出版社

どんな面白い企画であれ、相手にそれが伝わらないと「イイね!」とはなりません。

しかし出版の未経験者の場合、焦ってしまうのか、力が入りすぎるのか全然伝わらないことも多く、実は聞いている側は開始10秒で「ダメだこりゃ」と心のいかりや長介をむき出しにしてしまうことが多いです。

もっとつらいのは「ダメだこりゃ」となった企画をその後延々と聞かされることでして、これはもう悲しみしか生みません。

そうならないためにもなぜあなたの企画が「ダメだこりゃ」と思われるのか、その原因と対策についてまとめてみました。

なんの話かまったく見えてこない

これが一番つらいのですが、「誰のための、何がどうなる本なのか」まったく見えないで話が進むと本当にツライです。とにかく端的に「なんの本か」を伝えてください。

  • 「フリーランスが確実に1年で300万、2年で500万、3年で800万稼ぐ本です」
  • 「超受け身でもコミュニケーションが成立する本です」

など、とにかく手短かに「どんな本か」を伝えましょう。つまりは企画のコンセプトです。これがない=何にも考えられていないと言っても良いでしょう。

10秒で何の本か見えてこないと、心のいかりや長介が出てきます。

とにかく話が長い

もう企画うんぬん以前に「長い話はツライ」です。相手が校長先生の話を聞いてる朝礼の生徒みたいな顔になってませんか?だいたいメモも取らずに聞くだけで記憶できる時間は限られています。

でも相手に刺さる話ができていない人に限って、不安からどんどん話が長くなる傾向にあります。『今の日本の経済がどうの、世界的にみてもっとこうあるべきで、これからは女性も活躍する時代だし、高齢化社会においては・・・』『ちょっと、待ってくれ!何の話!?』って叫びたくなる時があります。というか実際に『〇〇さん、話が長いゼ―☆』って冗談めかして言いました。

基本的に相手から質問や、「なるほど!」というサインがない時に、自分が1分以上話してたらもうアウトだと思って下さい。

相手の心のいかりや長介が大暴れしています。

強い言葉がない

あなたの話に「すごいですね!」「それはなぜですか?」「え、それって普通じゃないですよね」といった好反応を示してくれると、編集者やプロデューサーは興味を抱いています。

そのカギになるのは、やはり「興味を引くキーワード」です。

「和菓子よりケーキのほうが太らないんですよ」「50,000人のクライアントが成功率80%以上です」「日本人で唯一、イタリアNO.1の靴磨き職人のもとへ修行に行きました」とか、実績やノウハウ、事例などに、とにかく相手を驚かせる言葉を入れてください。強い言葉に人間は反応するんですね。心の長さんが微笑んでくれる瞬間です。

動機が上から目線

本としてそこそこ面白そうでも、原稿にすると文章がわかりにくい、はっきり言うと偉そうでムカつく、ということがあります。

こういう本は読者に著者の上から目線が伝わって不評でして、発売後に全くクチコミをしてもらえない傾向が強い。

「楽しそうな大人を増やしたい」「電車で元気のないサラリーマンを見てこのままじゃダメだと思った」って良いことを言ってるようで、上から目線ですよね?

『なんでお前にそんなこと言われなきゃいけないんだ』と感じます。説教されてるような感覚なんですよね。

同じことでも「ボク自身が本当に毎日がつまらない大人だったから」「電車に映る自分の顔を見て、このままじゃダメだと思った」と自分事にすれば、相手に響きやすくなります。読者も僕らも共感できるんです。自分自身の体験でなくとも、せめて親しい友人や家族など、本当に親身になれる相手のためを思って、下から目線で話しましょう。

あ、もちろん本気でそう思ってないとダメですよ。テクニックとして見せ方だけそうしても、心のいかりやさんには見抜かれます。

 

ブランディングとか言っちゃった

「〇〇協会のブランディングのために」など、ブランド目的の発言はしてませんか?相手が表情に出すかどうかは置いておいて、かなり感じ悪いです。動機が上から目線よりさらに悪いです。

