伝え方

文章執筆に大切なことは何でしょうか。
私の場合は、とにかく「書き始めて、書き続け、書き終わる」ということだと考えています。
まずは頭の中から外に出す、という作業に全力を注ぎ、書き終えてから推敲を繰り返します。
しかし残念なことに、これだけでは文章は上達しないと常々感じています。
考えていることを確実に伝えるためには技術や知識が必要で、常に勉強し続けなければなりません。
そんな「文章執筆」に役立つマニュアルがあるのなら、ぜひ手に入れたいものです。

そこで今回は、文章執筆の助けになりそうな、野口悠紀雄氏による『「超」文章法 伝えたいことをどう書くか』を紹介します。
文章の構成や、推敲などについて参考になる内容が掲載されている書籍です。

どんな本なのか

本書は、早稲田大学大学院ファイナンス研究科教授である、野口悠紀雄氏によるものです。
野口氏は1940年生まれ、東京大学工学部卒業。
文章を書く機会が山のようにある著者は、ためになり、面白くてわかりやすい文章を書く努力を続けているとのこと。
この書籍は、そんな著者が努力の過程で学んできたことがまとめられています。
対象としている「文章」とは、小説などの文芸作品ではなく、論文や解説文、批評など「論述文」と呼ばれる文章です。
しかし文章作成の基本について記載されていることから、すべてのかたにとって有益な内容です。

メッセージの重要性

第1章では、読者に伝えたいメッセージを明確化することの重要性について記されています。
このメッセージについて、以下に重要な部分を引用します。

ある命題を「メッセージ」と言えるかどうかは、どのように判断できるか?
第一の条件は、「ひとことで言えること」だ。
この規定は、単なる外形基準であり、内容とは関係がないと思われるかもしれない。
しかし、私の経験から言うと、これこそが最も重要な条件である。

(12ページ 第1章 メッセージこそ重要だ より引用)

さらにメッセージが見つかれば、どうしても伝えたい衝動に駆られるはずだとも述べています。
確かに、伝えたいことが明確ではない文章は、読んでいても内容が曖昧なものが少なくありません。
論述文を書く際は、まず、このメッセージを探してみると良さそうです。

文章に化粧をする

さらに本書では、推敲について非常に細かい説明があり、章の終わりに分かりやすくまとめられているため引用します。

第6章のまとめ
1 形式面のチェック
(1)タイトルは、内容を適切に表すものにする。
(2)章・節・パラグラフの区切りを適切にし、小見出しを内容を表すものにする。
(3)誤字脱字を根絶する。とくに、名前の誤字に注意。
(4)読点を適切に打つ。
(5)漢字・ひらがな・カタカナの比率を適正化する。
(6)表記と用語を統一する。
2 表現のチェック
(1)削れるだけ削る。
(2)類似表現を避ける。
(3)語尾の単調化を避ける。語尾で逃げない。
(4)曖昧接続の「が」の多用を避ける。
(5)使い古された表現、陳腐な表現、不快感を伴う表現、品位を下げる表現などを避ける。
(225ページ 第6章 化粧する(2)-100回でも推敲する より引用)

文章を書いたあと、実際に上記の項目についてチェックしてみると、修正すべき部分が明確になることでしょう。
推敲に関する項目は決して少なくはありませんが、読みやすく正しい文章を書くためには、いずれも重要なことばかりです。
「文章を書くのが苦手」
「文章が読みづらいと言われる」
というかたには、特に読点や語尾に関する項目を読むことをおすすめします。
なぜなら、読みづらい文章は、大抵の場合、読点の位置が不適切だったり、語尾が単調だったりするからです。

文章執筆のマニュアル

さらに、文章を執筆する際には、推敲に限らず、さまざまな部分について注意が必要であることは言うまでもありません。

  • メッセージ
  • 構成
  • 説得力
  • 推敲

いずれの項目も、文章執筆においては重要となります。
本書では、そういった項目それぞれの注意点について、いずれも丁寧に説明されています。
章の「まとめ」は、第6章以外にもそれぞれ用意されています。
時間がないときには、各章ごとに設けられた「まとめ」を読み返すだけでも有益となるに違いありません。

本書は小説などの引用が多いこともあって、文章を書き慣れている人以外にも分かりやすく、楽しく読める内容です。
ビジネス文書や論文だけでなく、自分史やエッセイなどを書きたいと考えている人にもおすすめできる本です。

終わりに

文章は、漠然と書き続けているだけでは、なかなか上達が難しいものです。
しかしチェックするべき項目が明確になっていれば、
「どこを直すべきか」
「どこを削るべきか」
も明確になり、ぐっと書きやすくなるに違いありません。
推敲や構成についても、手順に沿って書くことが出来れば、かなり楽に感じるはずです。

文章執筆のマニュアルを探しているならば、ぜひ一度、本書に目を通してみてはいかがでしょうか。
(文:朔)

【書評】「超」文章法 伝えたいことをどう書くか【文章執筆の極意とは】

文章執筆に大切なことは何でしょうか。 私の場合は、とにかく「書き始めて、書き続け、書き終わる」ということだと考...

前回「お客様をがっちりつかんでファンにすること」について「かけたお金や時間よりもサービス精神が重要なんじゃないか」という考察を書きました。

「ファン化する、ロイヤルカスタマー化する」など、文章にすると簡単ですが、実際にどうやればいいのかについては非常に難しい。

そこでさらに著者やセミナー講師さん向けに、こうすると良いかもしれないという具体的な提案までいきたいと思います。

というわけで、今回は「個別対応に心つかまれた話」からです。

貴重な1点ものを、たった一人の貴重なお客様に!

※『蒼天航路』とは1994年に連載を開始した王欣太先生の漫画作品。敵役とされやすい『曹操』を主人公にしたネオ三国志。2005年に連載修了、後にアニメ化。

昔から『蒼天航路』というマンガの大ファンで、特別版の画集とか、フィギュアなど関連商品も買ってコレクションしています。酒の席で面白い作品を聞かれれば『蒼天航路』と答え、誰かが入院したら差し入れに『蒼天航路』を持っていき、風邪をひいて寝込んでいると聞けば『文庫版 蒼天航路』を薦めてきました(文庫版は軽いから、寝てても持ちやすいよね)

この『蒼天航路』ですが2017年に新たな動きがあり、『GALLERY CUORE(ギャラリークオーレ)』さんで、原画の販売を開始したのです。

実はこの数か月前に原画の販売に先駆け、10枚限定の複製原画というのを販売していて、僕はそちらを購入していました。

今回売りに出されている原画は当然すべて1点モノで、非常に『貴重』なものです。僕もさっそく1枚購入しました。

そして、その原画が自宅に届いたときに衝撃を受けるのです…!

 

なんと原画と共にメッセージがあり、ギャラリーの方の自筆で「またのご注文ありがとうございました」という言葉と、先生からのプレゼントとして人気キャラクターである『夏侯惇』のミニ原画までおまけでつけてくださったのです!

原画一つ買って、もう一つ原画がついてくるというのは「サービス過剰」でしょう!

スーツ買うともう一つスーツが付いてくる、某紳士服並みのサービス精神ですよ。

しつこいですが、原画って1点ものなのに・・・

 

なによりも複製原画の購入から数ケ月経っているし、引越して住所も変わったので、会ったこともない僕のことを覚えていてくれたことにまず驚きました。(後に判明しますが、僕が買った限定版のエディションナンバーまで覚えてらっしゃった)

原画もすべて1点モノなら、買った人もすべて、一人一人1点モノならぬオンリーワンです。

「本当に貴重な、一つしかないもの」を「一人しかいない、貴重なお客さんに向けて届ける」という認識があるからこそできることだと思いました。

 

ただの良い顧客が、無償の宣伝マンになる

実は最初の複製原画を買ったときは「嬉しさを伝えたい気持ちもあるけど、twitterとかでそれを先生にPRしたらやらしい人間に映るかなぁ」などと一人迷い、何も行動に移せませんでした。しかし、今回は原画のプレゼントを受け取ってますからお礼を言ってもおかしくない!という口実ができたのです。

写真と一緒に、ギャラリークオーレさんと先生のtwitterアカウントにメッセージをし、どちらからもお返事をいただけて興奮しました。そしてこれが、僕をただのリピーターから、宣伝マンに変えた瞬間です。

いざ自分がファンになるとよく分かりますが、その作品が好きでも気安く著者に絡んでいったり、宣伝したりというのをしづらいタイプのファンもけっこういるのです。

 

