出版プロデューサーの西浦です。
今日は12月25日、クリスマスです。あなたはどう過ごされますか?
「クリスマス」と言えば日本では恋人たちが高級レストランの「クリスマスディナーコース」を楽しみ、あるいは子供たちがプレゼントをもらってはしゃぎ倒し、だいたいお父さんやお母さんがプレゼントのおもちゃを組み立てさせられるっていうのがよくある風景ですね。
もちろんケンタッキーとピザでパーティっていうのも楽しく、基本的に僕は好きなシーズンです。
そういうクリスマスもいいのですが、この時期クリスマスにちなんだ本を読んでみると、クリスマスの過ごし方が例年と少し変わるかもしれません。
2時間もかからず読める短編でおすすめの「クリスマス・キャロル」をご紹介します。
目次
「クリスマス・キャロル」ってどんな本?
イギリスの作家「チャールズ・ディケンズ」の短編。1843年に発表され、解説によればヴィクトリア女王から市井の子供たちまでが親しんだ、国民的名作だそうです。主人公であるスクルージは、並外れた守銭奴で有名なケチで冷酷で町じゅうの嫌われ者という人物。そんな彼のもとにクリスマスの精霊が現れ、過去と現在、そして最後に自分の未来を知ることに。。。
以下ネタバレありの解説。
スクルージにはかつて共同経営者にして、唯一の友人だった、今は亡きマーリーという男がいました。その彼がクリスマスイヴの夜、亡霊としてあらわれます。
マーリーの亡霊は腰に長い鎖を絡ませており、その先には金庫、鍵束、南京錠、総勘定元帳、権利書などの数珠繋ぎ・・・マーリーは「これは私が生きていた時に、自分で鍛えた鎖だよ。環を一つずつ、作っては繋いでここまで長くした。それを私は、自分の意思でこうして結わえているのだよ。この形に見覚えはないか?」と言い、スクルージの後ろにも同じものがとぐろ巻いていると宣告します。
亡霊はスクルージに「人はみな隣人、同胞と進んで広く交わって、心を通わせなくてはいけない。そのためには遠路をいとわずどこへでも出かけるようでなくては駄目だ。
生きている間にそれをしないと、死んでから重荷を負って歩くことになる。あちらこちらと彷徨って、悲しいかな、出る幕がないことを思い知らされる破目になるのだよ。本当なら、世の人々と手を携えて、幸せを実現できたかもしれない場面に行き逢いながら、指をくわえていなくてはならないんだ」と告げ、そして自分と同じ運命を辿らぬように忠告に来たと伝えます。
その後、過去、現在、未来のクリスマスの精霊がスクルージを訪れ、彼にいろんなクリスマスの幻影を見せます。
過去では貧しく孤独だった少年時代の自分と、当時家族の温もりを求めていたことを思い出します。
ちなみにこの過去編では著者のディケンズ本人の自伝的要素も含まれています。
次いで現在のクリスマスでは貧しくも、温かく幸せなクリスマスを過ごす家族を見せられます。それは自分が冷たく扱っている助手の家族であったり、邪険に扱われてもクリスマスを一緒に過ごさないかと声をかけてくれる甥っ子の家族です。
過去の自分を思い出し、心を取り戻したスクルージは甥の家族とのクリスマスを幻影ながら心から楽しみます。また、助手の家族にいる足の悪い「タイニー・ティム」が長生きできないことを知り、心からうろたえます。
しかしそういったときには必ず精霊たちに、かつて自分が人々に吐いた冷たいセリフで返されるのです。「死ぬものなら、さっさと死ねばいい。余分な人口が減って、世のためというものだ」というような。
そしてすっかり心を入れ替えたスクルージのもとへ、未来のクリスマスの精霊が現れます。
全身を黒衣でおおった姿は、作中では触れられないものの、まるで死神のようです。
未来の精霊は言葉も発さずに、未来のある死者のもとへスクルージを連れていきます。だれもその死を悼む者はなく、それどころかその死者からかすめ取った盗品を誇り、売り買いの種にする様を見せられスクルージは嫌悪します。
しかしその死者の墓碑銘は「エベニザー・スクルージ」つまり自分だったのです。未来の世界では幻影でしかないスクルージには、その碑銘を拭い去ることはできません。
「これからは年中クリスマスを祝う心を忘れない」と誓って、スクルージは現世へと帰ります。まさにクリスマス当日の朝。貧しい助手の家に匿名で大きな七面鳥を贈り、寄付を断った男を見かければこちらから寄付を申し出、道行く人たちと「メリークリスマス!」と声を掛け合い、甥の家にはじめて顔を出し、クリスマスを楽しみました。
その後もスクルージは「タイニー・ティム」のために第二の父親となり、さらには周囲から慕われる、良き友、良き商売相手、良き先達となり「クリスマスの精神を本当に知る人がいるならば、それはスクルージだ」と言われるほどになりました。
以上が「クリスマス・キャロル」の要約です。
クリスマスの精神はプレゼントそのものではなく、相手への心
隣人への愛情、他者への親切といった「人と交わり心通わせる」ことがクリスマスの精神であると、本作を通してディケンズは我々に語りかけます。
僕らにとってクリスマスは外食やプレゼントがどうしても先にイメージされてしまいますが、クリスマスにこの本を読むことで、親切心といったクリスマスの精神を抱いて、道行く人みんなに対していつもより少し温かな心で過ごせると思います。
人への貢献や奉仕の精神は、テレくささや打算が働き、素直に表現するのはハードルが高いこともありますよね。
しかし自分の死に様が第三の精霊が見せたようなものだと思うと・・・少々ショック療法ですが、素直に良き隣人であれそうな気がします。
年に一度クリスマスの朝に読み返すのも良いのではないでしょうか?
あなたに温かなクリスマスが訪れますように。メリー・クリスマス!
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