ブランディングのための出版ならば、企業出版や自費出版などを目指しましょう。個人的には一番大きい「ダメだこりゃ」を心のいかりや長介が叫ぶ原因です。

そもそもそういう場じゃない

これが意外と盲点ですが、ちゃんと企画の提案をしてもおかしくない場所でしょうか?
出版セミナーの懇親会とかは確かに「そういう場」だと言えます。けれど他のセミナーの懇親会ならそのセミナーに関する話が主であるべきですし、こっちも本の企画の話はしづらいです。

編集者というのは懇親会に行けば企画の売り込みをされる職業でして、ある編集さんは『若いころ、途中まで完全に「コムスメ扱い」されてたのに、主催者に『〇〇社の編集さんです』と紹介された途端、名刺交換の嵐で怖かったです・・・』と軽いトラウマ体験を話されていました。

チャンスとばかりにがっつかず、一人の人間としてTPOに応じた話題を話しましょう。心の長さんもげんなりしてます。

初対面

飲み会で企画の相談がダメと書きましたが、僕自身は飲み会で企画の相談をすることもあります。

『なんだよ!お前だって心のいかりや長介出させてるじゃないか!』と思われるかもしれませんが、実は違うんです。僕は「初対面で企画の相談は絶対にしない」んです。

編集者を単なる取引先とか、「本を出すための機能」として認識していないからです。当たり前ですが一人の人として見ています。自分としてはお互い引退した後で『西浦さーん、今月で私定年退職したんですけど、飲みに行きません?』って言われて『いいね~、行こう行こう!』って言える相手とだけ仕事したいと思っています。

つまり人として見て、人として付き合って、良かったら企画も一緒にやるっていうスタンスです。

 

だから先述のように何かのセミナーの懇親会で編集者を捕まえて企画の売り込みをしているのを見ると「初対面でいきなり売り込みするかね!?」(CV:キム兄)ってげんなりしてしまいます。
人としてではなく「編集者」「出版プロデューサー」という「機能」として見られている気がするからでしょう。

それでも主催者(たいてい著者)に紹介されたりしてると無下にもできないので、話を聞くのですが、だいたいここまで紹介した例にがっつり当てはまり、最初の10秒で「ダメだこりゃ」と「心のいかりや長介」が下唇むき出しになってます。

 

心のいかりや長介と仲良くするために

ではどうすればあなたの企画を、ちゃんと最後まで聞いてもらえ、かつ次へと続くようになるのでしょうか?

  1. 聞いてほしいことをまず聞く
  2. 聞かれたら簡潔に
  3. 相手の興味があることを話す

この3つかなと思います。

いきなり企画の話を始めるから「売り込み」になるのであって、実は初対面でもどこでも、編集者やプロデューサーが「この人の企画聞いてみたい!」って思ったら、いくらでもPRしていいのです。

だからまずはあなたからたとえばこんなことを聞きましょう

  • 何の仕事をしてるんですか?
  • どういった本を作られているんですか?

など。質問に答えてくれたら、相手も「あなたは何の仕事をされてるんですか?」とか「どういったサービスなんですか?」といった質問をしてくれるでしょうから、その答えとして「自分」に関する強い言葉を伝えます。

「ダイエットコーチをしてるんですが、実はガムさえ食べ続けたら80%の人は痩せられるんですよ」とか「経営塾を運営しているんですが、おかげさまでOBが1万人、今だと3年待ちですね」とか。

あなたの発言に、相手が興味を持ったらさらに追加でいろいろ質問されますから、簡潔に、しかし自分の温めている企画の話になるように誘導しながら話しましょう。

そのタイミングで企画の話をすればバッチリですし、むしろ相手がたぶん勝手に「こんな本とかって書けたりします?」と聞いてくるでしょう。

 

つまりは相手の興味があることを話し、あなたに興味を持たせ、徐々に企画の話にしていくと良いでしょう。

そうすれば会ったその日に縁が切れることもなく、次に続いていくと思います。

 

増刷率90% 平均部数48,000部の出版プロデューサー。

奈良県出身 同志社大学卒業後、学習研究社(現・学研ホールディングス)入社。書店促進部を経て、一般書販売課へ配属。2つの編集部を担当し、年間最大400冊のマーケティングを担当。膨大な点数を扱いつつ、新人著者の売り伸ばしや仕掛け販売に注力。上原愛加のプリンセスレッスン(シリーズ100万部突破)などの売り伸ばしに成功する。その後、出版プロデューサーとして2010年に独立。