これで禊は済ませたとばかりに、それ以降は頼まれもしてないのに積極的にギャラリーのツイートをリツイートしするなど、すっかりファンになりました。

思うに、著者が積極的にリツイートやシェアをしてあげたりタグ付けをOKですよと書いたりして「いいんだ」ということを伝えてあげるのはけっこう重要なのだと思います。

もちろん、ツイートや、感想を投稿するにはエネルギーが必要なので、「嬉しい」「感動」といったものを読者に届けてあげるのが先です。

僕にとっては「覚えていてくれた」「原画に原画という過剰サービスをしてくれた」という特別感がきっかけでした。

宣伝マンになるのに十分すぎる興奮ですよね。

 

ギャラリーで涙を流したほどの神対応

そして10月27日が『蒼天航路』の連載開始日ということで、「蒼天の日」として記念キャンペーンを実施。新着原画を12時ちょうどにアップすると同時に、原画購入者へ「とっても良いものプレゼント」を企画してくださりました。

web上の熾烈なクリック争いを勝ち抜き、無事に原画を購入。その後、直接ギャラリークオーレさんにも行ってみることに。実は今まで一度も行ったことがなく、『蒼天の日』というのは初めて伺うのにちょうど良いタイミングだなと思ったからですね。

ギャラリーに到着して非売品の原画や、まだ購入待ちの原画らを「尊い…」と拝んでいたらスタッフの方が声をかけてくださりました。そこで「実は『蒼天の日』でさっそく原画を買わせてもらったんですよ」とだけ伝えたら、いきなり「ひょっとして西浦さんですか?」と言われたんですね。

ふつうネットで商品を買ってくれたお客さんの顔までは分からないですよね?その日にネットで原画を買った人は複数いましたし、僕の顔はおそらくtwitterで御礼のリプを送ったときに1回見ただけだと思うんですよ。

『それだけでこの人は僕のことを覚えていてくれたのか・・・』

『っていうかそもそもこの人たちのおかげでこんな貴重な原画を買えてるんだよな・・・』

そう思うと感動してきて、御礼を伝えようとしたのですが、もう涙があふれて何も話せませんでした(笑)結局ティッシュもらってしまって余計に迷惑をかけてしまいました。

 

結局のところ、今回は究極の「個別対応」に心つかまれたのだと思います。

出版などではどうしても単価が千円強と低いこともあり、特典は「複製可能なもの」になりがちです。

また講演会なども「いかに多く集めるか」というモデルにならざるを得ないので、個別対応するのはかなり難しい。

けれど参加者一人一人(希望者全員)と写真を撮る著者はいますし、結婚式などでは列席者全員に簡単なメッセージを書いたりもしますよね。

自分の座席にカードがあって、そこにメッセージがあればそれだけでちょっと幸せになるのではないでしょうか?

 

またセミナーなども、フロントエンドにあるようなものは、そのあとのバックエンドへの誘導目的になりがちで、自然募集人数も20名から、多ければ多いほど良いという発想になりがちです。

でも、こういう「初めてお客さんと直接接する場所」こそ、あいさつする前から「ひょっとして●●さんですか?」と聞けるくらいの人数を対象にする方が満足度が高いと思うのです。

ひょっとしたら、その中にあなたのお客様になってくれる人はいないかもしれません。

でもきっと満足度は高くなるだろうし、中には僕のように宣伝マンになってくれる人もいるかもしれません。

出版TIMESでもオープンセミナーを個別対応するために定員8名で募集していたのですが、それでも多すぎるなと思うようになりました。

次回以降は4人か5人くらいでないと、みんなが満足するまで質疑応答の時間を取ったり、一人一人に密に企画のフィードバックが難しいかもしれません。

 

出版TIMESのオープンセミナーでは人数減らせば内容が濃くなる分、価格は上がると思うので、今の価格10,000円で受講できる最後のチャンスとなります。

12月のセミナーは8人定員ですが、全員にご満足いただけるよう、かなり事前準備等がんばります!

後1席ですので、ご興味ある方はこちらから

出版セミナーのご案内

粋すぎる神対応でハートをがっちりつかまれた方法その2

前回「お客様をがっちりつかんでファンにすること」について「かけたお金や時間よりもサービス精神が重要なんじゃない...

「部室」という響きに憧れのある出版プロデューサー西浦です。高校は1年生でサッカー部辞めてずっと本読んでたし、大学はサークルで部室なかったんですよね。

ところで、著者に限らずセミナー講師やコンサルタント、ミュージシャンに役者など、「自分の名前で仕事しているすべての人」にとって「お客様をがっちりつかんでファンにすること」ってすごく大事ですよね。

ファンにするとか、ロイヤルカスタマーにするとか言葉としては良く理解しているつもりですが「じゃあどうすればいいのか」となると難しい。

ただ最近、僕自身が「いやいやいや、行き過ぎ、むしろ粋すぎるでしょうこの心遣い!!」とすっかりハートをつかまれたことが何度かあり、「ああ、こういうことなんだな。自分、全然できてなかったな」と反省した次第です。

今回は「神対応にただただ心わしづかみにされた」話をご紹介します。読者やお客様と接する際の参考になれば幸いです。

あの『放送室』で収録してきました

『放送室』といえば、ファンは誰もが知ってるこの画像

『放送室』というラジオがあったのをご存知でしょうか?当時の人気を覚えてらっしゃる方も多いでしょう。

知らない方のために補足すると、松本人志さんと、幼なじみで放送作家の高須光聖さんの2人によるトーク番組です。

2001年から2009年までの約7年半「TOKYO FMをキーステーションに、JFN37局ネットで」放送されました。

タイトルの由来は、パーソナリティの2人が放送部だったことから『放送室』となりました。いいですよね「部室」感、やっぱり憧れます。

 

実を言うと、出版TIMESで放送しているWEBラジオはこの『放送室』の雰囲気が好きで、はじめたものでした。

相方のあるうらさんも放送室のファンだったので「モチーフとしてはやっぱ『放送室』目指したいよね」「じゃあ、西浦さんが松っちゃんで、僕が高っちゃんやね」とイメージの共有もバッチリでした(笑)

 

さて、前置きが長くなりましたが、そのWEBラジオの年末年始分を先日収録してきました。

せっかくの年末年始ということで、いつもと違うことをしてみようということになり、あるうらさんが調べてきてくれたのですが、半蔵門のAir Voice Studioさんが放送室の収録に使われいたスタジオ、つまりは「放送室」そのものだったということがわかったんです!

これは行くしかない!と正直、僕らの番組では明らかなオーバースペックのスタジオなのに、収録してきました(笑)

しかも当日、オペレーターを担当してくださったのが、『放送室』のミキサーをされてたNさん。

こちらが『放送室』のファンだと知ってわざわざ担当してくださったのです、もうこの時点でテンションあがりますよね!

嬉しいなぁ、心遣いが嬉しいなぁと何度も言ってました。

 

終始ソワソワしっぱなしでしたが、Nさんにも助けられ無事に収録は終了。

途中で休憩をはさんだのですが、その時に話してくれた『放送室裏話』もすごく面白かったです。「放送室in武道館 〜高須ちゃん生誕40周年祭〜」で、松本さんの入りが遅れてて、危うくシークレットゲストの浜田さんとバッティングしかけたとか、高須さんナイーブになって当日40℃の熱出てたとか(笑)

やっぱりこういうことを直接聞けるのは嬉しいですよね。予定の時間をオーバーしつつも雑談に花を咲かせ帰りました。

粋すぎる!さりげなく撮ってくれた1枚の写真

この時点では良い経験だったなーくらいのものだったのですが、翌日Nさんからいただいたメールを見て「行きすぎ、いや粋すぎな心遣いでしょう!Nさん!」と思わず声を出してしまいました。

 

そのメールに添付されてたのがこの写真。

上の本家『放送室』と構図やマイクの位置を比べてみてください。

 

おわかりでしょうか?これは『放送室』でよく使われる、「放送室の構図」なんですね。

収録が始まったときにこっそりご自身のスマホで撮影してくださってました。

こちらが「本当に好きなものは何か」を理解したうえでスペシャルな記念をくれる。ここにお金は関係ないのです。

この構図が、この構図を黙って撮ってくれたことが嬉しかった。

なぜか僕のあごがしゃくれてるのだけ不満ですが(笑)

