再現性は、読者の環境に応じて「動作確認」した回数に比例する

出版につきまとう「再現性の不安」

鍋の〆は雑炊派!の出版プロデューサー西浦です。昨日はカレーちゃんこ鍋を頂きまして、〆がまさかのうどんからの雑炊っていう2回〆でした。〆たあとでもっかい〆るとかどんだけ仕事きっちり終わらせるんだと感動。

さて、友人の黒田さんがこんな記事を書いてました。

フリーランスが仕事を依頼してもらうには「再現性」が重要~スキルの課題依存性と環境依存性について~

 

この「再現性」というのは、出版でもたびたび登場するキーワードですね。

『このノウハウの再現性はあるのか?』というような使われ方をします。

つまり『あなただからできたんだ』と言われてしまうノウハウや、たまたまうまくいっただけのケースじゃダメということですね。

本は読者にとって再現性のあるものでなくてはいけないので、医学的、科学的根拠を調べたり、脳科学の理論を引っぱってきたりして「再現性」を担保します。

再現性は「課題と環境」に依存する

出版の場合、再現性は「読者が実践した時に効果があるかどうか」で判断されます。

だから本で紹介するノウハウが

  • どれだけ簡単
  • 大金をかけなくてもよい
  • ものすごい手間がかからない

などを、企画を作りながら考えていきます。

すると、どんどん平易な内容になっていき、差別化がしづらくなったり、逆に「そんな簡単な、魔法みたいな話あるワケないだろ!」というツッコミを読者から受けることにもなります。

 

ここで、黒田さんの記事を読んでみましょう。

専門性の高いスキルになると、再現性は低くなっていきます。
再現性を低めるのはスキルの

  • 課題依存性
  • 環境依存性

です。

より専門的なスキルであればあるほど、「課題」と「環境」によって、再現できるかどうか変わるよね、ということです。

ダーツを例に説明されていて、「普段の3倍の距離で的に当てろ」と言われたら再現性が低くなるし(課題依存性)、「早くなげろー!」と周囲に急かされて投げる場合も再現性が低くなります(環境依存性)。

確かにね!わかりやすい!

出版でクリアすべき「再現性」とは

さて、著者はこの再現性の依存度をどう考えればよいでしょうか?

僕はこの2つの「課題依存性」と「環境依存性」のうち、「環境依存性」に着目するべきと考えます。

 

なぜなら「課題依存性」は、出版の場合、前提としてクリアされているものだからです。

たとえば「ついていきたいリーダーになる」本と、「部下を導くリーダーになる」本は、同じ「リーダーシップ」の本ですが、課題が違いますね。だから本として別のものになりますし、解決方法も別のものになります。

課題が変われば、解決方法も変わるものです。むしろ一つの課題に対して、いくつも違った解決方法を提案しているのが今の出版業界の面白いところですから、課題依存性は「解決策や著者をいくつも提案する」ことで対応しています。

「痩せる」本でも、「痩せたいけど食べたい」課題には筋トレやランニングなどの運動系、「動かずに痩せたい」課題には〇〇だけダイエット(〇〇には食材が入ります)などの食事系、レコーディング系など多彩な方法論で提案をしていて、「何にもせずに痩せたい」課題に対しては聴くだけで痩せるCDとかまでありますからね。

ということで、企画の差別化を考えたときに注目したいのは「環境依存性」の方です。

ノウハウは「環境の動作確認」でレベルアップする

読者ごとに置かれている環境は違います。

例えば「ついていきたいリーダーになる本」であれば、

  1. すでにリーダーとして成功しているが、さらに「ついていきたい」と言われる必要がある環境にいる読者
  2. カリスマ型リーダーとして成功しているが、「ついていきたい」と思われる必要のある環境にいる読者
  3. 次の人事異動で課長になることが決まり、はじめて部下を持つ環境の読者
  4. いつかリーダーになりたいと思っている環境の読者

などちょっと考えただけでもまだまだ出てきそうです。

読者をより明確にイメージすればするほど、読者の環境の違いが見えてきます。

 

では、1の読者の場合を考えてみましょう。

長くリーダーをやっていて多くの部下が「ついていきたい」と言うようになっても、例えば「リーダーシップのある部下」はついていくのではなく、自分で考えて動きたいと思っているものです。

そういう部下の場合はついて来させるのではなく

「結果のイメージだけすり合わせ、やり方は任せることで『自分は認められている』と感じられ、結果的についていきたいと思うことにつながる」

といったように

「この環境の場合、こういう原因でうまくいかないから、こうしたら良いよ」という「動作確認」をしてあげましょう。

しかもこの「動作確認」では「実践したらどうなるか」まで書いてあげるのが効果的です。

例えば

「自分でやりたいタイプの部下に任せて、仕事がうまくいくと、その後2つのパターンに分かれます。あなたへの信頼を増すタイプと、増長して自分の派閥を形成しようとするタイプです。後者の場合はあなたについていこうとしている人たちも巻き込んでいってしまうので、担当する仕事の権限を必要以上に増やさないようにしましょう。彼の部下が何か窮屈な思いを抱いていないか、より厚いケアが必要です」など。

これは一例ですが、ポイントは「実際に実行したらどんなことになるか?」の実例をベースに書いてあげることです。はまりガチな落とし穴は実践者だからこそ言えるものです。

クライアントの人数・種類を増やして、分析する

でも、上記の1~4までの読者を全部取り入れようとしたら、けっこうとっちらかった本になりそうですよね。

読者環境に初心者(3,4)と上級者(1,2)とが混ざっているからです。

でも僕は初心者と上級者が混ざっていることがカギだと思っています。

 

10万部以上売れている本は、ベストセラーの宿命か「内容が薄い」などとバカにされがちです。

しかし、よく読むとちゃんと深いことが書かれています。その深さを簡単には気付かせないくらいわかりやすく平易な言葉で、初心者が読んでも理解できるよう工夫して書かれているのです。

むしろ10万部の壁を越えていく本は、タイトルやカバーだけでない「プロも納得、初心者もわかりやすい」中身の深さと軽やかさを持っていると思います。

これは僕にとっての本づくりの理想で、とても難しいのですが、一つわかったことがあります。

 

著者がたくさんのクライアントに対して、一人一人と丁寧に向き合っていくと、最終的には一人一人「ここでつまずく」ということがわかってきます。

そうすれば、その中から本質的な共通点を見つけて「○●すればうまくいく」と一言で、言い切ることもできるようになるのです。

つまり一人でも多くのクライアント、いろんな状況のクライアントと向き合うことで、千差万別の対処も、そこから導かれる本質的でシンプルな解決策も見えてきます。

つまり「再現性」を保つために、より「簡単な」方へノウハウを薄めるのではなく、あらゆる環境(読者)への「動作確認」をしていき、一つ一つを解決していけば、「本質的な」解決策に至ります。

モデルからおじいちゃん、小学生まで達成、驚異のダイエット!みたいなものですね。

簡単なノウハウ、本質的なノウハウはどちらもシンプルですが、 ノウハウが導かれた事例数がまったく違うので、後者はより厚みのある深いノウハウになります。

 

多くの人に届けるために、自分のノウハウを薄めるのではなく、実際に多くの方にサービスを提供して、厚みのある、かつシンプルなノウハウにしていきましょう!