お客様を大切に思うなら、感情の受け皿を作ることが大事。あと、プロデューサーとしての指針【後編】

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前回の記事の続きになります。前回の記事はこちら↓

お客様を大切に思うなら、感情の受け皿を作ることが大事。あと、プロデューサーとしての指針【前編】

先日舞台『THE BANBI SHOW2ND STAGE』を観て→村田雄浩さんの演技にグッときて→直接ご本人に気持ちをぶつけて→すごくスッキリできた。

この流れを客観視したことで、自分がやってて気持ちの良いことが、やはり「プロデュース」であることを再確認できました。

結局のところ、出版プロデューサーとしてはもちろん、個人としても「感動するもの、心動かされるもの」をゼロの状態から企画し、人の「感情の受け皿」まで設計して、実現していきたいのだと改めて思ったのです。

 


目次

「5年続けたらどんな人が集まってくるか」を設計する

たとえば独立後1年くらいのころ。「なんとかやって行けそうだな」と思い始めた時に「これって自分の頑張りというより、本に価値があるからやっていけてるだけだな。出版業界を作ってきた先人たちのおかげだ」と思ったんですね。

この着想から「出版業界って素晴らしいよなぁ、ありがたいよなぁ」と感じ入り、業界に「恩返し」したい!と思うようになりました。その時は「仕事ではお金をもらって業界に貢献している」と考えて「お金を頂かない形で恩返しをしよう」ということで「マスコミ就活支援団体」をつくりました。

その「就活支援」も仕組みとして機能させるには?を意識しながら設計図を考えました。

  1. ボランティアでやることで、スタッフも卒業生も「業界への感謝を持ち、お金を頂かない形で恩返しをする」っていう人達の集まりになる(ハズ)
  2. そういった素養を持つ人が出版業界に来てくれたらより良い業界になる(ハズ)
  3. そこで生まれた人脈が、いつか会社や利益を越えた何かを生み出す土壌になる(かも?)

1をやることで1→2→3の環境が生み出せると「線」で描きました。

そのうえで、自分の成長にもなるように下記の条件を付け加えたのです

  • 一人で細々とやるんじゃなくて、人を巻き込んでいって、ある程度勝手に回る仕組みを作ろう。
  • 就活生への支援を通して、「内定者」になった学生が自主的に次代のスタッフになる仕組みを作ろう。【循環の仕組み】
  • でもスタッフの核である「内定者」は毎年卒業していくので、教えるのではなく自主的に活動してくれるような設計にする。
  • 自分がいないと回らない仕組みは仕掛けとしては未完成なので、5年で完全に離れる前提でやっていく。。。

こういった条件を加えて、いろいろ考えていきました。

それまでは人と一緒にプロジェクトを進めていく際に、どうしても自分(リーダー)が時間をかけてフォローできた人のモチベーションが高く、そうでない人は低いという「自動巻き」じゃないチームしか組めたことがなかったので、それを打破できるように自分のレベルアップも兼ねてチャレンジしたのです。

実際には設計図通りにいかないことが多く、想定外や、驚くようなこともたくさん起きたけど、5年間続けて、完全に運営から離れて1年以上たったけどちゃんと仕組みとして機能しています。

(個人的にはプロデュースの目的として、プロジェクトの成功以外に自分がレベルアップできるような設計図、もしくは座組を考えると、面白いハプニングが起きると考えてます。しんどいですけど。)

これはひとえに今も残っているスタッフ達の頑張りのおかげであり、それはつまりこの団体が、当初描いていた『「業界への感謝を持ち、お金を頂かない形で恩返しをする」っていう人達の集まり』になったからだと思います。(じゃないとこんなに頑張れないはず)

「実体験とその場にいた人」を設計図に書き込む

また2016年の12月から定期的に開催している読書イベント「ニシュランガイド」もすごくうまく回っています。これは過去に一度「読書会」に失敗した経験を活かして、設計図を考えています。