『血流がすべて解決する』(22万部)『奇跡の営業』(6.3万部)など主にデビュー作をプロデュースし、ベストセラーへと導く。

業界では数少ない、出版社マーケティング部出身の出版プロデューサー。

その企画が10秒で「ダメだこりゃ」と思われる理由【楽しい大人を増やしたいは響かない】

どんな面白い企画であれ、相手にそれが伝わらないと「イイね!」とはなりません。 しかし出版の未経験者の場合、焦っ...

出版プロデューサーの西浦です。

本日はS社の編集さんU氏と、著者のMさんと飲みながらの打ち合わせでした。

個人的には打ち合わせで飲みというのは意外と少なくて、いつもはシラフでやっております。「出版業界」って深夜まで飲んでるイメージがあるし、実際、僕は編集さんや書店さんとよく飲むのですが、仕事はまじめに昼やってたりするんですよ。

ではなぜそんなに飲みをやるのかというと、昼の打ち合わせとは違う狙いがあるからですね。

機会の数ではなく種類を増やす

一つ目は相手を知りたい飲みです。facebookなどで面識のない編集さんから連絡をいただき、顔合わせでお茶飲んだりすることはけっこうあります。でも、お茶だけだとやっぱりお互いのことはよく分からなくて、あらためて飲みましょう!となるわけですね。だいたい1回会ったくらいで相手のことがわかるわけもないし、僕は顔合わせしかしてない相手と仕事したことはほとんどありません。相手のことを知るために会うわけですが、飲みもちゃんとした店から、汚っない中華屋、深夜のバーで朝まで語り明かす、あるいはカラオケで何歌うか、どう盛り上がるかまでシチュエーションを変えて、それぞれの場で何を話すか、何に価値観を置いているか複合的に相手のことを知りたいと思います。やったことないけどなんなら旅行も行ってみたいですね、旅行苦手なんですけども。そういえば昔、アラサー独身男性編集だけで、我が家で3時ごろまで飲んだことがあります。その時はもうひどくてひどくて・・・全く生産性のない会でしたが(笑)不思議な絆のできた貴重な会でした。たんに仕事ができるだけじゃなくて、人としてバツグンの魅力を感じるからこそ一緒に仕事をしたいと思います。だから僕は出会ってから仕事するまで数年かかることはザラです。相手のことを分かってないと自信を持って著者を紹介できません。

 

酔拳の発想で企画を練る

二つ目は企画の不確定要素が多い時の飲み。例えばまだ著者が僕のグループコンサルに入ったばかりで、企画がフワッとしているとき、センスのいい編集さんにぶつけて反応を見ます。Aっていう方向は反応悪いなぁとか、やたらこの実績に反応するな、やっぱりここ軸に練り直した方が良いなとか。これは楽しくて酒も入りながらも、脳が120%冴えてくるタイプの飲みです。正直、酔ってるけど脳は全く酔ってないですね。僕は泥酔しても完全に記憶残しているタイプなので、こういうやり方が好きなのかもしれませんね。酔拳みたいな打ち合わせです。この場でのお酒は「非公式だよ」というルール・雰囲気づくりで、自由に素の意見を言っていただくための装置です。実際に「同じ著者にどう反応するか?」でけっこう編集者のことわかるので面白いですよ。

ちなみに、編集さんと久しぶりに会ったりすると「西浦さん、面白い著者いませんか?」と聞かれます。「面白い企画ないですか?」とは聞かれません。つまりは大切なのは企画ではなく、人であり、どこを面白いと思うか何をすごいと思うかというところが能力やセンス、価値観だったりするのです。だから、1つ目の「相手を知るための飲み」がすごく重要だというのも納得でしょう?

