【印税とは】10万部で1400万円?印税の計算方法と契約【出版とお金の話】vol.2

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前回、出版にいくらかかるの?というテーマで「出版セミナー」と、「出版プロデュース」の費用面から解説しました。

今回は、本の印税の話です。

「いくら印税もらえるの?」など、印税について、全部書きました。

たとえば10万部売れたら1400万円強の印税が支払われます。でも、すべて印税契約の内容次第です。

 出版でちゃんと利益を出すには、何に注意すればよいのでしょうか?

目次

動画で「印税」について知る

本記事の要約を5分未満の動画にまとめています。

  • 10万部売れた場合の印税額
  • 印税の計算方法
  • 印税契約の注意点
  • 印税を増やすポイント

などを動画で知りたい方は下記をご覧ください。

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印税はいくらもらえるのか

もらえる人は結構な額をもらえます。でもほとんどの人はリアルな額になります。

「夢の印税生活」などと言いますが、そんな幻想は捨てて下さい。

たまに本を書いて、あとは晴耕雨読の日々を過ごせるなんていうのは完全なるファンタジーです。

よほどの天才作家さん以外、印税は「本業で頑張ったほうがよっぽどまし」「儲かりもしないし、大変だけど、読者のためにボランティアのつもりで書いてたら、思ったよりもらえた」くらいの金額です。

イメージしやすいよう、具体的に印税の計算方法を紹介します。

印税の計算式

  • 印税額=本体価格×部数×印税率×消費税

これが、印税の計算式です。

本体価格とは本の価格、部数は発行した本の冊数のことです。

※部数は、契約によって「発行部数」もしくは「実売部数」と2パターンあるのですが、まるっきり条件が違ってくるので、詳しくは後述します。

印税率とは、出版社と著者との間で取り決める条件です。一般的に5~10%で設定されます。

仮に1,300円の本が10万部売れて、印税率が10%。消費税が8%だったら

  • 1,300円×100,000部×10%×1.08=14,040,000

あなたに支払われる印税は1,400万円強になります。

 

この印税計算式の項目はすべて「かけ算」なので、本体価格、印税率、部数が各10%上昇すると1.1×1.1×1.1=1.331、33%も上昇するということです。(印税だけは最大10%まで)

部数にばかり気を取られがちですが、印税率や本体価格の影響も大きいので、諸条件もちゃんと検討しましょう。

印税の条件や違い

<本体価格>

本体価格は本ごとに設定されますが、一般的な書籍の場合1,200~1,400円くらいが多いです。

新書だと1,000円前後、文庫だと500円前後です。

ちょっと難しいハードカバーの本で1,800~2,300円くらいが多いでしょうか。

もちろん1万円以上するような専門書もあります。ピケティの『21世紀の資本』は5,940円でした。

1200円の本と比べると約5倍違います。

つまり5,940円の本が2万部売れると、1,200円の本で10万部売れたくらいの印税になります。

一時期ピケティ算と言って、ピケティだったらいくらという冗談が業界内で流行ってました(笑)

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ということは「本体価格は高いほうがいいのでは?」と思いがちですが、高すぎる本は読者も手に取りにくいというジレンマがあります。

それに文庫や新書は、一般書と比べて、価格が低く買いやすいというだけでなく、棚も違うし、購読層や売れるお店も変わってきます。

つまり高い安いだけでなく、本の内容や読者層などによって総合的に判断するものです。

価格が高くても売れるもの、安くしたほうが売れるものと、商品の特性ごとに最適な金額を設定しましょう。

※余談ですが、本体価格は再販制によって「定価」が守られています(本屋さんで値引きができない)。

もし再販制を撤廃するなどして、販売価格が自由に変更できるようになったら、印税が今までより下がる可能性もありえます。

<部数(発行部数か実売部数か)>

部数が増えると印税額も増えるため、増刷するたびに印税が支払われることになります。

だからみんな増刷を喜んでいるのですね。ちなみに増刷は「重版」と同義です。

以前放送された「重版出来」というドラマで、みんなが増刷を祝って手を打つシーンを観た人もいるでしょうが、実際にはあそこまで大げさにはやりません。

でも10万部突破したりすると大台に乗ったということで、お祝いしてもらえたりします。(金一封が出たり)

さて、この部数ですが契約条件に「発行部数」か「実売部数」かの違いがあります。

  • 「発行部数」条件 「製作した部数全部」が印税の支払い対象となります。
  • 「実売部数」条件 「実売=実際に売れた冊数」のみを印税の支払い対象とします。

この実売部数についても「出荷数」でカウントするところと「出荷数−返品数」でカウントするところなど、厳密には出版社ごとに違うので、「実売部数」と言われた場合は詳しく「何をもって実売とするか」確認しましょう。

