『問題地図』シリーズ編集担当傳智之さんに聞く、仕事にも学生生活にも大切な「不確実性」

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「傳さん×西浦さん」対談シリーズ第三弾!

前回は、学生に向けたSNSの扱い方、本の作り方、そして『問題地図』シリーズについてたくさんお話を伺いました。

今回は出版業界における『働き方改革』について、さらには傳さんの学生時代の話と、学生に伝えたいことまで欲張って聴きました!

傳さんが仕事にも学生生活にも大切にされている「不確実性」とは?

最終回の今回も引き続き、取材・記事作成はインタビュアー・ライターを善波、編集・写真を竹田でお届けします。



大切なのは不確実性

西浦孝次さん(以下西浦)

「では気を取り直して…(笑)

『働き方改革』ってあるじゃないですか、あれは出版業界ではどうなんですか?」

傳智之さん(以下傳)
人によりけりなんじゃないですか?あとは会社によりけり。私は5時半には帰りますけど。」

西浦「早い(笑)」

傳「8時半出社ですけどね(笑)

子供の帰りのお迎え担当が私なので。」

西浦「お迎え担当なんですね!僕は送り担当です。」

傳「昔は私もそうでした。」

西浦「なんで変えたんですか?」

傳「妻と職場が同じだったんですけど、今は別の仕事をしていて。その関係で逆にしようかと。」

西浦「奥さんは今、結構残業している感じですか?」

傳「残業というか、昼から出勤の時が多くて。それで夜まで仕事という。」

西浦「なるほど。お互い保育園の送り迎え世代でしたね(笑)」

傳「だからリモートワークをどこまで取り入れるかというね。」

西浦「その話したかったんです。編集者ほどリモートワークに向いてる職もないですよね。」

傳「そうですね。」

西浦「正直、全部家でできますもんね。会議とかだけ来ればいいぐらいで、会社に来るのは月に一、二回でもいいと思う。

仕事やりやすくなると思うんだよな。もっと積極的にリモートワーク導入すればいいのに、ってすごく思います。」

傳「それなりの理由はいりますけどね。『誰もが』ってわけじゃなく基準は必要で。」

西浦「やっぱり基準は高くなりますかね?『子供が小さいから』とかそういうのでは厳しい?」

傳「ある程度敷居を下げるべきだと思いますが、まったく会社にこなくていいとなると厳しいかもしれないです。怪我したり、介護をしなくてはいけなかったりすれば仕方ないと思いますが。

あと、人によっては会社にいないと仕事ができないという人もいるので、それは人によってですね。

一律で全部考えようとするからうまくいかなくて、歩み寄れるところを考えるのが大事じゃない?という考え方が、問題地図シリーズにあると思います。

西浦「たしかに傳さんは、仕事に関しては合理的にとか効率的にとか考えるけど、SNSのやり方とかどうすればいいかっていうのはその人の好きにやればいいんじゃない?というところがあるじゃないですか。