 

途切れたテンションを元に戻す

ちなみに今夜の飲みーティングはちょっと応用編でして、「編集者、著者、プロデューサー(西浦)の、流れやテンションを再調整する」ためのものでした。というのも著者側でうまく「はまった原稿」が書けなくて、何回も何回も、全ボツ→ダメ出し、全ボツ→ダメ出しを西浦⇔著者間で繰り返してたら、いつの間にかすごーく時間が空いてしまったんです(汗)ようやく一定レベルの原稿が上がったので、一度止まった流れを戻すための飲みです。夜書いた手紙って、朝読むと完全にスベッてるじゃないですか?夜と朝でテンションの流れが遮断されて、感じ方が違うからですね。しかもこの朝の醒めた状態で、夜の手紙の続きは絶対に書けないんです。勢いが死んでるので別の手紙になります。手紙だけじゃなく、企画にもテンションや流れがあって、これは制作中はもちろん、発売後も引き続きうねりのように続いていきます。売れる本はどんどん勢いを増していきますが、本が売れなくなる時はやはり何か「止まった」感があります

今回のテンションの再調整は、きれいな会議室でまじめにやるのは難しそうだったので、飲みの席にしました。というのも今回の企画は昼の打ち合わせでも、自由に発想して三人で爆笑しながら組み立てたものだったので、あの積み重ねのテンションに一発で戻すのは厳しいなと感じたからです。結果的に今夜の飲みーティングでは、もとのテンションにだいぶ近いところに立ち戻ることができ、「次にするべきはこれだね」というところまで見えたので良かったです。

 

ミーティング中はいろいろ言語化していない狙いや、非言語でコミュニケーションを取って編集者さんとやり取りしたりしてるんですが、こうして文章にすると意外と深いこと考えてるなと我ながら感心しました(笑)

編集者がどこに着地させたいかとか、この言葉の意図は何かとか、『あ、今の言葉メモった!』とかすごい探ってるんですよ、こう見えて。

妻の機嫌をどこに着地させたいかとか、この言葉の意図は何かとか、『帰りにたこ焼き買って帰るわ、何味がいい?』とかすごい探って帰るんですよ、こう見えて。

(最近飲みが多いから)

 

出版プロデューサーの日常的風景でした。こんな深くて楽しい仕事です、良かったら一緒にやってみませんか?

出版プロデューサー募集中!

 

増刷率90% 平均部数48,000部の出版プロデューサー。

奈良県出身 同志社大学卒業後、学習研究社(現・学研ホールディングス)入社。書店促進部を経て、一般書販売課へ配属。2つの編集部を担当し、年間最大400冊のマーケティングを担当。膨大な点数を扱いつつ、新人著者の売り伸ばしや仕掛け販売に注力。上原愛加のプリンセスレッスン(シリーズ100万部突破)などの売り伸ばしに成功する。その後、出版プロデューサーとして2010年に独立。

『血流がすべて解決する』(22万部)『奇跡の営業』(6.3万部)など主にデビュー作をプロデュースし、ベストセラーへと導く。

業界では数少ない、出版社マーケティング部出身の出版プロデューサー。

編集者と飲みながら打ち合わせするのは、昼とは違う効果がある。

出版プロデューサーの西浦です。 本日はS社の編集さんU氏と、著者のMさんと飲みながらの打ち合わせでした。 個人...

 「出版業界生き残り会議」の後編

  • 出版社の書籍編集者3名(中堅2、若手1)
  • 取次営業1名
  • 書店員1名
  • 新興出版社経営1名(センジュ出版の吉満さん)

西浦の7名で、出版業界生き残り会議という名の飲み会開催中。餃子うまいす。

前編はこちら
出版プロデューサーなんて商売をしているとよく「本ってほとんど同じこと書いてない?」とか「みんな同じで面白い本がない」とディスられたりします。そういうときはだいたいカチンときてるので「そうですか?影響力の武器とかピケティとか面白くなかったですか?」と聞くと今のところ100%の割合で読んでないです。つまりは「自分に合う本を見つける能力がない」のだと思います。と思っていたら最近では、ハードな「ストロングスタイル」の売れ行きが好調なようです。

