初刷が少ない本の売り方【最初はだいたい5,000部から】

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こんにちは、初刷の平均が7,930部の出版プロデューサー西浦です。「だからなんなのか」と言われても僕にもわかりません。ごめんなさい。

ところで、新刊が発売されたばかりの著者さんとお話しすると、会話の流れで「初刷どれくらいですか?」って聞くことが多いです。ところが「4000部ですわ、渋いっすわ」と不満そうな人もいれば「10,000部なんですよ・・・」と多いのに不安そうにしている人もいます。そういえば昔「初刷20,000部からならやりますよ」という条件を出している著者もいましたね。その人はもうお名前を聞かなくなってしまいました。。。(察してください)

この初刷部数というのは多い方が良いのでしょうか、それとも少ない方が良いのでしょうか?人によってリアクションが変わるし、条件を設けて反感を買ってしまう方もいるので慎重に扱いたい項目です。しかも初刷が多い時と少ない時で売り方が違ってきたりもします。

いったい著者としては、初刷についてどんなスタンスでいれば正解なのでしょうか?また販売面では何に気を付ければよいのでしょう?

かつて出版社の販売部で数字と毎日にらめっこしていた人間として、数字の捉え方とマーケティング面で注意すべき点を、あんまり細かいことは言わずにざっくりとお伝えしたいと思います。


目次

「初刷が少ない本の売り方」を動画で観る

この記事の内容を動画にまとめています。

「初刷が少ない本の売り方」について動画で確認したい方はぜひご利用ください。

初刷とは

最初に製作(印刷)する本の冊数を初刷部数と言い、初刷と略します。「しょずり」と読みます。これが多い方が良いのか少ない方が良いのか、初刷の大小で何が変わるの?というのが本記事の内容です。

ちなみに印税条件として「初刷8%、増刷時10%」と、増刷から印税率の変わる契約も結構多いです。この場合、初刷はなるべく少なく、増刷から多い方が印税は多めにもらえてお得です。

デビュー作の初刷は5000~7000部でOK

ビジネス、美容、健康書といった一般書であれば、新人さんの初刷は5,000からスタートすることが多いです。

7,000部も刷れば期待されていると思っていいでしょう。

しかし、単純に初刷が多ければいいかと言うと、刷りすぎは増刷が遅くなるだけという見方もできるので、注意が必要です。

仮に

  • 「初刷10,000部!2ヵ月後に増刷3000部!」と
  • 「初刷5000部。好評につき発売前に2000部の増刷決定!1カ月後に3000部増刷、さらに1カ月後にまた3000部の増刷!!」

というような場合、両者とも発売から2ヶ月で13,000部になったというのは同じでも、

前者は増刷までに2ヶ月もかかってる、それも初刷1万に対し3000部という様子見感のある数字=「そこそこ手堅い」もしくは「そろそろ仕上げにかかっているのだろう」という印象を受けます。(仕上げるというのは増刷をバンバンかけて攻めていくのではなく、もうこれ以上の大幅な売り伸ばしは難しいから、返品を少なく、なるべく不売率を下げて利益を確保しようとする、ディフェンシブな判断)

逆に後者の本は、発売前に増刷=FAX注文書などでの書店さんや取次の反応が良かったか、テスト販売(先行販売)の売れ行きが良かったのだろうと期待感があります。そのうえ、1ヶ月ごとに3000部ずつ増刷が決まって「そろそろ5000部の増刷が来るだろう」といった、いま売れてる感がある為、前者と後者が同時に入荷すれば、後者を積む書店さんの方が多いです。

少ないと平積みされない、多いと増刷がかかりにくい

じゃあ、初刷って「少なければ少ないほど増刷かかりやすくていいのか?」というと、もちろんそんなことはありません。

出版の流通は「配本」というシステムで、取次さんが配本数を決めて全国の書店さんへ本を送り届けます。(すべての本屋さんが、自分の意志で注文してるわけではない)

配本される本の合計数が多ければ多いほど、送られる書店の数も、各書店に送られる冊数も増えます。仮に2,000店の本屋さんに4,000冊配本しようと思うと、1店舗平均2冊しか届きませんね。2冊なんて少なすぎて平積みできませんから、全部棚刺しになってしまいます。これでは売れるものも売れない。

平積みには最低5冊は欲しいですから、4000冊の配本だとすると800店にしか本を送れなくなってしまいます。(全国には12,000以上の本屋さんがあるのに)

実際に配本表(取次さんがどのお店に何冊送ったかという表)を見ると配本数15冊や20冊という店もありつつ、ほとんどの本屋さんでは1~3冊という平積み不可の数字が並びます。

1、2冊しか入荷のない、すぐ棚に入れられた本屋さんで売れなかったとしても、本の実力不足のせいとは言えないですよね。やはりちゃんと平積みされて、読者に買うか否かの判断をしていただきたいというのが著者心です。

ちなみに、編集さんたちと「10万部以上狙うには?」という前提で話すと「正直、2万部くらいないとキツイ」と言う方がけっこういらっしゃいます。

確かにそれくらいの数があれば、地方の有力書店まで含めてしっかり平積みしてもらえそうです。

しかし、2万も刷って売れ行きが悪いと、かなりの数の不良在庫を抱えることになります。これは販売部的にはかなりリスクがあります。

よってそれこそ10万部以上売れた本の第二弾とか、超有名作家の期待の新シリーズでも持ってこないと難しい。

ですので、新人としてはやはり5000~7000部という不利な状況でも「局地的な平積み店」での売り上げを重ねて、増刷を狙っていくのが妥当な戦略となります。

すごく重要な、手持ち在庫管理

ちなみに新人に多い「初刷5,000部」の場合は何冊くらい配本されるのでしょうか?

だいたいですが4,000部弱を配本(書店さんに送品)して、1,000部強を追加発注分として出版社の倉庫に置いておきます。この在庫を手持ち在庫と呼びます。

初刷を全部配本してしまうと、売れ行き好調店から追加注文が来ても「在庫なし」で、追加分を補充できないからです。

先述のように、初刷が少ない場合、平積みされるお店は限られてきます。そういった限られた書店が生命線となるため、確実に平積みを維持してもらえるように万全の補充体制を敷かなくてはなりません。

しかし書店さんは売れているタイミングですぐ追加分が入荷できないなら(よっぽど売れる本以外は)追加注文を取りやめ、他の本にスペースを明け渡してしまいます。こうなると大きな機会損失になるため、適切な手持ち在庫数の判断は、販売部の重要な仕事です。増刷には2~3週間はかかってしまうし。

これを読み間違うと、書店さん、編集さん、上司全員からすごく怒られます。

この点から新人にとっては販売部の手厚いフォローが必要だとわかりますし、彼らがより正確な手持ち在庫を管理できるよう、著者はマーケティング上の情報を共有せねばなりません。キャンペーンや大型イベントでの大量販売など、ホウレンソウを意識しましょう。

つまり結論としては

  1. 5,000部~7,000部くらいがベストと心得つつ、
  2. その部数では平積み店が少ないことを理解して
  3. 局地的な平積み店でしっかり売れるようイベントやキャンペーンを打ち
  4. その効果で逆に在庫切れを起こさないよう情報共有を行う

これが初刷の基本的なマーケティング戦略です。

このホウレンソウが抜けてて、編集さんや営業さんから「ダメな著者だこいつ」と思われるのは絶対避けましょうね!

参考リンク
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