『かみさまは小学5年生』35万部ヒットの秘密を初公開!【岸田健児さん対談1】

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かみさまは小学5年生』35万部(すみれ著)や『しなくていいがまん』(小林麻耶著)などベストセラー連発の編集者、サンマーク出版の岸田健児さん。

出版プロデューサーの西浦孝次が岸田さんの「ヒットの法則」を暴く対談をシリーズ化してお届け!

第一回の今回は、『かみさまは小学5年生』の制作秘話をメインに、岸田さんの考える「本の作り方」を聞いてみました。
岸田さんが作り上げた『かみさまは小学5年生』は、どんな過程を経てベストセラーになったのでしょうか?

インタビュアーは学生出版プロデューサー竹田でお送りします!



『かみさまは小学5年生』の始まり

―――ではまず、『かみさまは小学5年生』という本についてお伺いしていこうと思います。よろしくお願いします。

大ヒット中の本作ですが、タイトルのインパクトや著者が小学生であることなど、驚きの連続ですよね。

一体どういったきっかけで生まれた本なんでしょうか?

岸田健児さん(以下岸田)まずは企画の面白さという意味でいうと、著者がそもそも個性的ですよね。

実は『胎内記憶』というテーマはすごくたくさん類書があるジャンルなんです。

その土俵に自分の企画した本を乗せるとして、『どう個性を出そうか』を考えたときに、今回は“誰が伝えるか”の部分で個性を出そうと思ったんです。

このジャンルのヒット本だとまず、池川 明(いけがわあきら)さんという方の本が売れています。

これは『お医者さんが胎内記憶を語る』という切り口ですね。

他には、いんやく りお君という子の書籍で「胎内記憶を持った子の『お母さんが語る本』があります。

さらには、大学の教授が、日本中の胎内記憶を持っている子供を取材したドキュメンタリーの本も。

でも胎内記憶を持っている『本人が語る本』はないじゃん!と思ったんですよ。」

西浦孝次さん(以下西浦)「確かに!言われてみればそうですね。」

岸田「だから胎内記憶を語る上で、一番説得力があるんですよ。」

西浦「なにせ本人が言っているんだもんね。」

岸田「それで、『これはあるな』と思ったと。そんなボヤっとした企画がずっと自分の中にありました。」

主観が面白いほど、個性になる

岸田「それこそ2〜3年前から『胎内記憶を持つ本人が語る本』があったら売れるだろうな、とふわっと思っていたんですが、そんな著者なかなかいないんですよ。」

西浦「確かに、いない。」

岸田「そもそも批判が厳しいこの時代に著者を子供に立てて、出版していいのかすらわからないし。」

―――ちなみに、口を挟んでしまって申し訳ないのですが、胎内記憶とは何なんでしょうか?

岸田「ああそっか。胎内記憶というのは、まず『おなかの中にいるとき』の記憶。

もう一つはちょっと怪しい話になるんですけれど、『おなかに来る前」の記憶。

いわゆる天国とかあの世とかいわれているところに、魂がいる時の記憶と、お母さんのおなかにやってきて生まれるまでの記憶という二つがありまして。」

西浦お母さんを選んで生まれてきた的なやつですよね?」

岸田「そうですそうです。空の上からお母さんをみて、『このお母さんのもとに生まれたい』というのを決めて生まれてくる、みたいな。そのときの記憶が残っているというのが胎内記憶。

池川 明さんの話によると、胎内記憶研究を始めてみると、

  • 『お母さんを空の上からみてたんだよ』とか、
  • 『おなかの中はこんな景色だった』とか、
  • 『空の上って噴水があるんだよ』とか、
  • 『神様ってこんな人だよ』とか、

