私たち、学生出版プロデューサーの対談企画!
今回は『問題地図シリーズ』や『たった1日で即戦力になるExcelの教科書』などの編集を行っている技術評論社編集部の傳智之さん、そしておなじみかぎろい出版マーケティングの西浦孝次さんお二人の対談です。
私たち学生にはまだわからない『働く』ということについて、お話を伺ってきました。
第一回目の今回は、傳さんの『進捗ポエム』やお二人が様々な『ノウハウ』を投稿している『SNS』の使い方について!
私たち学生が個人でプライベートを発信するのではなく、ビジネスとしても活用している印象があった傳さんのSNS。
はたしてどのような思いで情報発信をされているのでしょうか?
今回の取材・記事作成は、インタビュアー・ライターを善波、編集を竹田でお届けします。
目次
個人もビジネスも、どちらも自分
―――今回は、私たち学生にはまだわからない『社会に出て働く』ということについて伺っていきたいと思います。
傳智之さん(以下傳)
「なかなかヘビーなテーマで(笑)」
西浦孝次さん(以下西浦)
「ふふふふふ(笑)」
傳「西浦さん、おまかせしましたよ?」
西浦「いやいやいや(笑)
『傳さんと僕が対談するなら何だろうね』というのを、みんなで考えまして。彼女たちの企画書を2〜3回は練り直してたどり着いたのがこのテーマです。」
傳「あ、そうなんですか?初期案も見てみたいですね。」
西浦「いや〜、初期案はひどかったな~(笑)」
竹田&善波「心に突き刺さるんでやめてください。」
―――ではまず、『SNS』についてなのですが、傳さんが使用している『Facebook』や『Twitter』は、私たち学生が普段使っている個人のアカウントとは、少し使い方が違う気がしたので、そちらについてお聞きしたいのですが…
傳「自分では『違っている』という自覚はないですね(笑)」
―――『ビジネスとしてSNSを使っている』のか、『個人としてSNSを使っている』のかが疑問だったのですが、個人として使用されているということでしょうか?
傳「そうですね。」
西浦「特に『仕事のことをつぶやくぞ!』と思ってやっているわけではないということですかね?」
傳「個人とビジネス、どちらも全部自分なので、そこは分けていないですね。これが自分の名前で出していないアカウントだったらそれなりに考えるとは思うんですけど。」
西浦「僕のFacebookは、個人とビジネスどちらもありきなんですけど、どちらかというとビジネス重視で使っています。だけど、ビジネス臭くなると読む人がうっとおしくなるだろうから個人色を消していないというイメージで。逆にTwitterは、ほぼ9割プライぺートなんですよ。」
―――傳さんはそういった使い分けはされていない、と?
傳「あまりないですね。」
西浦「あれ、でも確かFacebookとTwitterを連動させていましたよね?」
傳「いや、それぞれ個別で使っていて、連動はしていないです。」
西浦「え、個別で?(笑)同じものをわざわざ投稿しているんですか?」
傳「はい、地味に個別に(笑)両方一度に投稿できるCrowyというツールも使っているのですが、そうするとFacebookでの投稿の表示率が下がるという話があったので。
あとは、Twitterの方が専門性のある、少し難しい話を出す時が多いかな。Twitterの方がエンジニアさんのフォロワーさんなど多いので、そういった小難しい話も。
Twitterだと『何食べました』みたいな話はあんまり出さないですけど、Facebookはしますね。」
西浦「そっか、確かにFacebookの方がリアルな友達とそんな変わらない印象がありますよね。Twitterは情報収集で見ている人も多いので。あとは、出されている本の関係で傳さんはエンジニアさんのフォロワーさんが多いんですかね。」
―――私は真逆で、Facebookはビジネス向けでTwitterはプライベートなイメージがありました(笑)
傳「あ、そうなんですか?」
西浦「学生からするとそうだよね。『Facebookはビジネスマンが使う』みたいな印象あるのかな。」
傳「なるほど。」
西浦「あとあれか、僕らが…おじさんなんで…(笑)おじさんにとって触りやすいのはおそらくFacebookなんじゃないかな(笑)」
傳「ほう(笑)でも私はもともと、FacebookよりもTwitter派の人間なので。」
西浦「Twitter派なんですか?でもTwitterの方がユーザー若くないですか、20代が多い。学生も『TwitterはやってるけどFacebookはやってない』っていう人が多くて。」
傳「全体の傾向はそうでしょうね。私とつながっている人は30、40、50代の人が多いのであまり気にしないですね。」
西浦「なるほど。」
―――傳さんって、ちなみにおいくつですか?
