日常的に日本語を使っているにも関わらず、文章を書くのが苦手という人が多いように感じます。
子供のころから国語の授業を受けているはずなのに、いったい何故、このような現象が起こるのでしょうか。
そんな疑問も、『人の心を動かす文章術』を読めば、すっきりです。
さらに、本書では、多くの人が苦手とする「文章の書き方」について、具体例をあげながら、しっかり教えてくれます。
文章を書くのが苦手な方や、文章力を高めたい方に強くおすすめしたい本となっています。
目次
どんな本なのか
「私ほど下手な文章を大量に、しかもじっくり読み、たくさん添削指導したものはいないだろう」と自負する著者は、少論文指導の第一人者、樋口裕一氏です。
樋口氏は、通信添削指導による作文・小論文塾「白藍塾」を主宰し、独自の文章指導を行っています。
幅広い対象に向けた本となっているため、文章を書くのが苦手な人だけでなく、文章力を高めたい人にも参考となる1冊です。
間違いだらけの作文教育
作文、小論文などを書く際に、「どうやって書いたら良いのか分からない」と、苦戦した経験のある人は多いことでしょう。
『第1章 文章を書くのはテクニックである』にある「間違いだらけの作文教育」という部分を読むと、その理由が良く分かります。
私たちは、国語の授業で、漢字の読み書き、音読、読解などについては、題材を変えて繰り返し繰り返し習います。
ところが本書にある通り、私たちは、文章の書き方は、ほとんど習っていないのです。
現在の学校では、ほとんど文章教育がなされていない。
学校行事が終わると、どのように書くべきかの指導もろくになされないまま、「遠足」「運動会」といった作文の課題が出される。
夏休みには本をあてがわれて、これまた、ろくに書き方を教わらないまま読書感想文の宿題が課される。
そして、ときには「交通安全週間」「環境のだいじさ」といった作文コンクールの文を書かされることになる。
こうして、数えきれないほどの文章嫌い、読書嫌いが生み出されてきた。
(28ページ「第1章 文章を書くのはテクニックである」より引用)
書き方も習っていないのに、良い作文や感想文を求められたり、優劣をつけられたりするのも妙な話です。
社会に出てからも文章を書く機会は少なくないというのに、しっかり習っていないのだから、うまく書けない人が多いのも無理はありません。
とはいえ、大人になってしまえば、『しっかり教えてくれなかったから文章が書けない』という言い訳が全く通用しないのがつらいところです。
しかし、本書を利用すれば、文章の書き方について知識を深めることが出来ます。
文章の書き方
では具体的に、本書による「文章の書き方」を見てみましょう。
それは、
- 面白い文章の条件を満たす
- 自分らしい文章を書く
- 文章の型を利用する
というものです。
「面白い文章の条件」と「自分らしい文章」については第二章で具体例が挙げられています。
まず面白い文章の条件とは、
- 読み手とは異なる意見や根拠がある
- 読み手の気づかないところに人生を読む
- 読み手が気付いていない指摘、疑問がある
などです。
いずれも、テーマが日常的なものであっても、取り入れやすい「条件」です。
これらは、全てを満たす必要はなく、どれかがあるだけで文章はぐっと面白くなる、としています。
次に、自分らしい文章を書くコツとしては、
- 道徳的な文章にしない
- 一般的な考えを盲信しない
- 全部を書かずに、一つの内容に絞って書く
などが紹介されています。
これにより、退屈で取り散らかった文章になるのを防ぎ、オリジナリティーのある文章が作れます。
これらを、第三章で紹介されている「型」を利用して組み合わせる、というのが本書による文章の書き方です。
最低限、この3つを把握しておくだけでも、文章を書くことがぐっと楽になるでしょう。
さらに第四章で説明されている様々な書き出しを組み合わせれば、興味を引く文章を作ることが可能です。
面白い文章を書くためのテクニック
文章を書くことに慣れたなら、ぜひ、第5章以降で取り上げられている「テクニック」も試してみたいところです。
本書では、
- 表現の工夫
- 感情移入させる方法
- 文章のリズム
- 盛り上げ方
- 主題
- 推敲
など、実践的で使えるテクニックばかりが、多数分かりやすく紹介されています。
それにより、普段目にする文章に、どのようなテクニックが使われているか気付くはずです。
これらを知ることによって、書くことだけではなく、読むことも楽しくなるでしょう。
気になる表現があったら、積極的に使用したいものです。
終わりに
さらに、各章の終わりには、添削例や、練習問題なども用意されています。
頭の中で考えているだけでは、文章の上達にはつながりにくいもの。
しかし、練習問題を実際に解くことによって、様々なテクニックを身についていくに違いありません。
読み手だけではなく、書き手も楽しくなるような文章術を、ぜひ、この「人の心を動かす文章術」から学んでみてはいかがでしょうか。
(文:朔)
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