そういったことを言う子供が、たくさんいるってことが分かったらしいんですよ。

しかも日本だけかと思ったら海外でも同じことを言う子供が大勢いることが判明したらしいんですよね。

そのとき、彼が『これは真実だな』と思ったと。

だから、『本当かどうかわからないけれど一応世界中の子供が言うってことは、子供がその世界を見てるってこと自体は本当なんだな』という見解です。

今はそこまでしか調べはついていないらしいんですけれど、これが胎内記憶です。」

―――なるほど、ありがとうございます。

岸田「それで、胎内記憶を持ってる本人が語る本があったら売れるだろうなとずっと思っていたら『かみさまとのやくそく』という映画があって。

荻久保監督という方が作った作品で、それこそ胎内記憶を持った子供を取材した映画なんですけど。

そこにすみれちゃんが出ているんですよ。

その映画には30〜40人くらいの子供が出ているんですけれど、すみれちゃんだけ自分の言葉で話してるなと思ったんですよ。」

西浦「へぇーーーーー!」

岸田「他の子供は楽しそうに『空の上には噴水があってさー』くらいで終わるんですけど、すみれちゃんは、それに対して自分がどう思っているかみたいなこととか、『戦争はダメだ!って神様が言ってた』とか、他の子と違って、より詳しいんですよね。

それを見て、あ、この子著者っぽいなーと思って。」

西浦著者っぽいかー。

あえて否定的なこと言いますけど、あくまで『小学5年生の中では』ってことでしょ?」

岸田「はい、でも自分の言葉で伝えられそうだなと思いまして。」

西浦「なるほど。たしかに著者に自分の言葉を求めますもんね、編集者は。」

岸田「そうなんですよ。この子だけメッセージに個性があるなと思ったんですよ。」

西浦「その自分の言葉で伝えられるというのは、もう少しかみ砕くとどういう表現になりますかね?」

岸田「なんて言ったらいいですかね…。

僕スピリチュアルって実はそんなに好きじゃなくて。」

西浦「それ書いて大丈夫なやつですか?(笑)」

岸田「好きじゃないっていうと、あれなんですけど(笑)

あんまり信じていない立場で見るようにしてるんですよね。」

西浦「うんうん、僕と一緒です。」

岸田「著者と同化しちゃうと、怪しいメッセージを怪しいまま伝えちゃうので。

それは編集者の仕事じゃないと思っていて。」

西浦「ただの教祖と信者で作った経典になっちゃいますもんね。」

岸田「そうそう。そうじゃなくて、ちゃんと読者に橋渡しをするために著者が言っていることを疑いたいと思っていて。

そういう意味で(あえてめちゃくちゃひどい言い方をすると)『スピリチュアルは個人の感想でしかない』と思っているんですよ。」

西浦「こう思うよ、以上のものではないという。」

岸田「はい。だからある意味主観なんですよね。

エビデンスが重要視される実用書とは違ってスピリチュアルは“主観”の本なんですよ。」

西浦「実績とかないっちゃないですし、客観がそもそも関係ないジャンルですよね。」

岸田「だったら、その主観が個性的であればあるほど、著者になるんじゃないかと思って。

そういう意味ですみれちゃんは著者としての主観がとても際立っていたんですよ、他の子と違って。

例えば、『コーヒーは苦い』だけじゃなくて、『この苦みの中にちょっとだけコクと甘みがあってね』とか語れる方が面白いじゃないですか。そういう面白さを感じたんですよね。」

西浦「いいですねー。ちなみにどこら辺に感じたんですか?」

岸田「どこだったっけなー?えーっと本に書いたんですけど…

あ、そうそう。『戦争はダメ』と言っているだけじゃなくて、それにちゃんと『私はこう思うからダメなんだ』と。

すみれちゃんは、ちゃんと人が納得する言葉で説明してくれるんですよ。

僕、小学生の甥っ子がいるんですけど、彼では絶対できないなと思って(笑)」

西浦「ははは(笑)」

岸田「そこに凄みを感じたんですよね。」

「スピリチュアル嫌い。」から、「ちょっと好き」に。


西浦「主観の面白さだけだと逆に僕なんか不安に思っちゃうんですね。

『頭の中で作ってるんじゃないか』とか思いませんか?逆に、上手すぎて。」

岸田「あーーー。」

西浦「説明しようとしているというか、相手を納得させようとする意図というか。」

岸田「さっきも言ったように、それは僕も最初『疑いフィルター』を存分にかけて聞いていたんですけれど(笑)

