再現性あるノウハウにきっと秘密が…。

 

入念にベストセラー研究や市場分析をされている三宅さんに

「読者が手に取りたくなる本作り」のエッセンスをたっぷりと伺ってきました!

お相手は増刷率90%の出版プロデューサー西浦と白木でお届けします。

どうぞお楽しみください。

1年2か月で363冊のベストセラーを完読

─三宅さん、本日は貴重なお時間ありがとうございます、よろしくお願いします。

三宅 出版TIMESさんのベストセラーインタビュー読んでます。そんなに話しちゃっていいのかな?というくらい編集者の皆さんがノウハウをお話しされてますよね!
僕がお役にたてるかわかりませんが、よろしくお願いいたします。

西浦 ありがとうございます!出版TIMESの記事もチェック頂いていて光栄です…!

─三宅さんは、研究熱心で1年2か月でベストセラーを363冊も完読され、
途中まで読まれた本も400冊と伺いました。どうしてそこまで読めたのでしょうか?

三宅 社会人9年目で飛鳥新社に入社して書籍編集者になったのですが「3年以内に成果を出せ!」って言われたんです。

逆算したら仕込みも入れると企画に半年はかかるから、2年でなんとかしないとクビになる!と本能的に動いた感じでした。

知識も経験もないから、情報を浴びるだけ浴びようと思ったんです。

西浦 御社の有名な「入社3年の掟」ってやつですね。実際にベストセラーを読み終えてどうでしたか?

三宅 過去のベストセラーの地図を描くことができました。

「ここには大きな池(市場)があって毎年読者がいる」「このジャンルは数を狙ってしまうと企画が成立しない」とか。

出版社に入社したら業務をしながら先輩から学んでいくような知識を短期間で学べましたね。

西浦 出版業界だけでなく、色んな業界のデータを調べたりもされていますよね?

三宅 そうですね。IT業界や飲食業界などの規模感を数字で比べて、「ラーメン業界の市場規模が意外と大きいんだな」とか、シェアも数字で把握しておき、どこの市場で勝負するかを考えて編集するようにしています。

西浦 (手帳を見せてもらいながら)すごい情報量…全部手書きで、すごい。その手帳ぜひ写真撮らせてください!

「騙されたい」って思わせられるか

─毎週初めに自腹で本を買い「なぜ私はこの本を買うのか」を言語化していたと伺ったのですが、何か売れるパターンは見えてきましたか?

三宅 パターンといっても、実は1個しか出ませんでした(笑)結果は
「この本に騙されてもいいかなという期待感がある時に人は本を買う」ということですね。

西浦 えー!?本に対して「騙されてもいい」って、どういう時に思えるんだろう(笑)

三宅 例えば、自己啓発本なら

「1000円で人生が変わるなんてすごい!」

料理本なら

「1000円で料理がうまくなれそう!」

という感じです。なれないってわかってるけど(笑)

パッケージに惹かれて、自分の半歩先のポジティブな未来が見えると「騙されてもいいかな」って期待感を読者に持たせられる。そうすると、もともとあるマーケット以外にも広がって10万部くらい売れる本になっていく気がします。

西浦 本来は買わない人も手に取ってくれるということですね。

三宅 ジャンルの市場はある程度上限が決まっているので、それを飛び越えるには
「騙されたい」って思わせられるかが重要なんです。

「あるあるエピソード」は読者と著者の接着剤

西浦 「騙されたい」って思ってもらうには、「期待感」が必要だと思うんですが、どういった部分に感じるんでしょう?

三宅 そうですね。「半歩先のあるある」をとても大事にしています。

西浦 「半歩先のあるある」詳しく聞かせてください!

三宅 著者はたいていその道のエキスパートだから一歩先、二歩先の話をしてくれます。

でも、それらは直接聞いている時は気持ち良いのですが、文章として読むと先を行きすぎて現実感のない話になってしまうことがよくあります。だから、「半歩先」くらいをイメージして本を作っています。

また、過去のアイディアマンが既に情報は出してくれているので、それらの方法やツールを現代風にアレンジして表現することで、「半歩先」になると思っています。

例えば、在宅医療などは10年前と今では状況が全然違う。今は国も推しているので、10年前に言われた言葉が今だからこそ新鮮に捉えられたりします。

西浦 「ありきたり」(つまらない)と「あるある」(面白い)はどう違うのでしょうか?