 

たぶんカリスマ性じゃなくてサービス精神

僕は今までがっちりファンをつかめる人というのは、やっぱりカリスマ性があったり、ミュージシャンなど特殊な才能を持った人間なんだと思ってました。

だから、まあ、自分はそこまでできなくてもしょうがないだろうと。

ところが今回僕のハートをがっちりつかまれたのは、そういったカリスマや特殊な才能のある方ではなく、一人のスタッフさんによる「サービス精神」でした。

もちろん『放送室』自体のファンだったことが前提にあります。

あの番組は松本人志さんというカリスマかつ特殊な才能の持ち主による、すばらしい作品なわけですが、それだけでは「好き」「ファン」のままでした。

その後、僕のハートをがっちりつかんでくれたのは、スタジオのスタッフさんであり「また絶対ここで収録したいな」と思うようになりました。本来は記念的に、今回だけの収録でも良かったにもかかわらずです。

もう放送室だけでなく「Air Voice Studio」さんのファンでもあり、Nさんのファンにもなったということですね。

こういった「自分の気持ちを大事にしてくれてる」と感じられる気遣いって本当に嬉しいですし、忘れられません。

逆に言うと、スタッフさんでもこういった気遣い次第でファンをつかめる(あるいは離れる)ということは、

今、著者や講師、役者さんをしている方であれば、ご自身のスタッフさんがファンにどういった接し方をしてくれているのか?

そことしっかり向き合うことも、とても大事だと思いました。

 

このファンのハートをがっちりつかむ方法ですが、次回に続きます。

さらにハートをつかまれたエピソードがありますのでお楽しみに!

粋すぎる神対応でハートをがっちりつかまれた方法その2

粋すぎた神対応でがっちりハートをつかまれた方法

「部室」という響きに憧れのある出版プロデューサー西浦です。高校は1年生でサッカー部辞めてずっと本読んでたし、大...

企画を提案するとき、編集者に何を話していますか?

同じ企画でも、伝え方や内容、順番で相手の反応は変わってきますよね。

多くの著者が「言いたがる」ことと「編集者に伝えた方が良いこと」のギャップがけっこうあるので、今回は「僕が企画をメールで提案するとき、相手に伝えること」から、企画の重要なポイントを浮き彫りにしたいと思います。

相手の立場によって伝えるべき内容や順序が変わる

それこそ出版社にいた時、どんどん興味の湧く話し方をされる編集さんもいれば「この企画のポイント、自分で分かってないんじゃないの?」っていう編集さんもいて、当然前者の企画の方が通りやすく、また売れることも多かったです。

例えばいきなり企画について説明するんじゃなくて「ジャンル」だけまず伝えて、相手の頭のチャンネルを合わせてくれる人がいます。「このジャンルの本ってAのパターンが多いのですが、こういう不満があるので、それを改善するのが今回の企画です」というような流れで説明してくれるので分かりやすいのです。

当時、マーケティング部にいた僕は2時間で20本近くの企画についてコメントするので「何の企画か」をまず知りたかったんですよ。

そのうえで「類書に対してどういう差別化を考えてるか」という部分の話をしてくれるのですごく理解しやすい。

あとは編集者の言った「Aパターンが多い」という分析に同感か異論があるか、改善案に賛同するか反対するかが論点なので明確です。

そしたら「もっとこうしよう」「そっちじゃなくて、ちょっと読者かえる方がいいかも」という感じで「その企画は基本的にOKで、そのうえでどう売り伸ばすか」の話ができます。

 

これはマーケティング部だった西浦がすぐ知りたかったことです。

では編集者には何を伝えるべきなのでしょうか

 

何よりもまずは「企画の一番強い部分を一言で表す」

編集者に企画を提案するときは、プレゼン大会に招待させていただくこともあれば、メールで企画書を添付することも、電話で「実はこんな企画が」と相手をつかまえて話すこともあります(事情があって、すぐ企画を通したいとき)。

でもどのパターンでも基本的に「最初に一番の売りを伝える」ことにしています。

企画のタイトルが秀逸なら「●●」というタイトルの企画です。とだけ最初に伝えますし、

コンセプトが一番魅力的なら『○○すれば◇◇になる』という本です。という感じですね。

そして企画以上に著者本人のプロフィール力がある場合は「△△な著者の企画です」と伝えてます。

 

これはもちろんメールでも同じです。

やはり一番の売りを最初に伝えて「ほう、このメール最後までしっかり読んだ方が良さそうだ」と思ってもらいたいですからね。

後で電話でフォローするのがセオリーでしょうが、相手が忙しいとかえって迷惑ですし、基本的にはこの1行目で「他に企画を持っていかれる前に、返事はしといた方が良さそう」と思ってもらえるように1番強い部分を伝えるのだとお考え下さい。

 

逆に言うと「つまりこの企画で一番強いのはここ!」っていうのが文章化できていないうちは準備不足と言えます。

 

企画よりも著者情報を先に伝える理由

売りを伝えた後は、企画についてではなく、著者情報を先に伝えます。

彼らにとっては「今受け取った企画が面白いかどうか」も重要ですが、もっと大事なのはプロフィールなのです。これは編集者が企画のプロだからです。ぶっちゃけた話、できる編集者なら企画が全然ダメでもプロフィールがズバ抜けて良ければ、いくらでも良い企画にしてくれます。

 

プロフィールでは「何に関して日本一なのか」を伝えます。お客さんがン万人とか、日本で唯一『〇〇した医者』とか、100年歴史が続いているとか、逆に日本で一番早くこのノウハウを取り入れた人で、まだ国内では10人もいないとか。

とにかく何の専門家か、どういったすごさがあるかを伝えます。

個人的には西浦はこの「著者のすごさを余すことなく伝える」のを最も得意としています。著者と言う人を実績やコンテンツに分解して、言語化するというのが得意だからです。

 

逆に企画だけ良くても、プロフィールが弱いと「その人が書く理由」として弱いということになるし、書いてもたぶん中身が面白くなりません。

 

だったら企画書なんてなくて、プロフィールだけでいいんじゃない?という意見もあるでしょうがそれもまた足りないのです。

かつてプロデュースした著者でも企画書を書いたことがない人が2名いました。つまりプロフィールが強いから出版社から企画の提案を貰えるわけです。

で、売れたいたのかと言うと一人は1冊も増刷がかかっていない。もう一人は本にならないという状況でした。(僕がプロデュースするまでは)

どちらも「自身のコンテンツの整理・情報のブラッシュアップ」が足りておらず、企画として面白くなかったり、ライターさんに取材してもらっても、うまく本にできなかったりしていたのです。

編集者が作った企画の方が出来が良いのは当たり前ですが、こちらが70点の企画を出せばできる編集者は100点に仕上げてくれるし、こちらが90点のものを用意できれば120点にしてくれるものです。企画を全く整理していない=0点の企画から始めると、やはり到達点も低くなります。

 

そういう意味で、こちらで最高の企画書を作る必要があります。

 

企画書を添付してても、別途伝えるべき企画のポイント

企画書を添付しているのに、企画について何を書けばよいのでしょうか?

「詳しくは添付ファイルにあるから見てね」って話なのですが、それだと見てもらうまでに至らない場合もあります。

ここでも大切なのが企画のコンセプトです。

出版企画書のコンセプトは36文字で作る

「この企画をひとことで言うと何だっけ?」がコンセプトでしたね。

このコンセプトをバシッと伝えて、どんな企画か伝えましょう。

その後少し、コンセプトについての解説をします。背景情報や、いかに新しいかなど企画そのものの魅力を伝えます。

 

ここまで読んでもらえてたら、なんらかのリアクションはありますよ。

ちなみに「ここはこういう方向性に変えた方が良い」と言われることもあると思いますが、それがどうしてもイヤだ、違うと思ったら例え自分に興味を持ってくれていても断りましょう。

逆に「この編集さんが言うんだからそうに違いない」って思えるくらい、信頼できる方に企画は預けたいものです。

編集者に企画を提案するとき、メールに書いていること。

企画を提案するとき、編集者に何を話していますか? 同じ企画でも、伝え方や内容、順番で相手の反応は変わってきます...

