流行のテーマを書いても売れない理由は、流行じゃなくて「波」だから

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • LINEで送る
  • Pocket

テレビで「ちょっと傘を前に傾けるとすごく濡れにくい」と言ってて、実際やってみたらその効果に驚きの出版プロデューサー西浦です。どっちかっていうと今までは肩に預ける姿勢で、後ろ向きに傾けてましたからね。

著者と話していると「今って〇〇が流行ってるじゃないですか」という言い方をされることがあります。あるいはもっとストレートに「今、売れてるテーマってなんですか?」と聞かれることもあります(苦笑)

流行ってるうちにそのテーマの本を出しておきたい、売れてるテーマの本を書きたいということなんだと思います。

でもその考え方はあまり良くないなぁと感じるんですね、僕は。

そう思う2つの理由を説明しますね。

出版において流行はほぼない

一つ目の理由は「流行っているテーマなんてほぼ幻想」だからです。

著者が流行ってると勘違いしているテーマって、実際に売れているのは2,3冊だけだったりします。その2~3冊に引っ張られる形で新刊が増え、売り場が賑やかになって「流行っている」ように感じるのです。

しかしこのテーマはすでに「定番」化したものであり、ここ数年勢いがあるというだけだったりします。強い著者が出てきたとか。

 

出版において流行と言うのは実はレアケースで、テーマに「波」があるだけだと考えています。「波」というのは去年も今年も「〇〇」について書いた本でベストセラーが出ているとか、逆にそのテーマでは2~3年ベストセラーが出ていない、というような周期の話で、一過性のブームというのはあまりありません。「波」の正体は2,3冊の本やシリーズでだったりします。

今、流行っているように思うテーマも「実は7、8年前にも売れてた時期があった」ケースが多いのです。

 

たとえば昨年『世界一美味しい煮卵の作り方』という本がベストセラーになりましたが、この本の最大の特長である

  • 「新書サイズ」×「3行レシピ」

というスタイルはヒットの定番で、10年以上前からあります。

世界一美味しい煮卵の作り方 家メシ食堂 ひとりぶん100レシピ (光文社新書)

だから「流行ってる」というよりは「波」がまた来たんだね、という感覚が正確ではないでしょうか。

もちろん、だからといってこの本がダメだと言う気はさらさらなく、ちゃんと定番の型を踏襲しつつ、独自のアレンジが加えられており、むしろこれこそが企画・編集の妙です。この機を見出したことも素晴らしいですしね。

ベストセラーの型だというは分かってても、「今がその時!」というのは読めないですし、たぶん読むものではなく、自分たちでつくるものだと思います。

このように基本的には「定番のテーマ・型」があり、そこにどう自分のオリジナリティを出して、アレンジを加えるかが大事なのです。

「流行」が「定番」化した珍しいケース

ちなみにここ最近で本当に「流行って」そして「定番化した」テーマもご紹介します。

例えば「ビジネス」×「健康」です。これは本当にビジネス版元さんががんばって市場を見出し、定番化させたと思います。

実は15年くらい前に「ビジネスパーソンでランニングが流行るなど、健康意識が高まっている」ということで、ビジネス書売り場で「ビジネス」×「健康」の企画を、けっこう著名な先生の企画で出しました。しかし結果は散々でした。

そのとき「本屋においては健康は健康、ビジネスはビジネス。健康に関心の高いビジネスパーソンは健康書の棚やスポーツの棚で探している。ビジネス書の棚はあくまで仕事のスキルアップのための場所」という結論を出しました。

しかしそれから少しずつ時代は変わり、「ビジネス×健康」をテーマにした本がビジネス書売り場でしっかり売られるようになりました。

 

他に思い当たるのは「男の趣味(軍やバトルモノ)」×「萌え」でしょうか。

「戦艦×美少女」や「戦車×美少女」、ターゲットを少しずらして「刀剣×美男子」など非常に強いジャンルとして定番化しました。

しかしこちらも15年くらい前はなかったのです。

 

実は学研時代に「歴史モノ」×「萌え」の企画を提案してボロクソに言われた記憶があります(笑)

というのも自分は三国志や明治維新など歴史モノが好きでありつつ、いわゆるアニメも好きで良く観ていた(エヴァ1期世代)のでこの2つが「違う」ことは理解していたのですが、自分の中ではどちらもアリのものだったのです。

ですが「歴史モノファン」の編集者からすれば「歴史ファンや軍モノファンの好きな絵のテイストと、萌えは全く違う!」というプライドがあったのでしょう。

その時は新入社員でしたし「そうですよね・・・」とすごすご引きさがってしまったのですが、それから1年も待たずに「萌えイラスト」×「伝説の武器」系企画が他社でどんどん作られ、そして売れていきました。最初はRPGやファンタジー系作品の資料用という感じですがそれまでと違い500円くらいの価格でペーパーバックとして作られ、その手に取りやすさがウリでした。

それが徐々に進化して昨今の「軍モノ」×「萌え」市場まで広がってきたのです。

その黎明期に「書泉」さんというオタクの殿堂のような書店さんでは、すでに「ミリタリーマニア」向けの本と「鉄道マニア」向けの本、そして「萌え系」の本が同じフロアで売られていたわけです。隣同士で。それにもっと早く気づくべきでした。。。

自分のテーマを磨く

脱線が長くなってしまったので、2つ目は端的に。

2つ目は「自分の強いテーマで書かないと売れないから」です。

 

流行っているからと無理に乗っかってもまったく売れません、痛い目を見るだけです。

そもそも「〇〇」ブームがあるからとりあえず買ってみよう、読んでみようという好奇心旺盛な読者は非常にレアな上にどんどん減っています。

基本的に読者は自分の興味のあるテーマの本だけを買います。

「久しぶりにこのジャンルで面白い新刊が出た」「今までと同じテーマで、かつ痒い所に手が届く良書が出た、素晴らしい」と買ってくださるわけです。

「波」が来ているのも、上記のように読者の期待に応えた良書を出した人がいただけで「その市場で本を書けば入れ食い状態、内容は他と大差なくても売れる」なんてケースはありません。

 

ご自分が磨いてきたテーマで、「波」に乗れるようにアレンジするか、「波」そのものを起こすと考えられる方が良いでしょう。

あ、でも逆に言うと「定番ではない」テーマだとそもそも売れにくいので「波」は起きませんからご注意を。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • LINEで送る
  • Pocket

増刷率90%。平均部数49,000部。

奈良県出身 同志社大学卒業後、学習研究社(現・学研ホールディングス)入社。
書店促進部を経て、一般書販売課へ配属。2つの編集部を担当し、年間最大400冊のマーケティングを担当。
膨大な点数を扱いつつ、新人著者の売り伸ばしや仕掛け販売に注力。
上原愛加のプリンセスレッスン(シリーズ100万部突破)などの売り伸ばしに成功する。その後、出版プロデューサーとして2010年に独立。

『血流がすべて解決する』(23万部)『奇跡の営業』(6.3万部)など主にデビュー作をプロデュースし、ベストセラーへと導く。

業界では数少ない、出版社マーケティング部出身の出版プロデューサー。

業界の活性化を目的として、版元・書店との人脈を活かした合同勉強会や、新卒向けにメディア就活ボランティアも行なう。

「営業だったからこそ、著者・出版社・書店に提供できるモノがある」と増刷ロジックや書店巻き込みマーケティングを駆使したプロデュースを行う。

本は読者のためにある。という考え方から「ブランディングの為に本を出したい」とおっしゃる方には、笑顔でドロップキックをプレゼント(笑)


新着記事

セミナーバナー