2016年の12月13日にはじめて開催したイベント「人生を豊かにする本5冊」から1年が経ち、ニシュランガイドも第5回を迎えました。
出版プロデューサー西浦がおすすめする 「人生を豊かにする本」=ニシウラの本ガイド⇒『ニシュランガイド』ということで、
完全にダジャレ某・レストランガイド本のタイトルを敬意をもってオマージュさせて頂き、3ヶ月に1度のペースで開催しております。
読書会の中でもプレゼンテーション系のイベントとして、グラフィックレコードを取り入れたり、毎回工夫を加えながらやってきましたが、今回は初のゲストスタイルでの開催となりました!(実はニシウラ以外の人による本ガイドをずっとやりたかった)
今回のテーマは「2017年のおすすめ本ベスト3!」(2016年12月1日~2017年11月30日刊の本が対象)ということで、そこにゲストのオススメ本紹介も加えてご紹介しました!
というわけで、ランキングのご紹介です!
目次
3位『いつか別れる。でもそれは今日ではない』F著 KADOKAWA (2017/4/21)刊
たまたま次の予定までの待ち合わせで本屋さんにいた時にタイトルに惹かれて手にとりました。
タイトルのネガティブな感じと、でも希望を感じさせる響きがうまいなぁと思って、最初の「憧れと好きの違いについて」を読んだのですが、冒頭のこの言葉にいきなり心つかまれました。
小学生の時、「先生のおすすめの本ってありますか」と彼女に訊ねると「あなたが私の好きな本を読んで、私の好きな言葉を覚えて、私が好きそうなことを話しても、あなたのことは好きなままだけど、大好きにはならないと思う」と、先生は笑った。
「だから、あなたは私の知らない本を読んでね」と。
こういうスタンスがとにかく好みです(笑)
ニシュランガイドの第1回で『ぼくは勉強ができない』を紹介したのですが、あの本に出合った高校生時代を思い出しました。
ずいぶん昔に別れた10代の自分と、久しぶりに再会したようなイメージです。
こういう厳しさのある愛情とか、孤独感のある美しさに惹かれるんですよね・・・
もう一つお気に入りのパート「色気と教養」からも、心つかまれた言葉をご紹介します。
その人が放つ色気の量と、その人が積み重ねた教養の量は、ぴたりと比例するのではないか
(本当に頭が良いと思う人は、)ただ、いつもの場所を一緒に散歩しているだけで、街が見違えて見えてくるような人だ。
そしてそれは、その人の教養のおかげだ。世界解釈のおかげだ。つまりその人が放つ、色気のおかげである。
「男の色気ってなんだ?」という話を飲みながらたまにするのですが、男同士だとさっぱりわからないし、女性に聞いてもだいたい「それはあんたのフェチでしょうよ!」って回答が返ってくるばかりで、今までは答えに至らなかったのです。
ようやく色気の答えに出合えた!
将来、娘に「何のために勉強しなきゃいけないの?」と聞かれたら「色気のある大人になるためだよ」と答えよう。
なんとも色気のある答えじゃないですか?