日常生活において、誰かに何かを依頼することは少なくありません。
しかし、依頼を受けてもらえるかどうかは相手次第で、内容や、相手の機嫌、状況などによって返事は変わります。
そんな相手への「お願い」の成功率が上がる「伝え方」があるなら、知りたいとは思いませんか。
今回は、そんな「伝え方の技術」が詰め込まれた、【伝え方が9割】を紹介します。
読んで納得の情報が満載の良書となっています。

どんな本なのか

本書は、コピーライターとして国内外で51のアワードを獲得し、作詞家としても活躍する佐々木圭一氏によるものです。
もともと「伝えること」が得意ではなかった著者は、コピーライターとして苦戦しつつも「伝え方」の技術を発見。
本書には、その過程や、発見した技術が、ありのままに綴られています。
紹介されている「伝え方の技術」は、決して複雑なものではないことから、訓練次第で誰でも身につけることが出来るでしょう。
「人の感情を動かすエネルギーのある強いコトバ」を使いこなすために、とても役立つ本となっています。

ノーをイエスに変える技術とは

第二章で、著者は「コトバには困難を逆転させるチカラ」があるとしています。
それは伝え方次第で、相手の気持ちを「ノー」から「イエス」に変えることが出来るためです。
そのために、著者は第2章で、3つのステップと、7つの切り口を紹介しています。

まず3つのステップとは、

  • 頭の中を、そのままコトバにしない
  • 相手の頭の中を想像する
  • 自分のお願いと相手の願望とを一致させる

というものです。

さらに切り口は、

  1. 「相手の好きなこと」相手の好きなことでコトバを作る
  2. 「嫌いなこと回避」相手の嫌いなことを回避するコトバを作る
  3. 「選択の自由」相手の好きなことを並べて選択できるようにする
  4. 「認められたい欲」相手の「認められたい欲」を満たす
  5. 「あなた限定」相手限定であることを伝える
  6. 「チームワーク化」相手と一緒に動く
  7. 「感謝」相手への感謝を伝える

の7つです。

いったん依頼から気持ちを離し、相手の頭の中を想像した上で、適切な切り口を使うのです。
それにより、ノーがイエスに変わる可能性が高くなる、としています。

コトバエネルギーの生みだし方

相手の気持ちを動かすエネルギーのある強いコトバ、その生みだし方の分かりやすい例が、第3章に掲載されています。

強いコトバをつくるのに必要な、「コトバエネルギー」をどう生み出すか?
その方法は、ジェットコースターの原理と同じです。
コトバに高低差をつけてあげれば、エネルギーは生まれるのです。
例えば、
「あなたが好き」
より
「嫌いになりたいのに、あなたが好き」
のほうが高低差があります。
高低差とは、そのコトバを見る人、聞く人にとって心を動かすエネルギーです。
ジェットコースターと同じで、高低差があればあるほど、人はぐっとくるのです。
(122ページ 第3章「強いコトバ」を作る技術 より引用)

この「嫌いになりたいのに、あなたが好き」という文章に使用されているのは、意識して正反対の言葉を使用する「ギャップ法」という技術です。
著者は、強いギャップを持つ言葉を使うことにより、「好き」という言葉に強いエネルギーが生まれるのだとしています。
確かに、
「嫌いになりたいのに、あなたが好き」
と言われたら、強く心に残るに違いありません。

同じ意味の文章であっても、伝え方ひとつで、これだけ印象が変わるのだから不思議です。
相手への告白に限らず、効果的な伝え方として覚えておきたい技術です。

デジタル文字の冷たさを解消する

そして本書で最も日常的に使えそうなのが、メールに関する技術です。
顔の見えないやりとりであるメールは、選ぶ文章によっては、相手に冷たい印象を与えがちなものです。
しかし本書にある以下の技術を使えば、相手に与える印象は違ってきそうです。

あなたのメールは、あなたが思っている以上に、相手に冷たく伝わっていることを知りましょう。
では、具体的にどうすればいいかです。
感情がそぎ落とされるぶん、コトバで感情を30%増しにするのです。
これで、手書きと同じレベルになります。具体的には、語尾です。語尾に感情を加えるのです。
(197ページ 第3章「強いコトバ」を作る技術 より引用)

喜びや感動を、少しオーバーなほどに強く表わすことで、文章から冷たさを消すことが出来る、と著者は述べています。
これもまた、日常に取り入れやすい「伝え方の技術」であると言えるでしょう。

終わりに

「相手の心を動かす強いエネルギーを持った言葉」を作りだすことが出来れば、毎日は格段に楽しくなることでしょう。
この「伝え方の技術」は、仕事だけでなく、プライベートでも大きく役立ちそうです。
もちろん訓練なしで、いきなり上手な伝え方が出来るようになるものではないでしょう。
まずは毎日の生活に、本書の「伝え方の技術」を取り入れて、大事な時にうまく使えるよう訓練したいものです。

(文:朔)

【書評】伝え方が9割【人生を変える、強いコトバをつくる技術とは】

日常生活において、誰かに何かを依頼することは少なくありません。 しかし、依頼を受けてもらえるかどうかは相手次第...

引っ越しの荷造りがキライな出版プロデューサー西浦です。荷解きはどんどん部屋が広くなるから楽しいのですが、荷造りはやればやるほど段ボールが積み上がり、生活しづらくなっていくという悲しみしか生まない作業ですね。はぁ。。。

さて、本を書くときに文章の上手い下手は誰しも気になるもの。しかし、案外忘れがちなのが文章の『自分らしさ』です。ぶっちゃけほぼ100%の原稿は、編集さんによってちゃんと「読みやすい文章」にブラッシュアップしてもらえます。だから下手すぎる場合を除いて、そこまで文章の上手い下手は気にしないで大丈夫です。

 

しかし、文章に「自分らしさ」「雰囲気」を練り込むのは、やはり自分の仕事です。(一部、憑依系の編集さんもいますが、これは例外)ですので、自分らしい文章の書き方について考えていきましょう。

 

『自分らしい文章』とは、著者の人柄がにじみ出るような文章ではないでしょうか。場合によってはくだけすぎたり、丁寧すぎたりと「読みにくい」ときもあるが、「あの人らしいなぁ」と感じる文章です。

まだまだ研究中の分野ではありますが、現時点で有効だったり重要だと思っているポイントについてまとめます。

使わない言葉を決める

「いつも特定の言葉を使う」ことで自分らしさを主張するのは、かえってあざといなと感じられます。狙ってる感というか。

でも逆に「使わない言葉」を決めると、自然と自分らしさが出てきます。

 

例えば僕の例だと、人に対して「使う、させる」という言葉を使わないと決めています。

  • 「俳優使って、本格的な再現ドラマを作ろう」
  • 「ライター入れて、取材で書こう」

相手が年下や部下だったりすれば日本語としてはおかしくはないのでしょうが、好きな言葉の使い方ではありません。

なので僕の場合は年下や身内に対しても「してもらう」という表現を使っています。

 

こういった「使わない言葉」は、実は文章だけでなく、その人の生き方も反映していたりします。

つまり言葉を「使わない」ことで、同じ考え方の人たちに共感してもらえるのです。

逆に文章を読んでいて「なんとなく嫌だ」と感じることがあるとしたら、ひょっとしたらあなたが使わない言葉を相手が使っているのかもしれません。

 

どっちつかずは書かない(委ねるのはOK)

基本的に文章は「言い切る」方が良いです。メッセージが明確になりますし、一文も短くなります。まさに読みやすい文章ですね。

ただ性格的に「読者に対して強制はしたくない」とか「判断は自分でするべき」「多様性を大事にしたい」という著者もいます。

 

この場合「言い切る」のに抵抗が出ると思うのですが、「言い切らない文章」は何を言いたいのか分からない文章になりがちです。

すると「はっきりしないのは自信がないから」と読者に映るので避けたいですね。

そういうときは「言い切って」そして「委ねる」書き方をするとあなたらしい文章になると思います。

 

例1)言い切って委ねる文章
言い切ると「自信がある、わかりやすいという印象」を与える。そのうえで委ねると「優しい、強制的でないという印象」も与えられる。だから好みにあう書き方をしよう。

(選択肢それぞれのメリットを言い切って、選択そのものを委ねる。)

例2)言い切ってない文章(わかりづらい)
言い切ったらいいかというと、考え方の合わない人は反発しますし、かといって言い切らないでいると自信がないと映ってしまう。
(1より短いのに、だから結局何なの?って感じになってしまう)

例3)言い切ってない文章(自信がない)
言い切ると自信があるというように思われることが多いように思います。

(たぶん読んでてイライラするのでは?)

