6月2日に安室奈美恵さんのライブツアー「namie amuro Final Tour 2018 ~Finally~」に参加してきた出版プロデューサー西浦です。国内75万人の定員に対して500万人を超える応募があったというから、15%の人しかチケットを入手できなかったことになります。今朝テレビで知ったのですが、会場には音だけでも聴きたい、近くにいたいと関東以外からもファンが駆け付け、ドアに耳を押し当てたりされていたようです。その姿にも「すごいことだな」と感じました。25年かけて500万人を動かすまで到達できるのですね、人間というのは。
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新刊はしんどい
さて、僕が出版社の販売部にいたころ、毎年1000冊くらいの本のマーケティングを担当していました。(もっと多かったかも?新刊だけで400冊くらいあった)
学習参考書や児童書のような、既刊の売り上げがけっこうな比率を占めるジャンルと違い、基本的には新刊で売り上げを作っている「一般書販売課」という部署の所属でした。
実用書定番っていう、料理本のような定番本の常備セットを組んで、毎年営業かけてましたけど、先輩の担当だったので、僕はとにかく新刊で売り上げを作るのが仕事です。
児童書出版社や参考書の出版社を除けば、たいていの出版社がほとんど新刊で売り上げを立てています。
想像してもらえれば分かると思うのですが、毎年毎年、新刊で目標売上を達成するのはしんどいのです。
作業的にも、精神的にも、もちろん利益率的にも。
新刊は「つくる」という時間的・人的リソースを使います。かたや既刊はもう出来上がってるものを増刷するだけだから、このコストは不要なのです。
既刊で、毎年安定した売れ行きが見込めるものは、正確な売り上げ予測が立てられます。これは売れるかどうかわからない新刊にくらべて非常に精神衛生上良いのです。
利益率ですが、当然増刷すればするほど原価率は下がり、利益が出やすい体質になっていきます。
ロングセラーは出版社の経営を安定させる
つまり出版社から見て、一番ありがたいのはロングセラーの本。長く売れる著者が求められているのです。
ロングセラー商品は「楽に、安定して、儲かる」と非常に都合がよく、経営を安定させてくれる素晴らしいものなのです。
この特徴が顕著なのは児童書で『はらべこあおむし』とか『ぐりとぐら』なんて、売れるのはわかっているわけですから「お金を刷ってるようなもんだ」と、昔、上司が心底うらやましそうに言ってました・・・(笑)
実際、『ぐりとぐら』の版元、福音館書店さんは出版社の初任給ランキング常に1位ですし、平均年収も1200万円と聞いたことがあります。
経営基盤の安定ぶりがうかがえますね。
というわけで当時の僕のように、新刊だけで売り上げを立てるのはしんどいのです。
「優秀なロングセラーが欲しいなぁ」と思いながら、みんな仕事をしています。
そんな「一般書担当」の僕ですが、児童書や学参ほどではないにせよ、ロングセラーの本も数冊あったのです!
長く売れる仕組みを先に作る
ロングセラー本は発売から何年も経っているし、広告も出してなければ、マスコミで取り上げられたわけでなくとも、気づけば在庫がなくなっているのです。
売れる本の在庫を切らさないように、増刷をかけていく「在庫管理」も僕の大事な仕事です。
ハデではないが安定的に在庫が減っていく本は安心して増刷をかけられます。
さらに毎年決まった時期に1000冊とか、著者からまとまった注文などがあると、それを見込んで大きめの部数で増刷できました。
増刷のロットは利益率を考えると2000冊以上、できれば3000冊からかけたいところです。
つまり書店さんからの注文はもちろん、著者からの買取や企業からの採用も含め、毎年2000冊~3000冊出荷が見込めれば、毎年増刷がかかります。
買取や採用だけでこれを達成し続けるのはしんどいので、著者としては毎年安定して本が売れていく仕組みを作る方が楽ですね。
それが「著者メディア」です。
まだ本を買っていない読者を集め、ネット書店や、町の本屋さんへ誘導し、とにかく「本を買うきっかけを作る」のが著者メディアです。
もちろん本だけでなく他の商品も売っていいのですから、やらない手はありません。
クライアントさんにはすでにPB商品を作って販売している方もいます。(これがまた5000円以上の商品でも、すごく売れているらしい)
毎年3000冊を、安室さんのように25年続けられればそれだけで75000部です。新刊の時に勢いよく売っていれば10万部はかたい、20万部も狙えます。
何よりも長く売れる本は絶版になりませんし、それが売れ続けていることが呼び水となって、他のチャンスもめぐってきます。
出版社にとって一番ありがたい「長く売れる著者」になるために、仕組み作りから始めましょう。
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