Hi-STANDARDの元プロデューサーが語る「才能あるバンドと著者」の見つけ方

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Hi-STANDARDをはじめ多くのパンクロックバンドをプロデュースしてきた、音楽プロデューサー「ギース」さんとの対談記事その3。

※この記事は2017年5月19日に修正されました。

その1は「表現する人のセルフプロデュースと世界観」

その2は「心理学をプロデュースに活かす方法」

バンドや著者といった「表現者」に必要なたった一つの資質とは?

そしてプロデューサーにとって一番大切なスタンスとは?


目次

感動を生み出す資質

西浦:では最後に「才能あるバンドをどうやって見分けるのか」聞かせてください。

:やっぱりスカウトとかですか?

ギース:いや、スカウトはほとんどしない。縁があると思ってるから。こうやって飲んでて知り合ったやつが『バンドやってるんですよ』って言ったら、デモテープ聴かせてもらう感じかな。

 

西浦:なるほど。じゃあ出会いは縁として、才能の見分けはどこでつけるんです?

ギース:才能はライブに2回行って見分ける。デモ聴いて、ライブ行って、もう1回ライブ行って決める。

:デモの音とかって重要ですか?それとライブ2回ってなんでですか?

ギース:デモは、音の良し悪しはどうでもいいな。それよりメロディの良さとセンスを聴いてる。で、「ああいいな。」と思ったらライブ行くんだけど、1回だとなんか自分でも納得しないので、2回行くことにしてる。まあ、俺のクセだね(笑)

 

西浦:メロディの良さとセンスかー。出版だと「企画の良さと、言葉のセンス」ですかね。ライブでは何を観てるんですか?

ギース:ライブではパフォーマンスを観る。お客さんがどれだけ感動してるかを観てる。泣いてるとか、笑ってるとか、どれだけ感情を動かしてるか。今はできなくてもその要素がどれだけあるか。アーティスト自身が感情出せてないと、お客さんも動けないんだな。

 

西浦:「感動」か・・・そこが大事なんですね。

ギース:うん。昔、ルックス良くて、上手くて、センスもあったけど売れないバンドが2組いたのね。「なんで売れないのかなー?」って思ってて、後になって気づいた共通項が「感動」だった。

自分がその場で演ることに感動してない。お客さんをどこかに連れてってあげようという気がなくて、自分のことばっか気にしてるんだよ。「髪型乱れてないか」とか。基本がなってなかったんだと思う。

エンターテインメントの基本は「お客さんを感動させる」ということなんだなって、その後でわかった。

 

:感動させるって難しいことですよね。どうすればできるのか・・・やっぱり才能ですか

ギース:最初からできている人もいれば、言えばできる人、言ってもできない人もいる。ハイスタ(Hi-STANDARD)なんか最初はチューニングも合ってないし、リズムも合ってないし(笑)

・・・でも感動した。

 

西浦:うおおおお!なんかすごく深い話ですね。うまくできているかどうかじゃないんだ!

では、これから才能あるバンドや著者がやっていくべきことって何ですかね?

ギース曲作って、ライブやって、ライブの動員数増やしていく。これが基本で、やるべきことかな。

感動したら友達呼んできてくれるし、1,000円のチケットで5,000円分感動してくれたらまた来てくれるでしょうって考え方で。技術じゃなくて、誠実にやることかな。

 

もちろん、感動じゃなくて「答え」が先にあるケースもある。作曲とかは求められて書くこともあるから、「このミュージシャンがこういうのやりたいと言ってるので、こんな曲募集します」みたいに。

つまりマーケティングが先にある。

商業音楽は答えを求められてて、アーティスト音楽は答えを投げかけてる。

「お前らこれ聴いてどう思うの?」って。

 

プロデューサーはスペースシャトルの第一ロケット

西浦:「Hi-STANDARD」を自分のところから独立させたのはなぜなんですか?たしか、わざわざ彼らの会社設立まで主導したんですよね?