 

本質、原因、仕組みに関する考え方は慎重に

世の中のいろんな物事の『本質や原因』に対する、自分のスタンスは、ちゃんと意識しておきましょう。

その場のノリで書いてしまうと「あれ?この人ってこういう考え方をする人だったっけ?」と読者が敏感に反応します。けっこうその人らしさが出やすい部分なのです。

 

例えば、

  • 戦争がなくならない理由は?

について「自分と違う価値観を認めないから」なのか「差別」なのか「恐怖」なのか「政治の一形態」なのか「陰謀」なのかといった理由に、あなたが何を選ぶかです。

「戦争のような重たい話書かないから、別にいいよ!」と思うかもしれません。しかしその「理由」の方について書くときについポロっと出してしまう可能性があるのです。

どういうことかと言うと「価値観の違いを認め合って生きることが大切だ」ということを伝える文章の中で「戦争も、価値観を認め合えないからなくならないのです」とついつい書いてしまうことがあるんですね。

このついついが怖い。「価値観の違いを認めよう」という文脈が、「戦争の理由」という重たいことをついつい書いてしまったことで「戦争は価値観の違いを認め合いないからだ」という文脈として読み取れるようになってしまうのです。

 

「世の中はこうやって動いている」ということをみんな何となくそれぞれに信じていて、その比重も人によってちがいます。

成功の理由も精神論とするか、スピリチュアルとするか、やり方などノウハウにするか、クリエイティブ至上主義か、とかいろんな種類がありますね。

同じ考え方の人からは賛同されますが、逆からは敬遠されます。内心バカにされたりすることも。

 

個人の内面を重視する人、社会の仕組みを重視する人、いろいろ居ていいので、あなたが何を選ぶか(書くか)はあなたの自由です。

ですがどんな考えにも同意者と反対者がいるので、発言することで敵と味方を両方得ることになるでしょう。だから発言するときは慎重に「自分らしい」方を考えてから選んでください。

 

専門外の領域は基本的にふれない

専門外の領域について偉そうな書き方をするのはやめましょう。この時ばかりは言い切りは逆効果です。

なぜかというと「専門分野の信頼度にも悪影響が出てしまう」からです。

 

たとえば僕が出版の目線で、映画のことを批評したとしましょう(わりと偉そうに、言い切る感じで)。

その文章がてんで的外れだった場合、映画の分野に詳しい人たちから「こいつ全然大したことないな~」「ってことは出版で書いていることも大したことないんじゃ?」と思われてしまいます。

 

「他分野で〇〇があったらしいけど、出版に置き換えたら××なことができるかもしれないね!」というくらいのトーンならいいと思います。

逆だと恥をかくだけでなく、本当は的を得ているはずの専門分野にも傷をつけることになりかねません。

 

どんな文章も書くも書かないもあなたの自由ですが、書いた後には責任が伴います。誰でもどんな文章でも書いていいからこそ「自分らしい」文章やスタンスはなんなのか整理しておくと良いでしょう。

 

自分らしい文章の書き方は、スタンスを決めるところから始めよう

引っ越しの荷造りがキライな出版プロデューサー西浦です。荷解きはどんどん部屋が広くなるから楽しいのですが、荷造り...

「~の到達点」っていう言葉にすっごい惹かれる出版プロデューサーの西浦です。「人類の到達点」(某ニュートン一族)とかカッコいい!あと「橋頭保(きょうとうほ)」「分水嶺(ぶんすいれい)」って言葉も使いた過ぎてよだれ出る。

 

さて、先日30代の脂の乗ったベストセラー編集者たちとアルコールセッション(飲み会)をしていたときに「良い文章とは何か?」という話になりました。

  • 構成力?
  • 書き出しの面白さ?
  • オリジナリティのある表現?

いずれも大事だし、他にもいろいろと考え方はあると思うのですが、全員が「なるほど!」「これは新しい考え方かもしれない!」と納得した「うまい文章」「良い文章」の条件を発見しました。

これが僕らの「文章術に関する現時点での到達点」です。(←到達点使いたいだけ)

 

難しいことを簡単に説明できる人が頭いいって本当か?

「頭がいい人は、難しいことを簡単に説明できる」「難しいことを難しく話すのは、頭良くない人」みたいな話しを聞いたことはありませんか?

これって本当にそうでしょうか?なんとなくそんな気がするものの、ちょっと違和感を感じたことはありませんか?

僕がそのように感じるのは「難しいことを簡単に翻訳する時点で、大事なことが抜け落ちてしまっているのでは?」という疑問があったからです。

頭がいい人や専門家だからこそ到達できる境地というものがあって、それを僕のような一般人にわかるレベルに翻訳すると、何かズレてたり、肝心なところは分かってないんじゃないかな?と不安になることがあるんですね。(相対性理論とか量子力学の本とか読んでると特に・・・)

 

だから編集さんたちと話しながら

  • 「簡単に説明する=たとえ話でわかりやすくすること」のようなイメージがある
  • 原稿でも分かりにくいところがあると「たとえ話」を要求したりする
  • けれど「たとえ話」が必要な時点で分かりくい文章ってことなのでは?
  • むしろ「難しいことをそのまま話しても、大事なことが伝わる人が賢い人なのでは?」』

という疑問が生まれたんですね。

 

「簡単に説明する」とは、たとえ話をすることではない。

「難しいことを簡単に説明する」ということがどういうことか、ちょっとまとめてみました。

難しいことというのは

  • 複雑であったり
  • 専門用語が多かったり

する話だと思うのです。それを簡単に説明するとは

  • 複雑な構造を単純に ⇒ 単純化
  • 専門用語を一般的な言葉に ⇒ 一般化

するということになりますね。プロフェッショナルや専門家が、初心者や素人にわかるように話すってこういうことだと思うんです。

 

でも、この単純化された際に抜け落ちたニュアンス、一般化された際に失われた背景って伝わりません。

これこそが僕が危惧している「難しいことを簡単なことに翻訳すると、抜け落ちてしまう大事なもの」です。

 

「こっちが善であっちが悪」みたいな超・単純化をしてはむしろ頭悪い人だと思うのですよ。(簡単だし、わかりやすいけど)

だから本当に頭がいい人は「単純化しつつニュアンスを伝え、一般化しつつも背景は伝える」ことができる人ではないでしょうか。

 

この絶妙なバランスで単純化・一般化ができれば、読み手聞き手はその瞬間に「なるほど!」と、プロや専門家に近い(同じではないけど)レベルで理解できます。

これはとてもハイレベルなことで、問題なのは上手に単純化・一般化できない人が、「たとえ話」を多用し、伝わったつもりになっているケースです。

たとえ話は逃げ

「単純化しつつニュアンスを伝え、一般化しつつも背景は伝える」ことが出来た時、そこに「たとえ」は必要ありませんね。なぜならすでに伝わっているからです。

でも難しいことを、短めの言葉で「バシっ!」と言い切った後、周りは逆に「ぽかーん」としていて、そこから『要は~』とか『例えば~』と「たとえ話」を持ってくるケースがありますよね。

 

そういうまわりが理解できてないときは「たとえ」るのではなく、再度「単純化と一般化」にトライする方が良いと思います。周りが「( ゚д゚)ポカーン」としてるのは「単純化・一般化が足りていない」か、「やりすぎてボヤけたか」のどっちかなので、そこを再調整すれば伝わるはずです。(それが難しいのですけどね)

それができていないのに『要は~』なんて言うと『いや、あなたの話、全然要してないと思うんですけど?』って聞き手は不快に思います。

たとえ話の使いどころは自分事化

ではたとえ話はまったく使えないものなのでしょうか?もちろんそんなことはありません。たとえ話は読者に「自分事にしてもらう時」に役立ちます。

つまり自分の人生に置き換えるためのたとえ話は有効です。

こう思うようになったのは、僕が読者向けに本のプレゼンをするイベントがきっかけでした。

 

僕がオススメの本を紹介するというイベントを定期的にやってまして、そのイベントで「銃・病原菌・鉄 1万3000年にわたる人類史の謎 」という本を紹介したときのことです。

 

『なぜ人類はお金や権力などを「持つ者と持たざる者」の間で差が生じてしまったのか?それは人種や才能の差異ではなく、生まれ落ちた場所が農耕に向いた土地で、その地域で育てられる作物の種を持っていたという2つを満たしていたかどうかが明暗を分けたのです。優れていたとか努力したというよりは環境の影響力が非常に大きく、効率的に食糧をたくさん得られた方に、政治システムや武器を作製する余裕があったのです。』

