悪魔の辞典【書評】ブラックユーモアのバイブル

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朝起きて「おはよう」を言う前に、妻に「体重測った?」と出鼻をくじかれるタイプの出版プロデューサー西浦です。毎朝、体重という現実を突き付けられて一日がはじまります。

以前イベント出版プロデューサーがお勧めする 「人生を豊かにする本5冊」& 「自分にぴったりな本の見つけ方」で紹介した「悪魔の辞典」ですが、先日パラパラと見返していて「やっぱり面白いよなー、ククク・・・」とひとりニヤニヤしていました。どうせならみんなでニヤニヤしたいので個人的なお気に入りをがっつり抜粋して紹介したいと思います。



どんな本なのか

「悪魔の辞典」は皮肉屋で有名な「ビター・ビアス」ことアンブローズ・ビアス(1842~1913?消息不明)の著書で、辞典スタイルでいろんな言葉を「悪魔的視点」で解説している、全編ブラックユーモアの本です。新聞で連載されたものを1906年に「冷笑家用語集」という書名で出版され、その後1911年に本人によって編集された「ビアス著作集」の第7巻に「悪魔の辞典」として出版されたものです。

高校生の心に刺さった、最も冷淡な視点による「人間の本質」

僕がこの本に出合ったのは、高校生のときで、地元の古本屋で見つけました(誰の訳だったかは覚えてない)。その場所とタイトルから、ある種の運命的なもの(悪い方の)を感じざるをえませんでした。しかもこの本は、1911年に発売されたようで、今から100年以上も前です。何か引き寄せる魔力を持っていてもおかしくないなぁと思いますね。

高校生時代にすごく衝撃を受けたのが

  • OCCIDENT【西洋】名 世界の中で、東洋の西(または東)に位置している部分。住んでいる者の多くは強力な偽善者亜族、つまりキリスト教徒であり、主要産業は殺人と搾取だが、彼らはこれを「戦争」「商業」と呼ぶのを好む。それらはまた、東洋の主な産業でもあるのだが。

という一文です。主要産業が殺人と搾取て・・・。しかも最後の「東洋の主な産業でもあるのだが。」で『やられた!』と思いました。当時10代の青年だった僕としては、ここまで人類すべてを皮肉った「ものの見方」というのはまさに衝撃で、その後の人格形成に暗い影を落としたことは想像に難くありません(笑)

「悪魔の辞典」の取扱説明書

この本に関しては「絶対に無理」と、生理的に受け付けない方がいて、それはそれで個人の趣味なのでかまわないと思うのですが、もったいないなーとも思ってしまいます。余計なお世話なんでしょうけど、そういう方は少し、文字通り受け止め過ぎている印象があります。『ムキにならないくてもいいじゃない』って言いたくなりますね。皮肉には機知をもって応じるのが作法であるように、本質を突いた風刺には笑って受け入れて一歩引いて見る機会にすると、時には自分のことさえも笑えて面白いです。

一つのモノゴトを一面からだけでなく、別の面から見れるというのは非常に知的なことで、本書はその良い示唆となると思っています。僕もそういうところがあるので、自戒を込めて言うのですが「これは、Aである」と決めてしまって、他人に押し付けてしまうことってあるじゃないですか。そうならないように、常に別の視点から見れる余裕を持ちたいと思うのです。

「嫉妬」の項目などはわかりやすいのですが、例えば誰かに嫉妬されているときは「ああ、あいつは能なしなんだな」と自分を慰めれば多少は溜飲もさがるし、逆に他人に嫉妬してしまいそうなときは「いかんいかん、能なしになってしまう」と踏みとどまることもできます。まあ、この本はダメな人はダメなので、自己責任で楽しみましょう。

 

<人間・人生>

ABSURDITY【不条理】名 自分の意見とはまったく違った言説や信条。

ADAGE【格言】名 歯が弱い人のために、あらかじめ骨を抜いてある知恵。

BIRTH【誕生】名 生涯に遭遇するあらゆる大惨事のうち、最初で最悪のもの。その性質は千差万別。

CABBAGE【キャベツ】名 裏の畑でとれるおなじみの野菜で、人間の頭ぐらいの大きさと知能を持つ。

CANNON【大砲】名 国境線の修正に使われる道具。

CIRCUS【サーカス】名 道化を演じる男や女や子供たちを、馬やポニーや象が見物出来る場所。

COMFORT【やすらぎ】名 隣人の不安を見て生じる心理。

CONSOLATION【慰め】名 自分より優秀な者がかえって自分より不幸であると知ること。

CRITIC【批評家】名 おれに褒められるのは難しいぞと自慢するやつ。褒めてもらおうとする者がひとりもいないからだ。

CYNIC【冷笑家】名 眼が悪くて、物事を、あるべき姿にではなく、あるがままに見てしまう悪人。

DARING【大胆不敵】名 身の安全が保障されている人物に顕著な特質。

DELUSION【妄想】名 熱中、愛情、自制、信仰、希望、慈善など、多くのよき子息と、令嬢を持つ最も立派な家庭の父親。※すべては妄想の産物(笑)by西浦

DESTINY【運命】名 暴君の犯罪行為の大義名分となり、愚者の失敗の言い訳になるもの。

ECCENTRICITY【奇行】名 他人から自分を区別する一手段。あまりに安あがりなので馬鹿がこれを使い、おのれの愚かさを際立たせる。

ENVY【嫉妬】名 能なしにいちばん適した競争心。

ERUDITION【学識】名 からっぽの頭蓋骨の中に、本から舞い落ちた埃。

FREEDOM【自由】名 無限に存在する拘束する手段の中のわずか半ダースほど、権力の抑圧から逃れること。どこの国民も、わが国こそはそれを実質的に独占し、享受していると思い込んでいる政情。リバティ(自由)のこと。リバティとフリーダムの違いは正確にはまだわかっていない。博物学者たちはまだ、どちらの生きた標本も発見できずにいる。

