
どうも出版プロデューサーの西浦孝次です。
今回のテーマは
「本がむちゃくちゃ売れた時に、忘れてはいけないこと3つ」です!
「どうやったら出版できるか」
「売れる本にするにはどうすればいいか」
そんな話をしてきましたが、むちゃくちゃ売れた時に何をすべきか、逆にしてはいけないか?
気になりますよね?
実は「売れた時」のアドバイスってほとんどないので、多くの方が
「ああ~!それは、本の寿命を短くしてしまう~!」
という選択をしがちなんです。
今回はそんな「めちゃくちゃ売れた時」
イメージとしては、発売から半年で5万部以上売れた時を想定して
「何を優先して、どんな行動に移るべきか」をご紹介いたします。
特に「出版社の事情」や「他社の動き」も一緒に解説しますので、
「あ、出版社ってそういう風に考えるんだ」ときっとお役に立つと思います。
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目次
ブランド化
半年で5万部も売れたとすれば、それはすごいヒット作です。
おめでとうございます!
何冊も出版している人でも、5万部以上のヒットに恵まれることはなかなか無いんですよ。
それだけあなたのその本が内容もすばらしいし、デザインなど本としてもすばらしいし、時代にもあっているという証拠です。
このチャンスを絶対に逃してはいけません。
では何を最優先すべきなのか?
結論を言います。
それは「この本を10万部越えのベストセラーにすること」です。
その理由は2つあります。
1つ目は「あなたのブランド価値に大きく差がつくから」
2つ目は「ヒット作に投資して大きく稼ぐのが効率的だから」です。
解説しますね。
ブランド価値の話ですが、はっきり言ってしまうと
5万部を2冊出した著者と、10万部を1冊出した著者であれば
印税などは同じですが、出版業界内でも一般の読者の方に向けても、10万部1冊の人の方が圧倒的に箔がつくんですね。
僕ら出版業界の人間からすれば5万部なんて「オーラが違う」って感じますし、
3万部でも「やり手だな」って一目置かれる存在です。
でも一般の読者さんにとっては、10万部売れている本でも「全然知らない」って言われたりするんです。悲しいことに。
それでも「10万部」っていう言葉のパワーが強いから「10万部のベストセラー作家」ってだけで「きっとすごい人だ」って思ってもらえます。
「5万部」だとどうも反応弱いことがあるんですよね。
ですので、一般の読者へのブランド価値としてぜひ10万部を目指して欲しい。
当然1万部や3万部を10万部に育てるよりは、5万部を10万部に育てる方が効率も良いし実現確率も高いですから。
5万部いったならぜひもう一山目指して欲しいです。
次に理由2つ目の「ヒット作に投資して大きく稼ぐのが効率的」についても解説します。
出版業界は特にたくさん作品を作って、(悪く言えば)市場にばらまいて読者の反応を見ます。
その中で少数の「芽が出た作品」だけに投資して、大きくヒット作に育てるというのが基本戦略です。
言い換えれば他の売れなかった作品の赤字を、ヒット作で回収するのが効率的なんです。
ヒットは狙って当てにいくものですが「狙えるものではない」ので、こういう風に小さくたくさん生んで大きく育てるやり方になります。
例えば「アナと雪の女王」も想定以上の大ヒットをきっかけに、パークもおもちゃもあらゆるところで連携してしっかり回収していますよね。
「アナ雪」をブランドとして育て確立させて、回収しています。2も制作されましたし。
でも、元ディズニーの方に聞いたのですが「アナ雪以降、アナ雪クラスの作品は生み出せていない」という考えもあって、やっぱり狙ってヒットは作れないので、「ヒットした作品は死守して回収せよ」というのが王道なんです。
つまり著者のブランド価値の面でも資金回収面でも、ヒット作を「ブランド」に育てるのが最優先というわけです。
その基準として10万部を目指してください。
横展開と別展開
ヒット作を売り伸ばす時に出版社が考えるのが、シリーズ化、つまり横展開ですね。
アナ雪とおなじように「2」を発売することで「1」の売上を伸ばす作戦です。
映画と違うのは、あくまで主役は「1」だということです。
映画って「2」の上映スケジュールが迫ってくると「1」を地上波とか、サブスクで公開して「2を観に来てね」っていう導線を仕掛けるじゃないですか。
「1」を使って「2」で稼ごうとする。
でも、本は逆で「2」を使って「1」で稼ぐんです。
映画で「2」と「1」が一緒に映画館で並んで同時上映されることってあんまりないと思うんですが、出版は並列販売、横に一緒に並べて売るのが基本です。
こうすることで「2が出るような良い本なのか、じゃあ1を買おう」
「あ、買おうと思ってて買ってなかった。2出てるし まずは1から買おう」という感じで1から買ってくれたり、1と2両方買ってくれたりするんですね。
あくまで「1」の部数を伸ばすために「2」「3」を作って売るのが基本です。
なので、1が買いたくなるよう、1と並べて売れるように2,3を書いていってください。
言い換えると「1」と続編が並ばないような本にしてはいけません。
「2」なのに、「1」と並ばない?なんで?と思うかもしれませんが、まず「ジャンル」が変われば、売り場が変わってしまう可能性が高いです。
例えば「20代で学びたいお金の知識」という本が売れたとして2作目が「20代で学びたい仕事の知識」だとしたら、1作目が投資・株や貯金などの棚、2作目がビジネスとか仕事術の棚になり並べられません。
並列できるように棚は変えずに、2作目3作目を用意してください。
また、判型を大きく変えるのもお勧めしません。