 

という話をしたら、みんな「理解」「納得」はしてくれるものの「で?で?」と、「もっとくれ、もっとくれ感」がすごかったんです(笑)。

実は僕としてはもうこれで十分というか、しっかり伝わった、落ちがついたと思っていたんですね。けどみんなの「もっと来い、もっと来い感」がすごかった。そこで

 

『これはそれぞれの人生に置き換えた時に、とても気をつけなくてはいけないことだなぁと思いました。【たとえば】自分がどれだけ仕事で努力しても、その業界(環境)や才能(種)が「向いていない」ものであれば、持たざる者の側になってしまう可能性があるからです。

「なぜイチロー選手は、今の年俸を得られたか?」といえば「努力、才能、いずれも必要だが、一番大事なのは野球を選んだことだ」という話を聞きました。野球でなくて、もっとマイナーなスポーツであれば、今のような年俸は得られなかったでしょう。同じくらいの才能を持ち努力をしたとしてもです。タレントの武井壮さんもそんなことをおっしゃってましたね。

逆に今うまく行ってるなら「才能がある」「努力してきたから」だけでなくて「環境のおかげ」と感謝の気持ちを忘れてはいけません。たまたま育てるのに向いた種と、育つ環境に身を置けただけなのかもしれないのです。』

 

と若干焦りつつ、たとえ話のオンパレードを披露したところ、『おおー!』とようやく皆さんの満足を得られました(焦った・・・)

それ以降は「内容まとめ+自分の人生に関わるたとえ話」のセットで紹介することで、興味関心や、人によっては感動したと言ってくれた人も出てきました。

おそらく、「読む」や「聞く」という行為は、どうしても受け身にならざるを得ず『ここが着地点ですよ』というわかりやすいサインがないと、感情の着地どころを見つけにくいんですね。

そのときに「たとえ話」は読者や聞き手が「自分事」として落とし込むきっかけになるのです。

 

というわけで、難しいことを書いたり、言ったりするときに安易に「たとえ話」に逃げるのはやめましょう。

「たとえ話」は、理解の後で、相手に自分事として落とし込んでほしい時に使う、伝える技術の到達点です。(←到達点使いたいだけ)

編集者とブレストして到達した「本当にうまい文章にたとえ話は不要」論

「~の到達点」っていう言葉にすっごい惹かれる出版プロデューサーの西浦です。「人類の到達点」(某ニュートン一族)...

どんな面白い企画であれ、相手にそれが伝わらないと「イイね!」とはなりません。

しかし出版の未経験者の場合、焦ってしまうのか、力が入りすぎるのか全然伝わらないことも多く、実は聞いている側は開始10秒で「ダメだこりゃ」と心のいかりや長介をむき出しにしてしまうことが多いです。

もっとつらいのは「ダメだこりゃ」となった企画をその後延々と聞かされることでして、これはもう悲しみしか生みません。

そうならないためにもなぜあなたの企画が「ダメだこりゃ」と思われるのか、その原因と対策についてまとめてみました。

なんの話かまったく見えてこない

これが一番つらいのですが、「誰のための、何がどうなる本なのか」まったく見えないで話が進むと本当にツライです。とにかく端的に「なんの本か」を伝えてください。

  • 「フリーランスが確実に1年で300万、2年で500万、3年で800万稼ぐ本です」
  • 「超受け身でもコミュニケーションが成立する本です」

など、とにかく手短かに「どんな本か」を伝えましょう。つまりは企画のコンセプトです。これがない=何にも考えられていないと言っても良いでしょう。

10秒で何の本か見えてこないと、心のいかりや長介が出てきます。

とにかく話が長い

もう企画うんぬん以前に「長い話はツライ」です。相手が校長先生の話を聞いてる朝礼の生徒みたいな顔になってませんか?だいたいメモも取らずに聞くだけで記憶できる時間は限られています。

でも相手に刺さる話ができていない人に限って、不安からどんどん話が長くなる傾向にあります。『今の日本の経済がどうの、世界的にみてもっとこうあるべきで、これからは女性も活躍する時代だし、高齢化社会においては・・・』『ちょっと、待ってくれ!何の話!?』って叫びたくなる時があります。というか実際に『〇〇さん、話が長いゼ―☆』って冗談めかして言いました。

基本的に相手から質問や、「なるほど!」というサインがない時に、自分が1分以上話してたらもうアウトだと思って下さい。

相手の心のいかりや長介が大暴れしています。

強い言葉がない

あなたの話に「すごいですね!」「それはなぜですか?」「え、それって普通じゃないですよね」といった好反応を示してくれると、編集者やプロデューサーは興味を抱いています。

そのカギになるのは、やはり「興味を引くキーワード」です。

「和菓子よりケーキのほうが太らないんですよ」「50,000人のクライアントが成功率80%以上です」「日本人で唯一、イタリアNO.1の靴磨き職人のもとへ修行に行きました」とか、実績やノウハウ、事例などに、とにかく相手を驚かせる言葉を入れてください。強い言葉に人間は反応するんですね。心の長さんが微笑んでくれる瞬間です。

動機が上から目線

本としてそこそこ面白そうでも、原稿にすると文章がわかりにくい、はっきり言うと偉そうでムカつく、ということがあります。

こういう本は読者に著者の上から目線が伝わって不評でして、発売後に全くクチコミをしてもらえない傾向が強い。

「楽しそうな大人を増やしたい」「電車で元気のないサラリーマンを見てこのままじゃダメだと思った」って良いことを言ってるようで、上から目線ですよね?

『なんでお前にそんなこと言われなきゃいけないんだ』と感じます。説教されてるような感覚なんですよね。

同じことでも「ボク自身が本当に毎日がつまらない大人だったから」「電車に映る自分の顔を見て、このままじゃダメだと思った」と自分事にすれば、相手に響きやすくなります。読者も僕らも共感できるんです。自分自身の体験でなくとも、せめて親しい友人や家族など、本当に親身になれる相手のためを思って、下から目線で話しましょう。

あ、もちろん本気でそう思ってないとダメですよ。テクニックとして見せ方だけそうしても、心のいかりやさんには見抜かれます。

 

ブランディングとか言っちゃった

「〇〇協会のブランディングのために」など、ブランド目的の発言はしてませんか?相手が表情に出すかどうかは置いておいて、かなり感じ悪いです。動機が上から目線よりさらに悪いです。

ブランディングのための出版ならば、企業出版や自費出版などを目指しましょう。個人的には一番大きい「ダメだこりゃ」を心のいかりや長介が叫ぶ原因です。

そもそもそういう場じゃない

これが意外と盲点ですが、ちゃんと企画の提案をしてもおかしくない場所でしょうか?
出版セミナーの懇親会とかは確かに「そういう場」だと言えます。けれど他のセミナーの懇親会ならそのセミナーに関する話が主であるべきですし、こっちも本の企画の話はしづらいです。

編集者というのは懇親会に行けば企画の売り込みをされる職業でして、ある編集さんは『若いころ、途中まで完全に「コムスメ扱い」されてたのに、主催者に『〇〇社の編集さんです』と紹介された途端、名刺交換の嵐で怖かったです・・・』と軽いトラウマ体験を話されていました。

チャンスとばかりにがっつかず、一人の人間としてTPOに応じた話題を話しましょう。心の長さんもげんなりしてます。

初対面

飲み会で企画の相談がダメと書きましたが、僕自身は飲み会で企画の相談をすることもあります。

『なんだよ!お前だって心のいかりや長介出させてるじゃないか!』と思われるかもしれませんが、実は違うんです。僕は「初対面で企画の相談は絶対にしない」んです。

編集者を単なる取引先とか、「本を出すための機能」として認識していないからです。当たり前ですが一人の人として見ています。自分としてはお互い引退した後で『西浦さーん、今月で私定年退職したんですけど、飲みに行きません?』って言われて『いいね~、行こう行こう!』って言える相手とだけ仕事したいと思っています。

つまり人として見て、人として付き合って、良かったら企画も一緒にやるっていうスタンスです。

 

だから先述のように何かのセミナーの懇親会で編集者を捕まえて企画の売り込みをしているのを見ると「初対面でいきなり売り込みするかね!?」(CV:キム兄)ってげんなりしてしまいます。
人としてではなく「編集者」「出版プロデューサー」という「機能」として見られている気がするからでしょう。

それでも主催者(たいてい著者)に紹介されたりしてると無下にもできないので、話を聞くのですが、だいたいここまで紹介した例にがっつり当てはまり、最初の10秒で「ダメだこりゃ」と「心のいかりや長介」が下唇むき出しになってます。

 

心のいかりや長介と仲良くするために

ではどうすればあなたの企画を、ちゃんと最後まで聞いてもらえ、かつ次へと続くようになるのでしょうか?

