編集者 吉満明子 さんが、子育ての中で見つけたこととは?

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「吉満さん×西浦さん」対談シリーズ第三回!
前回は西浦さんの「コミュニティ」について、そして、吉満さんの「お子さんがいることによる変化」のお話でした。

三回目は西浦さん、吉満さんの、「お子さんがいることによる変化」を引き続き、そして、西浦さんの「会社員時代と今との差」をお届けします!

お二人のお子さんによる仕事への影響や変化、そして昔と今との環境の差とは一体なんなのでしょうか?

インタビュアーは嵯峨、ライター・編集は竹田です。
これまでの記事と合わせて、ぜひごらんください!

【吉満明子】
株式会社センジュ出版代表取締役、book cafe SENJU PLACE オーナー。

日本大学芸術学部文芸学科卒業後、高齢者福祉専門誌編集、美術写真集出版社勤務を経て、編集プロダクションにて広告・雑誌・書籍・WEB・専門紙など多岐に渡る編集を経験。同社の出版社設立に伴い、取締役に就任。2008年より小説投稿サイトを運営する出版社に入社、編集長職就任後に出産、復職後は同社のケータイ小説編集にたずさわる。
その後退職し、2015年、センジュ出版を立ち上げる。(Facebookより)
[コミュニティ紹介]
book cafe SENJU PLACE
まちの出版社「センジュ出版」では、6畳のちいさなブックカフェをオープンしています。畳の上にちゃぶ台を置いて、お客様をお迎えいたします。
ハンドドリップコーヒーと本とおやつ。どうぞごゆっくり、おくつろぎください。
http://senju-pub.com/shop/

【西浦孝次】
一般社団体法人かぎろい出版マーケティング代表理事。

同志社大学卒業後、学習研究社(現・学研ホールディングス)入社。書店促進部を経て、一般書販売課へ配属。2つの編集部を担当し、年間最大400冊のマーケティングを担当。膨大な点数を扱いつつ、新人著者の売り伸ばしや仕掛け販売に注力。その後、出版プロデューサーとして2010年に独立。(出版TIMES編集者情報より)
[コミュニティ紹介]
二シュランガイド
出版プロデューサー西浦孝次がお届けする、人生を豊かにする本の紹介イベント!「生きることに慣れてはいけない」「本に感動したら、内容よりもそう感じた自分の心ふの中にその感動がある」など名言連発!
本と自分の「対話」、参加者同士の「対話」を軸にした、新しい読書イベントです。
https://kagiroi.com/publishing-times/category/nichelin/


目次

朝は会社員生活に(笑)

―――西浦さんは、お子さんがいることによる変化はいかがですか?

西浦「朝がはやくなりました。僕は保育園送り担当なので、7時起きという会社員の時と全く変わらない生活です(笑)

あと、元々渋谷区に住んでいたんだけど、そこだと保育園がいっぱいで第七希望まで全部入れなかったので、奥さんの地元に早々に引っ越しました。

この引っ越しによって移動にも時間がかかるようになったから、多少は仕事のスタイルも変わったかな。」

吉満「都内から引っ越すくらいだから、相当な変化ですよね。」

西浦「そうなんですよ。今住んでるところから都内へ仕事に行こうとすると、往復に3時間弱かかってるっていうのがびっくりですよね。

今までは14時の打ち合わせで『13時過ぎに家を出なきゃな』だったのが、今だと同じ14時の打ち合わせなのに午前中に動きはじめなきゃいけない(笑)」

―――そんなに変わったんですね。では、父親になってみて何か考え方が変わった部分はありますか?

西浦「子育てをしている方だとか、自分たちのように子供ができるのに時間がかかってる方だとか、そういった方に対して配慮をするようになりました。たとえば、SNSに娘の写真をあげないとか。

あと、よくある子育てノウハウが必ずしも皆に応用できるわけじゃないって気づいたことも大きいです。子育てや家事の分担を全部書き出して、夫婦それぞれがちゃんと役割を決めるっていうやり方はうちには合わなかった(笑)

何時から何時までって時間決めてやらないと、ずっとやっちゃうんだよね。それだとフリーランスは仕事できなくなる……なんか面白みなくてごめんね(笑)」

―――いやいや、リアルな話、ありがとうございます(笑)

私は読者を全然知らなかった

西浦「さっきのお話の続きですけど、吉満さんが『一軍じゃない』って思ったあとに、いったい何を見つけたんですかね?

