出版マーケティングにおける3つの射程距離

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金曜から帰省中の出版プロデューサー西浦です。奈良に実家があるのですが、毎年外国の方が増えてる気がします。六本木並みに多くて、60超えた両親がそんな国際都市に住んでるのがなんだか面白い(笑)

さて、毎日更新117日目。

今日はまずこちらのツイートをご紹介します。

元自衛官の方が語る戦場における距離と特性です。

射程距離が近づくほど「狙う」ことができ、距離が遠のくほど照準は甘くなります。

当たり前のようだけど重要なんだろうなぁと、リツイートした後思いました。

あれ?この有効射程、出版マーケティングの世界にもあるなと。


出版における3つの有効射程

出版の有効射程というのは、何でしょうか?

これは、本の販売戦略上における段階で、最初は少数の書店から売れ始めて、徐々に全国展開されるようになっていく過程です。

増刷を繰り返し、より広く平積みされるようになるほど、射程距離が伸びていく感覚です。

上記ツイートの例に沿って表現すると

 

  • ロングレンジ:全国チェーン展開される段階
  • ミドルレンジ:客層の近い店や、同エリアの他店に広げる段階
  • ショートレンジ:大型店や対象ジャンルの強い店などで仕掛け、旗艦店を作る段階

 

になります。

出版においてはショートレンジから戦闘開始し、勝利を収めてミドル→ロングレンジへと拡大していきます。

ロングレンジに至るころには部数も7~8万部になっているでしょうか。

まずはショートレンジから仕掛けよ

ショートレンジが狙撃距離というのがまさにドンピシャです。

狙撃距離は「特定個人を狙って発射できる距離。」とのことですが、出版マーケティングの序盤でやるべきことも、この「特定書店の特定売り場を、狙って口説き落とす」ことから始まるからです。

ある本を売り伸ばしていくには「売れている店」を作って、他の書店を引っ張ってくれるモデルケース(旗艦店)になってもらわなければなりません。発売前から「この本はこの店で売れそうだな」と予測を立て、担当者に相談に行っておきます。

場合によってはテスト販売の提案(発売日の1~2週間前から先行販売すること)も行われます。

この時に選ばれる書店は、単店売り上げの大きい大型書店や、特定のジャンルに強い店など「販売力のある強い店」です。

こういったお店は「足が速い」と言われ、発売直後から読者が本を見に来てくれるので、すぐ結果検証ができます。

 

新人著者のようにノーマークの本で発売前に何の仕込みがなかったとしても、発売後に偶然モデル店ができていたり(つまり運よく売れた、完売店など)、全体的に動きが良いので旗艦店を作ろうという動きになります。

この旗艦店を特定していく様子が、射撃距離から狙い撃ちするスナイパーのようです。

戦争と違って打ち倒すのではなく、むしろ味方にしていくイメージなのですが(笑)

 

この段階では著者としてやれることがたくさんあります。

仕掛け店の情報を教えてもらって、そこのランキング情報を自身のメディアで順次お知らせしたり、出版社の営業部としっかり連携してイベントを行ったり(旗艦店の近くの会場でセミナーをすれば、本を買って帰る人も多いし、購入して参加した方に特典があれば、当日買ってきてくれることも)いろいろあります。

 

ちなみに、発売後に大型店でも大都市圏でもない「地方の本屋さん」で売れていると、めちゃくちゃポイント高いです。

旗艦店以外でも売れる=後のロングレンジでの全国展開に耐える本である可能性が高いからです。

ミドル→ロングレンジへの展開

先にショートレンジでは特定のお店を狙い撃ちで、たくさん売ってくれる「旗艦店」を作るという話をしました。

このショートレンジでの展開は、出版社の担当営業が一人でやっていたりします。まだ売れるかどうかわからない本なので、大多数の営業マンは「確実に今売れる本」に力を割いているからです。

しかしショートレンジでの展開に成功し「仕掛ければ売れるモデルケース」がたくさん出来てくると、ミドルレンジへ移行します。

これはショートレンジでの実績をもとに、営業部全体へ話を広げていく段階です。

 

この店で売れているなら、自分の担当店だとA店やB店で売れそう。という具合に広げていきます。

その際には客層や立地、店の規模など共通項の多い書店から提案していくことになります。

 

販売力のある店を中心に実績を積み上げて、しかも全国大都市圏で売り上げが上がってくるといよいよロングレンジでの展開が始まります。

つまり全国チェーン店での一斉展開です。地方都市の一番店などにも多く置かれるようになります。

ここまで遠距離戦を展開していると、旗艦店だけを追っていた時期と違い、1店1店を狙ってケアするのは難しくなります。法人本部にお願いしてチェーン店全店舗にPOPを送ってもらっていても、すべての書店さんにPOP使ってもらってるか確認して歩くというようなことはできないのです。

もちろん、全国展開できるようになったことで大型の広告(地方紙連合広告とか)を打てるようにもなるので、全国展開はありがたいことです。射程距離が広くなったことで、スナイパーのように狙えなくなるが、その分放物線を描いて当たる範囲に広告を打つというような戦法に代わるのです。これが戦場における「最大射程:放物線を描いて届く距離。狙って当てるのはほぼ無理。」と非常に似ています。

 

ここまでくれば、著者が個人で出来ることはあんまりありません。展開されている冊数も範囲も広いからです。

ただ、ショート→ミドル→ロングという見方も、あくまで東京を中心として考えているので、地方を中心に考えれば、ミドルレンジの展開がようやくその地域の最初の旗艦店だったりします。

きめ細かくやれるなら、東京以外のエリア、地方へ行ってイベントをすることもその地域の売り上げ促進には効果的です。

5万部、10万部という段階になると、地道なプロモーション活動の瞬間的なインパクトは薄れてきますが、ローカルにはその地域で人気のあるローカルメディアがあったりしますし、各エリアごとに丁寧に対応していくのが長期的視点で見て有効です。

 

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