  1. 聞いてほしいことをまず聞く
  2. 聞かれたら簡潔に
  3. 相手の興味があることを話す

この3つかなと思います。

いきなり企画の話を始めるから「売り込み」になるのであって、実は初対面でもどこでも、編集者やプロデューサーが「この人の企画聞いてみたい!」って思ったら、いくらでもPRしていいのです。

だからまずはあなたからたとえばこんなことを聞きましょう

  • 何の仕事をしてるんですか?
  • どういった本を作られているんですか?

など。質問に答えてくれたら、相手も「あなたは何の仕事をされてるんですか?」とか「どういったサービスなんですか?」といった質問をしてくれるでしょうから、その答えとして「自分」に関する強い言葉を伝えます。

「ダイエットコーチをしてるんですが、実はガムさえ食べ続けたら80%の人は痩せられるんですよ」とか「経営塾を運営しているんですが、おかげさまでOBが1万人、今だと3年待ちですね」とか。

あなたの発言に、相手が興味を持ったらさらに追加でいろいろ質問されますから、簡潔に、しかし自分の温めている企画の話になるように誘導しながら話しましょう。

そのタイミングで企画の話をすればバッチリですし、むしろ相手がたぶん勝手に「こんな本とかって書けたりします?」と聞いてくるでしょう。

 

つまりは相手の興味があることを話し、あなたに興味を持たせ、徐々に企画の話にしていくと良いでしょう。

そうすれば会ったその日に縁が切れることもなく、次に続いていくと思います。

 

その企画が10秒で「ダメだこりゃ」と思われる理由【楽しい大人を増やしたいは響かない】

どんな面白い企画であれ、相手にそれが伝わらないと「イイね!」とはなりません。 しかし出版の未経験者の場合、焦っ...

作文、読書感想文、謝罪文など、文章には様々なものがあります。
そんな文章が、せっかく書いたのに、うまく相手に伝わらなかった、という経験はありませんか。
どんなに長くても、どんなに感情を込めても、きちんと相手に伝わらなければ、その文章は役割を果たせないことになってしまいます。
しかし、何が原因なのかは、自分では気が付きづらいものですよね。

「相手にきちんと伝えたい。文章によって、相手の心を動かしたい」
そんなときは、山田ズーニー氏による【伝わる・揺さぶる! 文章を書く (PHP新書)】を読んでみてはいかがでしょうか。
本書には、どんな用途の文章にも応用させることのできる「文章を機能させるための要件」が収められています。

どんな本なのか

伝わる・揺さぶる! 文章を書く (PHP新書)」は、『機能する文章』を書きたいと考える人におすすめの本です。
筆者は1984年にベネッセコーポレーションに入社し、小論文通信教育の企画・編集・プロデュースに携わった山田ズーニー氏です。
本書では、説得文・依頼文・議事録・自薦状・謝罪文・メールなど実用性のある様々な文章について、実際の例を挙げて説明しています。
また、それだけではなく、指示の出し方や、会話などについても言及されています。
仕事や学校などで文章を書く機会が多い人だけではなく、全ての人におすすめできる、日常に応用のきく内容となっています。

考える方法がわかれば文章は書ける

「伝わる・揺さぶる!文章を書く」のプロローグには、実に興味深い例が載せられています。
それは17歳の女の子が書いた小論文なのですが、「とりあえず」という言葉が多用されており、とても小論文とは思えない仕上がりです。
著者は彼女の文章を変えるべく、2時間の指導を行います。
たった2時間で文章を変えることは出来るのか、という問いに文章指導のスペシャリストは「無理」と答えますが、著者は少女の文章を変えることに成功しました。
著者は、彼女に自分の立場を発見させ、止まっていた思考を動かし、自分自身で考えさせたのです。
どのように考えさせ、どんな風に変わったかは実際に本書で確認してみてください。
きっとその変化に驚かされることでしょう。
考える方法がわかれば文章は書ける、という著者の言葉にも頷けます。

読み手の心を動かしたいときに気を付けるべきこと

読み手の心を動かす文章を書きたいと思うとき、私たちは何を書くべきなのでしょうか。
そのヒントが、本書の第2章「7つの要件の思考法」第6節『根本思想』という部分に記されています。

根本思想に着目すれば、膨大な文章でも、ごく短く言える。
なぜなら、膨大な文章も、すべて、書き手の根本にある想いから湧き出たものであるからだ。
根本思想は、いわば、文章の製造の源。
製造元を押さえるというのは、結局とても効率がよいやり方だ。
この方法なら、便箋10枚もの長いラブレターも、「すき」の2文字に集約できてしまう。
ながい文章を極力短く要約しようとすれば、根本思想に向かわざるをえなくなる。
だから、文章を要約すれば、自他の根本思想がわかるのだ。
(108ページ 第2章「7つの要件の思考法」より引用)

著者は、この『根本思想』を把握することにより、
・根底にある想い
・大事なことの順番
が分かると述べています。
その上で、文章で大切なのは、「自分の気持ちや生き方にうそをつかないこと」だとしています。

文章ならば「多少の嘘は分からない」と思うこともあるかもしれません。
しかし著者によると、
・自信を持って言い切れないから歯切れが悪くなる
・経験や知識を積み重ねた人の、本物の言葉に勝てない
という理由から、自分を偽らない文章こそが説得力を持つのだそうです。

そして根本思想と、偽りのない文章が一致したとき、人の心を動かすのだと。
読み手に確実に思いを伝えたいときは、この章が大きな助けとなりそうです。

議事録のとりかた

社会人になると、会議の議事録をとるよう指示されることがありますが、慣れないうちは難儀するものです。
そこで、本書で取り上げられている議事録の書き方を紹介してみます。

本書では、議事録の書き方として、
「議題を問いの形にして頭に大きくはっきり書く」
ことが一番のポイントであり、腕のみせどころだとしています。
そのためには、会議の論点を明確にする必要があります。

そして、
1.会議の前後の流れを明示する
2.問いに対して、どのような会議なのか位置づけを書く
3.今後の議題を課題文で書く
としています。実に明瞭で分かりやすい方法です。
作成だけで終わり議事録が読み返されない場合などに、ぜひ試してみてください。

終わりに

日常的に文章を書いていても、思考が滞り、うまく書き進められないことがあります。
そんなときは、この本を読むことで、解決につなげることが出来るかも知れません。
もしも思いを正確に伝えられたら、きっと今まで以上に文章を書くのが楽しくなることでしょう。
文章を書く機会があるなら、この「伝わる・揺さぶる!文章を書く」を一度読んでみてはいかがでしょうか。

(文:朔)

伝わる・揺さぶる!文章を書く (PHP新書)

【書評】伝わる・揺さぶる!文章を書く【読み手の心を動かす文章を書きたい人へ!】

作文、読書感想文、謝罪文など、文章には様々なものがあります。 そんな文章が、せっかく書いたのに、うまく相手に伝...

出版されても売れない企画や、そもそも出版すらできない企画が多い中で、「この人の本を絶対に出版したい」と思われる企画は何が違うのでしょうか。

この答えにはいろんな視点があるので、たった一つに絞るのは難しいです。しかし、僕が出版プロデューサーとして「この人の本を絶対に世に出したい!」と思ったケースについて書いてみたいと思います。

  • 出版プロデューサーって著者の何を見てるの?
  • 本を書きたいなら「何を」伝えればいいの?
  • なんのために本を出版するんだろう?