吉満「すごくいいものをみつけました。それは読者です。」

西浦「ほー…それはどういう意味だろう。今までもいたじゃないですか、読者。それこそ何十万人も。」

吉満「いました。顔もわからない誰かからの手紙や、作家さんへの読者はがきを読んでは涙を流していたし、ものすごく一喜一憂していて。

だけど、顔の見える読者と出会うようになっていって、『私が求めているのはこっちだ』ということがわかりました。

私を知ってセンジュ出版の本を買ってくれるとか、著者をわかっていて買ってくれるとか、当然本屋さんでの出会いもいっぱいあるんだけど、『私は全然読者を知らなかったな』って思わされています。

こんなにも読者はいろんなことを考えてくれていて、本にいろんな力を授けてくれていたのに、申し訳ないけど私はそれを数字でしか見ていなかった。」

西浦「…僕も経験あります。しかも、数字で見ている場合『何人』じゃなく、より数字的な『パーセント』で見ちゃいますよね。」

吉満「そう、ほんと数字大好きだったし(笑)でも、もちろん数字も大事だけど、子供ができてから重さが変わりました。」

西浦「なんか、『はーーーー‼』ってなる話だね。」

吉満「おそらく、私は極端にですけど(笑)サラリーマン時代は、私には1日75時間くらいあって、それくらい働いてたなって思うし(笑)

気持ちがいつでも全開で、全部仕事に使えてたから。

全人生を仕事に注げていて、振り返ってもあんなに気持ちよく仕事していたときもないです。」

―――「75時間ある」って思えるくらい働けるのはすごいと思います。

吉満「でもその代わり、なにかたくさんのものを失くしたし、捨てていたし、落としていたし、背中はいつも寒かった。なんだか会社員のときは、泳げない海で水面下では足をバタバタさせていて、水面上はすごいクールにしている感じ。

でもそのおかげで筋力がついたから遠泳できるようになって。

子供が生まれたことによって海から岸に戻るんだけれど、振り返ってみると『私は遠くまでいってたなー』って。

苦しかったけど。

でもいまは、地に足をつけてみえる水平線の方がいいなと思います。それぐらい変わっちゃって。もうほとんど子供に時間をとられてます。

西浦「やっぱり子供の影響は大きいですよね、そっちに時間使うようになります。」

吉満「ほんと大きいですね。あたりまえだけど、子供はただママと遊びたいから、保育園行く前に人形出してきて『なんで遊んでくれないの!!!』とか(笑)

ひどいときなんか、そのまま打ち合わせに連れていったり(笑)やっと5~6年経って『子供ってそういうものだよね』って思えるようになりました。

でも、産んだ時はまだサラリーマン脳のままだから『なんでここで牛乳こぼれるんだろう』とか、『どーなってんのこの家?』とか、そんなことばっかり(笑)

『こういう風にすればこうなるものでしょ』っていうのを全部覆していきますから(笑)

西浦「わかります、僕のところも、とんでもない前提から覆してきます(笑)」

吉満「でしょ?(笑)まっすぐな道は全然まっすぐ歩かないし、『なんでこの道5分で行けるのに50分かかるの?』みたいな(笑)」

西浦「そうそう。『なんでここを自分で歩こうとするの?』って(笑)」

吉満「さっきの西浦さんのお話であったように、私のところも家事は整然となんて分けられなくて。旦那さんが風邪ひいて倒れてる時もあるわけだし。

一応なんとなく分かれているけど、できる人ができることをやる。

逆にいうと、私が家事をできないときはものすごく旦那さんとうちの母に甘えてます。それと、私はお互いの親がすぐそばにいるからラッキーでした。」

西浦「それはありがたいですね!」

吉満「あるところではものすごく仕事にまい進できるので。

そのおかげで、妬みのようなことを言われたこともあったし、私もそういう気持ちで他の人のことを見たこともありました。

でも今は、人それぞれ与えられるものが違うから、それを楽しんだ方がいいなと思えるようになりました。」

西浦「それどういうことですか?その、妬まれたりだとか……」

吉満「たとえば、親御さんが遠くに離れてる人は、私みたいに飲みにも行けないし、仕事で徹夜もできない。あとパパが海外出張とかが多ければ、育児をほぼ自分がやらなくちゃいけない、ということだったり。

