良い本が売れない時代だからねとは【出版用語解説】

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出版プロデューサーの西浦です。

「本が売れない時代」と言われるようになってからずいぶん経ちました。出版業界の売り上げが落ちているのはその通りですが、10万部のベストセラーは毎年出ているし、100万部のミリオンセラーも平均すれば年に1冊くらいは出ています。本が売れないのではなく「売れる本と売れない本の明暗がはっきりしてきた時代」ということでしょう。

そんな「本が売れない時代」に似た言葉で『良い本が売れない時代だからね』という微妙にニュアンスの違う言い回しがあります。

これはどういった意味で使われているのでしょうか?本音を大公開します!


目次

良い本が売れない時代だからね の真意

  1. 「あなたのあの本、売れてないけど僕は良い本だと思いますよ」という慰めが1割。
  2. 「自分の作る本は良い本なんだけど、読者に見る目がないから売れてないのだ」という自己憐憫が6割。
  3. 「あんなつまんない本が売れるなんておかしい」っていう不満が3割。

一つ目は他人に甘い人、二つ目は自分に甘い人が使います。三つ目は読者も含めて他人に厳しい人が使う印象。

これらのどの文脈であれ、この言葉を使う人とはあんまり仕事したくないのが正直なところ。

同じ業界に身を置いているのに、不思議とヒットメーカーは口にしない。別次元で仕事しているのか?

やはり「良い本が売れない時代だからね。でもやるべきことをやれば読者は良い本をちゃんと買ってくれる」って言葉を実体験から話せる方と仕事するのがおすすめ。(著者さんも編集さんも営業さんも取次さんも書店員さんも)

背景

出版業界に限らず、商品には売れるものと売れないものが存在します。

売れるものは売れるだけの工夫をしているものですが、出版不況のせいで、商品の力不足、販促の工夫不足、著者の努力不足を環境のせいにしやすくなっている

売れてる本が本当にゼロで、10万部の本が出なくなって久しい・・・という時代ならわかるのですが。

その頃にはもう出版の仕組みが、今とは変わってしまっているでしょうね。

 

編集者人生30年弱のなかで1冊も10万部越えのベストセラーを出せない人は実はたくさんいます。もちろんベストセラーを出すことだけが価値ではないし、それぞれの編集者が何を目的として仕事するかは自由です。

でも…たぶん気になっちゃうんでしょうね。どうしても数字でものすごく明確に「売れてる」「売れてない」が出る業界なので。売れてる方が偉い、すごい、みたいな空気はあります。

 

最初から好きでニッチなジャンルを扱っている方はそれでいいのですが、十分ベストセラーを狙えるジャンルの編集者はヒットが長らく出ないとこういうことを言い始めます。

良い本が売れない時代だからね

ちなみに編集に比べて営業で言う人は少ないが、それは営業さんの方が前向きというわけじゃない。

営業は担当した本について「自分の本」という意識が弱いだけで(実際自分で作ってるわけじゃないし、仕方ないことでもある)、1や3の理由で使う人は多い。

営業さんにこそ「良い本が売れない?バカ言ってんじゃないよ、良い本だったら売れるようにするのが俺らの仕事だし、それに見合うだけの本当に良い本作っていきましょう!」と編集さんや著者に言ってもらいたいし、そういう人と仕事したいですね。絶対数は少ないけど、ちゃんと自信とプライド両方持ってる営業はいます。(そこは元営業として、自信持ってます。もちろん編集者にもそういう人いますよ!)

概要

売れてないのは「〇〇のせい」っていうように要員を分析するのは大事ですが、その原因が業界や時代のせいだとしてしまうとそこで進歩がなくなります。

「風邪の要因はウィルスかもしれないが、風邪を引いた原因は自分の体調管理不足だ」って言われて納得したことがあるのですが、それと同じことかなと。

要因分析は大事だけど、原因を自分にもってこないと、その人は外部環境が変わらないとヒットを出せないでしょう。

 

もちろん何でもかんでも自分のせいにしてしまうと、メンがヘラってしまうだけです。

かといって全部環境のせいにしてはいけない。

原因と要因とを分けることで、メンタルを守りつつ、一つ一つ改善していく第一歩になるのではないでしょうか。

 

良い本が売れない時代だからね』という言葉は、そういったことを放棄した、ある種「終わった人」が口にする諦めの言葉なのかもしれない。

対策

自分がこのセリフを口にしないこと。

自分が言わないようにするだけで案外、これを言われることは減ってきます。

さらに積極的に「良い本だからこそ売らないとですね!」のように先に言ってしまって、諦めの「売れない時代」を言えない空気にするのも効果的です。

 

また、売れてるものを素直に研究したり、売れてる著者が何をしているのか近くに行って観察することも有効です。

売れたものはやはり売れるだけの理由があるし、著者もちゃんと影ですごく頑張っていますよ。

ちなみに聞いたからって素直に教えてくれるとは限らないので、ちゃんと観察するのも忘れずに。

 

どうしてもメジャー=つまらない本という思い込みが外せない人は10万部じゃなくて20万部以上を見ると良いかもしれません。

経験上、10万部までは本の中身ではなくタイトルやデザイン、帯や宣伝方法などでも到達したりします。

しかし20万部クラスになると本当にクチコミがないとそこまで到達しないものだからです。

参考リンク
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