ベストセラー『8年越しの花嫁』編集者が「学生時代の自分に伝えたいこと」とは?

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「吉満さん×西浦さん」対談シリーズ第5弾!

はやいもので、今回がこのシリーズ最後の記事になります。

前回は吉満さんの会社員時代と今との差、お二人の本との関わり方の違い、そして『本』を作るうえでの思いをお届けしました。

今回は、吉満さんが学生時代にやっていたこと、また、学生の時に大切にしてほしいことについてです!

インタビュアーは引き続き嵯峨、ライター・編集は竹田です。

5週にわたって読んで下さり、ありがとうございました。

まだこれまでの記事を読んでいない皆様、ぜひ過去の記事と合わせてごらんください!

【吉満明子】
株式会社センジュ出版代表取締役、book cafe SENJU PLACE オーナー。

日本大学芸術学部文芸学科卒業後、高齢者福祉専門誌編集、美術写真集出版社勤務を経て、編集プロダクションにて広告・雑誌・書籍・WEB・専門紙など多岐に渡る編集を経験。同社の出版社設立に伴い、取締役に就任。2008年より小説投稿サイトを運営する出版社に入社、編集長職就任後に出産、復職後は同社のケータイ小説編集にたずさわる。
その後退職し、2015年、センジュ出版を立ち上げる。(Facebookより)
[コミュニティ紹介]
book cafe SENJU PLACE
まちの出版社「センジュ出版」では、6畳のちいさなブックカフェをオープンしています。畳の上にちゃぶ台を置いて、お客様をお迎えいたします。
ハンドドリップコーヒーと本とおやつ。どうぞごゆっくり、おくつろぎください。
http://senju-pub.com/shop/

【西浦孝次】
一般社団体法人かぎろい出版マーケティング代表理事。

同志社大学卒業後、学習研究社(現・学研ホールディングス)入社。書店促進部を経て、一般書販売課へ配属。2つの編集部を担当し、年間最大400冊のマーケティングを担当。膨大な点数を扱いつつ、新人著者の売り伸ばしや仕掛け販売に注力。その後、出版プロデューサーとして2010年に独立。(出版TIMES編集者情報より)
[コミュニティ紹介]
二シュランガイド
出版プロデューサー西浦孝次がお届けする、人生を豊かにする本の紹介イベント!「生きることに慣れてはいけない」「本に感動したら、内容よりもそう感じた自分の心ふの中にその感動がある」など名言連発!
本と自分の「対話」、参加者同士の「対話」を軸にした、新しい読書イベントです。
https://kagiroi.com/publishing-times/category/nichelin/


多動しすぎなくらい多動

―――最後に、学生時代にやっておいた方がいいことなどのお話をお願いします。

西浦孝次さん(以下西浦)

「これは吉満さんに聞いた方がいいことだよ、僕は、前回言ってるから。かぶっちゃうし。

僕はちなみにお笑いのビデオを撮って、面白かったことを全部メモするということです。」

吉満明子さん(以下吉満)
「大学の時に?!」

西浦「学生の時に(笑)。」

吉満「面白い人は学生の時に面白いことしてるんだね(笑)。

私はそんなに裕福な家庭ではなかったので、たくさんバイトしてました。

生まれて初めての仕事は本屋さんでしたけど、オープンするスーパーに缶詰並べる仕事に、通行人調査もやったし、アンケートをとるバイトもしたし、モデルルームの案内人もやったことあるし、コンビニもやったし、ガソリンスタンドもやったし…あとはもう、忘れちゃいましたけど。」

西浦「すごいやってますね(笑)。」

吉満「ね、今思うとすごいやってました(笑)。一方それだけではなくて、養護施設などの子供たちと遊ぶお兄ちゃんお姉ちゃん役のボランティアというアメリカが発祥の活動があって、当時住んでいた地域の支部に所属もしていました。

なので、そういう養護施設をまわったこともあるし、出所して身寄りのない人達が暮らす施設にクリスマスプレゼントを渡しにいくボランティアもしていたし、あのころは内面が重たかったです(笑)。」