私の場合は『ご主人が早く帰ってくる人で、両方の親がすぐそこにいて、融通もきくから会社やれてるのよね。』ってよく言われてました。『私はできないわ、子供がいるから。』って。

それはいろんな思いがあったんだろうなって思うし、『分かる』って言ったらカドがたつから言えませんけど『そりゃそうだよな』とも思いました。

逆の立場だったらできなかったと思います。」

―――そんなことがあったんですね…

吉満「だからいまは、これはたまたまの『預かりもの』だなって。センジュ出版も、私の生き方も、いまの私のポジションも預かっていると思っていて。

『あなただったらいいように使ってくれるんじゃない?』っておもちゃが渡されたんだったら、ちゃんと遊んだほうがいいなって思うんです。

センジュ出版はもう、よほどのことがない限り、私の気分でやめるつもりはないです。」

西浦「預かるっていうのは、『ちゃんと預かる』ってことですよね。

やっぱり、『ちゃんと』って思ってないと預かるって言葉は出てこない。返すつもりでやってるというのがわかります。

『もーらった!』って思ってないから(笑)」

吉満「とてももらえない。街はもちろんだけど、私のものなんかにならないです(笑)」

西浦「そうですね、千住もらったら超金持ちですよ、ヒモになるわ(笑)」

―――なんか、預かるっていう話とか、もう自分だけのものではないものになってるって、すごい、誠実なお人柄だなと、そういうのが伝わってきました。

吉満「いやいやいや、ほんと不誠実なことばっかりしてきているので、ようやく40過ぎて懺悔をしている毎日(笑)」

皆「(笑)」

「中の人」から「よそ者」に

―――では、またお二人の共通点のひとつである「出版社から独立している」ということについてなのですが、出版社で働いている時と、独立してからの大変さ、やりがい、楽しさだったり、扱う書籍の違いなどを教えて下さい。

西浦「どうですかね、ここで『8年越しの花嫁』の話にもふれたいんですけど…質問なんだっけ?(笑)」

吉満「サラリーマン時代と今との違いよ(笑)」

西浦「ああ、そうだった(笑)僕はサラリーマン時代の時も、正直、会社員だからどうこうとかはあんまりありませんでした。販売部にいたのですが、会社員だろうがなんだろうが売りたかったし、自分の担当本は自分の本だと思ってました。

『俺が担当してるのに売れないとかなめてんの?』みたいな営業だったので(笑)だから編集とか他部署の人ともよくケンカしてました(笑)」

―――ケンカしてたんですか(笑)

西浦「そう(笑)でも、ケンカしながらも『売りたい』って気持ちは伝わっていたみたいで、ケンカ相手はみんな僕より年上の人たちばっかりでしたけど、『西浦は口うるさく言うけどちゃんとやってくれるから聞いてやるか。』みたいに受け止めてくれてました。

だから企画の中身もかなり相談してくれたし、僕が『この章、全部いらない』とか、『こういうのほしい』とか言ったことを、できる範囲でちゃんと聞いてくれたり、タイトルとかも僕いっぱい決めさせていただいたりしました。

そこまでやって売れないと『あいつ口ばっかりだ』って言われるから怖いんだけど(笑)

結構上司も理解があったし、成果も多少は出ていたし、そんな様子を見て他部署の人たちも『なんか楽しそうだなあいつ』みたいに思ってくれていたみたいでした。正直、仕事はめちゃめちゃ楽しかったんですよ。

吉満さんと一緒なんですけど、僕も読者からのはがきとか読んでいて、感動するわけですよね。で、作家さんも『西浦さんがこの人たちと自分をつないでくれたから、これがあるんですよ』って言ってくれて、自分もそんなこと言われたら泣けて来るし・・・『もう、コレばっかりしたい!!!』って思ったんです。」