ストロングスタイルが売れてきてる

  • ここ数年ビジネスは翻訳ものが元気良い
    • 読者のレベルが上がってきて、本格派、「ちゃんとしたものを読みたい」印象がある=ストロングスタイルの本
  • 半面、読み切れない。文書量減らしたりする工夫が必要になるし、実際にはストロングスタイル1冊より、薄い本を数冊買っていくお客さんの方が多い。
  • 広く浅く VS 狭く深く か?
    • 狭くし過ぎると本として成立しないのは変わらず。
    • 単価上げて、生き残る「深い」が有効になりつつある?
    • 例)営業系の本で1,800円初刷7,500部がもう3刷だったり、おしゃれおばあちゃんスタイルブックが2,400円で、5万部だったり。(あえて書名ぼかしてます)
    • 薄利多売から脱却して、一冊入魂スタイルへ?
  • 本屋も同じく薄利多売から高単価へ。版画扱かったり。トートバックも案外売れてたりする。
  • 本を売りたいけど、500坪以上の大型店は「売れない本を置いてる」ようなものなので、本以外の商品を置くしかない。
    • ロングテールモデルなんてとっくに崩壊している。
  • 書店からのリニューアル相談で「本の売り場を増やしたい」なんて話は聞いたこともない。

ここ数年、初心者向けではない「ストロングスタイル」の本が売れてきていて、「自分に合う本を見つける」読者が増えてきたのではないでしょうか。かつてビジネス書を読んでいた層の中からさらに本格派へと移ってきている印象です。ただ母数としてはまだまだ多くはなく、書店の現場では薄い本をたくさん買っていく読者が多いようです。本のジャンルによってテーマが深くなっているジャンルとそうでないジャンルがあり、ビジネス等は深化が進んでいます。数十万部が出るテーマ、「女性向け生き方」とか「健康書」では依然として読みやすさ、手に取りやすさが重要です。「高単価×本格派」スタイルが増えてくると、関係者的には利益も出やすくありがたいですね。書店でのスぺースは同じだし、広告費も変わらないけど1冊あたりの売上、利益が大きいからです。本屋の現場でもとっくに高単価化の動きは生まれていて、トートバックなど雑貨を扱うところはとても増えていますよね。とくに印象的だったのは大型店は「売れない本を置いているようなもの」という言葉です。たしかに売れ行きの良い本は限られているので、大型店になればなるほど回転率の悪い本を置いておかねばならない状況です。当然、大型店の方が家賃は高く、人件費も高く、ビジネスとしては厳しい。かといって販売力の弱い小規模の書店では売れ筋がそもそも入荷しないという背景もあり、どーすりゃいいの?状態です。だから大型店として販売力(集客力)は維持しつつ、本以外の高単価商品を扱っていくという流れなのでしょう。リニューアルで「本の売り場を増やしたい」という話がまったくないというのも、納得です。

若者はむしろ本を読んでるぞ!

  • 若者の読書離れについては、データ上存在しないという見方もある。ガベージニュースさんとか。
  • 中学生がメイン読者の「ケータイ小説」は今でも元気。しかも地方が強いという非常に魅力的な市場。
  • 地方は遊ぶところがせいぜいイオンぐらいという地域が多く、それを証明するかのように未来屋書店(イオン系)がいちばんケータイ小説を売ってくれる。めっちゃ売れた。
  • ケータイ小説はサーバー代がものすごく高く、本の売上でwebの赤字を補てんしていた。(何ページも読むから、1セッションに対しPVがすごい)
  • ところがスマホへの移行が進み、読者が増加。webサイトのみでも黒字に。
  • webサイトが非常に優秀なマーケティングツールとなり、客層分析、配本はもちろんPRツールとしても機能。ほぼ全点増刷というドル箱。(表1や帯で多少の差は出たものの)
  • ネットで見れるものをわざわざ買う理由
    • 保存したい。人に読んで欲しいからなど。主客層の14歳が2冊も買ってくれる感動する(こっちが)
  • ラノベが最近元気ないのは少し怖い。新潮nexもラノベではなく新潮文庫の並びで展開して売れている。

