小説・文学の種類、ジャンルを徹底解説【完全版】

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本好きの中には「小説好き」な人が多いですが、ひとくちに「小説」と言っても、「恋愛小説」「ミステリ」などジャンルごとに作品の雰囲気はガラッと変わります。

そこで本好きなら一度は思う「小説って、いったい何種類あるのだろう?」という疑問について、解説します。

この記事を読めば小説・文学の種類(ジャンル)はもちろん、日本における文学の歴史や、代表的な作家についてなど概要も知ることができます。

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本記事の内容を16分強の動画で解説しています。

記事と一緒にぜひご覧ください!

▼小説・文学のジャンル/種類を徹底解説

目次

小説の種類と分類を解説!

小説の種類を整理するにあたって、まずはその分け方(分類方法)について整理します。

【小説の分類方法】

  • ジャンル
  • 物語の長さ
  • 作風
  • 時代背景や思想
  • 国や地域

すぐに思いつくのが、作品のテーマがどの「ジャンル」に当てはまるかという分類方法です。

恋愛を主題としていれば「恋愛小説」、謎解きがメインであれば「推理小説・ミステリ」といった分け方ですね。

しかし他にも、ストーリーの長さで分類したり、作風や時代と思想背景で分類することもあります。

国や地域で分ける方法もありますね。

 

以下でひとつひとつ解説していきます。

小説のジャンルで分類

もっともメジャーなのが「ジャンル」で小説の種類を分ける方法です。

それぞれ代表的なものを取り上げつつ、さらに細かいジャンル分けや、近いけど異なるジャンルなども紹介しています。

SF小説

SF=サイエンスフィクションの略称。科学的な知識をベースに書かれた小説。

ファンタジーと違い「科学的な理屈・裏付け」をベースに、そこから想像力を発揮させて書かれる。

未来の地球や宇宙が舞台になることが多いです。

珍しいところでは『竹取物語』や『浦島太郎』もSFに分類されることがあります。(月文明との交流やタイムワープという解釈)

恋愛小説

そのままズバリ、恋愛を主題に描かれる小説。

恋愛は、他のジャンルでも両立させやすく、いろんな作品の中で描かれます。

「恋愛要素があればすべて恋愛小説」ということもできますが、どちらかと言えば「恋愛がメイン」のものを恋愛小説と呼ぶことが多いです。

主な作家:山田詠美、島本理生

青春小説

恋愛小説と近いジャンルに「青春小説」があります。

こちらは恋愛に限らず学生時代の友情や、部活などを舞台に描かれる作品を指します。

かなりの確率で恋愛が含まれますが、恋愛要素が無くても成立します。

ファンタジー(幻想小説)

魔法やドラゴンなどが存在する、空想上の世界を舞台に行われる物語・冒険活劇。

『ハリーポッター』や『指輪物語』に代表される。

SFのように「科学的な裏付け・知識」ではなく、伝承や神話をベースに世界観を構築するものが多い。

主な作家:小野不由美、田中芳樹

推理小説・ミステリー小説

謎解きが主題となる小説。「事件」が発生し、その解決に向けてストーリーが進行していきます。

事件は

  • 「誰が犯人か」(フーダニット/Who done it)
  • 「どんな手口か」(ハウダニット/How done it)
  • 「動機は何か」(ホワイダニット/Why done it)

の解明がメインとなります。

「クローズドサークル」と呼ばれる有名な設定が存在し、「吹雪の山小屋」や「孤島」など、外界と遮断されその中で犯人捜しをする(たいてい途中で犯人が第二第三の犯行を行う)ものがあります。

主な作家:東野圭吾、京極夏彦

イヤミス

ミステリ小説の一分野として「イヤミス」が存在します。

これは「読むと嫌な気分になるミステリ」のことで、ミステリの持つ「謎が解けてスッキリ!」という読後感を崩したものです。たいてい救いのない物語で、個人的にも苦手です(でもなぜか魅かれる…)