三宅 面白いと感じるのは著者が読者よりも「下から目線」になるエピソードですね。「あるある」は読者の共感が得られ、読者にとっては「上から目線」になれるので安心して読んでもらえます。

西浦 著者の失敗談などですね。「あるあるエピソード」と読者が知らない情報の割合はどれくらいが良いと思いますか?

三宅 僕は、7:3であるあるエピソードを多めに入れるのが良いと思っています。

「あるあるエピソード」は著者と読者の接着剤。新しい情報ばかりだと読者は「自分の本じゃないかも」と感じて心が離れてしまうからエピソードでつなぎとめるイメージです。

そのほうが気持ちよく読者は買ってくれるし、最後まで読んでもらって評判が良ければ10万部いきます。

西浦 「あるあるエピソードは接着剤」っていいですね~。構成上はどのように配置していますか?前半に新しい情報を固めちゃうとか?

三宅 7:3をミックスして、各章に入れて、最後まで読んでもらうための感情の起伏をエピソードでつけますね。ただ、店頭で見てもらうのは一瞬なので本のジャンルによって変えたりします。

西浦 なるほど、ジャンルごとに微調整すべきと。良い接着剤となる「あるあるエピソード」とはどんな物でしょうか?

三宅 「私もそうでした」というのがキラーフレーズですね。著者自身や著者の接したお客様が同じように悩んでいたエピソードを入れます。

西浦 ちなみにどうしても著者の「あるあるエピソード」が少ない場合はどうしますか?

三宅 ビジネスも実用もエピソード命なので具体的なエピソードをいっぱい出してもらいます。著者が好きな名言や読んだ本を聞いてエピソードが弱い部分を補強することもあります。

西浦 以前『スタンフォードの自分を変える教室』構成を分析したことがあるんですが、すべてエピソードを中心に問題提起し、話を展開してました。本当にエピソード命ですね。

三宅 編集者黒川精一さんの『困ったら「分け方」を変えてみる』を読んだ時は、60ページに30個以上のエピソードがあって驚きました!

エピソードがしっかりして面白ければ、その本で伝えたい考え方もきちんと読者に伝わるんですよね。

売れる企画は他人の口から洩れ出している

─企画はどうやって立てられますか?自分の困っている事から連想していくとか?

三宅 自分の困り事よりも、人が困ってることの方が普遍性が高い気がします。

1日の中で自分が困る時間って山ほどあり、その中から1つを選ぼうとするからしくじる。

でも、人が口に出すのは、無数の困り事の中から口に出すほど困っていることだから、普遍的な困り事になるわけです。

西浦 本当の困りごとは思いつくのではなく、漏れちゃうのか。じゃあ相手に「何に困ってますか?」って聞いたらダメですね?(笑)

三宅 相手が考えちゃうとダメですね(笑)ちなみに、「人の口から洩れた困り事に、自分も共感した時」はとてもいい企画になります。

家族のために作るとプレゼント用に購入してくれる

─36万部を突破した『肺炎がいやなら、のどを鍛えなさい』はどうやってつくられたのでしょうか

三宅 祖父が100歳を目前に肺炎になってしまったので、肺炎を治す本を探そうと思って本屋に行きました。

でも求めているような本が健康書の棚にはなくて。

医学書のコーナーに行ったら、西山先生の嚥下障害の本があり「これだ」と思いました。

ただ、医学書だからやっぱり祖父には難しいだろうなと・・・

西浦 あ、まさに「周りが困っている企画」ということですね!じゃあお爺さまのために作った企画がベストセラーになったということですか。

三宅 実はそうです。やっぱり100歳まで元気でいて欲しくて。残念ながら配本から一週間後に祖父は他界してしまいましたが、見本を病室で見せられたのは幸運でした。

タイトルの「肺炎がいやなら」は、「長生きしたければ」や「予防したければ」も候補に挙がっていたのですが

「おじいちゃんが書店で見逃したらいやだから」という理由で「肺炎がいやなら」にしたんです。

西浦 それは素晴らしいエピソードですね、なんとなく「長生き」「健康」って入れたほうが読者が広がる気がして、誘惑に負けがちですが(笑)

三宅 おっしゃる通りの理由で、カバーは最後まで変えるか迷いましたね。

読者の求める半歩先を出したいのに「肺炎がいやならのどを鍛えろ」って「肺炎」と「のどを鍛える」と二重で新しくて、1歩半になっていないかな?って。

でも、祖父が書店に行ったときに見逃さないようにと思って決断しました。

西浦 結果的に「肺炎がいやなら」が読者に刺さった理由は何だと思いますか?