若者の読書離れが進んで・・・という話は聞くが、データ上はそうでもないのでは?という気がします。小学生は朝読もあるし、通学に電車を使う学校では電車内で騒がないように本を持たせたりもします。その流れか中学生では非常に読書率が高いようです。事実、ケータイ小説ジャンルは今でも健在で、中学生が購入し続けてくれていることがその要因です。それも心から感動して、保存用や友人に勧めるようなど2冊買いまでしてくれるそうです。小説として大人が読んで面白いかというと、きっとそうではありません。しかし若い世代には、若い世代にしか共感できないものがあり、それが深く刺さっているのです。だから編集者はどれだけ「おかしい」(移動したことが書かれていないのに学校から家へ場面が変わってるとか)ことが作中で起きても否定しない、作者(なんと中学生!)の感性を大事にしていたそうです。ちなみにプロの小説家に同サイトで連載してもらったこともあるそうですが、反応はいまいちだったとのこと・・・。ケータイ小説は自社サイトに読者の情報が蓄積されていきます。何歳の何県何市の女子がどのケータイ小説をよく読んでいるか?反応の良い単語は何か?好むデザインまでかなり深くマーケティングデータが蓄積され、PVの多いものを書籍化すれば予想通り売れるそうです。ここにひとつ未来の形があると思っていて、今までは企画段階から書店さんや取次さんを巻き込んでいく「巻き込みマーケティング」が手法としてありましたが、そこに読者も巻き込んでいくことで制作時の方針検討、初速の安定化、クチコミの拡散等の効果があるのではないでしょうか?ちょうど、無印良品さんの無印良品計画や、キンコン西野さんの「えんとつ町のプペル」もそういったスタイルですね。

本がアートになる前に、接点の編集を

  • 「ひとつ昔」になったメディアはアートになってしまう。
    • 呉服はユーザーが離れていったため「季節モノ」だったのを「一生モノ」という高単価路線にシフトした結果、業界全体がスポイルしていった。
    • 出版も高額化が進み過ぎて、アートになってしまうかもしれない。白手袋で扱うような。
  • 本との接点を編集する視点が必要になるのではないか
    • 届ける場所を編集する。場所づくりも立派な編集。〇〇出版書店とか。
    • 大学の講義で、本を作った経緯と想いまで話すとみんなびっくりするくらい買っていってくださる。学生でも1800円の本、2冊とか。

昔、立川談志師匠が「芸術なんてありがたいものになっちゃだめだ」ということをインタビューで答えてらっしゃいましたが、出版も近い将来、芸術になってしまうかもしれません。呉服業界の変遷は「怖い話」です・・・。読者の本格化に伴い「高額×ストロングスタイル」の本が好調ですし、その方向性を開拓していくのはアリだと思います。しかしそれでも初心者向け、読みやすい本も作っていかないと、業界全体がスポイルされてしまいます。ケータイ小説や無印の話で書いたように「本と読者との接点づくり」をしていく必要があります。究極的には白紙でも買うよ!というくらい思い入れや買う理由を共有することが大事です。バンドタオルはその機能やデザインで売れるわけではなくて、持って(振り回す)ことに意味があるのです。僕らは今後、webでリアルで場所づくりをしていかないといけません。みんなで力と知恵を出し合って、読者との接点を編集していきましょう。

前編はこちら

増刷率90% 平均部数48,000部の出版プロデューサー。

奈良県出身 同志社大学卒業後、学習研究社(現・学研ホールディングス)入社。書店促進部を経て、一般書販売課へ配属。2つの編集部を担当し、年間最大400冊のマーケティングを担当。膨大な点数を扱いつつ、新人著者の売り伸ばしや仕掛け販売に注力。上原愛加のプリンセスレッスン(シリーズ100万部突破)などの売り伸ばしに成功する。その後、出版プロデューサーとして2010年に独立。

『血流がすべて解決する』(22万部)『奇跡の営業』(6.3万部)など主にデビュー作をプロデュースし、ベストセラーへと導く。

業界では数少ない、出版社マーケティング部出身の出版プロデューサー。

出版業界生き残り会議2/2「ストロングスタイルと接点の編集」

 「出版業界生き残り会議」の後編 出版社の書籍編集者3名(中堅2、若手1) 取次営業1名 書店員1名 新興出版...

出版業界、君は生き延びることができるか!?