というような疑問をお持ちの方のお役に立てば良いなと思います。

面談で聞くこと、訊かないけど見てること

僕は必ず、著者と直接お会いしてから、プロデュースさせていただくかどうかを決めています。著者を選ぶというとおこがましいですが、相性のマッチングみたいなもので、クライアント側にも僕のことを知っていただいて選んでいただくための面談でもあります。

面談では、「自分がどんな人間か」ということを互いに出しあえるよう意識しています。とはいえ初対面で心の中までさらけ出せるようなケースはほぼありませんから、100%理解できるなどと思ってはいません。それでもなお、言葉に出来ない空気感のようなものは案外伝わるものです。


【言葉ではなく行動を重視】

「人となり」を知るために、まず僕がする質問は「何をしてきたか」と「何のために本を書きたいのか」です。

言葉ではいくらでも立派なことを言えますから、「何をしてきたか」という「行動」を最初に質問するのです。これによって実績も伺えますから、企画作りのベースになっていきます。そして、やってきたことを聞きながら「なぜ、それをしてきたのか」探っていくのです。


【「動機」と「やってきたこと」の納得感】

「なんでそれをやってきたんですか?」と直接聞いたり、質問はせず自分の中で共通項を紐づけたりして、動機を掘り下げていきます。

この「動機」と「やってきたこと」に、納得感のある方は信頼度が高いです。明確な理由があるので、読者にも共感してもらいやすいのです。

納得感が全くない動機、例えば「本当の自分を探しに10年かけて世界を旅してまわって、インドで受けたレーシック手術がきっかけで、帰国後日本一のラーメン屋を起業した。」って言われたら読者の頭が混乱するし、プロフィール欄にも何を書いたら良いかわかりませんよね笑。

でもこんなレベルで意味が分からないことはあんまりなくて、みんなそれなりに納得感のある理由で事業を行っています。そしてそれが最大の問題点なのです。


【本音の部分が、読者に届く】

「それなりに納得感のある」ということが非常にやっかいなのです。僕が知りたいのはもっと本音の部分であって、取ってつけたようなきれいな言葉ではなく、心からの動機が知りたいんです。

なぜなら、本気の言葉しか、読者には届かないからです。本気でクライアントのため、読者のためと思える理由・体験がある方の言葉は強いです。そういう方の中には明確な読者像がいるので、本のベクトルがブレることなく、読者のために本を書けます。


【口でいくら「読者のため」と言っててもダメ】

逆に、口でいくら「読者のため」「クライアントのため」と言っていても、心の深い部分で「自分のため」が大きいと、後でちらちらとエゴが顔を出します。ブランディングがどうとかお金がどうとか、あるいは分かる人だけ分かればいいとか、そういう話になってしまうのです。もちろんプロであり、経営者ですからブランディングを考えたりお金についてちゃんと考えるのは間違いではありません。

ただ、それを目的にしてはいけないのです。本はあくまで読者のために書くものだからです。

 

後にベストセラーとなる本の面談実例

ここからは僕が実際に「この人の本を絶対に出版したい」と思った著者との面談について紹介します。

面談からはもう3年経ったけど、この話をオープンにできるのはもっと先のことだと考えていました。なぜなら僕には書くタイミングを決める権利はなくて、著者である堀江 昭佳さんのタイミングを待つべきものだったからです。

そして「血流がすべて解決する」発売1周年のタイミングで、とうとう堀江さん自身が口火を切られたので、僕もこうして書くことができました。


【見えなかった根っこの部分】

2014年4月21日にご紹介を頂いて、堀江さんと面談を行っていました。

 

2時間ほど目黒のカフェで「やってきたこと」についてお聞きして、自分なりに堀江さんが婦人科専門の漢方薬剤師として、主に不妊で悩む方のために仕事をしている理由を整理していきました。

でも、正直言うとよく分からなかったのです。すごい実績をお持ちで、これだけのことをしてきた方なら、きっとすごく中身のつまった本になるだろう、とは思いました。しかしそれだけの実績を上げながら「なぜ婦人科専門の薬剤師なのか」「なぜ不妊で悩む方のために仕事をするのか」の理由が見えてきませんでした。

ただ「成り行きでこうなりました~」という印象だったのです。それだと読者が共感しづらいかなぁ・・・と思ったので、正直に『堀江さんが、なんでこの仕事をされてるか、根っこの部分が見えないですね・・・』と伝えました。


【実は、ボクはゲイなんです。】

すると堀江さんが一度、席を外されました。そしてしばらくして、戻ってきた時に

 

『実は、ボクはゲイなんです。』

 

と、突然、告白されました。

僕にとっては頭を「ガツン!」と殴られたような衝撃です。

さらに続けて、

『だからこそ、心の檻に閉ざされたひとの気持ちがわかるし、そこから解放された時の喜びがわかります。そのひと達の、その気持ちに共感するからこそ、この仕事をしています。』

『だけど、このことをパブリックな場でオープンにすることはできません。だからボクに本は書けません』

と言われました。

 

そしたら、なぜか泣けてきました。


【この人だから書けることと、だからこそ書けない理由】

涙がポロポロ、ポロポロ出てくるし、まさか出版の著者面談で泣くなんて思ってないからティッシュもないし・・・。仕方ないから『あれ?すいません、、なんで泣いてるんでしょう、僕(笑)』って言いながらテーブルのナプキンで涙を拭いてました。

話してたらいきなり『ゲイなんです』と言い出すし、言われた側は泣き出すし、他のお客さんからしたら完全に意味不明な2人でした(笑)

堀江さんも「なんでこのひと泣いてるんだろう・・・?」と思われたそうで、その時のことは【カミングアウト。〜『血流がすべて解決する』発売1周年に心からの感謝をこめて。〜】で詳しく書かれています。

 

なんで涙が出たのか?正確なところは、自分でもよく分かっていません。

自分がゲイであるからこそ「普通じゃない(とされる)」人の心を理解できる。

病気だったり、子供を授かれない女性たちという「普通じゃない(とされる)」人に寄り添える。

 

「堀江さんだからこそ書けること」というのが確実にあって、

でもそれが理由で「書けない」という現実もあって、

二つのことを同時に理解して、切なくて、涙が出たのかなと思っています。

 

その場はそれで解散し、「本は書けない」ということで別れました。


【本は読者のために書かれるもの】

その後、帰宅してからもずっと堀江さんのこと、堀江さんが書く本のことを考えていました。

 

「この人が本を書いたら、悩んでいるたくさんの人が救われるんじゃないかな。」

「でも・・・無理だよなぁ。」

「本という不特定多数が読む媒体で『同性愛者であることを宣言しろ』なんて、出版プロデューサーとか本とかそういうものの許される範囲を超えてるよなぁ。」

と、書いてほしい気持ちと、無茶だろうそれはという気持ちとの板挟みになっていました。

 

でも、ここで僕が引いてしまったら、彼は永遠に本を書かないかもしれない。そしたら何万、何十万という救われるはずだった読者がその可能性を失うかもしれない。

僕が引いてしまうことは出版業界全体の損失、ひいては日本社会の損失になるんじゃないか・・・?くらいに感じました。(本気で)


【日本であなた以上に、この本を書く資格のある人はいないと思わせる】

「やっぱり、この人の本を読みたい・・・!」

正確に言うと、この人の本を世に出して、読者が救われたサマを見たいと、強く思いました。

堀江さんの本であればすごく多くの悩んでいる人に、心からちゃんと届くんじゃないかと思ったからです。

いや、届くなんてのはそれこそ思い上がりかもしれませんが、少なくとも堀江さんの言葉なら受け取ってもらえると思ったのです。

日本中でこの人以上に、この本を書く資格のある人はいるだろうか?いやいない!くらいに思えたんですね。


【最終的に企画書からゲイであることを外した理由】

だから、出版プロデューサーとして「僕は堀江さんの本が読みたいです」「堀江さんのような人こそ本を書くべきです」というメッセージを送りました。

そして堀江さんから「ボクもあの後、なんで初対面の人に話したんだろうと考えていました」「ひょっとしたらそういうタイミングが来たのかもしれないと思います」とお返事をいただき、2年かけて本を作っていくことになります。

その後、企画を詰めていく中で「ゲイであること」は絶対必要ではないなと感じたので、かえって蛇足になるかと思い企画書から外しました。

それは堀江さんも書かれていますが、ご自身が「書こう」「社会に対してカミングアウトしてもいい」と思えたことで、それ以外のすべての文章からも彼の真意が伝わるようになったからだと思います。

 

それが、20万部まで皆さんに育てていただいた「血流がすべて解決する」の著者面談で聞いて見て考えたことです。

この記事があなたのお役に立てば幸いです。

本の出版をお考えの方へ

ボクはゲイなんですと言われて、僕は泣いた。【20万部の本が生まれる2年前の話】

出版されても売れない企画や、そもそも出版すらできない企画が多い中で、「この人の本を絶対に出版したい」と思われる...