最初に取り組んだ読書会は、集客にすごく手間取り(20名くらい集めるのに4か月くらいかかった)「これは何かがうまく機能していない」と思って、中止してるんですね。

では今回なぜ、再度挑戦してうまく運んだかというと、頭で考えたというより実体験をベースに設計図を描いたからですね。

友人たちと飲んでたときに「西浦さんのオススメの本教えてよ」と言われ「『自分が読んだ本を、人生とどのように重ねて生きてきたか』を話すと、すごく盛り上がった」そして「その場でみんな本をポチってくれた」という体験です。

その時の「ああ、本を普段あまり読まない人でも、個人の体験と重ねたらこんなに面白がってくれるのか」という喜びに、僕は心動かされました。これなら、みんな面白がって参加してくれるんじゃないかというイメージも持てたんですね。

しかも、その時にいたメンバーがかなりパワーのある、尖った能力を持つ人たちだったので「このメンバーにあとAさんとBさんで座組を組めたらいける!」という確信がありました。

心動かされた実体験のおかげで設計図としてすごく詳細に描けたし、その設計図を成立させるのに重要な役割を果たす人たちもそこにいたのです。

「その場所にいた」ってただの偶然でしかないのかもしれませんが、その場で生まれた着想はその場の人間で作っているのでとても重要な要素だと考えてます。

どういったことをやりたがってるか?のイメージがすでにかなり正確に伝わってますし、その後もやりやすいです。

 

設計図に縛られず、座組にこだわる

そして一番力を入れてやっている出版においては、僕が心動かされた「人の考え方やノウハウ」を本という仕組みでプロデュースしています。

感動して泣くだけじゃなくて、心はもっといろんなことで動きます。すごさに憧れたり、文章の巧さにほれぼれしたり、その姿勢に共感したりと様々です。

その心動かされたコンテンツを、「著者が目指す世界」を実現していく「鍵」になるように本を設計します。本だけでなく、その本を受け取った人の感情の受け皿や、そもそも適切な読者にちゃんと届けるための「販促」も設計図の中に含まれます。

設計図を書くところから、その実現のために必要な座組を組んでいくのもすべて出版プロデューサーの仕事です。

 

出版は仕事でやってますし、会社員時代から10年以上かけて2000冊以上の本に関わったこともあり、かなり詳細に描けるようになったと思います。

しかし、だからこそ、設計図そのものに縛られない余裕も出てきました。

 

実際にプロジェクトを進めていく時に重要なのは「仕組みが機能する」ということであって、僕の設計図を100%再現することではありません。仕組みを機能させるのに必要なのは、ベストな人に仕事をお願いすることです。

だから僕の描いた設計図の通りにならなきゃイヤだというのはなくて、本が「人と人とが助け合う仕組み」としてより多くの人を助ける形になるなら、例えば本の内容が僕の描いた企画から半分以上変更になっても構わないと思っています。

僕と一緒に本づくりをされた編集さんはお分かりだと思うのですが、「信じて任せて欲しい」タイプの編集さんには、僕は本当に信じきって口出ししませんし、「どんどん意見を聞いて一緒に作っていきたい」タイプの編集さんには自分なりの意見を言わせていただいてます。

 

就活支援団体のように、ときには自分がいないで回る方が良いとも思うし、ニシュランガイドのように自分が「鍵」として必須で、感動体験を何度も再現する座組みも良いと思います。

どちらせによ、自分以外の人の力を借りて実現する仕組みがすごく楽しい。

 

今は「自分が描いた設計図で行く!」ということより「自分が描いた座組で行く!」ということを重視しています。

もちろん、相手に迎合して合わせるということじゃなくて、その設計図にふさわしい方を選んだという自分の目を信じるイメージです。※

 

と、最近この道20年以上の先輩が「今回の座組は今までの中でもトップ3に入るくらい良い!」と他のメンバーに話してくれていたと聞いて、すっかり嬉しくなってこの記事を書きました(笑)

※ふさわしくない人を選んでしまったら、なるべく早くその人に座組から外れてもらわないいけません。設計図が書き換えられすぎて、徐々に全体がおかしくなるのでかなり要注意です。(出版ではこういうミスは無くなってきたのでご安心を)

 

参考リンク
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