例えば「60代からの健康的にやせる食べ方」という書籍が売れたとして、2作目は「60代からの健康的にやせる食べ方~自炊編~」だとしましょう。
自炊だから当然レシピを載せることになりますが、レシピ本って大判の書籍が多いんです。
やっぱり写真が大きいと、よりキレイ・美味しそうに見えますからね。
でもそうすると1冊目と2冊目の大きさが違って並べにくい。
バランスが悪いというか、変な隙間ができて陳列上無駄なスペースができてしまう。
こういったことを書店様は嫌がるので、なるべく避けた方が良いです。
と、こんな風にシリーズ化・横展開を考えてブランド化していくわけですが
同時に「別シリーズの起ち上げ」もなんとなく準備を進めておいてください。
なぜかというと、現在のシリーズがどれだけ売れても、いつかは勢いがなくなり返品されるからです。
あ、占い、手帳、家計簿など、売り時が年一更新の特殊なジャンルは別ですよ。
話を戻すと、ヒット作の横展開を進めつつ、別展開の仕込みを始めておいて欲しいです。
どんな人気シリーズもいつかは終わるので。
そしてこれは、「今の人気が続いているうちに、他社で準備をする」のが良いです。
ちょっとずるいかもしれません。
でも、売れなくなってからでは間が悪いんですよ。「昔の人」になっちゃうから。
なので、今の出版社とは現状のヒット作シリーズを死守・育成しつつ、新規のヒット作を他社で水面下で進めるくらいがいいです。
2作目が決まって、原稿書ききった後くらいから、他社と別企画の相談してるくらいがいいかなと個人的には思います。
あくまで主力・軸足は今のシリーズに置きつつ。
さて新企画のポイントですが、先ほど言った「横展開」とは逆になります。
横展開では「隣に並べられるように作れ」がポイントと言いましたが、
新企画は「売り場が別になるように作れ」がポイントです。
同じ売り場で作っちゃうと、同じお客さんを自分のシリーズで食い合うことになって無駄なんです。
例えば1作目10万部、2作目4万部、3作目2万部 合計16万部いけたはずが、同じ売り場に他社からのシリーズ出したせいで1作目9万部、2作目3万部、3作目2万部、別シリーズ2万部 合計16万になってしまうようなことがおきます。
これって現シリーズの読者を、他社の別シリーズにもっていかせただけなんですよ。
結果10万部に届いたはずの1作目が9万部になってしまうなんてことになりかねません。
ちなみに他社から、同じ売り場で出す場合のメリットも紹介しておきます。
それは広告効果が多少重複するということです。
A社の広告を見た人もB社の広告を見た人も同じ売り場に来てくれますから、読者の目に触れる機会が増えますね。
実際に他社の広告が出た日になぜか自社の本の売れ行きが伸びるということもおきます。
ただこれがおいしいのは「あんまり広告を打てない出版社」の方だけという説もあります。
話を別展開に戻します。
「売り場が別になるように作る」には「ターゲットやテーマを変える」のが有効です。
例えばあなたの1作目が「リーダーシップ」だとしたら、これを「子育て」に置き換えてみる。
部下を育てるのは子供を育てるのと通じる部分があるという考え方ですね。
あるいは本の形を変えてみる。
ダイエット本は美容・ダイエットコーナーに置かれますが、同じような内容でも「新書」は新書コーナー、「文庫」なら文庫コーナーにおかれます。
同じ書店でも、売り場が違えば客層は全く変わります。
どういうアプローチであれ、別の売り場におけるように次のシリーズを仕込んでおきましょう。
薄い企画に飛びつかない
今回紹介したこの2つの動き。つまり
①今の企画を10万部にする、ブランド化
②次の柱を仕込む、別展開
これらをしていれば「売れた時の立ち回り」として大正解です。
あなたがどちらも成功して、ブランドを複数持てる著者になるのを願っています。
逆に「これ、よくある失敗だよ」というのを最後に紹介します。
それが「群がる他社の薄い企画に飛びついてしまう」ことです。
ヒット作が一つ出ると、ありがたいことにいろんな出版社から依頼が来ます。
ただ、そういった企画のほとんどは「内容の薄い、ヒット作の焼き回し」であることが多いです。
下手すると、あなたの名前だけ「監修」で借りて、中身をそのままそっくりいただこうとする企画も見たことがあります。(しかも印税は支払われず、あなたに入るのは数万円の監修費のみとか)
十分に気を付けてくださいね。
これがなぜダメかはもうお分かりですよね?
先ほど言ったように、自分の今のヒット作の読者を食い合うだけの企画だからです。
同じテーマの自分の本はベストな1冊だけにすべきです。
でも、実際はこうやっていろんな出版社からオファーが来て嬉しくなってですね、あれもこれもと受けてしまう著者が本当に多いんですよ。結果自分のブランドの寿命を自ら縮めています。
他社から来た依頼は「この企画は今の本と売り場がいっしょか、異なるのか」で判断してみてください。
よくわからなかったら「他社からこんな企画が来たんですが、これって競合してしまいますか?お客さん増えていい話ですか?」ってすでにヒット作を出してくれている出版社に聞くのもいいです。
ちなみにですが、本については「食い合わないように」した方がいいですけれど、それ以外の選択肢が増えるのは非常に望ましいです。
例えばDVD販売、オンライン講座、講演会のような「本以外のアプローチが増える」のは嬉しい限りです。
動画出演、雑誌掲載、イベント登壇などバンバン引き受けてください。
露出が増えて、本もさらに売れるでしょう。
このように本というコンテンツは、他のメディアと組み合わせて仕掛けていくのがより効果的ですよ!