2位『夫のちんぽが入らない』こだま著 扶桑社 (2017/1/18)刊
こちらも著者のこだまさん初の著書。買ったのは3月ごろだったと思うのですが、すでにかなり話題になっていたことと、やはりタイトルのインパクトに惹かれて購入しました。
正直「チェックしておかないとなー」くらいの感覚で反射的に買っていたので、内容などは調べてもいませんでした。タイトルから勝手に軽い本だと思ってたので、お風呂の中で何回かに分けて読もうと思っていたのですが、2章から急に話の展開が変わり、ページを繰る手が止まらない。
「これはちゃんと読まなきゃ」と、あえて途中で止めて、翌日イッキ読みしました。
ご興味のある方はこれ以降の書評は読まずに、できれば僕と同じように「軽い」気持ちで読んで欲しいです。2章からの衝撃にもっていかれます。
僕もネタバレはしたくないので、ここではこれ以上書きませんが、最後に本の内容以外に「いいなぁ」と思ったエピソードをご紹介します。
本書のタイトルについてですが、「ちんぽ」と入ってる本はやはり手に取りにくい。書店さんとしても置きにくいと思います。しかし本書は「普通」という尺度に苦しんだ著者が発信する「普通じゃなくてもいいんじゃないか」というメッセージです。そんな「普通じゃなくてもいいんじゃない?」と世の中に問う本が「普通」の同調圧力に負けるのはおかしいと、タイトルについて編集者が社内の関係者たちとめちゃくちゃ戦ったのだそうです。
「このタイトルがいいんです。最高のちんぽにしましょう」と編集者に言われたとき、著者も「何があってもこの人に付いて行こうと決めた。」と書いてらっしゃいます。
著者と編集者の在り方はたくさんあるのですが、僕はこれが理想形の一つだと思っています。
特別枠『ブスの本懐』カレー沢 薫著 太田出版 (2016/11/17)刊
ここで一つ、特別枠の本をご紹介します。特別枠にした理由は2つです。まず1つ目は発売日が今回のニシュランガイドの設定と微妙にずれているから。
今回のランキングは2016年の12月~2017年11月刊の本で選んだのですが、本書は2016年11月刊で1ヶ月早かったんですね。この第二弾の『ブスのたしなみ』という本もあるのですが、こちらは2017年12月と1ヶ月遅いので、絶妙のズレ加減なのです。
そして2つ目の理由が重要なのですが、
この本、めちゃくちゃ面白いものの、読み終わった後に何にも残らないのです(笑)
著者自身も「奇遇だな、私も何を書いたか覚えていない」らしい。何と美しいおっしゃりようなのか。
・・・いちおう内容について触れると、本書のテーマはもちろんタイトルの通り「ブス」です。
「ブスに厳しいブス」であるカレー沢薫先生が、ブスについてあらゆる視点から鋭いコラムを書き続けていくという本。
「ブス」という兵器のごときデスワードを避けるのではなく、あえて必要以上に使って、最終的にブスがなんなのかさえわからなくしてしまおう、というのが狙いであり、結果的に「ブスとは何か」という答えが出ることはなく、さらに見失うという斬新なスタイル。読者も「ブス」とは何なのか?かえって分からなくなるでしょう。書いた本人がそうなったのだから間違いない、と(笑)
この本を紹介したときの(特に女性の)反応は様々で、爆笑する人もいれば、能面のような顔になる方もおり、かなり読者を選ぶ本だと思います。
悪口を言ってる「ブスヘイト本」、いやむしろ私のことを言われてる「私ヘイト本」と感じる人もいたりとか、かなり頻繁に登場する「元ネタが分かれば爆笑」という要素なども「解説されてもよくわからん」と感じる人がいて、反応が分かれる原因かもしれせん。個人的にはオタク過ぎないちょうど良い按配のパロディだと思うのですが。
ボク自身は副鼻腔炎の頭痛がひどくて何もする気になれない中、爆笑しながら読めたというすごいパワーを有する本であり、カレー沢先生の表現力に才能と憧れすら抱くので、文章を書く人にはぜひ一度読んでいただきたい本です。
本音を言うとこういう本をプロデュースして、ヒットさせてみたい。
「代表作は主にブスです」とかマジメな顔で言いたい、憧れます。
1位『君たちはどう生きるか 』吉野源三郎 著 マガジンハウス; 新装版 (2017/8/24)刊
今年の1位は文句なしに『君たちはどう生きるか』だと思いました。本書は新装版で、原本は1937年に刊行という戦前の本です。(80年前!)