西浦「そんなにいろんなことしてたんですか?」

吉満「今こうやって言ってみると、本当に多動しすぎなくらい多動だったんだけれど。

今考えると、大学の時ってすごく動けるなって思います。子供が生まれると全然動けないので余計にそう思う。

なので、あの時は臆することなくいろんなことをやっていてよかった

いろんなバイトをしていろんな人と知り合うことで『大人っていろんな人がいるんだ。』って。」

「自分編集」と「玉ねぎの皮むき」

吉満「あのころ内面が重たかったのは、凹むことの方が多かったからです。

社会を知れば知るほど自分の無力感とか、できない自分を感じて、そして本を読んでまた凹んで、みたいなことを繰り返していたし。

『アダルトチルドレン』という言葉をクリントン大統領がカミングアウトしたことで社会的な現象になっていた頃で、私は卒業論文でそれをテーマにした小説&副論文を書きました。文芸学科の創作コースだったので、卒業論文が小説を書くことだったんです。どこにも出したくないですけどね(笑)。

私がその小説にどういうことを書いたかというと…

アダルトチルドレンとしてとても傷ついた役者の女の子が、舞台にあがることでやっと自分に、そして自分の人生に自信を取り戻していって、最後その子が本を出すことになって、おばちゃん編集者から彼女に『あなたの人生を私はこれからずっとサポートしていく』ということが書かれた絵葉書が旅先から送られてくるんです。

彼女がそれを冷蔵庫にはって『よし、頑張ろう』っていうシーンで終わる、というような内容だったと思う。」

西浦「おばちゃん編集者がでてくるんですね(笑)。」

吉満「はい(笑)。 あの時の私が書いたおばちゃんがしていたようなことを、私は今なぞっている感じがすごくありますね。

ボランティアの活動を通じて、もうぐさぐさ傷ついてもいたんです。『なんて社会は不条理なのか。虐待を受けていたりと、なんでこんな思いをした人が世の中にはいるんだろう。なんなんだろうこの人たちは。』考えるうちに、心の中は暗かった。

割と私は社交的な性格なので、見た目も多動で明るくて。」

西浦「うん、知ってます(笑)。」

皆「(笑)」

吉満「(笑)。

で、大学の時にいっぱいいろんなことをやった方がいいよと言うのは、1年後とか2年後、5年後、10年後とかに気づくことが絶対あるので、それを信じていてほしいと思っているから。たとえいまわからなかったとしても。「なんのためにこれをやってるんだろう」とか思っても、「これ私、絶対5年後とかに気づくことがあるな」ということを信じていてほしい。

西浦「あれって、なんで気づくんでしょうね?」

吉満「なんなんでしょうね。」

西浦「5年後とか10年後に。」

吉満「そう、その時はわからないですよね。」

西浦「ね、なんでなんですかね。なんでだと思います?」

吉満「たぶん私の場合は、自分のなかで編集するからだと思います。

自分の中の引き出しに『経験』をたくさんしまっておくんです。『今日はこんなことで傷ついた。』『こんなこと面白かった。』『あんな人に会ってすっごい尊敬したけど、自分とは全然距離があると思って凹んだ』とか、いろんなことを。

それから5年経った時に、『そういえばあそこになんかしまっていた』というものの、例えば右から3番目の上から2番目の引き出しと、左から2番目の下から5番目の引き出しから出てくるものが、結構形が似ていたりするんですね。そういったものが2個3個と重なったときに、ひとつ『私がやりたかったことはこれだ』ってなる。それが編集だと思っています。

私の場合は、その時にカウンセリングの勉強したりとか、ボランティアで傷ついた子たちに接したことは、ものすごくここのこと(センジュ出版)と、本づくりに役立ってる。」

西浦「なるほど。それじゃいずれ5年、10年と経ってさらに編集が上手になるんですかね、それとも編集ができるための材料がどんどん増えていくんですかね。どっちなんでしょう?」

