「出版業界生き残り会議」の後編

  • 出版社の書籍編集者3名(中堅2、若手1)
  • 取次営業1名
  • 書店員1名
  • 新興出版社経営1名(センジュ出版の吉満さん)

西浦の7名で、出版業界生き残り会議という名の飲み会開催中。餃子うまいす。

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出版プロデューサーなんて商売をしているとよく「本ってほとんど同じこと書いてない?」とか「みんな同じで面白い本がない」とディスられたりします。そういうときはだいたいカチンときてるので「そうですか?影響力の武器とかピケティとか面白くなかったですか?」と聞くと今のところ100%の割合で読んでないです。つまりは「自分に合う本を見つける能力がない」のだと思います。と思っていたら最近では、ハードな「ストロングスタイル」の売れ行きが好調なようです。

ストロングスタイルが売れてきてる

  • ここ数年ビジネスは翻訳ものが元気良い
    • 読者のレベルが上がってきて、本格派、「ちゃんとしたものを読みたい」印象がある=ストロングスタイルの本
  • 半面、読み切れない。文書量減らしたりする工夫が必要になるし、実際にはストロングスタイル1冊より、薄い本を数冊買っていくお客さんの方が多い。
  • 広く浅く VS 狭く深く か?
    • 狭くし過ぎると本として成立しないのは変わらず。
    • 単価上げて、生き残る「深い」が有効になりつつある?
    • 例)営業系の本で1,800円初刷7,500部がもう3刷だったり、おしゃれおばあちゃんスタイルブックが2,400円で、5万部だったり。(あえて書名ぼかしてます)
    • 薄利多売から脱却して、一冊入魂スタイルへ?
  • 本屋も同じく薄利多売から高単価へ。版画扱かったり。トートバックも案外売れてたりする。
  • 本を売りたいけど、500坪以上の大型店は「売れない本を置いてる」ようなものなので、本以外の商品を置くしかない。
    • ロングテールモデルなんてとっくに崩壊している。
  • 書店からのリニューアル相談で「本の売り場を増やしたい」なんて話は聞いたこともない。

ここ数年、初心者向けではない「ストロングスタイル」の本が売れてきていて、「自分に合う本を見つける」読者が増えてきたのではないでしょうか。かつてビジネス書を読んでいた層の中からさらに本格派へと移ってきている印象です。ただ母数としてはまだまだ多くはなく、書店の現場では薄い本をたくさん買っていく読者が多いようです。本のジャンルによってテーマが深くなっているジャンルとそうでないジャンルがあり、ビジネス等は深化が進んでいます。数十万部が出るテーマ、「女性向け生き方」とか「健康書」では依然として読みやすさ、手に取りやすさが重要です。「高単価×本格派」スタイルが増えてくると、関係者的には利益も出やすくありがたいですね。書店でのスぺースは同じだし、広告費も変わらないけど1冊あたりの売上、利益が大きいからです。本屋の現場でもとっくに高単価化の動きは生まれていて、トートバックなど雑貨を扱うところはとても増えていますよね。とくに印象的だったのは大型店は「売れない本を置いているようなもの」という言葉です。たしかに売れ行きの良い本は限られているので、大型店になればなるほど回転率の悪い本を置いておかねばならない状況です。当然、大型店の方が家賃は高く、人件費も高く、ビジネスとしては厳しい。かといって販売力の弱い小規模の書店では売れ筋がそもそも入荷しないという背景もあり、どーすりゃいいの?状態です。だから大型店として販売力(集客力)は維持しつつ、本以外の高単価商品を扱っていくという流れなのでしょう。リニューアルで「本の売り場を増やしたい」という話がまったくないというのも、納得です。

若者はむしろ本を読んでるぞ!