傳「39です。」
西浦「39か。」
傳「西浦さんは意外と若いんですよね。」
西浦「僕、36です。」
傳「びっくりしましたよ、絶対年上だと思っていました(笑)」
西浦「よく言われるんですけど、まぎれもなく30代です(笑)」
傳「年下ですね(笑)」
西浦「年下っす先輩!!!!ここは太字にしといて『年下』の部分!」
傳「でも心の師匠なんで。」
西浦「絶対思ってないでしょう(笑)
ところで、傳さんすごいですよね。SNSの話でいうと、昨日だったか一昨日だったかに、たまたま傳さんが担当されたことのある著者さんのツイートを見たのですが、その方が書いた『たった1日で即戦力になるExcelの教科書』という本が売れたからか、その後30社ぐらいから『うちでも書きませんか』っていう依頼がきて。全部断ったけれど、後にその依頼のあった会社から出版された本を見て『クオリティが違いすぎる』とショックを受けられたとか。『編集者のレベルに差がありすぎるから断って良かった。』と書かれていて、そこまで言わせるのはすごいなぁと思いました。」
傳「大分持ち上げてくださって(笑)」
西浦「いやいや(笑)」
傳「編集者より、著者の力量のおかげと言いたかったんですけど、(それをわざわざツイートすると)かえって場を壊すんじゃないかと(笑)」
西浦「例えば、飲みの場で直接言うのは、それこそヨイショということもありえると思うけれど、SNSというオープンな場の話ですからね。僕だったら、オフィシャルの場では怖いから、たとえ思っていてもオープンでは言わないですもん(笑)だから、よっぽど信頼されてるんだろうなと思いました。」
傳「ありがとうございます。」
『ポエマー』の傳さん
―――この間もTwitterで「進捗ポエムを笑うものは進捗ポエムに泣く」とツイートされていましたよね(笑)
傳「そうですね(笑)何年か前にFacebookで出したものが出てきたので、もう一回ぶっこんどくかぁと思って(笑)」
西浦「進捗ポエムを投稿するきっかけみたいのはあったんですか?」
傳「いや、あれはもう降りてきたらその場で書くみたいな感じですね。鼻水出そうだから鼻かみましたみたいな感じ(笑)」
西浦「まさにポエマー発想ですね、もう自然に出てくるみたいな(笑)」
傳「もう全部自然に出てきますね。」
西浦「(笑)」
傳「時間かけて作ってる時間がないですから。」
西浦「時間かけてもポエムはでなそうですしね。ふと思った時に出るみたいな。」
傳「なんか『これできそうだ』と思った7割ぐらいまできたら、あとはもう1〜2分で仕上げるみたいな感じです(笑)」
西浦「ちょっと整えて(笑)」
傳「長い場合は。早ければその場で。もう生理現象なので。」
西浦「ポエムを始められたときは、正直ね、『何をやっているんだろう、この人』と思いましたよ(笑)
僕は結構序盤から、ずーっと見てる方だと思うのですが、これだけ続けるともう『ポエムの人』みたいになってくるので、職業はポエマーなんじゃないかと思えてきますよね(笑)
『編集者って実は副業なんじゃないの?』みたいな(笑)」
傳「この間Facebookで、『私の書いた本を編集していただいたポエマーの傳さんから、本をいただきました。』みたいなことが書いてあって、『あれ?どういうことだ?』と思いました(笑)」
みんな「ポエマーの傳さんから(笑)」
西浦「多分みんなも違和感なく『あぁポエマーの傳さんね』と受け入れたと思いますよ(笑)
でもそういうところを考えると、やっぱりビジネス狙いでやってないよね。舞い降りてきたものを載せているわけですし。そこは分けないでいいよっていうのが傳さんのスタイルなんですかね?」
傳「そうですね。分けるのも面倒ですし(笑)」
西浦「むしろ使うSNSのフォロワーの属性とかで、若干テーマとかは変わる感じですかね?」
傳「多少ですね。今はTwitterが昔ほどエッジの立ったツイートができなくなったんで。心の余裕がなくて(笑)」
西浦「あぁそういう意味で(笑)」
