すごくきれいにライトアップされたビルを背景に撮影した瞬間、消灯時間になった出版プロデューサー西浦です。
先日、出版TIMESとして初めての出版セミナーを行いました。そのセミナー中も懇親会でも質問されたのが「良い編集者の選び方」というテーマ。
本づくりにおける編集者の重要度を理解しているからか、みんな気になるようです。
たしかにこれはプロでないとわからない領域ですよね。僕も、もし自分が関わった本が映画化されるとしたらどの監督がいいのか、どの演出さんがいいのか、さっぱりわかりません。ですので結局は映画プロデューサーにいろいろアドバイスをもらうと思うし紹介を頼むでしょう。
出版においては、おかげさまで増刷率や平均部数を高く維持できていることから、僕はたぶんかなり良い編集者選びができていると思います。素晴らしいマッチング能力。自画自賛。
この編集者選びのポイントについて、西浦が実際に判断基準としているポイントをご紹介します。
目次
信じてついていく気になれる人
いきなり結論ですが、あなたが「この人を信じてついて行こう」と思える編集者を選んでください。その人があなたのベスト編集者です。
とある少女マンガ編集者から聞いたのですが仕事のできる上司から「作家に対して、編集者は最高の彼氏たれ!」と教わったそうです。
しかるべき時に叱り、あるいは褒めて、やる気と作品のクオリティを維持する。作家と作品と読者の未来を真剣に考えて、全力でこの道を一緒に進もう、いや黙って俺についてこい、と言ってくれる「この人に一生ついて行こう」と思えるようなパーフェクトな彼氏を思い浮かべてください。そういう人がベストな編集者です。
女性作家にとって女性編集者こそが男前なプロ彼氏になれっていうことでこの話を教わったのですが、むしろこれは著者と編集者の性別関係なく「プロ彼氏」がイメージとして良いと思われます。
(一応触れますが、パーフェクトな彼氏像は人によって違うものの、今回のケースでは割と古風な「俺についてこい」を理想イメージとして採用)
もちろん、この例は少女漫画家さんと担当編集者の話なので、実際に僕やあなたが関わる一般書・実用書とは違う部分もあります。
漫画家さんとかミュージシャンとかナイーブな人多いですし、心の支えが必要な部分が大きいのでしょう。だから「彼氏」という表現になりますが、一般書の場合はそこまで彼氏感は不要です。
ただ、共通項として「ついて行こう」と思える信頼感が大切だと思います。変に編集者と交渉しようとする著者もいますが、そんな「交渉しなきゃいけない相手」だったら最初から組まない方が良いのです。
あ、印税の交渉は別ですけど。
編集者との仕事の進め方
著者と編集者は、馬主と騎手の関係と似ていて、自分の馬(本)に乗ってレースで勝負してくれるのが編集者です。
どの騎手に乗ってもらうかはものすごく重要ですが、レースが始まってから「もっと前へ行って!」「まだ勝負仕掛けるのはやくない?」とか、LINEしてくる馬主なんて迷惑なだけでしょう。
編集者が決まったら、その人の実力を信じて、自分は自分のベストを尽くすのが結果的に効果を最大化します。
僕自身、企画をお願いする編集さんは、皆さん憧れの人だったりします。自分は出版プロデューサーなので、本は書かないわけですが、もし自分が著者になるならこの人に担当してほしい。そう思える人にご相談しています。
だから自分の作りたい本のイメージを押し付けるというよりは「この人なら自分をどう料理してくれるんだろう?」と、喜んで「まな板の上の鯉」になるのがベストです。
ただ「まな板の上の鯉になれ」というのは何もマグロになれってことではありません。
受け身ではダメで、企画書や原稿といった材料に活きの良いものを提案するのは必須だし、販促プランも考えて「こういうことできるよ」「〇〇さんとコラボの話も進められそう」と提示する、求められたものとは別の角度の言葉も投げてみるなど、コミュニケーションはたくさん取りながら、一緒に進めていくと良いでしょう。
究極的には「ついて行き方」も人によります。提案全部ムシの人もいれば、割と聞きたい人もいるのでその辺は空気を読みながらついていきましょう。
とは言え編集者選びを間違えていたら?
100%信じろ。
としか言ってないので、「信じた相手が間違ってたらどうしよう?」という不安もあるでしょう。
それも恋愛と一緒です、初めての彼氏や彼女がだめんずで無い保証はありません。
口では良いこと言うし、SNSではすごそうだけど実力はどうなんだろう・・・という人もやっぱりいますから。
ですので「ついていきたい」以外にもう一つポイントを教えますと、「読者目線の質問が上手な人」です。
編集者と著者が互いにほれ込み過ぎて、「良い本にしよう!良い本にしよう!」と議論を尽くして作っても「二人にとって」良い本になってしまうことがあります。
企画の相談をしながら「とはいえ、これだと分かりにくいと思うんだよね」と読者目線で踏み込んだ質問をしてくれる編集者だと、この心配は少なくなります。
料理で言う「『塩少々』の少々ってどれくらいだよ!」「目分量でわかるかぁ!」って言ってくれる方です。料理本を作るなら、料理音痴の気持ちが分からないとダメなのです。
もし、ここまでしてもまだ良い編集者に出会えていない、売れない・・・だめんずばっかりだと嘆くあなた。
基本的にだめんずうぉーかーにはそうなる理由があったりします。
- あなた自身はちゃんと高い志をもって本を出版したいと思ってますか?
- 優秀な編集者が「この人の本出したい」と思えるような実績や企画を持っていますか?
- 優秀な編集者が「編集者人生賭ける」くらいのものを、あなたはその本にかけていますか?
忘れないでください、あなた自身が企画の中心です。あなたにふさわしい人がパートナーになるのです。
仮に売れなかったとしても、その編集者を非難するのは少し品がない。少し前までその人とあなたはお似合いのカップルだったはずなのです。
別れた相手を悪く言うのは男も女も美しくありませんね。
最高の彼氏編集者をゲットするために、まずは自分磨きをするのが一番の近道かもしれません。