その二つって一見矛盾しますよね。フォーマットって、本来の意味としては統一された仕様であって、例外を作らない方が合理的なわけじゃないですか。」

傳「あまりそう思わないですね。」

西浦「へえ!」

傳「それで売れればいいのかもしれないですけど、あくまで楽しいかどうかで。

そのフォーマットが使えるけど、それが最適なのかというところを考えると、よくないことが多いから。問題地図シリーズは、本文は同じですけどね。」

西浦「ということは、傳さんの中にある仕事の効率化、合理化っていうのは最適化がありきの?」

傳「そうですね。結果が出て、自分が楽しくて、誰にもデメリットがない、って感じでしたら。

西浦「そうか、楽しくてが大事なのか。成果を手に入れてその中でどう楽しむのか。」

傳「不確実性は大切だと思うんですよ。同じことをしていると不安になるっていうか。」

西浦「あぁ~。」

傳「やっぱりなにかしらの変化の種を入れておかないと。それが悪さをする場合もありますが。」

西浦「まさに『不確実』ですからね。」

傳「Twitterなどが楽しいのは、変な人のリツイートが回ってくるところですよね。」

西浦「(笑)」

傳「あ、なるほどな、と思うこともあれば、嫌なこともあったりするんですけど、面白いことの方が多かったりするので。それでTwitterは好きなんですよ。」

西浦「たしかに、Twitterでは予想外なことを目にしたりしますもんね。」

傳「だからこの著者の吉田さんを見つけたのもTwitterで、たまたま誰かのリツイートで回ってきたんですよね。

あぁなんか面白いな、と思って(『たった1日で即戦力になるExcelの教科書』を)お願いしてみようと。」

西浦「そんな出会いだったんですね!」

傳「Twitterは不確実で、偶然の出会いがあるから予期しない、いいことが起こるということを見てきてるので。

でもある程度計画はしないと全部ブレブレになるんですけど(笑)そこに遊びの余裕を残しておいてなにか仕込みたいなというのはありますね。」

西浦「そのしなやかな部分が傳さんの企画とかSNSのやり方に出てるんでしょうね。

ポエムという形でやってもいいんだよ、とか。それを楽しんでやってなかったら続けられないだろうし、ポエムが受けるらしいぞといってマネる人も多分いない。」

傳「あれ、あんまり真似してもらえないんですよね。」

西浦「真似しないっていうかできませんよ(笑)」

死なない程度のリスク

―――学生時代どんなことをしていたのかとか、やっておいた方がいいこと、いい経験になっていることとかあれば教えてください。

傳「もうね、それに関しては語ることがないんですよね(笑)」

西浦「ええ?!(笑)

たしかに学生時代の傳さんってちょっと想像つかないけど…部活とかサークルとかやってました?」

傳「やってないですね。」

西浦「やってなかったんですか。バイトばっかり?」

傳「バイトもしてないですね。」

西浦「え、なにしてたんですか?(笑)」

傳「バイトは最後の1年半ぐらいは学校の図書館でしてました。」

西浦「図書館司書ですか?」

傳「司書じゃなくて、コンピュータを使うブースがあって、そこで困っていたらサポートします、みたいな。」

西浦「へえ!」

傳「パソコン苦手だったんですけど。」

西浦「苦手だったんですか(笑)一番やっちゃいけない人じゃないですか(笑)」

傳「多少は分かりますよ(笑)大学入るために一浪しているんですけど、受験でなんかつまらないからって、受かった前後ぐらいで本を読み始めて。

『本っていいなぁ』と思って、『あぁ、じゃあ編集者いいな』と思ったぐらいから編集者になろうと決めて。」

西浦「へえ~!」

傳「だから後悔することの方が多いですかね。もう少し遊んどけばってより、勉強しとけばよかったというのはありますよね。

西浦「あ~聞いたかお前ら!勉強しとけぇ!(笑)」

竹・善「あ、ちょっと聞こえないです。」

傳「(笑)」

西浦「急に耳が遠くなる(笑)」

傳「だから自分がよく出版社に入れたなって思います。

今見たらなんてダメな学生だったんだろうって。遊んでいるわけでもないし(笑)」

西浦「その『本面白いな、編集者になりたいな』と思ってから、4年間特に何もしてないですか?」

傳「してない。これがもうダメ学生の典型ですよ(笑)」

西浦「就活はどうやって乗り切ったんですか?意外と倍率高くないですか?」

傳「うちは低かったんです。多分。」

西浦「なるほど?(笑)」

傳「あとはたまたま、大学の時に苦手だからこそ情報処理系のゼミに入っていて、そこで自社の本を読んでいたので。その本たちの影響で『なんかよさそうだなこの会社』という。

もともとは技術系に興味はなくて、いわゆる文芸とかそっちの方をやりたかったんですけど、それでも今は(技術書系の出版社に)入って良かったと思います。」

西浦「文芸版元は、受けて落ちたんですか?それとも受験せず?」

傳「受けて落ちました。」

西浦「受けて落ちて、で、そんな興味のなかった技術書系の出版社に入ってという。今はそっちで楽しいですか?」

傳「うん。よかったですね。」

西浦「それは、なんでよかったと思いますか?」

傳「文芸とかは『面白い』が基準じゃないですか。」

西浦「うんうん。」

傳「それってすごく曖昧ですし、ふわふわしていてわからないし。もともと今日ここまで話して分かった通り、適当な人間なんで(笑)」

西浦「やばい、そろそろ『そんな事ないですよ』っていう材料がない(笑)」

傳「ははは(笑)コンピュータとか実用書だと分かりやすさとか、実用性だったり、論理で突き詰められるところがあるじゃないですか。それで基本をしっかりできたっていうのはよかった。