自分の腑に落とすために実は、毎回すみれちゃんに同じ質問をしてみたんですよ。」

西浦「ふむふむ?」

岸田「前回はこう言ったけど、次回変わってたらこの企画はあきらめようと思って。

そうしたら、毎回同じこと言うんですよ。

大人でも自分の発言ってコロコロ変わるじゃないですか。

なのにこの子はずっと一緒。

『だったらもう、この子が言っていることを全部信じて、この子の見ている世界を本にしよう』と思いました。」

西浦世界がちゃんと存在していると。

再生するたびに変わる作り話ではないってことですね。」

岸田「はい。そこからはさっきのスピリチュアル嫌いからちょっと距離を縮めて、ちょっとスピリチュアル好き、みたいなところまで来てます今。」

西浦「え、自分という人間が?それともその本に対して?(笑)」

岸田「すみれちゃんと本に対して。」

西浦「はいはいはい(笑)」

岸田「そこからはもうスピリチュアル本を『理解してます』というていで、進めています。」

西浦「なるほど。もう作り始めてからは、ちょっと引いた見方はしてない?」

岸田「してないですね。もうこの子の信じていることをただ1冊にしよう!みたいな。」

西浦「岸田さんのスタンスだと、本当に距離をとってやるのかと思っていたんだけれど。

作るとなるとそうやって入っていくんですかね?今回だけ?」

岸田「もちろん最後は納得してないと出版OKは出せません(笑)」

西浦「そういう意味ですよね(笑)」

岸田「はい。最後まで『この本つまんねぇ』と思いながらやっていないんで(笑)」

西浦「それはダメでしょう(笑)」

岸田「どこかで信じようと決める瞬間があるんですよ。

どこかでというか、自分が納得した瞬間なんですけど。

そして、納得していった経緯を編集に活かしてる感じです。」

西浦「なるほど!『本当かよ?』と思っている自分が―」

岸田「―どう納得していったのか、を。

西浦「それはつまり、自分が最初の読者で

これだけ疑った自分が納得したんだから読者も、なるほど!と思うだろう』ということですよね?」

岸田「そうです。それで、その部分を理由として書いているんですよこの中に。
たぶんさっき言った『言うことが変わらなかった』とかもこの中に書いてあります。」

西浦「そういうことか。」

岸田「だから本当だよ、みたいな。」

「面白い主観」の作り方

西浦「ちょっと話戻るんですけど、『著者としての個性は面白い主観』という良いキーワードがありましたよね。

それはたぶん、スピリチュアルは特にそうだと思うんですよ。

あと自己啓発とかも。

ビジネス書とか健康書みたく統計やエビデンスでガチガチに理論武装する本でなければ、結局は主観じゃないですか。」

岸田「そうですね。」

西浦「その面白い主観はどうやって育てるんだと思います?

岸田「面白い主観の作り方かー…。
とにかく僕がテーマにしてるのは『癒し』なんです。

感情の出口というか、この本を読んで読者にどうなってもらいたいかというと、やっぱり『癒し』なんですよね。」

西浦「それは企画する全ての本が『癒し』をテーマにしてるの?」

岸田「全て。

割と方向性があるじゃないですか。

『やる気にさせたい』とか、『熱狂させたい』とか。

僕はそれが『癒し』で。

だから、より癒せる言葉探しをしています。

というのは、他の本で申し訳ないんですけど、このタイトルとかまさにそうで。

『しなくていいがまん』小林麻耶

たぶん一般的な本だと『がまんしなくていい』という字面になると思うんです。

でも『がまんしなくてもいい』は、『そんなこと言われても我慢しちゃうんだよ!』というツッコみがあるんですよ。」

西浦「そう!僕その話すごく大事だと思います。ちょっと続けてください(笑)」

岸田「おっ、きたきた!!(笑)

我慢しなくていいって言われたってさー、我慢しちゃうんだよ』というツッコミがあるんですけど『しなくていいがまん』と言われると、『しなくちゃいけない我慢もあるのね。でもしなくていい我慢までしてしまってるのね。』というところで腑に落ちるんですよ。

そういった言葉選びはしていて。

何かこれは、主観のところのヒントになるのかな?」

西浦「なるほど、とどのつまり良い主観は納得感があるってことかもしれないですね。」

岸田「そうですね。」

西浦「その言葉に納得感があるか、そしてその人らしい個性を感じるか、ですね。

本のタイトルでは『〇〇さえすれば上手くいく』ということを、強くバシッと謳うじゃないですか、シンプルすぎるくらいに。

でもそのタイトルの単純さ、強さのせいで逆に『嘘つけ!』と読者に疑われたら負けだと思うんです。」

岸田「そうですねぇ(笑)」

西浦「著者が強者の視点で書いてしまって『食べる量減らして運動したら痩せる!』というようなことを書いてしまったら『それができないから本探してるんだろ』とツッコまれてしまう。」

