【上梓とは】本を出版することを何という?「出版・刊行・発行・発刊」の違いや意味を整理しました

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講演会などで「先日、『〇〇(書名)』を上梓された山田タロウ先生です」といった紹介を耳にすることはありませんか?

じょうしってなに?」と一瞬、戸惑いますよね。

話の流れから「出版した」ということだろうと推測できますが、その詳しい意味や、なぜそんな言い方をするのかは不明です。

「上梓」の意味や「発行」「発刊」など、「出版に似た言葉」との使い分けについても整理してみました。

【上梓とは図書を出版すること】上梓の語源や意味・読み方

上梓(じょうし)とは、推測どおり本を出版することです。

梓に上す(しにのぼす・あずさにのぼす)に由来し、梓に刻む、梓に鏤める(ちりばめる)とも言います。

昔は文字や絵などを彫刻した木の版=「版木(はんぎ)」を使って印刷していたのですが、その版木に梓(あずさ)の木が用いられていたので、梓という字が使われています。

「上梓」と「出版」はほぼ同じように使われますが、上梓の方が古風な言い方です。

上梓以外の「出版」の呼び方とそれぞれの違い

上梓以外にも本の出版を意味する言葉があります。

  1. 出版 しゅっぱん
  2. 発行 はっこう
  3. 発刊 はっかん
  4. 刊行 かんこう

などです。

僕も出版業界に15年くらいいるんですが、けっこう感覚的に使い分けています。

なので、意味の違いなどは正直、曖昧でした。

そこでいろいろ調べてみたのですが、ネットではみんな言うことが違うし、出典のある情報が皆無であることに気づいたのです。

「正確なところを知りたい!」ということで、図書館のレファレンスサービスに問い合わせたところ、以下のような回答が得られました。(ご協力いただいた職員の方々、誠にありがとうございました。)

その回答をもとに、用語ごとに使い分けや意味の違いを整理し、箇条書きでお伝えします。

また引用情報には出典を明記し、(※1)のかたちで記載、参考文献紹介にまとめています。

出版=印刷物を冊子にして世に送りだすこと、概念も表す

  • 出版は著作物を印刷し、書物(出版物)として、世に送り出すこと
    • そのため「新聞を出版」とは言わない(新聞の場合は「発行」が正しい表現)
  • 販売目的以外(無料配布など)の場合にも使用される
  • 会話にも文章にも使われる日常的な漢語(※1)
  • 江戸時代までは木版印刷が盛んだったため「出板」が多く用いられた
    • 最も古い文献は*曾根宛芭蕉書簡-元禄七年(1694)「…秋中に出板可申」(※2)
  • 日本において、出版が公式に表れたのは1869(明治2)年の出版条例が最初であり、定義の初出は1893(明治26)年の出版法からとされている。(※3)
  • 出版行為の同義語としては刊行、発刊などがあるが、概念を表す場合は一般に出版を用いる。(※4

発行=本以外でも使われる言葉

  • 発行は本以外にも使える言葉で、印刷して世に広めること。
  • 図書・雑誌・新聞などを印刷して世に出すこと。紙幣・証券・証明書などをつくって通用させることをもいう。(※3)
  • 他に切手、領収書などにも「発行」が使われます
  • 最も古い文献は*俳諧・平安二十哥仙(1769)奧書「明和六己丑年五月発行」(※2)
  • やや改まった会話や文章に用いられる漢語。(※1)

発刊=継続的に出版されるもの、創刊、新たに

  • 発刊は図書の出版以外に、新聞・雑誌など「定期刊行物」の刊行をはじめること。創刊の意味もある(※2)
  • 最も古い文献は*一年有半(1901)<中江兆民>附録・士族の政治「…二度目か三度目の自由新聞を発刊するの前」(※2)
  • 改まった会話や文章に用いられる硬い漢語。よく使う「発行」以上に、このたび新たにというニュアンスが強い(※1)
  • 主に出版社側の用語。(※1)

刊行=出版と意味はほぼ同じだが、専門的

  • 「出版」「発行」とほとんど同じ意味
  • 最も古い文献は*玉塵抄(1563)「即板も似た字を刊行すること多ぞ」(※2)
  • 「出版」の意で、改まった会話や文章に用いられる専門的な漢語。(※1)

参考文献紹介

本記事制作にあたって参考とした文献一覧

※1『日本語語感の辞典』 中村明/著 岩波書店 2010

国語辞典では分からない、ことばの感触、意味・用法の微妙な違い(ニュアンス)をわかりやすく解説した辞典。

※2『日本国語大辞典 第2版』日本国語大辞典第二版編集委員会  小学館国語辞典編集部/編集 小学館 2001

採用する文献の出典は、上代から現代まで各時代にわたるが、語釈を分けた場合は、その意味・用法について最も古いものを選択している辞典。

※3『最新図書館用語大辞典』 図書館用語辞典編集委員会/編 柏書房 2004

最大の情報量を誇る図書館員のための実践的専門用語辞典。角川書店1982年刊「図書館用語辞典」を、21世紀の図書館の発展状況を見据えて編集し直したもの。

※4『図書館情報学用語辞典 第4版』 日本図書館情報学会用語辞典編集委員会/編 丸善出版 2013

図書館情報学の専門用語を収録した用語辞典。基礎的な概念、資料・メディアに関する専門用語などを収録している。

まとめ

上梓はかつて「版木(はんぎ)」に梓の木を使っていたことからくる「出版」を意味する言葉でした。

他に発行、刊行など出版に類する言葉がありますが、それらも非常に曖昧だったので図書館職員の方にご協力いただいた結果、その違いがかなり明瞭になったと思います。

まとめると、出版が最も日常向け、発行は図書以外にも使える、発刊は継続的かつ新たにという意味が強い、刊行は専門的であるとわかりました。

出版も江戸時代までは出板と表記されたなど、やはり本に関する言葉は歴史があって面白いです。

業界に長くいますが、微妙な使い分けは知らなかったので自分にとっても非常に有意義な記事となりました。

最後までご覧いただきありがとうございました。

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増刷率90%。平均部数49,000部。

奈良県出身 同志社大学卒業後、学習研究社(現・学研ホールディングス)入社。
書店促進部を経て、一般書販売課へ配属。2つの編集部を担当し、年間最大400冊のマーケティングを担当。
膨大な点数を扱いつつ、新人著者の売り伸ばしや仕掛け販売に注力。
上原愛加のプリンセスレッスン(シリーズ100万部突破)などの売り伸ばしに成功する。その後、出版プロデューサーとして2010年に独立。

『血流がすべて解決する』(23万部)『奇跡の営業』(6.3万部)など主にデビュー作をプロデュースし、ベストセラーへと導く。

業界では数少ない、出版社マーケティング部出身の出版プロデューサー。

業界の活性化を目的として、版元・書店との人脈を活かした合同勉強会や、新卒向けにメディア就活ボランティアも行なう。

「営業だったからこそ、著者・出版社・書店に提供できるモノがある」と増刷ロジックや書店巻き込みマーケティングを駆使したプロデュースを行う。

本は読者のためにある。という考え方から「ブランディングの為に本を出したい」とおっしゃる方には、笑顔でドロップキックをプレゼント(笑)


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