
どうも出版プロデューサーの西浦孝次です。
今回のテーマは
「生成AIの未来、コピーライト・ロンダリングの闇」です!
「AIに原稿を書かせて楽々出版~」なんて広告を見かけたことはありませんか?
これ、けっこう危険な臭いがプンプンします。
個人的には著者はもちろん、あらゆるクリエイターさんは生成AIの利用にすごく慎重になるべきと考えています。
というのも日本は著作権上、AIに著作物を機械学習させることが認められているという考えが主流だからです。
ただ、アメリカではすでに訴訟にもなってますし、今後日本もこの流れになっていくんじゃないかと思いますので、生成AIの「著作権」問題について解説していこうと思います。
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目次
コピーライト・ロンダリング
読売新聞オンラインの「生成AI考」シリーズの記事を読んでいて、気になる言葉を見つました。
それが『AI無断学習で作画「私の作品のつぎはぎだ」…コピーライト・ロンダリングがもたらす「文化の衰退」
という記事に出てくる「コピーライト・ロンダリング」という言葉ですね。
これは生成AIの著作権問題を非常に上手に言い表しているなと思いました。
要は「マネー・ロンダリング」(資金洗浄)みたいに、他者の著作権を洗浄して自由に使えるものにしてしまう行為です。
生成AIの問題については日本でも議論されましたが、アメリカではこういった著作権周りについての議論が良くされている印象です。
特にイラストレーターさんの作品を無断で読み込んで、その人の画風に似せた作品を生み出しているケースが多く、ある有名イラストレーターさんは無断で読み込まれて生成された画像が「自分の名前で検索した時に表示されてしまう」という現象まで起きているそうです。
つまり勝手にその人の絵を学習させたAIによって生成された画像が、その人の名前の検索でこれまたAIによって上位表示されているんですよ。
「わたしはこんな絵を描いていない!」って思わず怒りたくなるでしょうね。
AIがコピーしたまがい物を、自分の作品かのように見なされているわけですから。
海外の人気イラストレーターさんの中には、AIに自分の名前や作品を学習させることを拒否している人も増えているそうです。
こういったコピーライト・ロンダリングが進めば、自分が考案したキャラクターやイラストを機械学習させられ、著作権侵害されてしまう可能性があるんです。
実際、さっきの読売新聞オンラインの記事でも30歳代のイラストレーターさんが、業務委託でアニメ風のキャラクターデザインを手掛けていた会社が生成AIを使って、無断でそのキャラクターのイラストを生成して販売するようになったそうです。
もちろんその男性に仕事を依頼することはなくなったと。
これは完全にクリエイターの権利を侵害していると思うんですが、日本の法律上はまだ許されているらしいんですよね。
機械学習 無法地帯 日本
海外ではコピーライト・ロンダリングが訴訟などにもなっているわけですが、日本は逆に「機械学習の無法地帯」と化しています。
その理由は2018年に設けられた著作権法30条の4で
当該著作物に表現された思想又は感情を
自ら享受し又は他人に享受させることを目的としない場合には
その必要と認められる限度において、いずれの方法によるかを問わず、利用することができる。
というなかなか難しい文章なんですが。
「思想又は感情の享受」を「目的としない場合には」利用(機械学習)してOKと言ってます。
とりあえず利用することができる。とあるので全部OKって感じになってるんですが、実際には
著作権者の利益を不当に害することとなる場合は、この限りでない。
というとっても大事な一文があります。
だから先ほど例にあげた30歳代男性イラストレーターさんのケースだと、明らかにクリエイターの利益を不当に害することになっているわけだから問題があると思うんです。
今後こういった著作権者の利益を侵害する事例が出てくれば、著作権法自体も見直されるんじゃないかなとか、運用の段階でもっと明確な違反ガイドラインなども出てくるのではと思います。
米Amazonで 生成AI使用申告義務
具体的なガイドラインということで、例えばアメリカのAmazonではKindle用電子書籍出版サービス「Kindleダイレクト・パブリッシング」のコンテンツガイドラインが2023年9月に更新され
・出版するコンテンツ(テキスト、画像、翻訳)を生成AIベースのツールによって作成した場合は、申告することを義務付ける。
・ガイドラインに従っていないことが判明したコンテンツは却下または削除される。
条項が追加されています。
これは全米作家協会は「AI能登レーニングに作家の作品を無断で使わない」よう求める書簡を出していて、それに受けて行われた措置とされています。
こういう風にですね、法的にあいまいな部分があっても業界団体の声明を受けて企業やプラットフォーム側が規制に動いていたり、著作権法保護の方向に動いているんですね。
だから
「AI使えば楽じゃん!」
といった動機でコンテンツ作りに安易に生成AIを利用すると、意図せずに「コピーライト・ロンダリング」に手を染めてしまう可能性があります。
法律ってけっこう時代によって、扱いが変わってくるじゃないですか。
ファスト映画も最初は放置されてましたけど、逮捕者も出たし、多額の賠償金も請求されてます。
あれも著作権侵害ですからね。
著作権侵害ダメ!絶対!のスタンスでいきましょう。