出版プロデューサーの西浦です。

出版不況がずいぶん長ーく叫ばれていて、個人的にはもうその感覚マヒしつつあります。けど数字で調べると売り上げは2兆円を切り、しっかり出版社・書店数は減少しています(涙)。かたや電子書籍の売り上げが2014年ごろから存在感を示しだし、紙の約1.8兆に対し、約1800億と10%の規模感に成長してきました。

僕は出版社の編集さん、営業さん、取次さん、書店さんと「出版右肩上がりの会」というのをやってまして、そこで定期的に企画の勉強会をしています。その流れで「一度、出版業界がどうやって生き残っていけばいいか、みんなの意見を聞きたいね」という声を頂いたので、「出版業界生き残り会議」というものを開催しました!

参加者

  • 出版社の書籍編集者3名(中堅2、若手1)
  • 取次営業1名
  • 書店員1名
  • 新興出版社経営1名(センジュ出版の吉満さん)

西浦の7名です。出版社営業の方が日程が合わず不参加で残念。

※「出版右肩上がりの会」が書籍の会のため、書籍のメンバーばかりになっております。

紙の本を読む理由は残っているのか

  • 可処分所得と時間を本に使う人が減っている。かく言う編集者である自分もライフハックとか読んでる時間が増えてきた。
  • 本屋でスマホを触ってる人も多い。おそらくはamazonで評判を調べている。
    • 本屋としては「撮影=NG行為」としているものの、最近は表紙くらいはいいのではと思うようになった。後で買うためかもしれないし、シェアしてくれるかもしれないから。
  • 紙の本以外の商材(情報商材とか)を扱う場合、紙の本の読者は「リストとして非常に濃い」高額商品のコンバージョン率高い。
  • 読者プレゼントに特別音源など反応良い。動画より音源の方が良かったりする。袋とじ的な、もろSEXの話とか。「過激すぎて本に載せられなかった」もの。
  • 電子書籍は紙の発売後1ヶ月で発売されるパターン多く、出版社の規模によるが売上は年間数千万になっており、ありがたい。
    • 単品ごとの売上は本当に微々たるものなので、商品点数の多い版元に有効と思われる。
  • 今の小学生くらいだと、電子と紙と両刀使い。「紙の良さ」という感覚はないのではないか?
  • だが「三代目 J Soul Brothers」のタオルは買う(笑)リアルの価値、ライブという限定性は存在する。
    • 握手会は良いと思う。しかし出版記念講演会はもうやめた方が良いのでは?集まらない。
  • 読書会をやっていて思うが、紙の方が「共有」には向いているかもしれない。中身の説明をするときに電子の人は探すのに手間どっている印象。
  • 大全系の分厚い紙の本が売れたりするのはなぜか

紙の本にかける時間や金額の総数は減っているように思われます。電車の中でスマホをいじってる人が多い、昔はけっこう本派の人もいたと思うのですが。しかも今後若い世代はそういう原風景も持っておらず、さらなる危機感を感じます。「紙がいいよね」というノスタルジックな気分は捨て去って、紙の価値と向き合わないと生き残れないのでしょう。出版業界はよく音楽業界を指標としますが、やはり「リアルの価値」「ライブの限定性」をどう出版に落とし込むかを探したい。バンドのタオルのように「持っていること」に価値のある本。きっとそれは書いてあることを知って何かを身に着けるという発想ではなく、一つの大きなものに加わる、一緒に何かを作り上げるという一体感なのではないでしょうか?「この本を持つということは、この本の考え方に賛同する仲間になる」というような。読者と一緒に何かを作っていこうという著者の気概が求められています。ノウハウの切り売りではそのうち全く見向きもされなくなる日が来ます。

 