傳「RSSってわかります?」
西浦「はい、わかります。」
傳「昔はあれをすごい見ていた時期があって、良いと思ったものなどをTwitterでバンバンシェアするということをしていましたね。」
西浦「僕はRSSじゃなくてGoogleアラートを昔使っていました。今はRSS使っていないんですか?」
傳「使っていないですね。愛用していたRSSリーダーのlivedoor Reader(Live Dwango Reader)もサービス終了になってしまいましたし。」
西浦「僕は、もう一回使おうかなと思ってはいるんですけど。」
傳「やっぱり抜け落ちる情報ってありますよね。」
西浦「ありますね。Twitterを始めた頃Googleアラートで調べた電子書籍のこととかをツイートしてたんですよ2010年くらいかな。そしたらフォロワーが一時期増えて、でもそれをやめたらサアーッと去っていって、そりゃそうだよなぁって(笑)」
傳「そうなんですよ、SNSは去っていくのがもう分かっているんで。」
西浦「残ってくれる人はいるんですけどね(笑)もう一回RSSなりGoogleアラートなり設定しようかな。でもあれ、すごい情報量くるじゃないですか。」
傳「きますね。」
西浦「狙っていたものと違う情報もくるから、あれをうまく設定できるようになりたいなと思います。」
傳「私は個人ブログを見るのがメインでした。『キーワード』ではなく『人』で。
『この人はいつか本を書けるかもしれない』とか、本を書けそうになくても『エッジが立っていて面白いな』とか、有名じゃなくても『いい文章書くな』という人がけっこういたので。」
西浦「ちなみにそれは、最初どうやって見つけるんですか?」
傳「もうブログなどをかたっぱしから見て、ですかね。」
西浦「RSSは、SNSとはまたちょっと違う(ビジネス寄りな)使い方をしていたんですね。」
傳「そうですね。RSSを使っているときは、Twitterをまだやっていないときだったので。
Twitterは、Twitterに関する本を出版するのにTwitterやっていないのはまずいなと思って使い始めたのが2010年頃でした(笑)」
西浦「そうですよね。一般の人がビジネス用にTwitterを使い始めたのが2010年あたりだったと記憶してます、僕もそのころに『Twitterっていうのが流行っているらしいぜ!』という情報をつかんで始めました(笑)」
―――やっぱり会社内でも話題に挙がったんですか?
西浦「僕は独立していたんだけれど、フリーランス仲間の間でその話があがっていました。だから最初はビジネス用として始めたかな。」
傳「私は『本を出すから』というのがキッカケですけど、内容は全然ビジネスではなくて。それを続けると多分苦しくなるんじゃないかなと。」
西浦「そうなんですよね。だから僕も一時期やめて、今は情報収集するために、趣味用として復活しました(笑)」
傳「宣伝になると思ってやると多分苦しくて続かなくなりますから。
『どうせ大した影響力無いから期待はするな』と若手の社員には言っていますね。著者の方のアシストにはなるので、『自分が楽しくやれば結果がついてくることもあるんじゃないの?』というプラス要素ぐらいの使い方でいいと思います。
やっぱり、『本ってできたら嬉しいよね』という心そのものを表現すればいいだけだと思うので。」
西浦「そのあたりの匙加減って難しい感じがしますね。
出版社としても、会社で『編集者のブログを書け』というところもあるじゃないですか。サンマークさんはLINEもやってるし、ディスカヴァーさんはメルマガだったかな、会社のミッションとしてどうSNSを使うかというのがある。」
傳「会社によってもSNSの使い方は様々ですね。」
『ノウハウ』は『意見の根拠』のための蓄積
―――傳さんは『Facebook』、西浦さんは『出版TIMES』で『ノウハウ』や『出版に役立つこと』を発信していますが、書籍化や有料化は考えていないんですか?