うちは出している本のジャンルに結構多様性もありますし、いい結果に進めたなとは思います。今はこう巡り巡ってね、文芸というかポエムというか。」

西浦「うーん、巡り巡ってやっぱりポエムに行きつきました(笑)」

傳「ネタですよ?(笑)やっぱり基盤があるのはいいなって。」

西浦「仕事の基盤ですか?」

傳「『本として分かりやすい・見やすい』と、そういう基準から入った方がいいかなと。

そういうのがないうえで面白いかどうかの判断ができる才能がある人はいいと思うんですけど、私はなかったと思うので。

自分の『面白い』が誰かの『面白い』に繋がれば商売として成立する。そこはやっぱり難しいなって思いますね。

西浦「マンガとか小説って、限りなく作家さんの才能依存なところがあるじゃないですか。悪い意味じゃないですよ?」

傳「はい。」

西浦「作家の才能をいかに活かすかだと思うから、それって逆に言うと編集者が自分で生み出すっていうのとは若干ずれると思っていて

クリエイターというより、タレントさんのマネージャーさんみたいなところがあるので、面白いものを『作りたい人』は案外、コミックとか小説じゃない方が自分で出来て楽しいんじゃないんじゃないかと思ったりするんですよ。実用書とかの方が自分でタイトル決めたりもするじゃないですか。

傳「そのなかで心の機微とかあるんでしょうけどね。」

西浦「もちろん。」

傳「文芸よりもタイトルを編集者主導でつけることは多いかもしれませんね。その中でもう少しコンセプトを前に出したり、小説だと内容を表すというか、個性があるとかって。

逆に個性的なタイトルでなくても成立する小説ってあると思うんですけど、実用系でそれをやると『なにそれ?』となってしまいますし。

西浦「よく言うんですけど、タイトルが『戦略』みたいなタイトルを付けられる著者はものすごく限られるじゃないですか(笑)」

傳「普通の人が書いてもどういうことなんだろうってなりますよね(笑)本当はシンプルなタイトルの本の方が憧れはありますけど。」

西浦「ですね~(笑)」

 

傳「(学生に向けて)ひとつだけなにか言うとしたら、失敗はできるだけしといた方がいいですね。良い失敗が良いですけど(笑)

意図的に小さいリスクを負ってみたりするのもいいと思います。

いつもとは違うお店に行ってみたり、いつものお店で違うものを頼んでみたり、たいしたことないじゃないですか。

でも失敗に慣れておくと、リスクを受け入れやすくなるというか。リスクというのは不確実性なので、悪い方向に行くこともあればいい方向に行くこともあるので、そういうことに慣れておいた方が正解が無い世の中なのでいいと思います。」

西浦「失敗かどうかっていうのも人によって定義変わりますしね。入ったお店の料理がまずかったことが失敗かって聞かれると人によって変わる。」

傳「そのネタを活かすとか。」

西浦「そうそう。面白い話にできればいいし、失敗とかも含めてその人の個性みたいなものを形作ってるじゃないですか。

人間って、成功しているのか失敗しているのかわからないことも、案外多いじゃないですか。それとどう向き合うのかが大切だと思うので。」

傳「正解はないですもんね。」

西浦「ですね~。」

傳「なので、学生のうちに死なない程度にリスクを負ってみてください。

[完]

ブックカフェ:キイトス茶房

今回の取材に協力していただいたカフェは、神楽坂にある『キイトス茶房』さん。

店内は店主さんの趣味の音楽が流れ、様々なジャンルの本たちがたくさん並んでいます。

こちらは会員になると、店内にあるCD,DVD,書籍が1点のみ貸し出しも可能になっているそうです。

店内はとてもレトロな雰囲気で、ゆったりとした空間のため読書に最適!

↓ こんな感じに、前に本が置いてあるカウンターのような席も…

この日私はマンデリンコーヒーをいただきました。

アツアツのコーヒーはとてもおいしく、珈琲・紅茶・ハーブティーなど、ドリンクが種類豊富にそろっており、珈琲の種類もいくつか揃っているため、珈琲好きにもたまらないお店です。

神楽坂に降りた際、ぜひ立ち寄ってみてください。

HP → http://kiitosryo.blog46.fc2.com/

アクセス:神楽坂駅から徒歩約5分、牛込神楽坂駅から徒歩約3分

ここまでお付き合いいただき、本当にありがとうございました!

拙い部分も多くありましたが、傳さんからもご指導いただき、無事完成しました。

このシリーズの記事を通して傳さんの人柄や、今回の取材の様子を感じていただければ幸いです。

まだまだこれからも頑張ってまいりますので、次回の記事もぜひご覧ください。

ではまた、次の記事でお会いしましょう!

今後も私たち学生出版プロデューサーを、どうぞよろしくお願いいたします。

ライター・イラスト:善波
編集・写真:竹田

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神奈川県出身。相模女子大学3年 学芸学部メディア情報学科所属。

暇さえあれば洋画や海外ドラマをみてる海外モノ好き。本ももちろん、海外モノに惹かれがち。ファンタジーなど、現実味のない作品をこよなく愛します。

西浦さんとは大学で行われたセミナーでご縁があり、出版TIMESのインターン生として、現在、学生出版プロデューサーとして活動。


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