主な作家:真梨幸子、湊かなえ

ホラー小説(怪談小説)

「恐怖」をテーマにした小説。怪談や妖怪、幽霊、呪いなどが登場します。

ただ物語の構造上謎解きになることがほとんどで、書店の棚でも推理・ミステリの中やその隣に分類されることが多いです。

ゾンビものや、ウィルス・パニック系もこのジャンルに含まれやすい。

政治小説

政治や政治家を主題とする小説。

実際の政治上の出来事を扱ったものから、フィクションまで存在する。

政治家自身が執筆することも多く、石原慎太郎氏が「故・田中角栄」氏を描いた『天才』などが好例。

また、何度も映像化・舞台化された有名な『レ・ミゼラブル』(ヴィクトル・ユーゴ―著)も、フランス7月革命を背景とした政治小説といえます。

歴史小説

実際の歴史に即したストーリーを、小説として描いたもの。

日本を舞台にした場合、「戦国時代」「明治維新」を扱ったものが人気。

中国の「三国志」と並んで「日本人が好きな歴史小説テーマ人気トップ3」です。

主な作家:司馬遼太郎、吉川英治

時代小説

歴史小説と似たジャンルに「時代小説」があります。

こちらは「史実に基づかない歴史フィクション」であり、登場人物も架空の人物です。

「時代劇の小説版」と考えるとわかりやすいでしょう。

主な作家:山本周五郎、藤沢周平

ライトノベル

ライト(light+ノベル(novel)の和製英語。通称ラノベ。中高生を主要ターゲットとしたノベルス。

恋愛、ファンタジー、ミステリ、ホラーなどさまざまな内容が書かれるが、挿絵・イラストのイメージが非常に重要で、少なくない読者が「イラスト買い」しているのが特徴。

はじまりは諸説あるが、電撃ゲーム文庫の『ブギーポップは笑わない』『キノの旅』など「セカイ系」と呼ばれた、「漫画・ゲーム・アニメ的な空気感」の作品たちが現在のラノベ直系の系譜か。

主な作家:鎌池和馬、西尾維新

児童文学

小学生以下の児童を主に対象とした、子供向けの小説。書店の児童書コーナーに、各社の児童文学レーベルがある。

書き下ろしはもちろんだが、元々が大人向けに書かれた小説であっても、児童文学向けに言葉遣いを直したり、ルビを振り直し、挿画も現代風に描き下ろしたものなどが存在する。

主な作家:原 ゆたか、上橋 菜穂子

ヤングアダルト

中高生を対象とした、児童文学と一般小説の、中間のジャンル。YAと略される。

ライトノベルも同じ年代をターゲットにしているが、ラノベほどゲーム・マンガ的要素はなく、児童文学から一般小説までの正統進化と言える。

とはいうものの、対象年齢が同じなので、イラストや挿画の雰囲気がラノベに似てくる傾向にはある。

主な作家:あさのあつこ、はやみねかおる

官能小説

性的描写を主とする小説。文庫判がすごく多い。

昔から男性向けの「女性との性描写」を描く作品が多いが、昨今は女性同士やBLなどジャンルも細分化されてきた。

また女性向けの場合、直接的な性描写より恋愛小説としての比重が大きいものも存在する。

物語の長さで分類(短編・中編・長編小説・ショートショートなど)

同じジャンルの小説であっても、短編~中編~長編、ショートショートなど、話の長さで分類されます。

何文字以上で長編、といった明確な定義は存在しません。

 

短編については「短編集」が存在することから、「短編=1冊の本にできないくらいの文量」といえるでしょう。

 

ショートショートは短編よりさらに短いストーリーです。SF・ミステリ・ユーモアが多く、印象的なオチを楽しむ作品が多い。

なかでも星新一は「ショートショートの神様」と呼ばれたほどの名手で、ショートショート=星新一と言っても過言ではありません。

作風で分類

小説は「純文学」と「大衆文学」という二つの作風で分類されます。

純文学

作品の芸術性に重きを置いている小説のこと。物語の面白さのみを評価の対象としない。

分かりやすい例としては「芥川賞」(芥川龍之介賞)の対象作品。

(芥川賞は無名・新人作家のみを対象としているため、中堅以降有名作家は対象外です。ご注意ください)