池上彰さんが子供の頃に読んだということでも話題になった本ですね。漫画版と同時発売です。
本書は主人公であるコペル君(14歳)の学校での生活と、おじさんがコペル君のために書いてくれたノートでのやり取りという、ある種の対話形式で成り立っています。
「本当の思想とはなにか?」
「立派な人とはどういうものか?」
バカにされたクラスメイトを守るためにいじめっ子とケンカし、しかも先生に言い訳をしなかった「がっちん」や、いじめられた本人でありながら、いじめた相手をかばう「浦川君」の優しさと出会い、そして英雄的人物として「ナポレオン」の紹介から「立派な人になるための条件」についてコペル君に考えさせるよう物語は進みます。
これだけの「立派な人」の伏線を張っておいて、物語は佳境を迎えます。
主人公である「コペル君」は「立派な人」の条件を破るような、裏切り行為を友人たちに対して行ってしまうのです。
自分の行為を後悔し、ふさぎ込むコペル君に対し、おじさんはなんとアドバイスをしたか?
コペル君と呼ばずに「潤一君!」と本名で呼びかけ「そんな考え方をするのは、間違ってるぜ」とはっきり宣告したのはなぜなのか?
それはぜひ本書を読んでいただくとして、このシーンの後に登場するおじさんのノートから一部抜粋します。
王位を奪われた国王以外に、誰が、国王でないことを不幸に感じることがあろう。
これは人間の「後悔」こそが「偉大さ」の証だということなのです。自分の過ちを後悔するというのは、本来であれば自分は正しい道を選ぶ能力や、良心を持っていたはずなのに、そうできなかった。だから後悔するのだと。この精神を表しているのが「王位を奪われた国王以外に~」の一文です。
自分の過ちを認めることが一番つらい。しかし過ちをつらく感じるということの中にこそ、人間の立派さがあると言います。
本書では言葉の一つ一つに、強い力が宿っていると感じます。
はっきりと「そんな考え方は、間違っているぜ」と言い切れるのもそうです。今の時代の空気を考えると言いきらないように表現することが多いように思います。あ、僕のこれ(表現することが多いように思いますの部分)もそうだ。
強く言い切るのは、自分の中に明確で自信のある正義や価値観がなければできないことでしょう。見方を変えれば、自分の価値観の押し付けだからです。それでも、圧倒的に正しく力強く響くのは、やはりそこに真理があるからです。
それともう一つ、この本が戦前に書かれているということも大きいと思います。
戦前の人々は戦争や病など、今以上に「死」が近い環境にありました。そのせいか、戦前に書かれた本で今でも読み継がれている本は、くどくど婉曲な表現をしない、不要な忖度のない、清々しい覚悟の込められた言葉が多いと感じます。
ですので西浦としては意識して戦前の本を読むようにしています。自分の言葉の覚悟や重みを考えたいと最近思うので。
ちなみに本書の漫画版と小説版は微妙にラストが違います。僕としては小説版の方が好みでした。両方読んで、ぜひ見比べてみてください!
ゲストおすすめ『革命のファンファーレ 現代のお金と広告』西野 亮廣著 幻冬舎 (2017/10/4)刊
最後にゲストである弁護士の倉重公太郎さんがおすすめしてくれた『革命のファンファーレ』です。
倉重さんは、半年6千円ほどの会員にもなっているそうで、西野さんがどういった人か?本書のどういった部分が面白いかをご紹介いただきました。
僕もこの本は読んだのですが、二人とも面白いと感じたところが全然違って楽しかったです。
僕は主に「セカンドクリエイター」の考え方や、コミュニティビジネスの本として非常に勉強になるなぁと思いながら読んだのですが、ゲストの倉重さんは本書の一部を紹介しながらご自身が世の中をどう捉えているか話されていました。最後が西野さんじゃなくて、なぜか「リトル本田」の話で〆たのにビックリしましたけども(笑)
この「ゲストに本のプレゼンをしてもらう」スタイルも非常に面白いので、今後も続けたいと思います。
最後に懇親会の様子を
ニシュランガイドは懇親会参加率がすごく高いのが嬉しい!
来年もよろしくお願いします。