吉満「『読者と作家をつなげることをって?なるほど。」

西浦「でもやっぱり、会社員として働いてるから、例えば、在庫管理や、ファックス注文の手配だったり、細かい仕事もたくさんあるわけで。

しかもその時は若手だったから。まぁファックス処理はやらなくていいよう、あまりファックスが来るような時間に会社にいないようにしていたんだけど(笑)」

皆「(笑)」

吉満「面白いな~(笑)」

西浦「で、『こればっかりやりたい』をどう実現するかすごい考えた結果、『独立するしかないか』って。

社内にそれ専門の仕事なんてないんですよ。僕が好き勝手にやってただけだから。

だから、『プロデュース』って形でならできるんじゃないかなと。

作るところから売るところ、さらに読者のところまで全部コミュニケーションできる人がいたら、この仕事最高なんじゃないか』って思って始めたんですよね。

独立後でいうと、やっぱり理想と現実って違うというか、実際始めてみると、思ってたよりも夢の世界ってリアルなんです(笑)。思ってたよりリアルな壁があるから、それをどうしたらいいかなと一つ一つ向き合ってる。でも、100点取れなくても今出せる点数を取るしかないから、とりあえずゴールに一歩でも近いところで倒れとけみたいなところでしょうか(笑)」

吉満「あーそうそう、わかるわかる。」

西浦「本を読者にどう届ければいいんだろうとか悩み続けていますね。書店さんとのつながりがあった独立直後っていうのは全然やりやすかったんだけど、8年もたつと、当時担当だった人とかやめてるんですよ。だから僕と書店さんとのルートも消えてきちゃったし。

いろいろ工夫をしてきてクリアした問題もあるんだけど、『どうやっていけばいんだろう?』って考えるのはもう常のことになってきた。

それなりに自分で新しく築きあげてきたこととか、試してきたことなんかもあり、結果、独立してからは会社員時代よりヒット作を出せるようになった。一応20万部の本のプロデュースにも成功して、平均9割くらい増刷してるので。

ようやく今、9年目なんですけど、そろそろ僕、ちょっとよそ者になれたんじゃないかなって思います。」

吉満「よそ者?」

西浦「そう、出版業界の。やっぱり中の人だったころの延長線上を走ってたので、自分の武器も財産も全部、出版業界の中で培った情報、知識、経験だった。

で、中にいたのが5年だから、ようやく外にでてからの年数がもうすぐ倍になりますから、よそ者です。最近は、独立してから得た経験や知識の方が武器として使えるようになってきた」

吉満「そっか、たったの5年だったのか。」

西浦「そうですよ、僕独立したの27歳ですからね(笑)」

吉満「わー、すごい! 聞きましたか?(笑)」

西浦「そう、27,28の若造(笑)

だから、ようやくよそ者として、どうやってWebの知識を得ればいいのかとか、著者側にしっかり立って、広めていくには何がベストかとか。そういったことを捉えなおして、ノウハウに落とし込めるようになってきました。

自分が出版社の営業のままじゃできないだろうな、とか知らなかっただろうな、ということができるようになってきました。

それはやっぱり、ここ数年で変わってきたことです。今はそっちの方が武器になってますよね。昔やってたことより。よそ者と若者と馬鹿者でしょ? 物事変えるのって。ようやくよそ者になれて喜んでいます。」

吉満「街づくりの基本なんだよね。」

西浦「彼女たち(インターン生)は全部当てはまってるから、よそ者で若者で馬鹿者(笑)」

みんな「(笑)」

西浦「だから今回も期待してる(笑)」

吉満「確かに。(笑)」

―――いやちょっと、褒められたのか、けなされたのか…(笑)

西浦「いや~…褒めてはないけど、愛してはいる(笑)」

みんな「(笑)」

吉満「でも、いいですね。距離ができて自分の強みが磨かれるって。」

西浦「そうですね、ようやく僕はプロデューサーになったかなって。前は元営業さんでしかなかったから。過去を頼りにし過ぎることなく『これが僕のやり方ですよ』ってのができた。」

吉満「なるほど、いい話ですね。なんかしみじみ聞いちゃった(笑)」

……続きは次回。

ライター・写真:竹田
イラスト:善波

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