大衆文学(エンタメ小説)

大衆文学(エンタメ小説)とは、娯楽性を重視した小説のこと。物語の面白さや心情描写などを評価の対象とする。

分かりやすい例としては「直木賞」(直木三十五賞)の対象作品。

※基本的には上記のように分けられますが、昨今ではこの境界も曖昧になってきていると言われています。

時代背景や思想で分類

より学問・研究的な分類として、小説の書かれた時代や思想でも分けられます。

啓蒙期

民衆を導こうとする明治初期の文学。西洋文化の翻訳・紹介が多数。

明治期に入ると西洋文明をどんどん取り入れていこう、西洋的なものなら何でも良い、とさえ言われた「文明開化」が興ります。

 

実は明治以前は、学問一般を指して「文学」としていました。※1

そのため小説、戯曲などは当時、文学として認められていませんでした。※2

よってこの時代の文学は学問的側面が強く、福沢諭吉の『学問のすゝめ 』など、西洋の思想を紹介する啓蒙文学が流行しました。

啓蒙文学の代表:福沢諭吉

※1:「文学」と「文学批評・研究」(2) ――明治期における「文学」の形成過程をめぐる国民国家論(9)、55頁。
※2:「文学」と「文学批評・研究」(2) ――明治期における「文学」の形成過程をめぐる国民国家論(9)、57頁。

写実主義とロマン主義

それまでの啓蒙主義的な文学に対し、坪内逍遥の『小説神髄』によって、「客観描写」の重要性が説かれました。

以降、「現実をありのまま伝えよう(戯作や勧善懲悪は現実的でない)」とした写実的な小説が広がり、小説が文学として確立していきます。

◼︎写実主義:現実をありのまま伝えようとした文学。明治20年前後の文芸潮流。近代文学の出発点。
写実主義文学の代表:坪内逍遥(つぼうち しょうよう)など

◼︎ロマン主義:感情優位の強調、空想・恋愛重視など、開放的な自由を求めた文学。ヨーロッパのロマン主義の影響を受け、明治20年ごろから展開。
ロマン主義文学の代表:徳富蘆花(とくとみ ろか)など

※近代以降の文学の大まかな流れはこちらを参考にしています。

参考文献:山川出版社『日本史B用語集』

自然主義と反自然主義

◼︎自然主義: 自然や社会を見つめ、その負の部分も伝えようとした文学 。ロマン主義からの脱却を志向、写実主義を継承している。私小説や心境小説へと展開。

自然主義文学の代表:田山花袋(たやま かたい)、島崎藤村など

◼︎反自然主義: 自然主義に相対した文学のこと。反自然主義のなかでも、象徴派・耽美派などさらに細分化される。

反自然主義の代表:夏目漱石、森鴎外など

参考文献:山川出版社『日本史B用語集』

モダニズム文学とプロレタリア文学

◼︎モダニズム文学:大正末期から昭和初期の文学運動の一種。前衛的な表現方法を求めた。
モダニズム文学の代表:川端康成など
◼︎プロレタリア文学:労働者(プロレタリア)が、資本家(ブルジョア)に対する怒りや叫びを文学として表明したジャンル。「プロ文」と略されることも。
プロレタリア文学の代表:小林多喜二など

現代文学

主に第二次世界大戦後に書かれた文学。
現代文学の代表:太宰治、坂口安吾など

書かれた国で分類

アメリカ文学、イギリス文学などその土地・地域発祥の文学を指す分類法。

英文学と言った場合、「イギリス文学」を指す場合と、アメリカ文学等も含めた「英語圏の文学」の意味の場合もあります。

参考リンク
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