出版事前プロモーション9選と3つの注意点【編集者、書店員に聞いてみた!】

事前にしっかり雨の準備をした日に限って、ギリギリ晴れがちな出版プロデューサーの西浦です。長靴はいて、折り畳みじゃないカサ持って出たら「いっそ降ってくれ!」って思いますよね(笑)

 

ところで自分の本はわが子同然!という著者にとって、本が売れるかどうかは死活問題ですよね。

売れるためには何をすればいいの?というのが気になるところ。

 

というわけで今回も、出版業界の勉強会「出版右肩上がりの会」のメンバーに協力してもらい、事前プロモーションに関する集合知をこっそりまとめてみました。

常に「どうすればより良い本を出せるか、1冊でも多く読者に届けられるか」に苦心しているメンバーだけに、今回も超リアルな手法と事例が集まりました!
施策の他に、最後に注意点も3つまとめてありますので、合わせてご覧ください!

※出版業界のプロに聞く!「出版右肩上がりの会」の以前の記事はこちら
成功する著者2パターンと、失敗する著者の16条件【編集者、書店員のホンネ】

仕掛け販売

通常の展開よりもかなり力を入れて、店頭で積んで読者へPRする施策。大型の広告やプロモーションと連動させることが多い。

「売れなかったときのガッカリ感も大きい」というリスクがある。

書店では、どんな本かという「本そのものの情報」より販促情報が重要視される傾向がある。

  • 何に取り上げられるか?(メディア露出)
  • 広告の予定は?
  • 非Amazonキャンペーンでのリアルな予約数の上がり方

など。
文芸の場合はプルーフ(試し刷)を作って、書店員に渡し、内容をPRすることが多いが(そして文芸そればっかりじゃん!という批判の声もあるが)、一般書・実用書ではあまり見ない。それは上記のように、より販促情報を重視する傾向ゆえか。

また、Amazonでのリアルな予約数が影響するのは、Amazonキャンペーンと違って、ネットの記事など露出効果によるものだと予測できるから。これらはリアル書店にも波及することが多い。

 

テスト販売(先行販売)

正式な発売前にテスト的に一部の書店さんで展開してもらい、売れ行きをチェックする手法。だいたい発売の1週間前に実施されることが多い。

これにはいったいどんな効果があるのか?

  • 成功事例)
    「●代でやっておきたいこと」系の本で、テスト販売の実績が悪すぎてカバーを変えた(すっごいシンプルにした)ら、数十万部のヒットになったことがある。

つまりカバーを変えられるくらい時間に余裕のある「先行」販売の場合有効である(この事例では1か月前)

逆に

  • 失敗事例)

先行販売の動きが悪くて営業のテンションが下がる

という「数店舗だけのテスト結果で期待値を下げてしまう」リスクもあり、仕掛け販売と同じく諸刃の刃と言える。

 

また、通常よく行われる「主力店で1週間の先行販売」は

  • 先行販売であることを店頭でPRして読者の目を引いたり
  • 搬入時(正式な発売時)に追加注文をしておいたり(売り損じ減・拡販効果)
  • 「発売前増刷」を検討したり

ということが可能で、1週間前ではカバーは変えられないまでも、やはり販売面で有効な施策であると言える。

 

つまりはテスト販売(先行販売)は実施後に「そこから発売までに何をするか」次第の施策ともいえる。なんとなくでやっても、二の手を繰り出さねば意味がないのだろう。

著者のSNSでPR

取材の様子など、発売前から書籍の情報を発信して、ファンの期待感を高めておくこと。発売直後の初速に好影響をあり。ブログやSNSなど、著者のオウンドメディアPV数やファンのコア度に依存する。

 

また、著名な担当著者同士を紹介して、互いのSNSでシェアしてもらうというやり方もある。
(急に「あれ?なんでこの人たち急に仲良く・・・?」と思ってたら1か月後に本出たり。その担当編集者が同じだったりする)

編集者やプロデューサーの関係構築力によるが、何より本人たち次第なので注意(合わない人は合わない)。

読者や関係者を巻き込む

ある意味、最も古典的で最も有効な方法。読者や書店員さんなど、実売に特に大きい影響を与える人に対し「特別な思い入れ」を持ってもらうためのいろいろ。

  • カバーどっちがいいですか?のように製作にも携わってもらうことで巻き込んだり
  • オンラインサロンで本を売るための方法について意見集めたり(バクマン的な)
  • ユーザーに本に掲載する「コンテンツ」を募集したり(実際に1800件集まったケースも)
  • 極端な例として書店の社長にタイトルを決めてもらったこともある※