西浦「傳さんのはすごい。」
傳「すごくないですよ、発信してませんから(笑)」
西浦「いやいやいや(笑)してるじゃないですか、Facebookのノートとかに。」
傳「でも最近はFacebookページで、『お金を出さないと見れない』という傾向がどんどん濃くなっているので、あまり更新していませんね。
だから『note』に投稿しようかなって思ったんですけど、編集でやっている人は結構多くて、キャラが被るからどうしようかなと。」
西浦「そういったノウハウを発信しようと思ったきっかけはあるんですか?」
傳「特にないですね。もともと社会人一年目からやっていて。」
西浦「じゃあ自分用にノウハウやまとめを整理していたものを載せていたんですか?」
傳「そうですね。
なので、一年目のものをそのまま出していることもありますし。」
西浦「じゃあバージョンアップして再投稿したり?」
傳「はい。していないものも多いですけど(笑)」
西浦「もう、そういうタイプの人間なんだなって感じですね。言語化するのが好きみたいな。」
傳「うーん。好きではなかったですね。」
西浦「あ、好きじゃないんですか?」
傳「なんだろう。何か『残しておいた方がいいだろうな』というものを書いていて。特に一年目は、編集者って大した専門知識があるわけでもない。でも(会社に)入ったら『編集者です』って偉そうじゃないですか(笑)」
西浦「編集者、偉そう問題(笑)」
傳「だから、『なにを考えて自分はこういう風に意見します』というものの根拠にするために言語化していましたね。」
西浦「その理由は誠実な感じがするなぁ。まず相手に対してしっかり説明して、理解してもらう努力をして、その上で反論があるなら反論してください、ということですよね?」
傳「本や原稿って、著者の人格そのものだと思うので、誤植はともかく、それに手を加えたりするうえで、そこをどうして変えたのかという理由を見せるのは大切ですよね。
事前に『こうやります』と言って、『ああそうですか』と成果物がでるのと、いきなり変なのがきて『なんだこれ?』となるのは、やっぱり全然違うじゃないですか。そこをちゃんと担保したいというか。そういう意味もあってやり始めましたかね。」
西浦「著者にフィードバックする時のマイルールだけじゃなく、編集全般の考え方や部下育成の話題も書かれてますよね。企画会議で他の編集者の企画にコメントする時や、部下にその仕事を任せたり、指導したりする時の基準も書かれているから、部下や同僚に対してもちゃんと明確に理由を示して伝えようってことですよね。」
傳「そうですね。どこまでちゃんとやれているかはともかく(笑)」
―――西浦さんも同じような理由ですか?
西浦「僕はちょっと違うかな。仕事のスタンスは近いものがあって、『なぜそう思ったのか』とか、必ず気を使って伝えているつもりですし、原稿のフィードバックをする時は、必ず違うところをほめてから変えたほうがいいと思う部分を言うことにしてる。
例えば、『この3つ目の見出しのこの箇所はすごいタメになったし、すごい良いと思うけど、逆にこのクオリティが書ける人なのにこっちとこっちはちょっとありきたりですよね』みたいな言い方をして、『こっちの高い方のクオリティに揃えてほしい』と言って返したりするのは自分の中のルールであるんですけど。」
傳「へえ、すごいですね。」
西浦「いや、傳さんも同じようなものでしょう。相手によって伝わり方も違うので、相手に合った言い方というのがあって、『こう直してくれませんか?』というとそのまま直して面白みが欠けちゃう人もいるから、あえてどこがダメかしか言わないという場合もありますね。
でもSNSに投稿しているノウハウは基本的に『コピーされても良い』と思って書いています。」
傳「なるほど。」
西浦「『情報』とか『ノウハウ』はコピーされてしまうものだし、あんまりいい言葉じゃないけれど、『人脈』もコピーされる。人に人の紹介をすると必ずそこはつながって、自分抜きで話が進んでいく、というのを先輩プロデューサーからよく聞いてきたので。
そうやってコピーできるものとできないものを自分の中で分けて、コピーができるものはもう出してこうと思って。
そうすれば、コピーできないものが自分の武器になるんじゃないかなと思ったんです。」
傳「それで出版TIMESを。」
西浦「そうです。読みたい人にとってはプラスになるから読んでくれてるわけじゃないですか。だから全然いいんじゃないかなって。」
傳「私も有料化や書籍化もやってみてもいいんじゃないかなとは思ってます。
ただ、そこまでの内容じゃないかなって(笑)
実験的な意味でお金をいただくやり方をやってみても、とは思うかな。」
西浦「僕も有料化には反対じゃないけど、そもそも自分でビジネスをやっているからどこかでお金はもらっているわけじゃないですか。
プロデュースやセミナーなどでお金をもらっているものもあるから、出版TIMESに関しては無料でいいかなと思っています。
基本的に個別対応が有料になると思っていて、一般化して書かれたノウハウだと詳細はわからなかったりする。それに偉そうな言い方になるけれど、傳さんなどが書いた内容をちゃんと理解できるのは限られた人になると思うんですよ。」
傳「そうですね。」
西浦「編集者のことを理解しているとか、出版用語を理解しているからわかるのであって、一般の人が見たところで分からないこともあるんだと思う。
その時に生まれる勘違いや理解不足をフォローしてあげられる訳じゃないから、そこはお金取れなくてもしょうがないんじゃないかなって思います。」
……今回はここまで!
続きはまた次回。
ライター:善波
編集・写真:竹田