吉満「この経験や編集の材料が少ない多いではないということはわかってるんですよ。

例えば、材料があまりにも多くて『自分の奥にある大事な言葉』を忘れちゃっている人ってたくさんいて、そういう人は本質がなかなか出てこない。

私がもってる文章講座で『〇〇について文章を書いてください』と言っても、別のこと書いていたり、テーマを正しくとらえていなかったり、聞けば聞くほどその言葉が奥にあって、でもたしかに、その人はその言葉を持っている。

だから、ただ自分には言葉が『ある』ってことを信じればいいだけ。慌てて整理する必要もない。5年経って全然整理できなくても、それを嘆く必要もない。」

西浦「大学生の時って自己分析するじゃないですか、それって編集なんですかね?」

吉満「そうですね、半分編集かな。」

西浦「編集はちょっと作る要素ありますもんね、自己分析は棚の整理か。それで何を作るかはまた別ですかね。」

吉満「そうそう棚の整理!私はそれを『玉ねぎの皮むき』と呼んでいるんだけれど、(自分の)中にある一番大事なものにたどりつくには泣かなきゃいけない。

西浦「あぁもう、ええこと言うわ。泣かなきゃいけない。」

吉満「私大学生の時、めっちゃ泣いたんです。でも、芯にたどりついたらものすごく自由になれる。なぜなら余分なものがもう全部ないから。

玉ねぎの皮むきは、見たくもない自分に目を向けていかなくちゃいけなかったから、つらかった。

ただ私、大学の時の自己分析した時間はずっといまも尾を引いていて。

20年かけて自分の芯から逃れたかったんでしょうね。ヒョウ柄を着て、「弱肉強食」をモットーにしてたんだけれど、たぶんいまは皮むきして泣いていた自分に戻ってきてる。

だから今のあなたたちの頃って、私の人生からすると、自分の原点を作るうえで宝物のような時期だった。社会人に半分くらい足を踏み入れたような、でも社会人でない貴重な時期。私、その頃三島由紀夫とかドストエフスキーを読んでました。」

西浦「僕も読んでました。暗くなる(笑)。」

吉満「暗くなりますよね、車輪の下とかも読んでたし(笑)。でも、だからこそいい時期だったと思っています。」

西浦「暗くなる時期だけど(笑)。」

大切なものは「静けさとユーモア」


吉満「センジュ出版は『静けさとユーモア』という言葉をモットーとしているんだけど、この『静けさ』は『暗い』ということでもあると思っていて。

『人間は暗くて静かで何が悪い』と私は思っているんです。

だって、本書く時間も、本読む時間も、編集する時間も、暗いし静かなんです。こういう場所の方が私は編集しやすい。

雑音の中でなかなか仕事ができなくて。私もこの原稿と静かに対話をしたいし、著者にも自分とじっくり対話をしてほしいから。

とはいえ、私の性格上、『静か』だけで終わりたくなくて、今日みたいにわーっとみんなでシェアもしたい。

だからユーモアは大事。そう思っていると、こういう、ユーモアを研究してきた西浦先生なんかに出会うわけですよ(笑)。」

皆「(爆笑)」

吉満「面白いなー西浦さんって(笑)。『そんなことしてたんだ』って今日思ったし、だから好きなんだって思いました(笑)。なので、静けさとユーモア、両方ワンセットで必要。」

西浦「『静けさ』っていうと、なんだか一番、吉満さんから遠そうですよね。」

吉満「ですよね。このモットー、かつての上司がびっくりしてたということを風の便りで聞きました。

私のことが書かれた新聞記事を見つけて、『ユーモア』はまだ納得できるけど『静けさ』っていうのが全然納得いかないなぁって、言ってたらしくて(笑)。」

西浦「僕もしばらくは、『狂気とユーモア』かと思ってた(笑)。『え、静けさ? あ、狂気じゃないんですね。』みたいな(笑)。」

吉満「まぁ否定はできないけど…(笑)。」

西浦「でもそういうのがあったから、今の吉満さんがあるんですね。」

吉満「あの大学生の時のすごくいびつな、暗い、でこぼこした不器用な私のことが嫌いになれない。

今あの時の自分に会えるんだったら、『よく頑張ってるね、つらいよね。つらいと思うけど、よく玉ねぎの皮むいてると思うよ。その玉ねぎむいてくれたおかげで20年後私はとってもシンプルになってる。』と言ってあげたいです。」