※「売り方に関する本」で、「タイトルを書店さんが決める」ことが本の特性上おかしくない場合のケースです。著者も納得のうえ。

「東京タワー ~オカンとボクと、時々、オトン~」も取次の若手や書店員さんを巻き込んで販促していったと聞きました。キングコングの西野さんもこのやり方だと思います。

献本

見本や完成直後の本を献本し、メディアでの紹介を狙う。

  • 封筒ではなく、透明なビニールの封筒で中身を見せる(開封率アップ)
  • 直接渡しに行く(文芸は有効)

文芸では、書評担当者へ直接渡しに行くのは効果的だとされる。ただ実用系の本だと、ものすごく薄い反応のことが多いようです。

 

地方色の強いプロモーション

地方色の強い本は、地方紙(地元新聞)広告の反応が良い。広告に「地元本屋さんのコメントを載せる」と非常に有効だとの声。

地元本屋さんのランキングを載せることまではよくあるが、コメントまで載せるのは珍しい。地元読者へのPRももちろん、地元本屋さんでの展開も強化してもらいやすい。

また、東京でのイベントでも、ちゃんと地元新聞に連絡しておくと取材に来てくれたりすることもある(東京支部があるので)。なので東京でも何ができるか考えるのはアリかもしれない。

 

なお、地方色というのは、例えばUSJの本が関西で売れる?といった単純な結びつきだけでなく、

  • お金の本は関西で売れやすい(関西の番組では政治の話でも、議員の年収のように、お金に結び付けた方が視聴率が良かったりする)
  • 「心を上手に透視する方法」のような本も関西から売れ始めた(そういうけっこう腹黒いテーマも好きな気がする。知らんけど)

といった県民性や、その地域に「仕掛け販売の得意な本屋さんがあるかどうか」といった、いろんな要素が絡んでくる。

 

また地方色だけでなく「ニッチなニーズ」のある本も、地方色の強い本と同じように、ターゲットが「自分事にしやすい本」である。

同じ理由で事前プロモーションは効果的。

 

放送作家さんに手伝ってもらう

リリース作成時に、放送作家さんにアイデアを出してもらうという手法。

某アイドルの写真集発売のリリースについて、放送作家さんに考えてもらったところ、切り口として(昔「スイカップ」という言葉が流行ったことを前提に)「メロンヒップ」というキャッチでPR。すると予想以上の反響で、メディアに取り上げてもらえた。という事例がある。

なお、メロンヒップはその後、勉強会の場でも一時騒然となり、各自がいじりた倒していたことから、強いワードなんだなと実感しました。

 

試し読み、サキ読み

Amazonなどでも行っている、内容の一部を購入前に読者に見せる方法。サンマークさんのように自社で取り組んでいる出版社も。

後者の場合、販促効果以上に、「先に感想を集められる」というメリットが大きい。発売直後から「読者の声」を販促物、広告のコピーとして使用可能になる。

 

リリース配信は3か月前に

出版では通常、早くて1か月前くらいにプレスリリースを配信する。しかしCDやDVDは本に比べ、プレスリリースのタイミングが早いようで、タイトルや曲目など徐々に情報解禁していく。
ある本でレコード会社と一緒に企画を進めた時、本も3か月前にリリースを打つことになった。

 

(3か月前だと)本ができる前に取材が始まっていくので、タイトルやカバーもその時点で決める必要があった。

結果的には発売前にいくつかのメディアで掲載が決まったので効果があったのかもしれない。

 

別の事例では、「礼儀作法」の企画について、正月に合わせて夏からパブリシティを仕込んでいったケースもある。

構成⇒タイトル⇒書影と徐々に情報を流して、年末には某局の番組で取り上げが決まった。

反応が良ければ相手(メディア)の興味を促進するためにもドンドン情報を流せるよう、出版も「3か月前リリース配信」を念頭に動いた方が良いかもしれない。

 

3つの注意点

プロモーションと配本がズレると逆効果

プロモーションをどれだけ行っても、店頭に在庫がなくては全く意味がない。部門間の連携の問題か、会社の体制や仕組みによるものか、などケースによると思うが互いに販売機会は無駄にしたくないもの。

店によっては2ヶ月後に売れることもある

事前プロモーションについてアイデアや事例を紹介してきたが、その結果検証は発売直後に、初速の実績をベースに判断されることが多い。

しかし店によっては発売直後ではなく2か月後3か月後に売れることもある。そういった視点は忘れずにいたい。

売れないものの広告を打っても売れない

殊更に言うことでもないが、やはりそういうものかと。「売れない」理由が中身なのか、著者なのか、帯周りか、展開なのかにもよるので、そこは考えて対策をしたい。(中身と著者だったら発売後には対策できないけれど)