キーボードが焦げるまで書き続けたライター藤吉さんに教えてもらった「書く」ために大切なこと5選

椿屋珈琲店にはメイドみたいな制服のウェイトレスが、席で直接注いでくれるちょっと恥ずかしい「椿屋スペシャルカフェオレ」というメニューがあります。打ち合わせの時に編集者にそれを頼ませつつ、自分は普通のカフェオレに逃げた出版プロデューサーの西浦です。「打合せ」で油断する方が悪いのですよ、●●さん・・・(笑)

さて、よくマンガなどで使いすぎたPCから煙が出る描写がありますが、本当にキーボードが焦げるまで叩き続けたライターさんをご存知でしょうか?
「なんかエビが焼けるような臭いがするな」と思ったら、自身のワープロが焦げていたそうで、富士通の担当者には「今まで、焦げるほどキーボードを叩いた人は知らない」と言われたとか。

 

そんなキーボード叩きすぎ系ライター藤吉さんにお願いして、ベストセラーキャンプの会員向けに売れる「文章の極意」を教わってきました!
超売れっ子ライターさんのため、お願いしてから半年以上かかっちゃいましたが、待った時間以上の素晴らしい講義でした!
この素晴らしさの一部でも、出版TIMES読者の皆さんに共有させて頂きます!

差別化すべきはエピソード

藤吉さん曰く「著者の独自性」が語られている本は読者から支持されやすいそうです。

ここで言う「独自性」は「他にはない新しいアイデア」と、「他の人には話せないエピソード」の2つです。

 

しかし、藤吉さんが今までたくさんの著者を取材されてきた中で気付いたことは「一流の人ほど、みんな『同じこと』を言う」ということ。

  • 愛がすべて
  • ピンチはチャンス
  • 最初の動機は不純でいい

とか。

確かにどれもどこかで読んだことがある話ですよね。

 

一流になればなるほど、本質に近づいていくわけで、内容が似通ってくるのは、ある意味仕方のないことかもしれません。

とはいえ「また、これか」感があるのは否めないので、そういうときこそ『エピソード』で差別化すると良いです。

なぜそう思うようになったかという経緯(エピソード)は全員違いますし、そのエピソードの中に、その人しか語れない哲学や価値観が現れてくるものです。

特にエピソードが大事なのは、その人のエピソードに読者が共感しやすいからです。

失敗談とイイ話

それではどんなエピソードが喜ばれるのでしょうか?
それは『失敗談』『イイ話』です。

  • 失敗談

失敗談は「逆境からの復活劇」などギャップのある話が生まれるので、読んでいて共感しやすいのです。

左遷、人間関係のトラブル、若手時代に怒られた話、経営破綻など本のテーマに合うものを探してみてください。

  • イイ話

心温まるようなエピソードは、失敗談と同じく元来ウケの良いものですが、特にここ数年は反応が良いです。

「入院している同級生のために千羽鶴を折ったのだが、間に合わず、飛行機の中でも千羽鶴を折っていたら、機内アナウンスで協力を呼びかけてくれ、ほとんどの乗客が協力してくれた」

「ハンディキャップのある娘が、運動会ではいつも徒競走でビリだった。ある年、一緒に走っているコケてしまって『これで自分の娘がビリじゃなくなる!』と喜んだら、娘がコケた子の元へ駆け戻り、一緒にゴールした」

など絆や優しさを感じられる話は、深く心に残ります。(僕は聞いているだけでジーンときました)

 

読後に「こんなことがあったんだって」と人に伝えたくなるようなエピソードを持っているかどうかが重要ですね。

伝わる文章に大切なのはエビデンス

エピソードは非常に重要ですが、同じくらい重要なのがエビデンスです。

エビデンスとは、科学的な裏づけや根拠のことです。

エピソードは、「自分しか語れない」というメリットがある一方で、「再現性がない」「ほかの人は真似できない」「あの人だからできるんだ」と思われてしまう危険性もあります。

 

ですから、エビデンスを明らかにして、客観性を担保することが大事なのではないでしょうか。具体的には「脳科学的には~」とか「エビングハウスの忘却曲線によると~」と言った根拠を示すことです。「2万人が」とか「90%のクライアントが」といった、数字があるのも非常に有効です。

エピソードはインパクトがあり、広める力を持っていますが、エビデンスで「信頼性」を補てんする必要があるのです。

多作の作家が売れなくなる理由

たくさんの本を出版する作家はさぞかし売れっ子なのだろうと思うかもしれませんが、実態は逆のことが多いです。(ごく稀にそうでない方もいます)

「累計ン百万部!」と謳っているものの、平均するとほとんど売れてない…といったケースですね。

 

その原因の一つが「エピソードが薄くなる」ことにあるかと思います。

すでに何冊も本を出されている著者の場合は、「どこかの本にすでに書いたエピソード」と重複してしまったり、自分が経験したエピソードではなく「人から聞いた話」になりがちです。

エピソードが被ってくると、その著者の本をはじめて読む人以外は「前に読んだ話だな」と感じて、感動が薄まってしまいます。

それに「聞いた話」だと松下幸之助やスティーブ・ジョブズ、あるいは戦国武将の例などが、知名度の面からも採用されることが多いです。

しかし、知名度や人気の高さゆえに、逆にそのエピソードも読者に知られていて「また、これか」感があふれ出てきます。(有名人の、知られざるエピソードは非常に強いです)

 

「現場」から離れてしまった経営者や講演家にも似たケースが多く、エピソードが重複したり「古すぎたり」して、今の世の中にあっていないこともあります。

常に現場を意識して、エピソードの新陳代謝をはかりましょう。

 

作家とは「誰が」に値する生き方

他にも文章の型など一切、出し惜しみなくお話しいただいたのですが、最後にイチロー選手のこんな言葉をご紹介くださりました。

結局、言葉とは『何を言うか』ではなく『誰が言うか』に尽きる。その『誰が』に値する生き方をしたい。

2013/2/13付日本経済新聞より

この言葉がすでに「誰が言うか」に尽きる、ということを証明しているような言葉ですね。

非常に重い言葉ですが、本を書くことはもちろん、本当はブログだって、日ごろの言葉一つだって、この気持ちで発していきたいものです。

そうでないと誰にも本気だと受け取ってもらえません。

どれだけ良いことや面白いことを言っても、本人が「誰が」に値しなければ、言葉は軽く響きます

 

本の中のエピソードが、体験談なら、自分はこの本を書く「誰が」に値することを証明できますね。

その意味でも、本を書く人にとって、エピソードは絶対に必要なものです。

 

今回のエピソードに関するお話は、キーボードが焦げるまで文章を書き続けた藤吉さんだからこそ出来る講義でした。

著者を目指すあなたも、「誰が」に値する生き方をしてください。

そして自分自身にも強く戒めたいと思います。