三宅 実際わかりません、みんな肺炎が嫌だと思ってたからかな(笑)

70代の編集者が少ないから、今まで企画としてなかっただけで、肺炎は半歩先ではなかったのかもしれません。

西浦 一般的なニーズだけだと5万部、そこに自分や家族も興味があると10万部を超える作品になる気がします。本に世の中と自分の両方が乗っていないといけない。

三宅 家族のために作るほうがいい作品ができるもう1つの理由は、母親や祖父のためと思って作ると本当にオススメできる作品が作れることです

本作りに注ぐ力がいつもの100%じゃなく、120%の力をつぎ込める。

西浦 確かに、タイトルだけじゃなくて書き方も含めて、おじいちゃんがわかるかどうかを考えて作りますもんね。

三宅 祖父の時代は、学校に通っていない人もいたので専門用語は絶対入れたらダメだと思って、著者の先生と何度も喧嘩しました。

マーケットのことしか考えていなかったら、そこまではできなかったと思います。

家族のために作ろう!と思うと著者ともバチバチ喧嘩しながら良いものが作れるんです

西浦 それはすごいですね。家族のためだったら、譲れない部分をきちんと著者に伝えられるわけですね。

三宅 親にプレゼントしたって読者ハガキも多く頂いたのですが、この作り方をしてから他の本でもそういう感想が増えました。

西浦 読者の顔を見て作ってるからそうなるのでしょうね。人にプレゼントしたくなる本って素敵だな。

三宅さんが今後一緒にお仕事をしたい著者とは?

─最後に三宅さんが今後一緒にお仕事をしたい著者さんはどんな方ですか?

三宅 「電波に乗った時に話を聞きたい人」ですかね。

電波に乗ると変に飾っちゃう人がもいますが、自分がやってることを自分でちゃんと愛してる人は強いです。

楽しそうに仕事をされていると、もう少し話しを聞きたいなって思います。

西浦 それって、ベストセラーになる人の条件にも通じると思いますか?

三宅 そうですね。テレビに出た時にちゃんと視聴率上がる、好感度が高そうな善人ではなくてもいいんですが、誠実な人という感じでしょうか。

西浦 三宅さんの本作りって「読者が受け取れるかどうか」というところを大事にされているなと思いました。

テレビの話も本人が広く認知された時に、読者が受け取りやすい人かどうかってことなんですかね?

三宅 そうかもしれません。著者さんと会ったときに安心感、信頼感、期待感みたいなものを大事にしていますね。

この人が言っていることなら試してみようかなっていう感覚ですかね。著者の人となりを大切に本を作るタイプです。

西浦 あ、冒頭の「騙されたい」って「騙されてもいい」ってことなのかも(笑)

 

著者の中には、既存のやり方をガンガン否定するスタイルの方も多いですが、そういった感じじゃない方が良さそうですね。

三宅 既存のやり方に対する否定は、本1冊を通して1-2か所で伝わります。

読者はあくまでメリットやご利益が欲しいし、本に楽しさを求めているので、否定形はあまり入れない方が良いと思っています。

西浦 読者が本からのメリットを受け取りやすいようにするのが大事ということですよね。

三宅 強い言葉の方が人に刺さるし、売れる確率は高いんですけど、
僕がそういうタイプじゃないし、そういう本は他の方が作って売れているので。

でもどんな著者かって表現が抽象的ですよね、ここは僕の宿題にさせてください(笑)


家族のため、読者の顔を思い浮かべつつ、ベストセラーや市場分析をしっかりとされた本作りは、まさに三宅さんの真面目で優しいお人柄からくる手法なのだと感じる素敵なインタビューとなりました。

最後まで読んで頂きありがとうございました。

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