ちなみに「実売部数」による印税契約を「実売印税」と呼び、通常の「発行部数」による契約とは区別しています。もちろんどちらが著者にとってうれしい条件かというと、「発行部数」による契約ですね。

<印税率>

本ごとに設定される条件で、売り上げの何%が著者に支払われるかという割合です。

実質的には「同じ著者で同じ出版社から本を出す場合は、同じ印税率」になることがほとんどなので、本の質や期待度よりも著者のブランド力や実績で測られると思って良いでしょう。

つまり新人は最も不利な条件となる傾向にあります。

なお、どんな大御所でも印税は最大で10%です。これは小説でも、コミックでも変わりません。

一度だけ12%というのを聞いたことがあるのですが、真偽は不明です。確かに超有名な著者でしたが、むしろ政治的な何かがごにょごにょ

印税は著者のブランド力に依存しますが、実際はそれ以上に、出版社の体制で決まることが多いです。

新人は一律5%とか、10万部出したことない著者は全員実売印税など、「出版社側の方針」で決まっているのだと思ってください。

ちなみに前の記事で、出版プロデューサーに支払う印税は3%が一般的ということを書きました。

もし、新人で印税が5%しかないと、著者は2%しかもらえないのか?という疑問が湧きますよね?確かに、もしそうなら厳しい話です。

現実的には出版プロデューサーが企画を持ち込ませていただいたケースだと、出版社との印税契約は8%以上になることが多いです。

出版社サイドもお気遣いいただいているのだと思います。

(注:確認済み、皆さん本当にありがとうございます。この場を借りて感謝申し上げます。)

ちなみに僕の場合、初刷8~9%、増刷後9%~10%というケースがほとんどでして、著者の印税率は初刷5%~6%、増刷時6%~7%となります。

プロデューサーが付いていない場合、新人だと初刷5%ということも多いです。

また「増刷時に上げてください」とも言いづらいでしょうから、その意味でも最初はプロデューサーについてもらったほうがお得だと思います。(そもそも増刷以降の条件を変更するという発想がないかも。)

もちろん新人でも、最初から9%、10%くれるところもあるかもしれません。

やはりキャッシュフローが安定している会社は条件の良いところが多いので、一人でデビュー作から高い印税率を狙うなら、いわゆる大手さんが良いと思います。

ただし大手=売れるという図式が必ずしも成り立たないことは覚えておいてください。

大手は出版点数も多く、広告予算を勝ち取るのにも激しい競争があるからです。

いくら印税率が高くても、増刷できなければ印税は増えません。

出版の費用対効果(短期視点)

vol.1の記事で出版のプロデュース料は300万円くらいが一番多いと書きました。僕らは250万円いただいています。

僕らが250万円に設定しているのは、自費出版(200万円くらい)や企業出版(800万円くらい)とのバランスもありますが、ちゃんと経済合理的な理由があって、著者の印税をベースに算出しているのです。

僕らのプロデュース実績は平均49,000部です。
これを仮に1,300円の本、著者の印税率7%(10%の内、3%がプロデューサー)で印税額を計算すると

  • 1,300円×49,000部×7%×1.08=4,815,720円となります。

1,200円で印税率6%だったとしても

  • 1,200円×49,000部×6%×1.08=3,810,240円です。

つまり250万円のプロデュース料に対して平均して、380万円~480万円の印税を得ることができているので、その他に出版セミナー代や販促費をお支払いいただいても、投資としてちゃんと回収できる金額に設計されているのです。

僕は出版プロデューサーは、「公益視点と利益視点」の2つを持つべきだと考えています。

  1. 公益視点…世の中の役に立つ本をつくり、一人でも多くの読者の人生に役立たせる
  2. 利益視点…クライアントと出版社、取次、書店、全方位に経済的報酬をもたらす

このようにプロデュース料というのは、経済合理性からも判断する必要があると思います。

その際に最も参考になるのは、前回の記事で紹介した5つの指標のうち、特に重要な「平均部数」です。

再現性に関する指標ですからね。

出版プロデューサーに依頼するときは「平均部数」を確認されるとよいでしょう。

あなたも著者として出版に取り組まれるときは「公益」と「利益」の両方の視点で考えてくださいね!

どちらかだけだと、小さい著者になってしまいますよ!

つづき

印税を増やすには

さて、ここまで印税のシステムや条件に関して注意すべきことを書いてきました。

特に印税率や本体価格といった条件は「かけ算」なので1%の違いが大きいですね。

しかし本体価格や印税率がいくら良くても、増刷されなければ印税はそれ以上増えません。

増刷される、つまり「売れる」ことが一番大事です。

正しく印税について理解できたら、次は「売れる」本の書き方について知ってください。

下記の出版セミナーで「売れる本」について公開しております。

参考リンク
出版セミナー(オンライン)

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