  • 若者の読書離れについては、データ上存在しないという見方もある。ガベージニュースさんとか。
  • 中学生がメイン読者の「ケータイ小説」は今でも元気。しかも地方が強いという非常に魅力的な市場。
  • 地方は遊ぶところがせいぜいイオンぐらいという地域が多く、それを証明するかのように未来屋書店(イオン系)がいちばんケータイ小説を売ってくれる。めっちゃ売れた。
  • ケータイ小説はサーバー代がものすごく高く、本の売上でwebの赤字を補てんしていた。(何ページも読むから、1セッションに対しPVがすごい)
  • ところがスマホへの移行が進み、読者が増加。webサイトのみでも黒字に。
  • webサイトが非常に優秀なマーケティングツールとなり、客層分析、配本はもちろんPRツールとしても機能。ほぼ全点増刷というドル箱。(表1や帯で多少の差は出たものの)
  • ネットで見れるものをわざわざ買う理由
    • 保存したい。人に読んで欲しいからなど。主客層の14歳が2冊も買ってくれる感動する(こっちが)
  • ラノベが最近元気ないのは少し怖い。新潮nexもラノベではなく新潮文庫の並びで展開して売れている。

若者の読書離れが進んで・・・という話は聞くが、データ上はそうでもないのでは?という気がします。小学生は朝読もあるし、通学に電車を使う学校では電車内で騒がないように本を持たせたりもします。その流れか中学生では非常に読書率が高いようです。事実、ケータイ小説ジャンルは今でも健在で、中学生が購入し続けてくれていることがその要因です。それも心から感動して、保存用や友人に勧めるようなど2冊買いまでしてくれるそうです。小説として大人が読んで面白いかというと、きっとそうではありません。しかし若い世代には、若い世代にしか共感できないものがあり、それが深く刺さっているのです。だから編集者はどれだけ「おかしい」(移動したことが書かれていないのに学校から家へ場面が変わってるとか)ことが作中で起きても否定しない、作者(なんと中学生!)の感性を大事にしていたそうです。ちなみにプロの小説家に同サイトで連載してもらったこともあるそうですが、反応はいまいちだったとのこと・・・。ケータイ小説は自社サイトに読者の情報が蓄積されていきます。何歳の何県何市の女子がどのケータイ小説をよく読んでいるか?反応の良い単語は何か?好むデザインまでかなり深くマーケティングデータが蓄積され、PVの多いものを書籍化すれば予想通り売れるそうです。ここにひとつ未来の形があると思っていて、今までは企画段階から書店さんや取次さんを巻き込んでいく「巻き込みマーケティング」が手法としてありましたが、そこに読者も巻き込んでいくことで制作時の方針検討、初速の安定化、クチコミの拡散等の効果があるのではないでしょうか?ちょうど、無印良品さんの無印良品計画や、キンコン西野さんの「えんとつ町のプペル」もそういったスタイルですね。

本がアートになる前に、接点の編集を

  • 「ひとつ昔」になったメディアはアートになってしまう。
    • 呉服はユーザーが離れていったため「季節モノ」だったのを「一生モノ」という高単価路線にシフトした結果、業界全体がスポイルしていった。
    • 出版も高額化が進み過ぎて、アートになってしまうかもしれない。白手袋で扱うような。
  • 本との接点を編集する視点が必要になるのではないか
    • 届ける場所を編集する。場所づくりも立派な編集。〇〇出版書店とか。
    • 大学の講義で、本を作った経緯と想いまで話すとみんなびっくりするくらい買っていってくださる。学生でも1800円の本、2冊とか。

昔、立川談志師匠が「芸術なんてありがたいものになっちゃだめだ」ということをインタビューで答えてらっしゃいましたが、出版も近い将来、芸術になってしまうかもしれません。呉服業界の変遷は「怖い話」です・・・。読者の本格化に伴い「高額×ストロングスタイル」の本が好調ですし、その方向性を開拓していくのはアリだと思います。しかしそれでも初心者向け、読みやすい本も作っていかないと、業界全体がスポイルされてしまいます。ケータイ小説や無印の話で書いたように「本と読者との接点づくり」をしていく必要があります。究極的には白紙でも買うよ!というくらい思い入れや買う理由を共有することが大事です。バンドタオルはその機能やデザインで売れるわけではなくて、持って(振り回す)ことに意味があるのです。僕らは今後、webでリアルで場所づくりをしていかないといけません。みんなで力と知恵を出し合って、読者との接点を編集していきましょう。

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