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良い本が売れない世の中で、売れる本をつくるには
本を出版するなら、やはり「ベストセラー」を目指したいですよね。
「本は人と人が助け合う仕組み」と考える僕ら出版プロデューサーとしても、
「たくさんの人の助けになる→たくさん読まれる→ベストセラーになる→さらにたくさん読まれる→さらにたくさんの人の助けになる」ということで、
日々研究し続けている、非常に重要なテーマです。
この記事では
- 売れる本を書くには、何に気を付けて企画すればいいのか
- 売れる本はどんな方法で売れていくのか
こういったことに興味のある方のお役に立つ内容となっています。
いったい売れた本とそうでない本は何が違うのでしょうか?
ジャンルによって変わる、売れる本の条件
シンプルですが、本質的な問いであり、答えを出すのは非常に難しいです。
厳密に言えば、本のジャンルによって「売れる本の条件」というのは変わってきます。
たとえばアイドルの写真集なら「ファースト写真集」や「初水着写真集」といった条件、
初回限定で「生写真がついてくる」といった特典があると、売れる可能性は高くなります。
しかし別ジャンル、例えばビジネス書ではあまり関係ない話です。
(ビジネス作家の生写真なんか欲しくないですもんね・笑)
売れる本の11の条件
ということで、さっそくチェックポイントをご紹介します。
それがこの「本を書く前にチェックしたい!売れる本のチェックポイント11」です。
【本を書く前にチェックしたい!売れる本のチェックポイント11】
- 広いニーズに深く刺さっている
- タイトルだけで十分インパクトがある
- 人に薦めやすい見た目、中身になっている
- 読むだけで読者の何かを変えられる
- プロと初心者、都会と地方、両方で売れるテーマ内容である
- 女性が買ってくれる
- 著者が実績と強いブランド力を有している
- 効果的なマーケティング戦略・戦術を実施できる
- 書店・取次・出版社が売る気になってくれている
- マスコミ等の露出がある
- 著者自身が売ることにコミットしている
本は商品ごとに、売り方のポイントが変わってくるのですが、
この記事では「一般書」に絞って、売れる本の条件、チェックポイントについて考えています。
(「ビジネス、健康、美容など、大多数の大人が興味を持ちやすいジャンル」をここでは一般書としています。)
このチェックポイントは、出版社のマーケティング部にいた時に実践の中で身に着けたこと、
そして出版プロデューサーとして多くの編集者や出版社の営業・取次・書店さんから教わったことです。
この教えを守ることで増刷率90%、平均部数44,000部という成果を維持しつつ、最高部数18万5,000部という結果を出すこともできました。
再現性も高く、かつ直近でベストセラーになった本があることから、きっと多くの方のお役に立つのではと思います。
そもそも売れるジャンルなのか
1.広いニーズに深く刺さっている
「本は読者のために書かれるものである」ということは、売れる本には「読みたい」というニーズが必須です。このニーズは広さと深さの二軸で考える必要があります。
- ニーズの広さ
ここでいう広さとは「読者の多さ」のことです。専門書や趣味の本など「一部の人」しか買わない本だとそもそも対象読者が限られてしまいます。1000万人いる市場で10万部売るのと、100万人しかいない市場で1万部売るのでは、労力的には同じ(どちらもシェア1%)なので、読者の多いテーマの方が部数としては伸びる傾向にあります。
- ニーズの深さ
次に、ニーズの深さとは「投入できるお金と時間の多さ」のことです。例えば「風邪の治し方」という企画があるとして、広いニーズを満たしています(ほぼ、皆、一度は風邪の経験がある)が、まあ売れないでしょう。
僕も薬飲んで寝ればいいやと思いますし、予防等に関しても知識としてネットで調べればそれで事足りるかなと。つまり「ネットでいいや」とならない、本屋で見かけた瞬間に買いたくなるものが深いニーズと言えます。
また、ニーズの深さは相対的なものです。「今月はあと1冊しか本を買えない、読めない」となったときに「他の興味ある本と比べて、この本を今一番読みたい」と思ってもらえるかどうかが重要なのです。もっと言えば映画とか買い物とか、時間とお金を使いたいあらゆる事の中で、あなたの本を選んでもらえるかどうかです。
「とりあえず今は買わないでおこう・・・」となってしまうと結局売れません(来月も本屋にあるかわからないし、来月は他の本が読みたくなるかもしれない)。それにちゃんと読んでもらわないとクチコミが生まれないので、やはり深いニーズが大切になってきます。
ある編集さんが企画の考え方について一言で「広く深く刺す!」って言ってて「お~!カッコいい~!」と思ったので表現いただきました笑
※この記事の本筋からズレるのですが「部数が大きい方が偉い・価値がある」というような単純な考え方は成立しないと思っています。1000万人いる市場で10万部売るのと、100万人の市場で1万部売るのは、部数としては10倍の開きがありますが、「求めている人1%に届いた」という意味で、同等の価値を持っていると僕は考えています。ただ「一般書」で「ベストセラー」を目指すのであれば、広いニーズに企画を落とし込む技術・考え方が重要と言えます。
やられた!感のあるタイトル・表紙になっているか
2.タイトルだけで十分インパクトがある
まれにタイトルを見ただけで「うわ、やられた!」と思うことがあります。読者として「絶対それ欲しい!」とノックアウトされた上に、プロデューサーとして冷静に考えても広くて深いニーズに突き刺さり、コンセプトのインパクトが際立っているものです。
- 「ついていきたい」と思われるリーダーになる51の考え方
- 「めんどくさい」がなくなる本
- フランス人は10着しか服を持たない
- 残念な人の思考法
などが一例です。
見た瞬間に
- 「(そうなったら)絶対いいじゃないか!」と憧れたり(「ついていきたいと思われるリーダー」になれたらカッコいい!、「めんどくさいがなくなったら」人生楽しい!)
- 「え、そうなの!?」と驚いたり(10着しかないの!?フランス人どんだけ着回し上手!?)、
- 「なんか知らんが面白そう!」(残念な人っていう表現、面白い!千原ジュニアさんの「残念な兄」的な?)
という避けがたい魅力を放つタイトルです。【「ついていきたい」と思われるリーダーになる51の考え方】に至っては、帯コピーが「リーダーは、弱くてもかまわない。」ですよ。もうこれだけでも十分に「え、そうなの!?」という驚きを与えてくれます。しかも、最近の読者傾向として『嫌われたくない』『強く言えない』という部分があるので、現状を肯定してくれているエクスキューズにもなっている、まさに秀逸なコピーです。
また、タイトルだけではなく、表紙の装丁(正確にはカバーの装丁)のインパクトも重要です。
- どんなに体がかたい人でもベターッと開脚できるようになるすごい方法
はタイトルだけでなく表紙のインパクトがすごいです。
店頭で見た瞬間に「うわ、すごく惹きつけるデザインだなぁ」と思っていたのですが、もっと驚いたのは山手線での広告を見たときのことです。
宣伝用ポスターのデザインが、ほぼ本の表紙そのままだったのです。
つまり言い換えると、ポスターとして使えるくらい「宣伝効果のある表紙」ということです。
タイトルや表紙のデザインは上手くはまれば、それだけで10万部くらい売れてしまう重要な要素です。(逆に10万部以上はそれだけでは難しい。やはり評価・クチコミされる中身が必要)
ベストセラーを狙うならチェックポイント1の「広いニーズに深く刺さっている」ことは最低限必要な前提として、
その上で「今までの本との違い、オリジナリティ」をタイトルや表紙で表現できるかが大切になります。