西浦「自分だったら何言うかなぁ。20歳くらいの自分にってことですよね。」

吉満「そうそう。」

西浦「どっちにせよ『つらかったよな』って感じになりますよね(笑)大体つらいもんなぁ20歳前後の時なんて(笑)。」

吉満「そうね、大体つらいよね、そのころなんて(笑)。

あの時はとても苦しかったし、へたっぴだったし、コミュニケーションも全然取れなかった。

例えば、著者と取材にいって、その時の雑談も何話したらいいかわからなくて何も話せない。経験がないからしょうがないですよね。

場数の違いだと今は思うけれど、あの頃は『なんであの先輩みたいにこの著者に気持ちのいい時間を上手に作ってあげられないんだろう。悔しいな。』と思う気持ちばっかりが20代だったな、と

『本当に、あの時の私が頑張ってくれてよかった。歯食いしばってくれてよかった。すごい幸せがきたよ』と言いたいです。

あの人が、あんなにも不器用に、でもまっすぐになにか自分にとっての大事なことを苦しがってくれたから今の私がいるかなって思えるし、だから西浦さんと出会えたんでしょうね。」

西浦「おかげさまで。」

吉満「おかげさまでほんとに。」

西浦「当時の吉満さんありがとうございます(笑)。」

吉満「私もあの、お笑い番組をみてたあなた方ご兄弟にお礼を言いたいですよ(笑)。『おもろいよ』と言いたいです(笑)。ありがとうございます。」

[完]

book cafe SENJU PLACE

最後に…カフェの紹介を少し。

センジュ出版併設のカフェ 『book cafe SENJU PLACE』では、珈琲や紅茶などの美味しい飲み物と店長の気まぐれ焼き菓子を販売しています。

私たちが取材でお訪ねした時は、焼き菓子が『クランチチョコ&ブルーベリーマフィン』、『奄美産みかんのマフィン』、そして季節限定ドリンクで『自家製かりん紅茶』が販売されていたため、これら3つをみんなでいただきました。
どれも美味しく、その場にいた全員で「ウマ!!!」と言いながらいただきました(笑)。
全て素材の味がしっかりとしていて、ほっこりとするお味で、このカフェの場所、そしてセンジュ出版の温かい雰囲気、吉満さんの人柄を出しているなと感じました。
本に囲まれた素敵なカフェです。
千住を訪れた際、よろしければぜひ一度お立ち寄りください。

カフェの詳細は、センジュ出版のサイト内にございます。(http://senju-pub.com/shop/

その時の様子を少しだけ……

(おもむろに食べだすみんな)

西浦「え、うま。え、うっっま。」

嵯峨「おいひい。(もぐもぐ)」

善波「うまい。」

竹田「あの、何か食レポしていただけませんか…??」

西浦「ウマ!!!!!!!(全力)」

竹田「いや、語彙力!!!!!」

※コントみたいですが、実際の光景です(笑)。

読者の皆様、5週にわたりお付き合いいただきありがとうございました。
「吉満さん × 西浦さん」対談シリーズはこれにて終了です。
インターン生である学生の私たちが企画をし、取材をし、記事を書き、編集したものですので、まだまだ至らない点などは多くあり、吉満さんからもたくさんご指導いただきました。
これからこの経験を生かし、経験を重ね、さらに多くのことを学んでいきますので、別の記事で少しでも私たちの成長を見せられればと思っています。
次回はまた、別の記事でお会いしましょう!!
本当にありがとうございました。

ライター・編集・写真:竹田

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神奈川県出身。相模女子大学3年 学芸学部メディア情報学科所属。

暇さえあれば洋画や海外ドラマをみてる海外モノ好き。本ももちろん、海外モノに惹かれがち。ファンタジーなど、現実味のない作品をこよなく愛します。

西浦さんとは大学で行われたセミナーでご縁があり、出版TIMESのインターン生として、現在、学生出版プロデューサーとして活動。


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