岸田「だから、できる方法を提案するべきじゃないですか。」

西浦「ですね。だからこそ納得感がある言葉というのが著者の個性なんでしょうね。自分の主観が面白いかどうかは、読者の納得感でわかるんだ。」

納得感は本の強度


岸田「あとは、納得感があるキーワードをくれる著者もいるじゃないですか。」

西浦「いますいます。」

岸田「そこがあると、やっぱいいなと思います。

その本の強度だと思うんですよ、それが。」

西浦本の強度!ほう!」

岸田「はい。どの目線からつついても崩れないみたいな感じ。」

西浦「崩れる人いるわー…。

それとは別で『崩れないけど、面白くない』人もいるんですよ。

普通というのかな。」

岸田「うんうん、確かに」

西浦「納得感があるものは、結局『ふつう』になったからで、新しさはないんですよね。

納得感があって、新しさを感じるものが著者の個性。

そのまま熱狂の方向に走らせるのか、癒しの方向で受け入れてあげるのか。

あるいは違う方向性でもいいし。」

岸田「そうですね。

それで、僕は現状を受け入れる方向を提案したいという側の編集者で

なので今回も泣けるとか。

あ、泣けるというのは割と癒しだと思っているんですよ僕。」

西浦「なるほど。泣くことは癒しである。」

岸田「そこは目指したいなと思っています。」

西浦「SBクリエイティブの『ディズニー〇〇の神様シリーズ』あるじゃないですか。」

岸田「はい」

西浦「編集さんが言ってたんだけど、あのシリーズもキッカケは『泣ける動画を観るイベントにお金を出して集まる人が増加中!みたいなニュースを観て、泣きたいというニーズがあると思った』から企画したとおっしゃっていました。」

岸田「僕もそれは実感があります。

『泣ける』と謳ってる映画を観に行くと、観客が上映前にもうハンカチをヒザに置いてるんですよ。」

西浦「あははは(笑)」

岸田「もうね、『泣きに来てます』と(笑)

『泣ける』というキーワードで売ってる作品はたくさんあるんですよ。

印象的なのが『君の膵臓を食べたい』とか。」

西浦「『キミスイ』ですね。」

岸田「それもキャッチコピーが『読み終えた後、このタイトルで涙する』みたいな感じで。

だから人って泣きたいって欲望があるんでしょうね。」

西浦「それがすべて『かみさまは小学5年生』の『最初の13ページで泣ける』に凝縮されてる?」

岸田「そうそう、そうです。」


西浦「(対談用の資料を見ながら)あとね『世界観を作り込む』と書いてあって、僕この話を広げたいんですよ。」

岸田「世界観はね、僕、つくるの大好きなんですよね~。」

西浦世界観は非常に扱いやすく、かつ扱いが難しい言葉じゃないですか?

多用するとアホに見えるというか。

就活で『あなたが好きな本の紹介をして下さい』と言われて、『この本の世界観が好きです』と言う人めっちゃ多いんですよ。

『いやそれ(世界観)をこっちは聞いているんだ』と。」

岸田「(笑)」

西浦「あなたがその世界観をどう表現するのかセンスを見たいのに(涙)」

岸田「そうですよね(笑)でも、世界観はそんなに難しい話じゃないかもと思っていて。」

西浦「岸田さんの考える世界観って、なに?」

……今回はここまで。
岸田さんの考える「世界観」とは、一体どんなものなのでしょうか??
この続きはまた次回!お楽しみに~!!

ライター・編集・写真:竹田

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神奈川県出身。相模女子大学3年 学芸学部メディア情報学科所属。

暇さえあれば洋画や海外ドラマをみてる海外モノ好き。本ももちろん、海外モノに惹かれがち。ファンタジーなど、現実味のない作品をこよなく愛します。

西浦さんとは大学で行われたセミナーでご縁があり、出版TIMESのインターン生として、現在、学生出版プロデューサーとして活動。


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