本屋は本ではなく場所を売るべきか

  • 某書店の1階ワゴンが10万から15万に値上がりしたが、需要に変化はないらしい。
  • スペースを広告として売るべきなのではないか
    • 某代理店が書店にお金を払って、「書店の売り場を交通広告として」雑誌の展開を提案していたケースあり(クライアントの商品が広告だけでなく、でっかく掲載されている)。雑誌への広告出稿だけにとどまらず書店でのPRもセットで提案するスタイル。(西浦追記)
  • 書店としては、売れない本でワゴン展開やると、お客様の信頼を失うので避けたい
  • だが本屋の不動産価値はもっと活かせると思う。百貨店の中に入居してるテナントの中で一番多くのお客様が訪れる。シャワー効果。
  • TVも「本屋」はテーマとして数字取れると言っていた。多くの人が関心を抱いている場所。お客さんを選ばない、広いビジネスだからだと思う。
  • 広告としてはしおりブックカバー作ってもらえるとありがたい。このコストは純粋に書店持ちの経費なので、これが浮くだけでありがたいし。
    • ブックカバーはパッと見おしゃれで、小さくシリーズ名やタイトル、出版社名が入ってるイメージで。
    • カレンダーも実は評判いい。気づけばなくなってます。

本屋は全ジャンルを扱える最強の小売業・コンテンツバイヤー

  • BtoCじゃなくてプロ向けの新商品説明会などもアリかもしれない。某都内書店では3Dプリンタの展示会を行った際、プロの参加者が多く、関東で1番売れたらしい。国際展示場行くより近いというイメージ。
  • 本屋がメーカー、出版社をまとめてマーケティングすればいい。プロデューサー的に。
  • 例)パネル展→新聞社取材→yahoo!ニュース掲載→TV取材という流れもあった
    • 本が100冊以上売れたケースもあるし、何より関連グッズがあるとそれを仕入れて販売できて良い。
    • 本屋は場所として信頼性高く、著者が主催するイベントより取材してもらえやすいだろうと思える。(西浦追記)

本屋は立地商売なので、駅前や繁華街など店舗の場所が良く、「強い集客力を持つスペース」としての特性を持っています。見方を変えれば「集客」に特化したビジネスモデルですよね、単価が安いのが課題ですが、それゆえにとにかく人を集める力がある(シャワー効果など)。また、他の業態に比べ、扱うジャンルが尋常でなく広いのも特徴です。誰でも本屋で「自分が興味のある棚」を探すことができます。つまり書店は「全ジャンルのアイテムを扱える最強の小売業・コンテンツバイヤー」としての可能性を持っています。人気のドラマやニュースで頻繁に取り上げられるアイテム、タレントさんなど「流行に便乗した本」を中心に本以外の関連商品を販売することで客単価を上げる書店さんもあります。その際にメーカーも巻き込んで、商品だけでなく、限定品や展示物も借りているそうなので、そういった「プロデューサー」的な在り方は模索できるのではないでしょうか。

また、集客力の強さを活かして「スペースを売る」つまり広告を商品とする可能性があります。実際に某広告代理店がメーカーに提案したプロモーションに「雑誌掲載+都市の大型書店で展開」というものがありました。また、しおりやブックカバーも広告スペースとして販売できる余地がありますね。出版社以外の広告主が広告を出しても効果があるかも。しかし、ただの場所貸しになって「売れない」ものをたくさん展示すると、お客さんが離れていくので、あくまでも「本を中心に何かを売る」という考え方からブレないことが重要かもしれません。

 

後編はこちら

 

本の出版をお考えの方へ

増刷率90% 平均部数48,000部の出版プロデューサー。

奈良県出身 同志社大学卒業後、学習研究社(現・学研ホールディングス)入社。書店促進部を経て、一般書販売課へ配属。2つの編集部を担当し、年間最大400冊のマーケティングを担当。膨大な点数を扱いつつ、新人著者の売り伸ばしや仕掛け販売に注力。上原愛加のプリンセスレッスン(シリーズ100万部突破)などの売り伸ばしに成功する。その後、出版プロデューサーとして2010年に独立。

『血流がすべて解決する』(22万部)『奇跡の営業』(6.3万部)など主にデビュー作をプロデュースし、ベストセラーへと導く。

業界では数少ない、出版社マーケティング部出身の出版プロデューサー。

出版業界生き残り会議1/2「本屋は本を売るのか、場所を売るのか?」

出版業界、君は生き延びることができるか!? 出版プロデューサーの西浦です。 出版不況がずいぶん長ーく叫ばれてい...