FUTURE【未来】名 諸事万端成就し、真の友に囲まれて、しあわせが保証つきであるという、あり得ない一時期。

<仕事>

APPETITE【食欲】名 なぜおれは働かねばならんのか、という疑問の答えとして神が与えた本能。

COMMERCE【商業】名 AがBからCの商品を奪い、その代償としてBがDのポケットからEの金をかすめ取る方式の取引。

CORPORATION【会社】名 個人個人は責任を負わず、個人個人が利益を得る精巧無比の仕組み。

DELIBERATION【熟慮】名 どちら側にバターが塗ってあるか、パンをじっくりと吟味すること。

FASHION【流行】名 賢者が、嘲笑しながらも服従する暴君。

<人間関係>

ACCUSE【非難する】他動 他人の罪やくだらなさを断言すること。通常は相手に対して不当な態度を取っている自分を正当化している。

ACQUAINTANCE【知人】名 金を借りる時にはよく知っている人だが、こっちが貸す時にはよく知らない人。相手が貧乏だったり無名だったりすれば「浅いつきあい」だと言い、金持ちで有名な人ならば「昵懇だ」と言う、つきあいの密度。

ADMIRATION【賞賛】名 他人が自分に似ていることを馬鹿ていねいに評価すること。

ADVICE【助言】名 流通貨幣で、最低価額のもの。

APOLOGIZE【謝罪する】自動 いつか攻撃するため、土台を固めておく。

BACK【背中】名 友人のこの部分を、君はじっと見つめるだろう。逆境にある者の特権で。

BEFRIEND【力になる】他動 恩知らずを作る。

BENEFACTOR【恩人】名 「恩知らず」を大量に仕入れる人。それでも価格の変動はないから、依然として誰でも入手できる。

CALAMITY【災難】名 災難には二種類ある。自分の不幸と他人の幸福である。

CALLOUS【冷然たる】形 他人が災いに襲われても、それに耐えられる剛毅な精神を持った。

CONSULT【相談する】動 自分でそうしようと決めているくせに、さらに他人の賛成を求める。

CONTEMPT【軽蔑】名 逆らうとわが身が危ないほどの手ごわい敵に対して、慎重な人が抱く感情。

CONVERSATION【会話】名 できのよくない頭脳の中身を展示する見本市。皆が自分のものを陳列するのに夢中で、隣の展示に目をやる余裕がない。

DEFAME【中傷する】他動 他人について嘘を言う。おっと。他人について本当のことを言うのも。

EXPOSTULATION【諫言】名 愚か者が友人を失う多くの方法のひとつ。

FRIENDLESS【友達のいない】形 他人に恩恵を施すことができない。運に見捨てられた。真実や常識ばかり口にする悪癖を持つ。

FRIENDSHIP【友情】名 天気がよければ二人乗れるが、悪いと一人しか乗れない程度の大きさの船。

<恋・愛情>

ADAMANT【堅固・貞操】名 しばしばコルセットの下に見られるお堅い物質。黄金の誘惑でとろけやすい。

ARTLESSNESS【無邪気】名 女性が自分に見惚れている男性の反応を確かめつつ、長期的な研究と訓練を重ねた結果、身につけた特性。案の定、男性の方はそれを、子供の無邪気さと同じだと思ってしまうのである。

BAIT【えさ】名 釣り針が口にあうよう、より美味にする調味料。いちばんいいのは美貌。

BEAUTY【美貌】名 恋人を魅惑し夫を不安にさせる力。

BRIDE【花嫁】名 幸せいっぱいの見通しが過去のものになった女。

FEMALE【女性】名 敵対する性の、不正直な方。

HELPMATE【配偶者】名 妻またはビター(苦い)ハーフ(訳注・ベターハーフに非ず)。

HERS【彼女のもの】代名 つまり彼のもの。

MALE【雄・男性】名 考慮に値しない、無視してよい性のメンバー。人間の雄は通常雌にとって「ただの人」として知られている。この種族には二種類ある。衣食住の良き供給者と、悪しき供給者である。

<富・名誉>

ABASEMENT【卑屈】名 金や権力を前にすれば、自動的にこういう穏やかな心構えになるのは当然のこと。よく見る実例は、社長に対する従業員の口のきき方。

ADHERENT【支持者】名 期待するだけのものをまだ得ていないので、ついてきている人。

AIR【空気】名 貧乏人でも肥れるように、神が気前よく与えてくれる栄養物質。

COMMENDATION【賞賛】名 自分の業績に似た他人の業績を称えて、われわれが贈るもの。もちろん似てはいるが、とても比較できるような業績ではない。

DISTRESS【悩み】名 景気のいい友人の前に身をさらしたため、かかる病気。

DUTY【義務】名 われわれを厳しく駆り立てるもの。利益の方向へ、欲望の線に沿って。

ELOQUENCE【雄弁】名 白とは白く見える色のことである、と、馬鹿者どもに思い込ませる説得術。さらにこれには、どんな色でも白だと思い込ませる才能まで含まれている。

EULOGY【讃辞】名 富と権力という強みか、死んでくれるという配慮か、どちらかを持った人を褒めたたえること。

<その他>

DICTIONARY【辞書】名 ひとつの言語が成長していこうとするのを阻害し、硬直した弾力のないものにしようとする、悪意ある文学的装置。ただし本辞典はたいへん有益な著作である。

 

 

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