ギース:うん。そうなんだよね。なんていうか「ぶら下がってるなー・・・」て思ったというか。

西浦:ぶら下がりですか?どういう意味でしょう?

ギース:最初は彼らより、こっちの方が知識も人脈もあるんだけど、売れるにしたがって、関係も逆転してくるというか。

プロデューサーとして彼らを高く飛ばせようとしてたのが、いつの間にか彼らにぶら下がってるような気がしてさ。なんか違うなぁと思って。

周りには「これから稼ぎ時じゃないですか!」とか言われたけどね(笑)だから「Hi-STANDARD」に『もう俺いなくてもいいんじゃない?』って言ったんだよね。

西浦:なんかすごく深いところに響く話ですね。

ギース:・・・プロデューサーってさ。

西浦:はい。

ギース:スぺースシャトルの第一ロケットみたいなもんで、最初に切り離されるものなのよ(笑)

西浦&:えー!!!!!!!切ない!切なすぎるんですけど!!その例え!

ギース:だって、飛び立ってしまえば、そのあとは慣性の法則で行けちゃうんだもん。

西浦:成層圏抜けちゃえば用なしっすか(笑)一番最初の、一番エネルギーが必要なときのための仕事ってことか。

この話、世の中のいろんなプロデューサーに絶望を与えた気がするんですけど、僕らは何を目標に頑張っていけばいいですか?

ギース:それでもプロデューサーは、その一発目でどれだけ高く飛ばしてあげられるかだよ。やっぱどれだけ高く飛べたかで、そのバンドの今後って決まるから。

本体が売れてないのにソロデビューしたがるヤツいるけど「バンドが売れてないのに、ソロになっても売れないよ」って話をする。

俺たちもそうで、やっぱり「Hi-STANDARD」があったから、プロデューサーとしての今の俺があるって話を、こないだ「Guns N’ Roses」のプロデューサと飲んだときに話してたんだよ。

やっぱそいつもそうだって。

西浦:そうですね、僕らは彼らを「どれだけ高く飛ばせてあげられたか」で測られる仕事ですもんね。逆に彼らのおかげで高い景色を見せてもらえた部分がすごく大きいし。


音楽そのものにもスタイルの違いがあるんですね、アーティスト音楽と商業音楽という分け方をはじめて知りました。

たしかに有名アイドルグループの曲とかは思いっきりマーケティング主導ですもんね。ただ、商業音楽=ショボイ音楽っていう単純な話ではなくて、それぞれ真剣にユーザーのことを考えて紡ぎだされた曲なんだと思います。好きな曲が商業音楽でもアーティスト音楽でも、自分の心に感動が生まれたらそれはちゃんと届いていると思うし。

僕はたぶんどっちの音楽にも好きな曲があります。

出版だと一部の小説などを除いて「商業音楽」スタイルが多い気がします。ただ読者ってすごく頭がいいので、市場におもねるばかりだと、バッチリ見抜かれてて、「ハイハイまたこのパターンね」って感じで売れません(笑)感動してもらうためにもある種「アーティスト音楽」的要素が必要だと思っています。

そして一番ズドン!と刺さったのが「プロデューサーはスペースシャトルの第一ロケットだ」論です。もう爆笑でした(笑)この切なさとそれを笑い飛ばせる感じは、たぶんプロデューサーやってる人なら伝わるはず。悲観的な調子ではなく、むしろさわやかに「高いところまで飛ばして、そのあとでばっちり太平洋に不時着してやろうじゃないの」と腹くくれた気がします。実際のロケットも海に落ちたあと再利用してるそうです。それと同じですよね。

この対談を文字にしていて自分も「この話を書いて、それでどう思うの?」って問われたような気がしてきました。バンドが感動でライブ動員数を増やしていくように、著者も自分たち出版プロデューサーも感動で動員数増やしていかねばと思います。

やれることはたくさんあるなぁ。

参考リンク
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